スマートラグジュアリーの勃興
日経新聞連載「モードは語る」。14日付夕刊ではスマートラグジュアリーを掲げるジェミオの創業者、ポリーヌ・レニョ―氏にインタビューした記事を書きました。電子版はこ…
ラグジュアリーの価格をどうでもよくしてしまうもの
ラグジュアリーの価格は本当に不条理だ。というのも、ラグジュアリーの価格を最終的にどうでもよくしてしまうのが、感情だからだ。昨今、一部ではとくにアート市場と同じような感覚で価格がつけられている。バッグが数百万円。それでも買う資格を得るために課金行列まで生まれる。マーケティングの勝利である。
本気でその市場のプレイヤーになろうとすれば…
最高峰を知ることと所有欲(物欲)を切り離すこと
年末の各アワードが乱立するが、今年は「名品」と「時計」で審査員、コメンテーターを務めさせていただいた。こういう機会は市場に出回る最高級を見比べながら学べるので ほんとうにありがたく思う。
「買えない(価格)だから見ない」とか「高すぎるから自分には縁がないので無視」…
Precious 1 月号 「名品」と「時計」各特集に協力しました
Precious 1月号 「新時代の最愛名品リスト28」に協力させていただきました。
サンローランのピーコート、マメクロゴウチのワンピースについてコメントしています。
また、今月号には別冊「ウォッチ・アワード・ブック」がついてきます。めくるめく超高級時計がリッチ感あふれる写真で掲載されています。
ピアジェのライムライトガラ、ルイヴィトンのエスカル、グランドセイコー、ブルガリのセルペンティトゥボガス、ショパール他についてコメントいたしました。
すでにPreciousのサイトにも各時計ごとに拡大写真とともに掲載されています。が、まとまった冊子でじっくり見比べるのも味わい深い。
おびただしい数の超個性的な時計を見比べてみて感じたのは、なんの遠慮も衒いもなく堂々とそのブランドらしさを誇ることはなんとすがすがしいことなのか、ということ。人もそういう風にあればいいのだ。
ウェブサイト掲載済みの各時計についてのコメント:
・ピアジェのダイヤモンドウォッチ
https://precious.jp/articles/-/51534
・ルイヴィトンのエスカル
https://precious.jp/articles/-/51545
・日本の誇り グランドセイコー
https://precious.jp/articles/-/51540
・ブルガリのセルペンティ…
穂積和夫さん追悼 WWDに寄稿しました
WWDからご依頼を受け、穂積和夫さんの追悼文を寄稿しました。
あらためて、ご冥福をお祈りいたします。
海外での日本の大衆向けビジネスに見る「ほんものであること」
「ラグジュアリーの羅針盤」Vol. 25 公開されました。
「マイルドヤンキービジネス」とNewsPicksが呼んだ日本の大衆ビジネスの大ヒット。作り手が「他人の目を意識して演じる」ことではなく、「ありのままの姿を見せる」ことを選んでいる点が、大きな共感を呼んでいる。
「本物であること」とは、自分自身に対して正直であること。他者の期待に応えるために変えるのではなく、自分の信念や文化をしっかりと軸に据えて、誠実に表現し続けること。その先に希望があるのだろう。
I…
墨流しは「苦労を流す」
エストネーション2025SS、こちらは「ESTNATION THE JOURNEY」のデビューライン。
日本古来の素材や染色方法に注目して商品開発がおこなわれています。
トップ写真は京都墨流し染…
Estnation 2025SS ”The First” デビュー
エストネーション2025春夏展示会。
新しく「エストネーション・ザ・ファースト」というラインが始まります。公的なシーンで活躍するエグゼクティブに向けた知性と品格を際…
Pitti ImmagineとJFWO(日本ファッションウィーク推進機構)のコラボ
PITTI IMMAGINE がJFWO(日本ファッションウィーク推進機構)とパートナーシップを締結。プレス発表会がイタリア大使館でおこなわれました。
日本のクリエーションだけでなく、…
ブランドとストーリーテリング
ありがたいことに、本当に多くのクリエーターや経営者に取材させていただいたが、 長い時間をかけて成功していったブランドないし企業は 「物語」として価値を伝える力がずば抜けている。
起業ストーリーを俯瞰して、試練やアップダウン、運命的な出会い、どん底からの復活と再生、すべてのできごとの背後にある人間的な感情や思想、さらに社会背景までをリアルに伝えることができる人は、おそらく「ブランドを築く」という仕事の能力も高いのだ。
一方、表面的なビジョンやミッションのきれいごとを…
テーラードスーツの隠されたラグジュアリー
カマラハリスの功績は、テーラードスーツの威力を普及させたことにあるだろう(ほかにもあるのだろうが、ここではファッションの側面に限り話をさせていただきます)。
最初にテーラードスーツを作ることになったとき、ああ、男性は「おしゃれに関心ありません」という風を装いながら、こんな極上の世界で楽しんでいたのかと…
