USJ を回復させた森岡毅さんの新刊。就活が始まった娘さんのために書き溜めたものをまとめた本とのこと。前半のマーケティングの基本の話もためになるが、後半の「黒歴史」が生々しく、引き込まれた。本社アメリカ人たちの強烈な意地悪ぶり、それに立ち向かう森岡さんのガッツが読んで面白く(当人はほんとうに地獄の最中であったと思うが)、よくぞこういう実話をシェアしてくださったという思い。かような試練に立ち向かって、乗り越えて、本物として鍛えられていくんですね。追い詰められたら、退路を断たれたら、いやでも覚醒する。(逃げればそれまでの人間だということ)

資本家の世界を射程圏に見据えるパースペクティブがとにかく必要。世界の、商品の、人の見え方が変わる。

Everything has cost. 何を実現するにせよ、犠牲を払わなくてはならない。自分に合った苦労を選びやすくするために、パースペクティブを広く持つということ。


アガサ・クリスティの小説『春にして君を離れ』。事件も殺人も起きないけど、ぞっとする恐怖でしばらく人と話す気力を奪われた。ここまで人間をえぐりだすとは、クリスティおそるべし。

現代とはスピード感もリズムも違うので、お話の進行も会話のテンポも冗長に感じられるのですが、最後の最後にえぐられる真実は深い。ここまで事実を理解していながら主人公の女性が選択する行動はといえば……。ある種の「心理ミステリー」。肉体的な殺人事件は起きないけど、心の殺人事件の一種と呼べるのかもしれない。

表層的な価値観で人を見て扱ってしまうことのおそろしさ。人間の心のリアリティはそんなものではない。周囲を不幸にし、結果として本人に底なしの孤独がもたらされる。それでも「幸せそうに生きていける」ことに背筋が凍る。画一的な基準に基づいた「幸せそうな」光景を承認されたい人たちはこういう真実にもおそらく気づいていないのかもしれない。また、「いいことをしている」と信じ込んで「善意」を押しつけてしまうことの無神経も描かれる。押しつけられる方はどうにもつらくなっていく。押しつけるほうは「なんで? あなたにとっていいことをしてあげているのに」と永遠に気づかない。気づかなくても自己肯定しながら「幸せに生きていける」ことがなんとも残酷というか。

日経連載の次の記事にも書くけど、「善意」ほど取扱い注意なものはないのだ。無邪気に善意を押しつけられるくらいなら、「悪人」のほうがよほどさっぱりしていてつき合いやすい。

 

 

島田紳助が若手芸人のために話した講演を収録。短いとはいえ、目からうろこの秘訣やエピソードが満載で思わず二度読みした。この人が売れたのは必然だった。ちゃんと理論にもとづいた行動を果敢にとっていた。だからこそ、飲食店をやっても成功する。飲食店の成功は、才能の証明でもある。こういう考えで行動すれば、何をやっても成功するのだろう。

知識はドーナツ的に(中央を語るな)。一分野、一テーマをマニアックに深掘りすることの効果など、ビジネスパーソンにも納得の教え。

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