「グリード ファストファッション帝国の真実」。


ブラックな笑い満載のエンタメですが、労働力を搾取して栄えたファストファッション王国の構造描写がリアル。「ファッション誌編集者」として登場する女性がおそろしくふつうで地味、というのもリアリティあり。モデルは昨年破産したTOPSHOP創業者のフィリップ・グリーン卿。こんな映画を作れてしまうのがイギリスだなあ。監督はマイケル ウインターボトム。

セレブライフのおバカさかげんに笑いながらも、さしはさまれる格差の描写に、否応なく現代を考えさせられます。白すぎる歯がコワいね。

ファッション史の学徒はとりあえず必見です。

6月よりTOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー

Ⓒ2019 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. AND CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION

ひさびさにNewsPicksコメントを転載してみます。ムラがあって恐縮です。全コメントをご覧になりたい方はNewsPicks でご覧いただければ幸いです。(転載にあたり若干の修正をしています)

〇まずは、WWDのビンテージショップ「オー・ユー・エー・テー」が伊勢丹メンズにポップアップを出して人気という記事につき。

 

「若い人がファッションに興味を持たないと言われて久しいけれど、若い人でファッション好きな方は『新しい」服を買わないのであって、むしろビンテージに熱狂している。

人気店の売り方も参考になる。『商品を売るよりも、投げかける。ウンチク語りはせず、<文脈を考える>余地を残す』

お仕着せ・押しつけをきらい、自分で考え、自分だけのストーリーを作りながらファッションを楽しみたいという消費者の思いが伝わってきます」

 

〇同じくWWDより。水道工事会社発のオアシスによるワークスーツがさらなる進化という記事。

「多様化複雑化するスーツ状況にまたニュース。

水道工事会社オアシスが手がける作業着スーツは、『WWS』とブランドを刷新し、アパレル界のアップルを目指すという記事。

『スーツであり、作業着であり、普段着という、ニューノーマル時代の唯一無二の“ボーダレスウエア”。5年後をめどに上場も視野に入れながらまずは時価総額1000億円、いずれは1兆円を目指したい』と強気。ユナイテッドアローズの重松会長がバックについているので、夢物語ではないリアリティも感じられます」

 

〇これに先立って、作業着のワークマンがリバーシブルスーツを発売したという記事がありました。

「作業着系スーツの複雑化多様化が止まらない。パジャマスーツにワークスーツ、水道会社に紳士服チェーンに作業着会社が入り乱れ、もうなにがなんだか、の混戦状態になってきました」

対抗する量販スーツの老舗AOKIは、今月あたまに一着4800円のアクティブワークスーツを発売、昨年12月にはパジャマスーツを発売しています。こんなカオスは日本ならではの現象かと思います。

むしろこういうスーツを海外に輸出すると受けるのか?

いや、少なくともヨーロッパでは、「スーツを着る職業&クラスの人」はきちんとしたスーツを着るし、それ以外の人はそれぞれの立場にふさわしいウェアを着る。日本はなんだかんだと誰もがスーツを着る。人口におけるスーツ着用率は世界一。だからこうしたハイブリッドなスーツに需要が生まれるのだろうと思います。

動きやすいのももちろんがんがん利用していいと思いますが、上質な仕立てのいいウールのスーツが心に与える満足感も時々思い出してね~。

 

 

Amazon Prime に入っていた「記憶にございません!」鑑賞。評判通り、よく練られた脚本に基づいたとてもセンスのいいコメディ。三谷幸喜さま監督脚本。魅力的な俳優陣もいい。とくに小池栄子には惚れ直した。ディーンフジオカは動いても動かなくても完璧でずるい。笑

懸案の8000字を書き終わり、Netflix に入っていたCUBE を鑑賞。1997年のカナダ映画。話題になっていたけどコワそうで避けていた。今は現実の方がコワいことが起きるので、ホラームービーが現実の反映みたいに見えてくることがある。これもそうでした。

