三菱一号館でおこなわれているシャネル展のレビュー、JBpress autographのウェブサイトにて書きました。

タイトルにしたことば、Guilt is perhaps the most painful companion of death. これもシャネルのことばです。あまり引用されていませんが。

罪悪感をひきずるような生き方はしたくないですが、果たせていない約束とか、「つもり」はなくても人の心を傷つけてしまったことばとか、資金不足のためにかなえてあげられなかった夢とか、心残りなことは山ほどある。

楽しかったことは忘れても、こういうことは、意外と忘れず、ふとした拍子に浮上してくるものです。展覧会のレビューとしては書けなかったのですが、展覧会ではほぼシャネルの生きた時代に沿って作品が展示されており、いきおい、「これを作ったときには〇歳だった」「このときの愛人はルヴェルディだった」みたいなことを結び付けながら見ていました。

シャネルの自由奔放な栄光の壮年期を思えば思うほど、晩年の孤独と哀しみの深さも胸にせまるように感じていました。それに反比例して作品が円熟していく凄み。

シャネルの人生からも感じましたが、元首相の襲撃事件の背景を知り(完全な全容ではないとしても)、ダイアナ妃のドキュメンタリーを見ると、人間の積み重ねた行動には必然的な(そうならざるをえない)帰結といった「道理」のようなものがあることを思い知らされます。

断るまでもないですが、非業の最期を必然と言っているわけではありません。狙撃犯人の背景を知り、ダイアナ妃とメディア、王室の関係を知れば知るほど、導かれる方向がそうならざるをえないようにつながっていくという、シェイクスピアの悲劇に見られるような哀切で不条理な「道理」のことを指しています。

かねてからお伝えしていましたが、今秋、マリー・クワントが襲来します。

まず映画です。『マリー・クワント スウィンギング・ロンドンの伝説』。11月26日よりBunkamura ル・シネマほかで全国公開されます。

同時に、Bunkamura ザ・ミュージアムで、11月26日~2023年1月29日、『マリー・クワント展』が開催されます。V&A発の世界巡回展です。朝日新聞社主催。

さらに同じ時期に、V&Aから出ている『Mary Quant』の翻訳がグラフィック社から出版されます。

 

私は映画ではパンフレットに寄稿し、展覧会では展示物テキストの監修、翻訳本でも監修をおこないます。実りの秋に向けて佳境に入っているというところです。

周囲の大反対を押し切ってマリー・クワントを卒論で書いたのは40年ほど前。何の損得計算もしなかった(できなかった)ゆえに、その後、重要な場面で干されたり梯子を外されたりというエライ目にも遭いましたが、いろいろあって、こうしてどっぷりと日本でのクワント祭りに関われるのも何かのご縁というものですね。ほんとに何が起きるかわかりません。調子に乗らず、自暴自棄にならず、できることに淡々と取り組むのみです。あとどうなるかを決めるのは天の仕事。

 

中目黒にてカポックノット展示会。

今期から「ラグジュアリー」という言葉をはっきりと出してきたのが頼もしい。

新型ラグジュアリーは、サステナビリティーを当然の前提として含めます。旧型(の一部の性格)は、いまのままだとGenZからはダサいと見られてしまいます。10年後を考えると新型の考え方にシフト、少なくとも配慮したいところ。時代の急速な変わり目を感じます。

これってラグジュアリーではないでしょ?という声も旧世代から聞こえるのですが、シャネルが最初に装飾を省いた帽子を出した時、あるいはアクリルのアクセサリーを出した時も同じような声が起きていたことを思い出します(いや、見たわけじゃないけど)。今のGen Zが求めているのが何なのか、その「願い」の方向に次世代ラグジュアリーが形成されていきます。「兆し」や「種」を見て、育てていきたい。きらっきらに完成されたものを資本の暴力でマーケティングされ、受け身でありがたがれという世界はもうムリ、という世代が10年後、市場を主導していきます。


デザインのバリエーションが増え、ファンも確実に増えており、猛暑のなかでのダウンの試着、大盛況でした。

トップ写真、左がデザイナーの満汐国明さん、右が代表の深井喜翔さん。伸びしろの大きい、日本の次世代ブランドです。

目黒川の周辺はおしゃれな店がひしめくウォーキングに最適な場所ですね。桜の季節はあまりにも混むので避けていましたが、今度ゆっくり歩いてみたい場所です。

 

