尊敬する尾原蓉子先生の新刊『Break Down the Wall 環境、組織、年齢の壁を破る』(日本経済新聞社)。

尾原先生を一言でご紹介するには、あまりにも業績が多すぎる偉大な方です。ファッションビジネスの概念を日本にもちこみ、ハーバード・ビジネススクール・ウーマンオブザイヤーを受賞、元IFIビジネススクール学長、数々の社外取締役を務め、経産省のファッション政策懇親会の座長を務め、「一般法人ウィメンズ・エンパワメント・イン・ファッション」では代表理事・会長を務め……。これでもまだ5分の1もご紹介できていない。日本とアメリカのビジネス界において多大な業績を残し、とりわけアパレル業界のリーダーに信頼される、超一流の先生です。本書の帯は柳井正さんがお書きになっています。

そんな著者がどのように国籍の壁、ジェンダーの壁、環境の壁、組織の壁、年齢の壁を乗り越え、周囲を巻き込みながらキャリアを積んできたのか。具体的に経験が記され、経験から抽象的な法則が導き出されながら、その時々の日米のファッションビジネスの状況もうかがい知ることができます。異文化とのギャップが、具体的にどのような場面に出てくるのかということも、実体験を通して語られてなるほどと思わされます。

また、カルロス・ゴーン、ヒラリー・クリントン、ルチアーノ・ベネトンなど著名人との交流が紹介されるコラムも楽しい。

産業教育の提言もこうしてあらためて確かなビジョンとして提言されたものを読むと、その重要性が説得力をもって伝わってきます。専門学校的なノウハウで終わるのではなく、大学院レベルの教育をおこなうことで、世界で闘える人材が育てられるということ。

 

個人的にもっとも共感したことは、本書で指摘される「平等」と「フェア」は違うということ。もっと日本に浸透してほしい考え方です。経験も仕事内容もレベルも格段に違うのに「一律同じ」という「平等」な扱いにどれほど理不尽な思いをしてきたか。「規則」という一律の「平等」のもとに、どれほど不当な扱いを耐え忍んできたか。そのあたりリーダーあるいは雇用側が「フェア」な扱いができるかどうかは、全体を見渡せる教養とか人間としてのバランス感覚にもかかわってくるのですよね。日本では国のトップにすらそれを求めることがムリな時代になってしまったのでなんだか虚無感が漂うばかりですが。

失礼しました。私はそんな風に現在の日本社会の理不尽を再確認したり自分のビジョンの欠如を反省したりと、多くのことを考えるきっかけを与えていただきました。

仕事をしていくうえで、それぞれのステージにおいて壁にぶつかっている方(男女問わず)に、キャリアと照らし合わせながらさまざまなことを考えるヒントを与えてくれる、誠実な激励にあふれる本です。

 

 

 

 

The Nikkei Magazine Style × LEON 9月21日号。

「アナタにとってLEONってなんですか?」

インタビューを受けた記事が掲載されています。

大きな口をさらに大きく開けて笑っておりますが。笑

 

明大時代に公開講座講師としても来ていただいた野呂さんと同じページでしたよ。

 

さて、この撮影は、ザ・プリンス・パークタワー東京の姫スイートルームこと、ハーバーロイヤルスイートをホテルのご厚意でご提供いただいておこなわれたのです。

なのになんと、背景をすべて同じにするためにわざわざ暗幕をうしろに作ったという……涙涙。

豪華すぎるスイートルームを真っ暗にしてしまう不粋。

百戦錬磨のLEONチームも、まさかこんな姫ゴージャスな部屋が東京のホテルにあったのかと驚愕し、リベンジとして(笑)ウェブLEONに掲載していただきました。お部屋はこのような感じです。

おそらく都内でもトップレベルを誇る広さと華やかさのスイートです。

ベルサイユからパリに戻ってランチはオペラ座となりのカフェ・ド・ラ・ぺにて。

(オペラ座。ここはここで壮麗でしばらく見とれていました。今回は時間がなく中まで入れませんでしたが次回は中に入りたい)

(あのグランドホテル。1階にカフェ・ド・ラ・ぺがあります)

ド・ラ・ぺ! ド・ラ・ぺ! カフェ・ド・ラ・ぺ!

