マリア・カラスのドキュメンタリー。過去の映像や手紙などを編集して、カラス自身がカラスの人生を語っていくという秀逸な構成。手紙を読んでいるのは、ファニー・アルダン。

舞台でのパフォーマンスはまさしく天上に届かんというレベルで、聞いているだけで涙が流れてくるんですよね。20世紀最高のディーヴァと呼ばれるのも、納得。

当時のスキャンダルで沈黙を貫き通したときの心情や、どん底に突き落とされた時の心のうちなども、明かされる。カラスほどの才能の持ち主にしても世界中から誹謗中傷されていた時期があったのだ。体調を崩してキャンセルすると、非難される。期待が大きいからこそ、誰よりも人目を引くからこそ、期待に沿わないようなことを少しでもすると世間が許さない。新聞の一面に自分の悪口が書かれるなんてどんな思いで耐えてきたのか。

そしてなによりもオナシスの裏切り。9年間、愛情を注ぎ、永遠に一緒だと信頼していた男が、いきなりジャッキー・ケネディと結婚する。しかもそれを新聞で知る。この時の傷はいかばかりだっただろう。想像しただけで内蔵がよじれそう。そんなこんなのどん底に、カラスは何度も打ち勝ってきているのだ。

overcomeという言葉を使っていた。つらい試練に直面したら、人を恨まず、乗り越える(overcome)力を神に祈るのだ。そして忍耐と自制。つらいことは時間が解決すると考える自制、自分の真価は時間が証明してくれるという自信。強いな。率直で、情熱的で、潔く、愛情にあふれたカラスの生き方と歌声に、背筋が伸びるようだった。

カラスが着こなす50年代、60年代のファッションも眼福。とりわけ50年代のディオール! 舞台衣裳も女神級の美しさを引き立てていてすばらしいが、飛行機のタラップを降りてくるとき、街中を散歩するとき、車から降りて劇場にむかうとき、そんな瞬間瞬間のファッションがなんともエレガントなのです。ヘッドドレスにも注目。観客の目も耳も心も喜ばせるカラスの磁力ときたら。

当時のジェットセッター、セレブリティもちらちらと登場して、社交界の雰囲気を想像する楽しさもある。ウィンザー公夫妻とか、若いころのエリザベス女王ご一行さまとか。

まったく本題には関係ない話。えー?!(笑)って言われそうですが、私は時々、この方に似ていると言われます。おそらく、顔の各パーツが大きいという印象を与えるかもしれないところだけが共通点ですけどね。

日比谷ミッドタウンの夜。


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