読売新聞夕刊連載「スタイルアイコン」。昨日は、カマラ・ハリスをとりあげました。
フレデリック・マルの調香師サミット。ジャン=クロード・エレナ、ドミニク・ロピオン、モーリス・ルーセル、アン・フィリッポなどスター調香師が語る語る。ズームならではの企画ですね。エレナの優しい瞳が印象に残る。香水はミステリアスに見えるけれど、みな一様にそぎ落とした「シンプリシティ」を目指しているとか、二人の人間の出会いによって香水が生まれるとか、名言もちらほら。
それにしても、香水を通して文学、音楽、人間、映画、ビジネスをこれだけ語れるとは。さすが香水の国フランス。近日中に調香師映画の新作もまいりますよ。いまパンフレット原稿を書いてます。情報解禁までしばらくお待ちくださいね。
FRaUの日本発ラグジュアリー連載、第3回目は、「オーラリー(Auralee)」をピックアップしました。
日本的なセクシーさへのアプローチ、「エレガンス」の定義、ラグジュアリーと年齢との関係、ロマン主義との関係なども語っています。
お時間ゆるすときあれば、どうぞ。こちらです。
猛烈に面白い本だった。西和彦「反省記」。ビル・ゲイツとポール・アレンとともにマイクロソフト創設にかかわった天才。アスキーの創業者にして、史上最年少で上場させた経営者として孫正義もかすむほどの影響力をもった方。なのになぜに転落を。その顛末が生々しく語られる。途中、あまりにも感情移入しすぎて一緒に「血の涙」が流れそうだった。
ビジネス界の偉人も多々登場する。悪口は極力言わないようにしているらしいけれど、ときどき毒が出てくる。
そして教育に情熱を傾ける現在。
すべての過程が濃厚で、アンチ・ヒーローズ・ジャーニーすれすれのヒーローズ・ジャーニー。人の運命、才能、性格、環境、世間、いろいろな要素がからまってビジネスの成否が左右される。
学びどころも多く、物語としてもワクワクする(当事者には申し訳ないですが)。映画化熱烈希望です。
本日の日本経済新聞朝刊で、最近の日本におけるジェンダーフリー(ファッション)についてコメントした記事が掲載されています。17面のIn Focus (なんと一面まるまる)。電子版は、こちら。
Z世代はほんとにジェンダーフリーネイティブ。性役割はもちろん重要なことも多いですが、それ以外の場面において、そもそもジェンダーなど問うことじたいが古くさいという時代になるとよいな。上の制服ラインナップに男子もスカートを選べるという選択肢が加わってほしいところですよね。ギャルソンやゴルティエ、あるいはトム・ブラウンやヴィヴィアン・ウェストウッドのメンズスカート、かっこいいよ。
季節の変わり目に強力に効くスパ&エステ。
先日、Forbes 5 Stars を見事に獲得したThe Prince Gallery Tokyo KioichoのスパKIOIです。スイス・パーフェクションの直営サロンが入っています。
30階からの眺めを楽しめるスパのお風呂にじっくりつかったあと、スイスパーフェクションのスキンケアコスメをふんだんにつかったトリートメントを受けると、心身がすっかり生き返ります。日帰りでも十分、肌が鏡のように光を反射するほどになります。
最近はファンデを一切つけていません。ファンデはマスクとも相性よくないですしね。コロナ自粛を機にネイルカラーもやめ、まつげエクステもやめたら、自由で快適と感じることも増えました。今まで相当、無駄なエネルギーを使ってたな。コロナ自粛がそれに気づく機会になってよかった。虚飾をやめた分、「素」の部分のごまかしが一切きかなくなるので、今まで以上に日々の生活からきちんとしようという方向に意識が向くようになる。
コロナ前、コロナ後の違いは、感覚的イメージとしては、フランス革命前のロココファッションと、革命後の新古典ファッションの違い、みたいな感じ。パニエやヘアパウダーをやめて古代ギリシア風になりました、みたいな。笑
JBpress autograph の連載にて、栗野宏文「モード後の世界」のレビュー書きました。こちらをどうぞ。
複雑なモードの世界を、白黒つけようとせず、カテゴリーに収めようとせず、包括的に抱擁しようというファッション愛にあふれた本です。
日本経済新聞夕刊連載「モードは語る」。
12日付では、ピエール・カルダン映画をご紹介しつつ、カルダンの功績と人生をまとめました。
この方が日本に果たした貢献は大きい。まだファッション後進国だった日本へやってきて、森英恵や高田賢三らとも交流し、松本弘子というミューズを世界で売り出し、日本女性の美しさにお墨付きを与えました。98歳でご存命です。力強く自由な生命力に感嘆します。
