半歩先の未来を創る / Tae Ashida 2019-2020 AW Collection

2019年3月23日


Tae Ashida 2019-2020 AW Collection. 20日、六本木グランドハイアットにて。

常に新しい感動を与えてくれるTae Ashidaのショーなのですが、今回はひときわ期待大きく臨んでいました。というのも、ショーの直前に多恵さんがこのように語っていたからです。

「創業55年のメゾンに誇りを持ちながらも、あぐらをかかないように、私のみならず会社のスタッフ全員を強制的に新たなる世界に引きずり込む気持ちです。常に真摯に学びの姿勢を忘れないように。そして、どんどん多様性が重んじられる世の中に柔軟に対応する力を持ちたいと思っています」

いったいどんな世界だろう?

ファーストルックでそれは明らかになりました。メンズルックの登場!

その後、レディスと調和するようなメンズルックが、ごく自然にショーの中に溶けこむ形で続々登場しました。モデルの人種もヘアメイクも多様でそれぞれの個性が生きており、前シーズンの多様性の表現がさらに進化したという印象です。

今回のメンズは老舗メゾンはじめての挑戦ということで画期的でしたが、意外にすんなりと多様性のなかに一体感を保っているコレクションを見ていると、女性が着てもかわいいメンズ服、男性が着ても違和感ないレディスウエアということなのだろう、と解釈しました。

レディスとメンズも、もはや明確に区別する時代ではなくなっているということは、次男を見ていてもわかる。彼が買った今年のハーフトレンチは、ZARAのレディス、XLサイズ。「ウエストの絞り感がちょうどいい」と語っている。笑

ラストのドレスもスカートの下はパンツ。ステレオタイプなジェンダー分けが古くさくなる時代はすぐそこまで来ている。老舗だからこそ、半歩先を見据えた未来を創造する挑戦に、私もぼんやりしてはいられない、と刺激を受けました。

上の写真はすべて客席から撮ったもので、不鮮明で申し訳ありません。Vogue やFashion Snap さんはじめファッションサイトに全ルックが掲載されているので、そちらをご参照ください。

多恵さんらしい美意識はそのままに、時代の先を見て挑戦しつづける姿勢には励まされます。記念写真は、ファッションドリーマーDくんと。「長男と次男のちょうど半分くらいの年齢」の彼からも、今どきミレニアルズの感覚を教えてもらえる。

そして今回もうひとつ、感謝しなくてはならないことがありました。一昨年、明治大学で「ファッション文化史」を受講していた学生から、ファッション業界への進路も視野に入れているのでぜひともファッションショーを体験してみたい、と連絡をもらいました。こういうときにほっとけずつい面倒をみてしまう自分の性格もほとほといやになりますが、無理を承知でジュンアシダさんに学生をひとりお招きいただけないかとお願いしたところ、寛大にも、快く受け入れてくださいました。

慣れないスーツを着て臨んだ彼、福盛くんは、やや、緊張していたようですが、ショーのあとは特別にバックステージまで見せていただき、とても感激し、忘れられない体験になったようです。

その見方に関しては、ショーをある程度見慣れて、貴重な光景も「あたりまえ」と見えてマヒしているかもしれない私の目にも、なるほどそう見えるのかと感心させられたところもあります。

以下、福盛くんのインスタグラム@tatsuro_bananaより一部、引用させていただきます。

「明治大学国際日本学部、大学1年次の頃、私は中野先生の担当していた『ファッション文化史』を履修し、ファッションのことのみならず、社会、世界に出て活躍するための知識や作法を教えて頂いた。

(中略)

会場に入ろうと招待状を手に持ち、列に並んでいると
英語が聞こえた。Tae Ashidaさんのショーのお客さんは日本人だけではない、各国の大使の方々も参加する。Tae Ashidaさんの国際的なつながりを目の当たりにした。

会場の入り口では、デザイナーである芦田多恵さんがお客さん一人一人に挨拶をされ、会話をされていた。そこには、ブランドとそのファンの間のコミュニケーションが存在した。服を作るだけではない。各国の方々も参加するように、人との繋がり、コミュニケーションを大切にする姿勢を感じた。

