サンモトヤマの創業者、茂登山長市郎さんが輸入ビジネスに賭けた一生のエッセンスを語りかけるように教えてくれる。戦後の闇市から現代までの日本におけるブランドビジネスの流れも学べる。

ファッションビジネスに携わる人だけでなく、多くの人に読む喜びを与えてくれる本だと思う。情熱、勇気、情、不屈の忍耐、人との交流の妙、損してトクする商売のコツなどなど、ひとつひとつのエピソードを通して学べることが多く、長い間積読していたことを後悔した。以下は備忘録を兼ねた茂登山さん「名言」メモです。

・心に軍旗を掲げ、その旗に忠誠を誓う。

・自分に会いに来る、自分を頼りに来てくれる、そんなお客さんを何人持っているか。「お得意さん」というのは、お客さんが得意になる、お客さんを得意にさせること。

・運、鈍、根、運、鈍、根……の循環を知る。

・運がめぐってくる可能性が高いのは、夢を売る商売。実際に売り買いするのは商品だけど、その中に夢やロマンが感じられるようなものを含ませて売りなさい。

・八方ふさがりでどうにもならない時は、大事なものだけ残してすべて捨てると、運が開ける。

・売る人と買う人と商品は三位一体。美しいものを売っていると、美しいものが集まってくる。それなりの物を売っていれば、それなりの人が集まってくる。儲かったら、商品の質もお客様も、そして自分も一段高く積み上げろ。(これはホテルビジネスを見ているとよくわかる。価格を下げると客層が下がり、意味不明なクレーマーが増えてホテルのスタッフが疲弊してやめていく。逆のパターンだとホテルスタッフも客によってどんどん磨かれていくのです。)

・自分で一流と言ったらおしまい。一流になりたかったら、一流の商品を売ること、一流のお客様とお付き合いをすること。(ラグジュアリーとは他称である、という考え方とも通じますね。やたら「一流のなんたら」というタイトルがついた本は、一流とはまったく無関係です。)

・商売も「やり過ぎ」「のり過ぎ」「マンネリ」は失敗する。

・セールスとは自分のすべてを売ることであって、物を売ることではない。「お客様に信用される自分」を売ることがセールス上達の近道。

・常にクオリティを追求しろ。クオリティを高めれば新しいお客様はつくが、落としたら誰も見向きもしない。

 

サンモトヤマは結局、長市郎さん一代限りで衰退に向かってしまいました。時代の流れもありました。茂登山長市郎さんは人間力が桁外れに高く、夢をもって商いを通して時代を作り続けた人でした。

 

“People will buy anything that is ‘one to a customer.’ “ (By Sinclair Lewis)

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