懐かしい英文学の授業を受けているような感覚を与えてくれる、ロマン主義時代あたりのイギリス文化史。当時の文化人などの固有名詞についていけないと厳しいところもあり、専門性も求められる印象もあるが、新しい発見、忘れていたことの再発見などがあって、勉強になった。以下は、なるほど、と感心した表現の引用です(途中省略しているところもあるので、みなさんは本書を読んでくださいね)。

・ウィリアム・ギルビンが唱えた崇高美とは。「最初に押し止められたような、また押しもどされたような何か受け容れがたい、しかし抵抗しがたい力がまず働きかけてくる。人間を卑小に弱小に思わせるような力がはたらく。『綺麗』『優美』という日にはこうした衝動力は皆無」。

・「抑圧された意識から崇高美は生じてくる。抑圧から解放される衝動がともなうからである。急な拡張、自己を運び出されるような感じ、反動、制止、制限から一気に解放される衝撃が訪れる。これが崇高な美しさであり、しばしば歓喜をともなう」。

・1780年代は歩いて移動することは身分を表していた(貧しくて階層も下)。わずか10年ほどの間に、歩くことに対して態度が180度転換した。ペデストリアン・ツアーが生まれる。「古典美をベースにした、どこかにあるはずの理想的風景、アルカディアを求めていたイギリス人に、『自然の風景が美しい』という感性の変革が起こり、古典的修養という呪縛から解き放たれて、イギリス独自のアルカディアを求める契機となった」。

・「理性を重視する古典主義から、情熱、心情を重んじ、写実よりも想像を強調するのがロマン主義。主知的で形式、均整などを遵守する古典主義に対して対極的な人間観を懐胎しているのがロマン主義。ひとことで言えばそれは人間肯定の思想であり、人間を善なる存在と見て、その人間のなかに、無限の可能性が内在しているとみる態度」。

 

“There is only one step from the sublime to the ridiculous.” (By Napoleon Bonaparte)

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