 

三菱一号館美術館で開催中のシャネル展。月曜日に鑑賞して時間が経ちましたが、まだ余韻が残っております。
1920年代の初期のものから、晩年の作品まで、スーツ、ドレス、香水、バッグ、靴、ジュエリーにいたるまで、よくぞ集めたという圧巻の本物が展示されています。


シャネル本の翻訳、監訳ばかりか膨大な数の関連エッセイを書き、名言カレンダーまで作っているので、シャネルの作品の写真ならいやというほど見ていたつもりでしたが、実物の迫力からは全く違う印象を受けました。

とりわけ彼女が70歳で復活したあとの作品ときたら……

人生のストーリーを重ねて見ると、ひときわ感慨深い。1920年代のラグジュアリーの概念をひっくり返してソーシャルイノベーションを起こしたシャネルは、当時における「新しいラグジュアリー」の旗手だったんだとあらためてわかる。

日比谷周辺はシャネルのパネルや旗で盛り上げられております。

ガブリエル・シャネル展は、Gabrielle Chanel Manifeste de Mode は三菱一号館美術館にて9月25日まで。
秋にはマリー・クワント展がBunkamura で開催されます。準備も着々と進行中です。ファッションの展覧会が普通に頻繁に行われるようになったこと、感慨深いです。

 

 

女王の多面的な魅力が満載のドキュメンタリー、本日公開です。

パンフレットに寄稿しています。


年表や家系図、主要な登場人物のリストもあり、充実した内容になっています。劇場でチェックしてみてくださいね。

日本経済新聞16日夕刊に広告も掲載されました。配給会社、イベントも多々行っており、とても力を入れています。

 

ABCのトークイベント(ご視聴ありがとうございました!)、ウェブメディアからのインタビュー、とZOOMでの話が続きました。ともに黒レースのインナーの上に音遊さんの赤い備後木綿の着物を着ておりました。視聴者のおひとりがTwitterで好意的に書いてくださいましたが、気分はジャポニスム時代のヨーロッパ人が着た室内着kimonoです。(本当のところ、ただ着付けが下手なので、いっそそっちを演出してみたというだけなのですが。)

 

 

Gucci CEO、マルコ・ビッザーリ氏にインタビューした記事がForbes JAPANのウェブサイトにて公開されました。

コロナ後初の来日のタイミングでの独占インタビューです。編集部のもろもろのご配慮に感謝します。

2mはあると思われるマルコさん。

社会のできごとに対し、これからの企業は「中立」ではありえず、立場を明確に表明すべき時代になっている、という言葉が印象的でした。それが従業員にとっても誇らしいことになる、と。

数年前とは激変した価値観のひとつです。新疆問題でも「ノーコメント」はありえなくなっているということが記憶に新しいですね。スポーツ選手はスポーツだけやっていればいいという時代ではなくなっていることは、大坂なおみの行動を支持するラグジュアリーブランドの動きをみてもわかる。ラグジュアリー領域は変化に最も敏感に反応し、先手、先手で動いています。

 

カメラマン小田駿一さん、編集は鈴木奈緒さんです。小田さんによる写真は、マルコさんが大変気に入り、公式ポートレートに採用されたそうです。(袖口のタグに注目!)

アクリス銀座店、一粒万倍日と天赦日とが重なるという佳き日にグランドオープン。おめでとうございます。

デイヴッド・チッパーフィールド・アーキテクト・ミラノとのパートナーシップにより生まれた店舗。アクリスの近未来的な洗練を引き立てています。


イタリアから苦労して輸入された石も床、階段はじめインテリアに使われています。コロナ→戦争が入って輸送にかなり手間取ったそうです。ぜひ踏みしめてみてくださいね。


一階がバッグやスカーフなどのアクセサリー、2階がウェアを扱うフロアになっています。

私がこの日持っていたバッグはアクリスですが、一泊出張大丈夫なくらい入ります(って詰め込みすぎですね)。スカーフもアクリスです。一応、春夏ものです。多くの色が絶妙のバランスで配色され、意外とどんな服にも合います。