ラグジュアリー疲れとリアル&本物
北日本新聞「ゼロニイ」12月号が発行されました。「ラグジュアリーの羅針盤」Vol. 12にて「欧州ラグジュアリーと日本発大衆向けサービスの共通点」について書いています。
…
バナナに9億 価格と価値
価格と価値の問題は、ラグジュアリー領域の話題では避けて通れない。
バナナを粘着テープで壁にはった「作品」が9億超で売れたというニュースには脱力した。作者はアート界のジョーカーことマウリッツイオ・カテラン、購入者は中国の暗号資産関連の起業家。しかも購入者は数日以内にバナナを食べてしまう。
同じ脱力を、内容が薄っぺらく粗雑な作りでも「ベストセラー」になってしまう本にも感じていた。
サービスや商品に対して支払われる金額が、製作費用や時間、作り手の技術の熟練度とは関係のないところで決まる。そんな不条理な現実を突き付けられる虚しさ、というか。日々、技術を磨き思考の訓練をしているクリエイターには共感いただけるだろう。
価格が価値に見合うかどうかは、購入者が決める。それによって得られる地位、満足感、将来の資産価値などが考慮される。寄付行為においても、自身に語るストーリーや世間へのインパクトが寄付額以上と考えればおこなわれる。
技術を駆使し思いをこめた傑作を作るだけでは、商業的な成功は保証されない。
顧客が必要とし、欲しがり、夢見るもの、満足するものを想像して共感を呼び起こすための仕事も重要になる。
それはわかるが、かんじんの人間の欲望が永遠にわからない(笑)。一本のバナナとテープに9億超を支払って満足する欲望は、謎だ・・・
The…
牛首紬の復活ストーリー
石川県の牛首紬展、日本橋高島屋で開催されております。白山工房の西山博之さんに牛首紬復活のユニークなストーリーを取材しました。
牛首紬展は12月3日まで。西山さんも…
穂積和夫先生 安らかに
ファッションイラストレーターの巨匠、穂積和夫先生が逝去されたという知らせを深い悲しみとともに受けとめています。
アイビーボーイはアイビースタイルのアイコンとして世界で親しまれていますね。THE…
ジェミオのスマート・ラグジュアリー
次世代ジュエリーブランド、Gemmyo創業者ポリーヌ・レニョー氏にインタビューする機会をいただきました。彼女が掲げる「スマートラグジュアリー」がカプフェレ教授(ラグジュアリー論の権威)と一緒に練り上げたコンセプトと聞いて、意外で驚きました。フランスでも確実にラグジュアリー観が変化しているのだと知り、次世代のラグジュアリーについて議論する充実した時間になりました。詳細は後日、記事にいたします。
I…
ブランド、顧客、ソーシャルステイタス
エルメスというブランドを心から尊敬しているし、文字通り「時を超える」高品質や時代を先駆けるイノベーションも最高級ブランドの名にふさわしいと思う。
ただ、その製品、とりわけ一部のバッグをめぐるあり方というか構造には疑問を抱く。
・一部の顧客が本命バッグを「買わせていただく」ために他の製品に課金しなくてはならないらしいこと
⇒顧客が従属的でブランド様に仕えている構造
・購入したことで特別な社会的ステイタスが得られるという幻想が根強いこと
⇒確たる階級なき時代にブランドの威光で「上」に立てるという幻想がある構造
問題はブランド側にあるというよりむしろ、稀少性や名声、階級(の幻想)をありがたがる顧客が勝手に創り上げていった上下構造にある。
ラグジュアリーはモノやサービスを提供する側だけでは作れない。とりまく市場や顧客のあり方まで含めて世界観が築かれる。
顧客もやがて成熟してくると、ブランドに従属すること、上下格差の幻想の中で生きることの古さ、ないし幼稚さから卒業していくのだろう。その暁に、ようやくフェアにモノやサービスと向き合える世界が待っている(と思いたい)。
I…
知性と身体性
ファッション(外見への気配り)に無関心であることは美徳だという意見がある。 今の日本政府の中枢にも根強くある。 高潔な知性を働かせることにエネルギーを注いでいるので、…
礼法のすすめ
見て見て私すごいというアピール欲を抑制できず、大混乱を引き起こした可哀そうな女性PRさんを見て思い出した礼法がある。
「前きらめきを慎む」-自分の能力や個性を人前で得意げに見せない。
小笠原敬承斎先生『誰も教えてくれない男の礼儀作法』(光文社新書)に出てくる。小笠原流礼法の解説で、男性向けとされているが、社会性を求められる女性にも通じる話が多い。
前きらめき(キラキラアピール)は失脚の最大の原因になること、大昔から戒められてきたのだ。
もうひとつ座右の礼法を紹介したい。
「無躾は目に立たぬかは躾とて目に立つならばそれも無躾」 ー…
全体像を知ろうとする努力をするということ
20代にイギリス文化を研究する環境に偶然、身を置いて以来、 その面白さに魅了されてきたのだが、 2年ほど前に「RRR」を見たときに世界が反転する衝撃を受けた。
ジェントルマンシップという倫理は、時代に応じて変化する。19世紀の「植民地開拓」時代のジェントルマンシップは…