世界の女性リーダーの説得力ある登壇スタイル。こちらです。
クリスティーナ・ラガルド、アレキサンドリア・オカシオコルテス、ジャシンダ・アーダン、ウルスラ・フォン・ディア・ライアン、カマラ・ハリス、ジェーン・フォンダ、メラニア・トランプの7人。彼女たちのバックグラウンドの解説に力を入れてます。メラニア評にもっとも私っぽさが出ているかも。読んでみてくださいね。
“Mind your speech a little lest you should mar your fortunes.” (By William Shakespeare)
「ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒」。スタジオライカ最新アニメ。
舞台設定は19世紀後半(女性がバッスルスカートをはいているので)。ヒュー・ジャックマン演じるサー・ライオネルが「貴族クラブ」に認められるべく、人類の祖先「ビッグフット」が存在するという証明をするために冒険の旅に出る。
行く手を阻む敵は、女性の進出や進化論や電気を嫌う、ジェントルメンズクラブの老害。金のために動くその手下。どこの社会にも必ずいそうだ。笑
貴族クラブの紳士たちがテイルコートなのに対し、サー・ライオネルは黄色とブルーの千鳥格子のスリーピーススーツ、首元はアスコットタイ。これがとてもおしゃれなのです。
クラブで賭けをして出かけるあたりは「80日間世界一周」も連想させ、伝説の生物を求めてロンドン、NY、スイス、ヒマラヤをめぐる大冒険になっていくあたり、探検精神に富んでいた19世紀後半のイギリスのジェントルメンズ・カルチュアがよい感じに漂っていて、楽しい映画になっている
女性の扱いも、よくもわるくも英国紳士的。ゾーイ・サルダナ演じる「未亡人」が実はけっこうたくましく冒険心に富んでいたりして、最後のひねりも今っぽくて痛快です。
“You are a great man, but I deserve greater.”
Missing Link
監督・脚本:クリス・バトラー
配給:GAGA
11月13日 全国順次ロードショー
〇Ready to Fashion Mag にて、ファッション本2020上半期新刊まとめとしてご紹介いただきました。こちらです。
〇白井聡さんの『武器としての「資本論」』。世界の見方がぐるっと変わるほど面白かった。難しそうな経済システムを身近な例を引き合いに出しながら、情をくみ取りつつわかりやすく語る。資本主義というものが、私たちの魂の在り方にまで影響を及ぼしていること。具体例にいちいちうなずきながら、経済システムが人間関係や倫理観にも、知らず知らずのうちに影響を与えている……というか私たちを「包摂」していることが理解できる。途中、鳥肌が立ったり、足元がぐらつくような思いを何度もした。「スキルアップ」なんて言っているのは、完全に資本主義下の奴隷根性を内包した発想なんですね。
「スキルアップによって高まるのは労働力の使用価値の次元」。人間の基礎価値をとことん低くするのがネオリベラリズムの価値観。これを魂にまで浸透させていると、「スキルのない」自分の価値は永遠に低く不幸なまま。なるほど。
こういうシステムのなかに私たちがとりこまれているということを自覚することが、まずは出発点になりそうです。
人間の基礎価値を信じる、「私たちはもっと豊かに生きていい」とという議論は、現在、進めている新ラグジュアリー研究とつながってくるな、と感じます。システムの外に出る、豊かさをプロセスのなかに享受する、取り換え可能な部品として扱われない、スペックで比較されない。こういうラグジュアリーの条件はかねてから講演でも話していましたが、それってネオリベからの脱却ということでもあったんだ……。
著者は最近、ユーミンをめぐる発言でバッシングを受けているようなのですが、この本はこの本として、価値はゆるぎないと思います。
“Believe in life! Always human beings will live and progress to greater, broader, and fuller life.” (W.E.B.Du Bois)
トルーマン・カポーティのドキュメンタリー映画を拝見しました。「トルーマン・カポーティ 真実のテープ」(The Capote Tapes)。
