The Crown season 2 episode 9 “Paterfamilias”.  これは構成といい語り方といい、事実の重みといい、すべての人間に関わる文学的なテーマといい、このシーズンのなかでも最高峰なのではないか(とそれぞれのエピソードを見るたびに思うのだが)。

チャールズ皇太子がなぜイートン校に行くことをとりやめてスコットランドのゴードンスタウンという厳しい全寮制の学校へ行く羽目になったのか? その謎が明かされる。

父フィリップ殿下の子ども時代と、チャールズ皇太子の子ども時代が、交互に描かれ、次第にその謎が明らかになる……というスリリングな構成。

フィリップは子供時代、革命で祖国を追われたばかりでなく、飛行機事故で家族をすべて亡くしているのだ。よるべないフィリップに「つながり」を感じさせてくれたのが、スコットランドのゴードンスタウン校だった。この学校は、身体的なチャレンジ(スポーツともいう)と精神的なチャレンジ(いじめ、ですね)を厳しく経験させることによって、タフな「キャラクター」を育てていくことをモットーとしている。There is more in him than he knows. 厳しいチャレンジによって、自分が備えていると思いこむ以上の資質を引き出そうというわけだ。

一方の「未来の国王」チャールズは、贅沢に甘やかされて育っている。絵や音楽が好きというソフトな王子。母エリザベス女王は宮殿からも近いイートン校へ通わせようとする(各種制服をあつらえているときのファッションショーが楽しく、眼福)が、父フィリップは、未来の国王にはもっと男らしい強さが必要だと主張し、ゴードンスタウン校へ送り届ける。フィリップにとっては、自分の母校とのつながり(ほとんどファミリーのようなつながり)をより強化したかったことと、すべての方針がエリザベス優先の状況において、子供の教育に関する方針だけは自分に従ってもらう、という夫婦間における優位を保ちたかったこともあっただろう。

 

しかし、自分の資質とはかけらも合わないゴードンスタウンでの生活は、チャールズ皇太子にとって「監獄に入れられているようだった」と後に回想するほど、悲惨な日々にしかならなかった。

ああチャールズがイートン校へ行っていたら、もっと楽しく明るい子供時代を送ることができ、そうすればもう少し素直な心が育ち、伴侶選びも間違うことなく、ダイアナ妃の悲劇を生むこともなかったのではないか……とついつい想像してしまう。

父の子ども時代、父母の関係のバランスが、こうして子の学校生活にも影響を及ぼしていく。どの家庭にも起きうる悲劇。号泣。

 

ドラマを見たゴードンスタウンのOBからは、「事実と反するところがある」という反撃のコメントも寄せられているようです。デイリーメールの記事、こちら。 このような「事実」を基にしたドラマの場合、フィクショナルなドラマ内での感情は味わい尽くすべきですが、偏った描写だけから元の事実に関する判断を下してはいけませんね。

 

 

 

 

 

 

 

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