フラワーインスタレーションもAiをかたどって作られています。これから咲く青系の花によってさらにくっきり浮かび上がってくることが期待されます。

アクリスの洗練に思うのは、「美学を押しつけない育ちの良さ」みたいなものと、そこからくる風通しの気持ちよさです。ロゴも強く出さないし、これが上質だろうというわかりやすいこともやらない。でもよくよく見ると大変な技巧が凝らされていたりする。わからない人には永遠にわからない(わかってもらおうと思わない)。そこになんともいえない余裕と成熟を感じます。

さて、最近何かと話題のスピリチュアル消費について思うところを。

一粒万倍日の拡大解釈がスピリチュアル消費を生み、エルメスやシャネルやロエベに長い長い行列ができていました。そもそも行列を作って買うようなブランドではないと思うのですが、みなさんお財布を新調するようです。でも、振り回される前に、冷静になって落ち着きませんか? もちろん本人がそうと信じて買うならばそれで幸せ、ブランドも売り上げを伸ばせるならまあよいことなので別にケチをつける気はないのですが、スピリチュアル・マーケティングの思うつぼにはまり散財する初日にしてしまってどうするんだ……。この日に始める小さなことがやがて「山」となる、というイメージをもって何か意味のある行動をスタートする、そんな心構えでいいのでは? ダイエットを始めるとか(あ、それ、昨日も一昨日も始めた……笑)。

 

 

 

 

日本経済新聞連載「モードは語る」。

11日版では、エリザベス女王の「いつもの」衣裳が意味することについて書きました。「エリザベス女王の『小道具』 変化と継続を象徴

タイトルにしたのは、エリザベス女王の名言のなかから。「正しい訓練を受ければ、だいたいのことはできるものだ」。正しい訓練。それが受けられる環境に恵まれることそのものが偉大な幸運だと思う。

「ハリー・パーマー 国際諜報局」(イプクレス・ファイル)全6話がスターチャンネルで公開されました。


推薦コメント寄稿しました。公式HPに予告編ほか詳細があります。

アンチ007として設定されたハリーがじわじわくるんです。最初の2,3話はペースについていく忍耐が必要かもですが、後半、独特の感覚に乗ってくると俄然、面白くなっていきます。

ルーシー・ボイントンが着る60年代ファッションも眼福です。

ブリティッシュカルチュア、1960年代ファッション、英国スパイ映画の系譜、に関心がある方はまず見ておきたいドラマです。

Kingsman のハリーのモデルになったのがハリー・パーマーで、60年代当時はマイケル・ケインが演じていました。メンズスタイルも丁寧に再現されています。

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エストネーション秋冬の展示会で、ひときわ目をひいたバイクと自転車のハイブリッドのような乗り物。


1920年代の初期のモーターサイクルにヒントを得て生まれた「温故知新」電動自転車です。オーストラリアを拠点とする多国籍文化をもつマイケルブラストのチームの作品です。日本仕様にスピード調整され、秋冬に登場するとのことです。景色を変えてくれそうで、楽しみですね。これなら環境にも優しくかっこよくて乗りたいかも。


秋冬もの素材でもお腹見せ、おとなのY2Kスタイル。腹筋が縦に走っていると最高のアクセサリーになりますね。鍛えよう。

オリジナルや別注コラボの靴もかわいくて、見せ方もセンスいい。

エストネーションの展示会には初めて伺ったのですが、担当者の方がTwitter のメッセージでお招きくださいました。この方はなんと、22年前の拙著『スーツの神話』をこよなく愛読してくださっており、この日もお持ちくださっていました。驚きつつ、感激です。

本って何かを犠牲にしながら時間と労力を注いで注いで注ぎつくしてようやく仕上がるチームワークの賜物なのですが、それでも呆れてしまうほど直接の利益にはならないし(時給換算なんかすればそれこそ1円以下だと思う)、昨今の出版事情の厳しさでますます書く虚しさが募るばかりだったのですが、こうして時間を超えて人とのつながりを作ってくれることがあることを思うと、経済的価値とは全く別次元の「価値」があるのだなと実感します。いくつものことを犠牲にして献身した30代の自分に会ったらちょっとねぎらいたい(とはいえ、別の道を勧めると思う。笑)