文化史系の本を読んでいたら必ず登場する、カフェ・ド・ラ・ぺ

1862年にグランドホテルの1階にオープン。エミール・ゾラやモーパッサンが足しげく通い、オスカー・ワイルドも訪れ、20世紀初頭のベル・エポックにはディアギレフや皇太子時代のエドワード7世も顧客だったという。プルーストやヘミングウェイの名前も出てくる。

シャネルの本にもしばしば名前が登場する。このカフェにラジオステーションが設置され、アメリカ向けに「This is Paris」が放映されたこともあります。

現在は国によって歴史遺産に指定されているそうです。

前菜としてこのカフェの名物というオニオングラタンスープをオーダーしました。熱々のスープと言うよりも完全にグラタン。パンもたっぷり使ってあるのでこれ一品でかなりおなかがいっぱいになります(というかボリュームがあまりにも多く食べきれませんでした……ごめんなさい)。

メインにはシンプルにビーフステーキ。

王道フレンチのサービスでした。

 

客席はほぼ満席で、富裕層と思われるおしゃれなパリジャンが相当のボリュームのお料理を平らげている光景にも圧倒されます。

階段、廊下、化粧室、インテリアはどの部分も帝政時代やベルエポックの華麗を感じさせます。どっぷりとクラシック・パリの雰囲気に浸ることができました。

 

Paris記はこれで終わりです。走り書きメモで恐縮でした。2泊4日とは信じられないくらい充実したイベント尽くしでした。今回のメインミッションであるフランソワ=アンリ・ピノー会長インタビュー記事は来月発売のForbes Japanにて。

Kering、Forbes Japan各社、パリ&ベルサイユでお世話になったみなさまにはあらためて深く感謝申し上げます。

 

 

GQ JAPAN 10月号に寄稿した記事が、ウェブにも掲載されました。

服飾史家の中野香織、ヴィヴィアン・ウエストウッドを論じる―ヤング・ハートの女王

ヴィヴィアンのドキュメンタリー映画「ヴィヴィアン・ウエストウッド 最強のエレガンス」は、12月28日(金)、角川シネマ有楽町、新宿バルト9他で全国ロードショーとなります。

今月末からはマスコミ試写も順次始まります。プレス資料には、私のエッセイが掲載されております。(GQに寄稿したものとは異なるバージョンです。) マスコミ試写にお出かけになる方は、よろしかったらチェックしてみてくださいね。

ベルサイユ宮殿の庭。ここはまた別料金をとる。いたるところで追加料金。
すっかり観光地の論理のもとに管理されている。


でもそれだけのことはあるという徹底した手入れがなされている。

ガーデンは池も含め、ちりひとつ落ちておらず、完璧に美しく整えられている。

音楽まで聞こえる。ディズニーランドか。

どこまでいっても違う景色が楽しめる、バリエーション豊かなガーデン。宮廷人はこういうところをそぞろ歩きすることで気晴らしをしていたのですね。

大理石の椅子に座ってみたら、濡れているのか?!とぎょっとしたほど冷たかった。ストーン・コールドとはよく言ったもので、これだけの陽ざしを浴びていても冷たいままなんですね。

それにしても広大だ。広すぎる。広すぎるけれど、中に住む人は限られているというとても狭い世界。

マリー・アントワネットは孤独だっただろう。隣など見えない、逃げるところなどない、広すぎる庭。牢獄のように思えたかもしれない。

18世紀フランスファッションといっても、記録に残っているのは宮廷人のファッションなのだ。ここに住んでいた、ごく限られた人たちの装い。

(民衆が「王妃の首を出せ」と押し掛けたことで有名なバルコニー)


他の大勢の人々の装いは、そもそも記録されてもいないのだ。

記録されないままに世を去った多くの人々のことに思いが及んだツアーでした。


生きた証を残すには、記録せよ。ですね。

パリ記録No.10 。パリ郊外のベルサイユ宮殿へ。

早朝集合だったのでルームサービスで朝食を頼んだら相当なボリューム。もう一日分のカロリーはこれで十分という勢い。


朝焼けの静かなパリの街。ツアーバスで小一時間のドライブで、ベルサイユ宮殿に向かいます。

朝9時のオープン前からすでに長い長い行列。

やっとの思いで入場できましたがどこもかなりの混雑。毎日これだけの観光客が来場すれば大きなビジネスになるのも当然。


資金力のある権力者が、とてつもなく贅を尽くした建造物や美術を造らせておくというのは、ノブレス・オブリージュでもありますね。後代にこれだけ世界中の人々に感動を与え、しかも無限に資金を回収できるのだから、この上なくすばらしい遺産といえます。


 

 

かの有名な太陽王ハイヒール脚線美の肖像画は、ここにあったのですね。本物にようやく出会えて、しばし感無量でした。


窓を開けるとどこどこまでも広い庭園。

一点の隙も無く埋め尽くされた壁面・天井。空間恐怖であるかのように細部にいたるまで贅を尽くした装飾が凝らされている。こんな空間に住んでいるからこそあの装い、あの言動があったのだな。住環境が人に及ぼす影響の大きさをあれこれ想像する。