スタッフの方に席に案内してもらい、緊張と興奮の入り混じった感情でショーの始まりを待っていた。
暗転し、各国の大使の紹介があり、ショーが始まった。

ランウェイだけに光が当たり、ビートが会場に響く、ロックテイストのギターが鳴り、最初のモデルが登場した。そのモデルは男性である。これが今までウィメンズだけであったTae Ashidaの新しい点であった。
芦田多恵さん @taeashida は、自身のインスタグラムで 今回は新しいことがおきる!?と投稿していらしたが、それがショー1人目のモデルで分かった。

(中略)

ショーは、本当に刺激的で、服、人間の持つ美しさ、そしてそこから生まれるエネルギーを感じさせるものだった。私は先日、イギリスから帰国したが、イギリスで多様な人間たちと出会い、話し、友達になった。その中で私が見つけた、多様な美。それぞれ異なっているが、それぞれが独自の美しさを持つ。それは人種や文化などの大きなカテゴリーでもそうだが、人間一人ひとりにも言える。電車で隣に座る人間と私はそれぞれ違う美しさを持っている。

それを改めてこのショーで実感し、その”多様な美”の持つエネルギー、そしてそれが作り出す明るい未来像を感じた。数千種類から生地を選び、デザインをし、日本の自社のアトリエで職人達が作る、長い時間と多くの労力をかけて作られた服達は一つ一つ、声を持っており、ランウェイで歌うように流れていった。服は生きている。Tae Ashidaさんの服達からは、デザイナーや職人、会社な方々の沢山の愛が溢れ出ていた。

特別に舞台裏も見せて頂き、モデルの方達の出るタイミングの表や、実際に着用されていた服に触れた。
近くで、この目で、この手で感じ、更に分かる服の神秘性や佇まい。日本最高レベルのファッションクリエイションを目の当たりにした。

ショー後、お客さんは会場前にて、桜の木を囲み、
シャンパンなどのアルコールと軽食を味わいながら、会話を楽しむ。ブランドの”おもてなし”である。
デザイナーの芦田多恵さんの周りには多くのショー参加者が集まり、写真撮ったり、会話をしたりしていた。そんな風景を見て、このブランドは多くの人に「愛されている」のだなと感じた。それは、ただブランドが服を作っているからではない。服作りへのこだわりと情熱、芦田多恵さんやブランドのファンへのコミュニケーション、そして誠意のあるおもてなしがあるからだろう。
お客さんはTae Ashidaさんを確かに愛し、服からは愛が溢れていた。沢山の愛のある時間、空間であった。

学生であるのにも関わらず
本当に素晴らしい経験させて頂いた。
中野先生、芦田多恵さん、ブランドの方々への
感謝を忘れず、邁進していきたい。」

写真右が、福盛くんです。左は、やはり明治国日OBで、私の授業をすべて受講してくれていた中村くん。現在は株式会社ジュンアシダの社員です。

一学生にこのようなチャンスを与えてくださったジュンアシダさまには、あらためて深く感謝します。

ファッションとはたんに表層の服のみの問題ではないこと。背景にあるソサエティ、そこでのコミュニケーション、社交も含めてブランドが成り立っていること。ゆえにファッションは「ちゃらい」ものどころか、世界平和に貢献していること(実際、今回の44か国の大使および大使夫人が参加している。この外交効果は過小評価されてはならない)。ひとつのショウを生み出すために幅広いジャンルから、大勢のプロフェッショナルのスタッフが尽力しているので、経済効果も多岐におよぶこと。こうしたことを10年間携わった大学では教え続け、国際舞台での社交に耐えうる人間の教育をしてきたつもりでしたが、ごく少数とはいえ何人かに伝わっていたことを誇らしくとてもうれしく思います。

多くのことを体感した若者が、美意識と愛のある社会を築くために活躍してくれることを心から願っています。

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