目覚めると立方体の中に知らない男女と閉じ込められている。脱出しようとするとところどころ罠があり、凄惨な死が待っている。男女はそれぞれの力を合わせて協力しながら安全ルートを探して脱出しようとするのだが……。誰がなんのためにそのようなシステムに放り込んだのかもわからない。ただ知恵を絞ってシステムの外へ脱出しようとあがく。途中の敵は、システムそのものというよりもむしろ、同行する人間。同じ穴のムジナである人間に殺される。生き残るのはイノセントな人。

まさしく人間社会への風刺そのものになっていたのが秀逸でした。

観終って知ったのですが、日本でもリメイクが公開されるのですね。良いタイミングで観たかも。

ワースとレヴンの終盤の会話がシブい。

Worth: I have nothing to live for out there.(外の世界に行っても生きている意味がない)
Leaven: What is out there? (外に何があるの?)
Worth: Boundless human stupidity. (愚かな人間だらけ)
Leaven: I can live with that. (私は共存できる)

絶望しているのになぜ生きる努力をしなくてはいけないのか? こういう問いが97年の製作時よりも今のほうが増えている気がする。それで「闇の自己啓発」のような本に脚光が当たるのかもしれない。

 

 

 

 

 今日はポジティブめの本をおすすめ。すでにベストセラーなので読まれた方も多いでしょう。「独学大全」。匿名の方が著者ですが、丁寧な思索と的確な引用にあふれていて、知的な活動を続けられてきたことがしのばれます。

 

「意志の強さとは、決して揺るがない心に宿るのではなく、弱い心を持ちながら、そのことに抗い続ける者として自己を紡ぎ出し、織り上げようという繰り返しの中に生まれるのだ」。(本文より)

自分のなかにあるBoundless Human Stupidity への抵抗のために、何であれ「学び続ける」のは一つの方法。

Netflixの「ブリジャートン家」。いやーおもしろかった……。

1813年のロンドンの社交シーズンが舞台。社交シーズンの目的は、マッチング。結婚によって階級も社会的ステイタスも変わるので、各「家」も妙齢の男女も、根回しや駆け引きや準備その他に必死になるわけですね。

完全にジェーン・オースティンの世界なんですが、描かれ方が21世紀です。Rake!そのもののヘイスティング公爵はアフリカ系のレゲ=ジャン・ペイジだし、(現実でも)錯乱したジョージ3世の妃、シャーロット王妃は多人種の血をひくゴルダ・ロシュウェルで、それが原因ではないけどまったく高貴に見えない。笑 現実のシャーロット王妃も複数の人種の血を引く方でした。さらに社交界に出入りする貴族にアフリカ系、アジア系が大勢いて、とりたてて人種の話題は出てこない。新しい。

まったく見慣れない19世紀イギリスのコスチュームドラマに、「ゴシップガール」風の仕掛けが加わり、ハーレークイン風のベタなかけひきが満載で、若草物語風味も入れながら週刊誌中綴じ風のなまなましく過激なベッドシーンがあり、最後はロマンチックな愛の賛歌となる。古典的な話なのに斬新。19世紀ロンドンの話なのにクラシック感ゼロ。そのチープで下世話な感じの面白さに引っ張られて一気に8話見させられる。

コスチュームの基本は時代を正しくおさえており、男性はアダム型シルエットのカラフル燕尾服、女性は胸元切り替えのエンパイアスタイルのドレス。宮廷関係者は前時代のロココスタイル。ただアレンジが21世紀好みになってます。

とりわけ男性ファッションの美しさに刮目せよ、です。襟回り~胸元にかけてのシルエットといい、重厚な生地といい、リッチな色彩といい、男性をこれほどセクシーに見せる服はないのではないか。