 

鏡の回廊。ロココのあのパニエで広げた衣装でそぞろ歩きをするには、やはりこれくらいの「場」があることが大前提だったのですね。

もう広すぎて豪華すぎて情報量が多すぎて本欄では到底カバーしきれない。

(王妃の階段)

詳しい情報は、こちらのベルサイユ宮殿ホームページでご覧ください

“Esquire Big Black Book”  Fall 2018   本日発売です。

特集 Time Will Tellのなかで、巻頭エッセイ「時を経て、磨かれる」&「名品の条件」、2本のエッセイを寄稿しています。

 

 

お時間が許す時あれば、ご笑覧くださいませ。

(click to amazon)

機内で見た映画のなかから。”Call Me By Your Name”.

知的で繊細で官能的な、完璧なほどの「ひと夏の恋」映画でした…。

これほど瑞々しくて贅沢な感覚を映画から与えてもらったのは久しぶりという気がする。CG登場以前の80年代~90年代にはこういう感覚の映画がふんだんにあったような、懐かしい感じもした。

陽光まぶしい北イタリアの夏の風景の幸福感。アーミー・ハマーのギリシア彫刻のような美しさ。ティモシー・シャラメのギリシア神話に出てくるような繊細さと正直さ。

そして脚本がジェームズ・アイヴォリー、なるほどの美しいセリフ。

とくにパパ・プロフェッサーがときどき差しはさむ人生訓みたいなのがいいですよね。

最後のほうでパパ・プロフェッサーがエリオにかけることばもじわっとくる。

“I may have come close, but I never had what you two have. Something always held me back or stood in the way. How you live your life is your business, just remember, our hearts and our bodies are given to us only once. And before you know it, your heart is worn out, and, as for your body, there comes a point when no one looks at it, much less wants to come near it. Right now, there’s sorrow, pain. Don’t kill it and with it the joy you’ve felt.”

(心も肉体も一度だけしか与えられない。心はいつのまにか擦り切れていくし、肉体に関してはそのうちだれも見なくなるどころか、近寄られることもなくなる。今の悲しみと苦しみを押し殺そうとするな。感じた喜びとともに大切にしなさい)

知的なママも、ほどよい距離感で見守っている。

何の「説明」もしないのに、あたかもごく自然に撮った情景であるかのように、17歳のひと夏の恋に伴って起きる感情のおそらくほぼすべてを、五感を通してまるごと伝えている。本物の「映画」ですね。

パリの伝統あるカフェ、Cafe de Flore. ここで日本人初のギャルソンとして働く山下哲也さんがいらっしゃるので、ご挨拶を兼ねて訪問。

すでにミッドナイトですが、店内は満席。

 

 

(シャンパンを注いでいるのが日本人初のカフェ・ド・フロールのギャルソンとして有名な山下哲也さん。右からForbes Japan谷本さん、コーディネーターのムッシュウ・モリタ)

ほかの同行のみなさまはカフェオレ。私だけ当然のようにシャンパン(すみません)。

 

 


山下さんは特別にあつあつのアップルパイをテーブルにプレゼントしてくださいました。

華麗なギャルソンの立ち居振る舞いがカフェ・ド・フロールの雰囲気を盛り上げているということがよくわかりました! 山下さん、そしておつきあいくださいましたみなさま、ありがとうございました。

 

 

 

日経連載のための取材のあと、時間のタイミングもよかったので「オーシャンズ8」。六本木ヒルズにて。

(ヒルズ最上階もお月見仕様に)

 

豪華スター女優が結集、綿密な計画のもと華麗なダイヤモンドを盗み、期待以上の成果を上げてリベンジまで果たすという楽しい娯楽映画。

メットガラのシーンはわくわくするし、メトロポリタン美術館の中の様子が映し出されているだけでも美しすぎて泣ける。シーンごとに着替えてくる女優たちのファッションも眼福。脚本はとてもよくできていて、観客も驚かせる嬉しい裏切りも用意されている。

でもなんだか全体を通して高揚感に欠けるというか、リズム感がどよんとしているのはなぜだろう。これだけの素材が揃えばもっとスタイリッシュな印象を与えてもよさそうなのに。

編集? ちょっともったいない。

アナ・ウィンターとアン・ハサウェイがヴォーグがらみで一緒に映っているというのが12年前(プラダを着た悪魔)を思わせて感慨深いものがありました。

 

 

おつかれさまでした! オークドアの外の席は今の季節の夜、ほどよい気温でとても気持ちがよいですね。

 