「ティファニーで朝食を」「冷血」で世界的に有名な作家カポーティ―の、きめこまかい人間描写にぐいぐい引き込まれる。
背が低い。ゲイ。声が女性っぽい。母は社交界に憧れて願い叶えられず自殺。孤独。愛されない。そんな生い立ちや背景を知ることで、数々の名作が立体的にエモーショナルに立ち上がってくる。
カポーティは作家であると同時にセレブリティだった。社交界の「道化」の役のような立ち回り。なぜそんな振る舞いをしたのか。人々が自分を「フリーク」として見る。そのぎょっとした視線を感じる。だから、カポーティはわめき、騒ぐ。そうすることで人々を気まずさから救ってやるために。「砂糖漬けのタランチュラ」「指折りの人たらし」「一度は会いたいけど二度は会いたくない有名人」「掛け値なしの奇人」などなど、彼を表現する悪態すれすれの呼称から、どんな印象を周囲に与えていたのかうすうす察することができる。
20世紀最大のパーティー、「白と黒の舞踏会」は、世界中から500人の著名人を選び抜き、招いた。ベトナム戦争のさなかに開催された、虚飾の極みのザ・パーティー。これについては25ansにも記事を書いておりますが、カポーティの生い立ちや立ち位置を知ることで、壮大なリベンジであることが感じられた。叶えられなかった母の祈りを、こうして叶えたのだろか。
スワンと呼ばれた社交界の華、当時のニューヨークのリッチ層の描写が豊富できめこまかく、文化史としての発見が多々ある。「白と黒の舞踏会」のセレブリティのファッションも、言葉を交わし合う当時の著名人たちの立ち居振る舞いも圧巻。
セレブの秘密大暴露本でもある「叶えられた祈り」の発表がもたらした余波とバッシングのくだりも興味深い。いまにつながるゴシップ込みのセレブカルチュアは、この人から始まっていたのですね。文化史、文学史を学ぶ上でぜひ見るべき生々しいドキュメンタリーであると同時に、「特別な生き方」を貫こうとした一人の天才の栄光と転落、孤独と喧騒、愛と冷酷にも迫る見ごたえある映画になっています。
監督・製作 イーブズ・バーノー
配給 ミモザフィルム
11月6日よりロードショー
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Prince Hotels Tokyo City Area 8つめのホテル、東京ベイ潮見プリンスホテルがオープンしました。
東京駅からもディズニーランドのある舞浜駅からも近い、でも住宅街(マンション街)にある穴場的な立地。ディズニー周辺のホテルが確保できなかったときの心強いお助けになってくれそうです。
客室はデイベッドつきで、このランクのホテルにしてはとても質感が高い。広い面積というわけではないのに、たっぷりとした浴室とトイレはきちんと別々になっており、洗面の水回りも浴室とは別に作られている(←これ、複数で泊まったときには重要なことなのですよね)ので、使い勝手もよいのです。鏡は女優ミラー、タオルも上質でデザインもモダン。
東京の古地図と現代地図をモチーフにしたアートが明るい気分を盛り上げてくれます。
このアートのモチーフは、客室内のカップやお水にもあしらわれています。ルームキーもこのアート柄。
レストランは一か所のみなのですが、とても広く、いくつかのパートに分かれており個室もあるので、不自由な感じはまったくありません。カトラリーや什器もあかぬけています。写真の個室のテーブルは重厚な一枚板。照明も各パートによって微妙に異なり、用途によって違う演出がなされています。
お料理も基本に徹しながら随所に潮見らしい個性が出ています。写真は朝食のコースのオムレツ。
総支配人は、これまでパークタワー東京の支配人だった石川さん(右)。左は、料理長の関谷さんです。
フロントロビーにて。左はプリンスホテル東京シティエリア マーケティングの杉田さん。
ロビーの解放感はなかなか素敵です。
ロビーには電源もとれるこんなスペースもあり、リモートワークにも向いています。
特筆すべきは、2階の大浴場。とにかく広くて、サウナもついています。最新型のコインランドリーもあり、コンパクトながらフィットネスルームもあります。周辺の住宅街からは品よく視界がさえぎられるような配慮もなされているので、なんというか、日常のなかに溶け込んでいる非日常といったイメージ。
東京駅からほんの少しの距離にあり、都市の誘惑はゼロ。ラグジュアリーホテルのクラブラウンジの誘惑もない、コンパクトで機能的で、現代的な快適に満ちたホテルです。サウナも大浴場もあるし、ここにこもって本1冊仕上げる、というような滞在をしたいな。