N響スペシャル モーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」。横浜みなとみらいホールにて。

指揮がパーヴォ・ヤルヴィ。ドン・ジョヴァンニをヴィート・ブリアンテ、騎士長をアレクサンドル・ツィムバリュク、ドンナ・アンナをジョージア・シャーマン、ドン・オッターヴィオをベルナール・リヒター、エルヴィーラをローレン・フェイガン、レボレッロをカイル・ケテルセン、そしてマゼットを久保和範、ツェルリーナを三宅理恵が演じる、豪華なオペラ。

音楽としてのパフォーマンスのすばらしさは言うまでもなく、歌手がみんな若く美しくスタイルもよく、衣装センスや照明もいい。何よりも演出のレベルが高い。笑わせ、泣かせ、怒らせ、しみじみさせる、というメリハリの効いた舞台世界でホール全体を巻き込むことに成功していた。観客のレベルも高かったのでは。笑いどころが絶妙、拍手のしどころが的確で、快い一体感を味わわせていただきました。(笑いのセンスが合う人と同じ空間にいるというのは、嬉しいことですよね)

「極悪人」ドン・ジョヴァンニが最後はその人生に見合った懲罰を受ける……というところで終わる勧善懲悪?オペラでもあるのですが、最後の最後の演出が粋だったのですよね。地獄に連れていかれたはずのドン・ジョヴァンニが「シーッ」というしぐさでワイングラスをもって戻ってきて、そのままどさくさにまぎれてフィナーレ。この軽妙な明るさで終わる感じがなんともよかったな。観客がみな笑って救われた。途中の演出でも、携帯電話が出てきたり。ちらっとだけ日本語に置き換えられたセリフが出てきたり。やりすぎない程度の、目の前の観客を意識した洒脱な演出にとても好感がもてました。

レボレッロ役のカイル・ケテルセンのパフォーマンスは、その点、最高でした。「従者」としての衣装も、チェックのジャケットという現代のタウンカジュアルスタイル。目にも楽しい。

もちろんオペラとしての格調の高さはいささかも失われておらず、最後のクライマックス、「ドン・ドンジョヴァーンニ~ 招かれたから来たぞ」という、例の騎士長の歌には鳥肌が立ちました。

歌詞も含蓄が深い。「招かれたから、来た」というのは単に晩餐に招かれたから来たという意味だけではないのだな。お前のこれまでの行いすべてが俺を招いた、ということでもあるのでしょう。生き方や行動に見合った結末が必ず、報いとして「来る」。結果を「招く」のは、自分。そういう含みを伝えながら響き渡る、ツイムバリュクのバス。ほかの部分の歌詞も、ひとつひとつ、別の含蓄を想像しながら聴いていました。

3時間30分の長丁場でしたが、舞台世界に引き込まれ、最後はもっとずっと見ていたいと思ったくらい。パーヴォの指揮によるN響は、きりりとバランスのいい音を聞かせてくれて、なにか端正な爽快感が残るのですよね。


みなとみらいも、秋の気配。

 

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