大きな仕事を終えたあとの夕方は、「Heritage Days 文化遺産の日」オープニングナイトのVIPカクテルパーティー。ケリング本社にて。

美術品、文化遺産に囲まれてのカクテルパーティー。

グラスがまず配られて、そこにシャンパンのボトルをもったギャルソンがシャンパンを注いで回る。

(さりげないお洒落が板についているゲストの皆様)

日本と違って面白いなと思ったのは、中年以降の、面白系のギャルソンが多く、カナッペを受け取るまで笑わせてくれたり、いちいちなにか楽しいことを言ってくれたりすること。

日本だとパーティーの黒服は、「ルックスのいい若い男性」が招集されるようで、モデルのバイトであることも多いんですよね。ただ「イケメン」であることに安住しているのか、あるいはゲストと必要以上に話をすることが禁じられているのか、面白い人はあまりいないのですよね。

無表情なイケメンウエイターよりも、体型が多少くずれていようとも笑わせてくれるオジサンギャルソンのほうが、はるかに魅力的だと思います。

日本のパーティー関係者もぜひ、ご一考を。

それにしても、ゲストの方々の立ち居振る舞いのかっこいいこと。男性も女性もごく自然な振る舞いなのに目をひきつける方が多く、見とれておりました。

 

ちなみに、ここではヒール靴は履けません。ローヒールで来るようあらかじめ注意されておりました。玉じゃりを通って建物に入らなくてはならないので、ヒール靴ではムリなのですね。

 

パリの街のなかでもハイヒールは一人も見ませんでした。ごつごつの石畳にハイヒールは無理があります。スニーカーかローヒールの方ばかり見かけました。ハイヒールは外を歩くための靴ではない、と納得。

リムジンを降りてからレストランやホテルへ入るまでレッドカーペットが敷かれるのは、ハイヒールのためですね(^^;)

 

(なんだかんだと言いつつも、楽しかったです。)

 

 

そしていよいよ今回のメインイベント。ケリングCEOのフランソワ=アンリ・ピノー氏へのインタビュー。

実は質問事項をめぐり、事前に相当のやりとりをおこなっており、ここまでの事前準備はふつうはなかなかしないのだがと思ったのだが、結果として、そのやりとりを通してケリングに対する理解がかなり深まっていたのだった。

(ケリング本社内)

また、当日は通訳の岡本僚子さんとも綿密な打ち合わせをした。岡本さんは数々の国際会議もこなしているベテランで、準備のためのメモもぎっしりと書き込まれていた。聞きたいことは山ほどある、でも通訳込みで1時間で終わらせなければならない。無駄なことを聞く時間などない。ポイントを絞りに絞って万全以上の準備をもって臨んだのであった。

(ケリングのマークはお花のように見えるが、実は飛び立つフクロウなのです。叡智のシンボルね)

(階段の上には鳥かごをイメージしたこんなオブジェも)

(かつて病院だった建物の中庭には癒しのハーブが)

このうえなく集中した一時間だったが、通訳を通したにもかかわらず双方向のコミュニケーションがとれたすばらしいインタビューになった。期待をはるかに超えるお話を伺え、爽快なほどの達成感に満たされました。

(左から谷本さん、フランソワ=アンリ・ピノー氏)

 

そしてインタビュー終了時にはなんと、創業者のフランソワ・ピノー氏(パパ・ピノーの方ですね)も登場し、握手してくれたのでありました! ご一緒に写真が撮れなかったのは残念でしたが。

 

 

(フランソワ=アンリ・ピノー氏、中野)

オフィスを出て、思わず通訳の岡本さんに感謝のハグしてしまったくらい、彼女の通訳は神業ものでした。広くビジネスパーソンを意識した質問の方向を考えてくれた谷本さんにも深く感謝したいし、綿密に質問事項をリファインする過程でさりげなく最高の聞き方に持っていけるよう示唆してくださったケリングの産形さんにも感謝したい。こうしたプロフェッショナルな方々との本気のチームワークを通して、自分の実力以上が発揮できたように思う。

(左から谷本さん、岡本さん、中野)

なによりも、ピノー会長のあたたかい人柄、明晰な言葉、一貫した知性と責任感、そして社会に影響力をもつ企業としての説得力あるビジョンに心打たれました。リーダーはこういう力強い言葉で、しかも自分自身の言葉で、語ることができなくてはならない。

自身の仕事に誇りをもつプロフェッショナルな方々との仕事を通して成長を実感できるほど幸福なことはない。最高に幸せな時間でした。関わってくださったすべての方、ありがとうございました。

来月発売のForbes Japanをお楽しみに!

