文芸別冊、「向田邦子」。この人のセンス、この人をとりまく方々のセンス、すべてが「まっとう」で粋で一流で上質で鋭くてホンモノ、いいなあ。
この人も、まっとうなものの見方や感覚を教えてくれる。
曽野綾子「人間にとって成熟とは何か」。ときに、どきっとする。
・「自分の立場を社会の中で考えられるか」
の問いで、野田聖子議員へのきつい苦言。子供の治療にかかる莫大な医療費に関して、「国民の皆様のご負担のおかげです」という感謝の言葉がまったくないことに対する批判。こんな高額治療を、国民の負担において受けさせてもらっていることに対する感謝を表明することが「成熟」だ、と。
「野田氏が根本的に、人間のあるべき謙虚な視点を失っていて、人間を権利でしか見ない人」とまで。
「成熟とは、鏡を磨いてよく見えるようにすること」
…読んでおいてよかった。こんなふうに言われないように、言動に慎みを忘れないようにしよう(小心者)。
・「品を保つということは、1人で人生を戦うということなのだろう。自分を失わずに、誰とでも穏やかに心を開いて会話ができ、相手と同感するところと、拒否すべき点とを明確に見極め、その中にあって決して流されないことである」「品というものは、多分に勉強によって身につく。本を読み、謙虚に他人の言動から学び、感謝を忘れず、利己的にならないことだ。受けるだけでなく、与えることは光栄だと考えていると、それだけでその人には気品が感じられるようになるものである」
・「威張る人というのは、弱い人なのだ」。「最低限、威張らないことで、みっともない女性にならずにいる」。「威張るという行為は、外界が語りかけてくるさまざまな本音をシャットアウトする行為である。しかし謙虚に、一人の人として誰とでも付き合うと、誰もが私にとって貴重な情報を教えてくれる。それが私を成熟した大人に導いてくれる」。
・「成熟ということは、傷のない人格になることでもない。熟すことによる芳香を指す言葉のように思う。或る人の背後にあるその人間を育てる時間の質が大切だ」
・「存在感をはっきりさせるために服を着る」、まるまる一章で。これについてはまた後日あるいはどこかの媒体で。
成熟への道は遠い。ワイルドの意見を聞いてみよう。
To be premature is to be perfect. 「未熟であるということは、完璧であるということだ」 by Oscar Wilde
ふふふ。さすがワイルド様ね。円熟した人は、尊敬の対象になるけど、恋の対象にはなりにくいのよね。ワイルドのやんちゃ坊や好みから推測したことですが。私自身も、成熟修行は永遠に続けるけれど、成熟の完成版みたくはなりたくない。
お盆休み期間はこもりっきりで仕事ですが、書いても書いても終わりません。そんな状況なのにネタ探しながら気分転換に遊んでしまいました。すいません。原稿に戻ります。