ベッドシーンが過激すぎで15歳未満は鑑賞できません。

ブリジャートン家の当主、アンソニーを演じるジョナサン・ヘイリー(上の写真左)はじめ、個性的な美男ぞろいであるのも眼福。とりわけヘイスティング公爵役のレゲ=ジャン・ペイジは出色のダイヤモンドでしょうか。次回のボンド役の候補にもなっているという噂にも納得しました。この人のボンドはぜひ見てみたいです。

「単に多くの人に見られるだけでなく、文化のツァイトガイスト(時代を特徴づける思想)を形づくるヒットを生み出す」と宣言するネットフリックス。多様性社会にフィットする大胆なキャスティングでそれを証明してくれたという印象です。

「MISS ミス・ふらんすになりたい!」試写。

少年のころに抱いた夢、「ミス・フランスになる!」を叶えるべく闘いながら自分と周囲の殻を破っていく主人公を、ジェンダー自由自在モデルとしても活躍するアレクサンドル・ヴェテールが好演。

ミスコンの裏舞台、現在のフランス社会のリアルも描かれる、エモーショナルで楽しい作品。詳細はあらためて別媒体で書きますね。

 

写真ともに©2020 ZAZI FILMS – CHAPKA FILMS – FRANCE 2 CINEMA – MARVELOUS PRODUCTIONS

 

2021年2月下旬、シネスイッチ銀座 他全国公開

配給:彩プロ

今朝の日経The STYLE のコネリー追悼記事に関し、気を取り直して、謝辞と若干の補足の解説を。

James Bond と007は、使い分けが必要なのです。漠然としたファンにとっては同じようなものなのですが、James Bond はフレミングの原作に登場するキャラクターとして、たとえばプリンスホテル東京シティエリアで展開しているボンドメニューやボンドカクテルなどにも使用可能です。

一方、007となると、版権が映画製作のイオンプロにあります。したがって勝手にロゴを使ったりすることが見つかると、イオンプロから訴えられるおそれがあります。実はこれを知らずに007企画を進めて、直前でストップがかかり、ひやっとしたことがありました。以後、注意深く使い分けをしています。今回の原稿でも、そのあたり最も神経を使いました。

007と提携しているブランドも、映画ごとに変わっていますし、提携といってもいくつかの種類がある。このあたりのことについて、最新情報を反映し、原稿でミスがないよう、プリンスホテル東京シティエリアのボンドメニューでも監修いただいているBLBG CEOの田窪さんにご助言いただきました。

お話によればアストンマーチン、オメガ、ボランジェ、グローブトロッターはオフィシャルパートナー。ファミリーと呼ばれる組織のようなボンド組だそうです。お金を積んでも入れない、固い結束の世界。そのほかのブランド(スワロ、デュポンなど)は、作品ごとに出入りするとのこと。また、構成員にしてもなにか問題を起こしたりするとすぐにクビになるらしく、ターンブル&アッサーは「カジノロワイヤル」で問題を起こし、以後、ボンド組を外れているのだそうです。第一作のDr. Noから歴代のボンドシャツを作ってきたターンブル&アッサーですが、いまは007との提携はないのですね。驚きです。

しかし、ターンブル&アッサーは「ジェームズ・ボンド・コレクション」は展開している。この名は原作のキャラクターとみなしているからOKということですね。「007」は使えない。本国のターンブルのサイトには007のマークまで掲載してあって紛らわしいのですが、昔のよしみのような形で黙認されているか、イオンに見つかるとNGとなるかもしれないらしい。

そのような事情を知ったうえで、原稿からはターンブル&アッサーと007との関連を外しました。ボンドファンは本当に細部にうるさいということは、昨年の「ボンドの朝食」でいやというほど知らされたので、ひとつひとつ、あやふやな点をつぶしていきました。田窪さんのご助言にあらためて感謝申し上げます。

それほど神経をすり減らしても、基本的な場所でうっかりミスが出てしまう……。完璧とはなんと難しいことでしょうか。2020年のトリを飾るはずの仕事が、なんだかもう、情けない限り。これを戒めとして、さらに一つ一つの仕事をとことん丁寧に謙虚にやっていくことを来年の目標とします。