 

 

ケリング本社とルテシアは徒歩数分の距離にあり、ランチはいったんホテルに帰り、ホテル内の「ル・サンジェルマン」で。

リンクをはったホテルのHPからご覧いただくとその雰囲気の一端を感じていただけるかと思いますが、ステンドグラスの天井からは陽光が降り注いで、豊かで贅沢な空気が広がっています。なんといってもいちばん素敵なのは、地元のお客さま方。おそらくパリの富裕層の方々と思われるのですが、老若男女問わず堂々とした立ち居振る舞いで、魅了されます。

そんななかで、フォーブズの谷本さん、ケリングの鈴木さんと3人でランチをいただきました。料理は当然のように洗練されており(HPの写真参照)、ギャルソンのもてなしぶりも粋で、ザッツ・パリという楽しい時間でした。

(ホテルのHPより。)

 

 

 

 

今回はパリ観光の時間もないので、移動中の車のなかから撮ったパリ名所。上はオルセー美術館。

 

説明不要のエッフェル塔。

凱旋門。今度来たときにはくぐりぬけてみたい。

そして忘れてはいけないことがあって、それは、パリ市内至る所に場所を占めているホームレスの方々の問題です。今回の取材対象がラグジュアリーコングロマリットのケリングなので富裕層とばかり接することになるのですが、テレビのニュースをつけると、パリの貧富の格差の問題が報じられていました。ホームレスの方々を見捨てないこと。これを解決しないとまたフランス革命の二の舞、とまではいかなくても社会の均衡は保たれなくなっていく。

もう一つ。町のなかにはところどころ、銃をもった迷彩服の兵士がいる。すれちがうとどきっとする。一見、おだやかに見えても、実はいつテロが起きてもおかしくない状況なのだ。

他国の問題は自国の問題にもつながっている。視野を広く保って、自分ごととして考えることも忘れずにいたい。

ケリング本社の新社屋訪問。

アドレスは40 rue de Sevres. ここは1634年から2000年までラエネック病院として使われてきた歴史的建造物です。

フランス歴史文化財のチーフ・アーキテクトであるベンジャミン・モートンが修復プロジェクトを率いて、ルイ13世時代に建てられたチャペルなどはそのままに残しながら、現代の基準に適合したハイテクオフィスが入居できる状態に生まれ変わらせました。

病院だっただけあって、多くの種類のハーブが植えられているのですが、ミックスハーブの香りが建物内部まで漂っているのです。

(屋根の上にいるのは、「風見鶏」!)

コミュニケーションもインスピレーションもごく自然に活性化する豊かな環境。ケリングで働く人すべての名刺にはEmpowering Imaginationと書かれているのですが、それは「イマジネーションのその先へ」という意味。こんな環境であれば過去の遺産や伝統、そして自然から受けるイマジネーションも豊かになろうと思われます。

この日、今年で33回目を迎える「ヨーロッパ文化遺産の日」に合わせて、特別展示会が開催されました。ケリングのピノー会長はアートに対する関心が高く、世界中のアート作品を集めています。


上は、ダミアン・ハーストのJacob’s Ladder (2008)。3000以上の昆虫が標本にされています。同じタイプの昆虫が縦列に並んでいます。左の方へいくほど昆虫は小さくなり、まるで地から天へ続くヤコブの階段のように見える。

上はジェームズ・リー・バイヤーズによる”Byars is elephant” (1997)。

上もダミアン・ハースト。”Infinity” (2001)。 並べられる色とりどりの小さなものは、薬です。現代人の医薬への過度な信仰とは何なのか、たぶん後世の人から見るととんでもなく愚かに見えるんでしょうね。

バレンシアガの過去のコレクション映像がずらりと。

アベラールとエロイーズが実在したことを示す、聖遺物。それぞれの小指の骨と首のどこかの部分の骨。丸い白いケースに入った小さなものが骨なんです。フランスの国宝。

ほかにも多くの美術品や聖遺物などがケリングによって守られ、こうして現代の観客にも公開されているのです。


こうして日常的に新旧のアートにふれることで、インスピレーションは生まれやすくなるし、コミュニケーションも生まれやすくなります。(思わず隣にいる人と目の前の作品について語りたくなってくる)

パリの最新情報に通じるコーディネーター、Morita Hiroyukiさんに連れて行っていただいたレストランが、「クローバー」。サンジェルマン・デ・プレの裏通りにあるこじんまりしたカジュアルなレストランです。

お店は20席ほどで、オープンキッチン、テーブルクロスなし。スタッフも若くて、服装はTシャツとレギンスみたいなカジュアルスタイル。

あまりにもカジュアルな雰囲気なので、最初、ほとんど期待はしませんでした。

ところが出てきた料理を食べてみてびっくり!!なんですかこの美味しさは。

経営シェフはジャン=フランソワ・ピエージュ。アラン・デュカスの店でシェフを務め、オテル・ド・クリヨンの二つ星レストランのシェフを務めていたという経歴の持ち主です。


出てくるお料理、すべてが驚きに満ちた新鮮な味わい。ワインもオーガニックでとてもおいしいのです。

聞けばこれが噂のビストロノミ―。気がつけばおしゃれに装ったパリ地元の人たち(とお店の人が言ってました)で満席です。

ビストロノミ―とは。

これが登場する以前、従来の飲食店の形態は次のように分類されていました。シックな内装で高級料理を出すガストロノミー。伝統料理や家庭料理をカジュアルな食堂感覚で出すビストロ。ビアホール的なブラッスリー。そして簡単な料理も出すカフェ。

ビストロノミ―とは、ビストロで出すガストロノミーということを意味するようです。1992年にパリに開店した「ラ・レガラード」が先駆け。パリを代表するラグジュアリーホテルで修業を積んだ、イヴ・カンドボルド氏が「高級店なみの上質な食材を使った本格料理を、カジュアルな雰囲気で多くの人に食べてもらいたい」という趣旨で始めたとのこと。

この形態のレストランが大ヒットし、今では有名シェフがカジュアルな形態で料理を提供するビストロノミ―は、フランスの飲食産業の重要な一角を占めるようになったそうです。

 

 

最先端のフレンチスタイルを堪能しました。コーディネーターのムッシュウ・モリタ、ケリングジャパンの産形さん、鈴木さん、フォーブズジャパンの谷本さん、楽しいディナーをありがとうございました!

 

先日の「モードは語る」の記事が好評につき、Nikkei Styleのオリンピック特集に転載されました。こちらです

 

決勝での振る舞いで賛否両論を巻き起こしたセリーナですが、限界越え、予測越えで闘い続ける姿を見せてくれる勇気には泣かされます。

 

 

とはいえあの決勝戦から学んだことは。

Keep Calm and Carry On.

これが常に勝利の秘訣というか「負けないこと」の秘訣であること。

逆風が吹くときにも落ち込まず人を恨まず、粛々と書き続けて、力を蓄え備えておくこと。今はただこの状態を意識的に保っていますが、このマインドセットはジェンダーには関係ないのですよね。

 

フランスのラグジュアリーが結集する聖地といえば、ヴァンドーム広場。1805年の戦勝を記念して建てられたコラム(円柱)が建っており、帝政の象徴として賛否両論があるそうなのですが。

(左はForbes Japanの谷本さん)

この広場周辺にはフランスを代表するジュエラーすべてがあり、ラグジュアリーブランドもほぼこのあたりにそろっています。


ココ・シャネルが住んだホテル・リッツもあり、シャネルはこの広場の形状からインスパイアされてNo. 5 のボトルのデザインをディレクションしたともいわれています。

この周辺の道路沿いに、ケリングが傘下にもつラグジュリーブランドも結集しています。

グッチ。このタッキーな色柄あわせがかくも成功するとはだれが予想したでしょうか。グッチ製だといわれなければジャ〇コで売っている服に見えてもおかしくない。アレッサンドロ・ミケーレのきわどい美学。

ボッテガ・ヴェネタ。次のシーズンからデザイナーも交替し、がらりと変わる予定。

アレクサンダー・マックイーンは開店時間過ぎても開いてませんでした。ステラ・マッカートニーも同じ状況。イギリス系はあまり時間を厳守する必要はないと思っているようです。

バレンシアガ。靴とレギンスをくっつけるとか、巨大なブランドロゴを装飾にしてしまうとか、奇想天外なやり方を成功させてしまいました。店構えもほかのクラシックなブランドの店舗のなかにあって、一風変わってます。

ちなみにゴヤールは重厚なクラシック感で存在感を発揮してます。(ゴヤールはケリング傘下にはありません)

最新のコレクションを展示するブランドの店舗のあいまに、こんな歴史的な建物が出現したりして、なんとも魅力的な界隈です。

ご参考までに、ケリング傘下にあるブランドを以下に列挙します。

グッチ、ボッテガ・ベネタ、サンローラン、バレンシアガ、アレキサンダー・マックイーン、ステラ・マッカートニー、クリストファー・ケイン、ブリオーニ、ブシュロン、ポメラート、ドド、キーリン、ジラール・ペルゴ、ユリス・ナルダン、プーマ、ヴォルコム。