本日付の日本経済新聞The STYLE

コネリーのオビチュアリーとして「英国のブランド ショーン・コネリー」を書いています。

1か月以上前から原稿を送っていた渾身の記事で、校正ゲラを、おそらく20回くらいやりとりして、絶対にミスのないよう、ぎりぎりまで神経を使いました。The STYLEの今年の最後を飾り、コネリーへ捧げる完成度の高いページとなるはずでした。

 

なのに、一点、とんでもなく基本的な誤植が。

なぜこんなことに。日曜朝の一点の曇りもない快晴が落ち込みをさらに加速させます。調子に乗っていると天罰が下る、というような、冷や水を浴びたような朝。

 

 

(気を取り直し)。

「フォーマルウェア」となるべきところが「フォーマルウエアア」となっています。途中の校正では大丈夫のはずでしたが、改行などで最後、レイアウトを整える時になにか間違いが起きてしまったものと思われます。出てしまったものは戻しようがない……。

読者の皆様にも、お見苦しいものを見せてしまい、心よりお詫び申し上げます。ショーン・コネリーにもお詫びしてもしきれない。

 

今日は一日、追悼を兼ねて喪服を着て過ごします……。

 

 

 

「パリの調香師」、パンフレットにコメントが掲載されております。

1月15日、Bunkamura ほかで公開です。

Bunkamura上映作に立て続けて3本、コメントしたことになります(カポーティ、ヘルムートニュートン、調香師)。なんだか今年後半は(小さいものばかりとはいえ)、おそろしくたくさん仕事をしているなあ……。ほんとうにありがたいかぎりです。ひとつひとつを確実に、を心がけてさらに精進します。

Netflix のオリジナルシリーズ、「Emily in Paris (エミリー、パリへ行く)」が面白い。

シカゴのマーケター、エミリーがパリで仕事をする羽目に。パリのイジワルな同僚や上司、いかにもフランス的なオフィスカルチャーと恋愛事情、フランス語ができないエミリーに対して必ずしも優しいとは限らない住人、でも素敵すぎるパリの街並み。フランス文化とアメリカ文化の衝突が、きわめて現代的でリアルな視点のなかに描かれていて、笑いながら考えさせられることが多い。天真爛漫なヒロインを演じるリリー・コリンズがなんともかわいくて、デビューしたころのアン・ハサウェイを彷彿とさせる。


まだシーズン1の5話くらいまで見ただけですが、ブランド、香水、コスメのマーケティングに携わる人にとっても、有益な勉強になるドラマだと思う。パリの街並みやレストラン、各キャラクターのファッションもユニークで眼福です。

 

 

Netflix オリジナルで面白かったドラマ。Queen’s Gambit.

 

1950年代のアメリカが舞台。孤児院で用務員からチェスを学んだベス・ハーモンの8歳から22歳までの数奇な人生。

アニヤ・テイラー=ジョイ演じる天才チェスプレイヤー、ベスがクールでかっこいい。チェスの駒を動かす手の動き、視線がなんとも優雅でスリリング。50年代ファッション、インテリアも眼福です。ベッドカバーから壁紙まですべてお揃いのインテリアとか、クラシックなダサさのあるなんともかわいい50年代のヘアメイクにファッションとか、チェスの緊張感を引き立てる画面の質感が素敵。とはいえヒロインは薬物中毒だったり義母がアル中だったり、ヒロインがいちいち女性蔑視の扱いを受けたり、それを断罪するわけではない淡々とした描き方にリアリティがあって、たんなるおしゃれドラマには終わってないのがさすがネットフリックス。

チェスのルールをそれほど知らなくてもプレイの緊張感は楽しめます。アニヤ・テイラー=ジョイは遠からずブレークしそう。笑わぬ強い表情でミステリアスに魅了する、いい女優です。