滞在したホテルは、LVTETIA (ルテシア)。


左岸唯一のグランドホテルだそうです。1910年代の建築の外観は壮麗そのもの。

 

(ホテルの中庭。ランチタイムにはパリのおしゃれな人たちで満席になっていました。)

サンジェルマン地区の社交に欠かせないホテルとして愛されてきた歴史をもつそうです。

内部は大々的な改装が終わったばかりで、ハイテクノロジーが駆使された今どきラグジュアリーの極みのような快適空間でした。

室内のカーテン、調光、温度などはすべてワンタッチパネルで操作できるようになっています。


大理石で作られたバスルームも広々と美しい。バスルームには外に出られる広いドアのような窓もあります。(さすがに出ませんでしたが、お風呂から外が見えるというのはいいものですよね)

シャワールームも独立しています。大理石とやわらかな調光のおかげで癒される空間。

このテクノロジーは初めて見た。鏡のなかにタッチパネルがあって、そこに触れるとテレビ画面が浮かんでくるという。鏡とテレビが一体になってとけこんでいるというか、鏡がそのままテレビ画面になるというか。チャンネルも音量もすべて触れるだけで簡単に操作できます。

アメニティはエルメス。


ルームフレグランスは部屋の中にも、ホテルのあちこちにもあって、ホテルの香りとして統一された印象を与えています。


シューシャイン(靴磨き)サービスをお願いしたところ、ベルルッティに委託したサービスということで、革製のベルルッティの靴箱に入ってピカピカになったフェラガモが帰ってきました。笑

廊下には丸い窓もあり、聞いてみたところ、ホテル全体がボート(客船)をコンセプトとして作られているとのことでした。

ライブラリー・ラウンジには厳選された本が置いてあります。ファッションの本が、哲学の本と同格とされて並んでいるんですよね。日本だとサブカル以下の扱いだったり「家庭の実用」扱いだったりするんですが。笑

スパも神秘的で別世界。サウナまで大理石でできてました。アメニティとしてエルメスがあちこちに配され、もう圧倒的な贅沢感にやられます。

ただこれほどのホテルでも「歯ブラシ」は置いてないんですよね。ヨーロッパのホテルでは5スターであろうとどこも歯ブラシはおかない。逆に日本だと星の数がどんなに少ない宿であろうと歯ブラシだけは置いてある。この違い、なぜなの。


 

部屋からの眺め。サンジェルマン地区のどまんなかにあるため、ビジネスや観光利用にはとても便利ですが、夜間の騒音はやや免れないところがありました。それを差し引いてもすばらしいホテル。

 

 

 

パリ弾丸取材に行ってまいりました。

Kering × Forbes Japanのお仕事です。2泊4日のなかでハイライトスケジュールがぎっしりの濃密な時間でした。別格のスケール、別枠のマインドセット、最先端のビジネス環境、最高級のサービスなどに触れて、脳内リノベーションを迫られたような体験でした。ケリングジャパン、フォーブズジャパン、そしてパリ、ヴェルサイユでお世話になった多くの方々に心より感謝します。

読者のみなさまはご存じだとは思いますが念のためKering について簡単に。ケリングは、グッチ、サンローラン、バレンシアガ、アレキサンダー・マックイーン、ステラ・マッカートニー、ボッテガ・ベネタなどのラグジュアリーブランドを傘下にもつ、フランスのラグジュアリーコングロマリットです。創始者はフランソワ・ピノー、現在の会長はその息子であるフランソワ=アンリ・ピノー。アンリ=ピノーの奥様は女優のサルマ・ハエックです。2017年12月期の売上は約2兆120億円。

今回の主たるミッションはケリングの現CEOのフランソワ=アンリ・ピノー氏にケリング本社でインタビューをおこなうこと。ケリングがおこなっている文化遺産およびアートの保護について取材をすること。そうしたすべての取材をもとに後日Forbes Japanにビジネスパーソン向けの原稿を寄稿すること、でした。

19歳の頃からやってきた旅行レポーターとしての経験、専門家として積み重ねてきたファッション史やファッションビジネスの研究、そしてファッションマインドのない人向けにファッションの話を書くというエッセイストとしての力量、さらには企業の顧問として企業を俯瞰的に見る視点など、これまでおこなってきた仕事の経験を全部ここで活かせというような天啓ミッションです。

往復はJALのビジネスで、完全にほぼ個室・フルフラットになるスカイスイートです。これがおそろしく快適で、まったく何のストレスもなく12時間超を過ごすことができました。もっと乗っていたかったくらい。機内のすばらしさもさることながら、出入国もなめらかで迅速でした。無駄や苦痛を極力なくし、時間を最大限に有効利用できるという印象。

機内では見逃していた映画や、日本未公開映画をチェック。計5本見ることができました。映画についてはまたあらためて。


パリの街は同じ色彩、同じ高さの建物で統一感を失わないよう造られていますね。工事中の場所も、青いビニールシートで覆うというような不粋なことはせず、シートじたいが見て美しいアートになっていたりして、美しい景観が保たれる努力がなされています。

何よりも人が、とりわけある程度年を重ねた男性がかっこよくて眼福です。姿勢がよく、個性的な装いをさりげなく楽しんでいる人々の姿が、町全体を美しくしています。

 

一方、たばこの吸い殻や犬の落とし物などがあちこちにあるというマナーの悪さも目立ちました。これに関してはおそらく、日本がとびきりマナーの善い国ということを考慮しなくてはならないのかもしれませんが。

渋滞する車の間を縫うように、キックボードで移動している人が多いことにも驚き。

読売新聞夕刊連載「スタイルアイコン」。

本日は、アメリカの国宝級の歌手として愛された、アレサ・フランクリンについて書いております。お近くに読売夕刊があったら読んでみてくださいね。

When God loves you, what can be better than that? (by Aretha Franklin)

 

 

Diva Forever.

北日本新聞別冊「まんまる」発行です。

連載「ファッション歳時記」第84回「世界で最も高齢なティーンエイジャー」。グレイネッサンスについてです。Greynnaissance=Grey+Renaissance ですね。

 

なんだかんだと84回、一回も休まず続いています。読者のみなさまと北日本新聞社のおかげです。ありがとうございます。

 

大坂なおみさん 優勝おめでとうございます✨

やはりトロフィーを授与されるときのスピーチがよかったですね(プレーももちろんのこと)。心からの本音を、その時の正直な気持ちを、形式にとらわれずに語るのですね、彼女はいつも。会場の険悪な雰囲気が、彼女のスピーチで一変した感じがしました。

 

☆☆☆☆☆

 

昨日はMen’s EXのお仕事で綿谷画伯とコートについての対談でした。編集部のご要望により、私はコートの歴史を解説、ということでコートの歴史をおさらいして資料をがっちり作っていきましたが、以前は気づかなかったのにあらためて発見することも多く、やはり「知っている」つもりにならず、時々学び直しは必要だなと実感。知識をアップデートするよい機会になりました。

画伯のマジタッチイラストとマンガタッチイラスト、両方掲載されるということなので、いったいどんなページになるのか、今から楽しみですね。

(左からライターの吉田さん、中野、綿谷画伯、編集部の橋本さん。撮影はカメラマン椙本裕子さんです。みなさん、ありがとうございました。)

詳しくは10月初旬発売のMen’s EXにて。

 

 

ザ・プリンスパークタワー東京に撮影のご協力を賜りました。東京タワーが間近に見える、クラブラウンジの「会議室」を使わせていただきました。カメラマン椙本さんが絵本かというほどきれいに夜景を撮影してくださったので、本誌をどうぞお楽しみに(といってもそれほど大きな写真にはならないとのことですが)。

パークタワー東京のスタッフのみなさま、あたたかなおもてなしをありがとうございました。

ガーディアンの記事。フランスのファッション業界の内情を告発した本が話題になっていると。こちらです。

ファッションの主要なブランドはフランスにあり、ファッション産業はフランスにおいて、車に次いで高い利益を上げている(€15bn)。にもかかわらず、実は、その内部で働く人にはまともに賃金は支払われておらず、ブランドのお買物券で支払われる(ことが多い)。

1週間の労働の「賃金」が€5000のブランドのお買物券。しかし、ファッション業界で働いているということはつねに最新のファッションを身に着けて美しくしているのを見られるということでもあるので、当人は喜んでお買物券を受け取る。

シャネルの靴を履き、プラダのバッグをもっている業界内部の人も、実は現金で賃金を支払ってもらってないために家賃も電話代も払えない状態であるという衝撃の告発。

それでも「ファッション業界で働いている」ということがフランスでは特別に重要な意味をもつので、多くの内部の人は明日に希望をつないで喜々として働いている。

バングラディッシュや中国の工場でのエシカルな働かせ方や製造のやり方が問われているファッション産業なのだが、実はもっともブラックな搾取が行われているのが、足元のパリだったという。

本の著者はGiulia Mensitieri. フランス語で書かれたph.D論文がもとになった本のようです。”Le plus beau métier du monde. Dans les coulisses de l’industrie de la mode”. 世界でもっとも美しい仕事の内幕。読んでみたいな。翻訳出版希望。