朝日新聞本日付求人欄、「仕事力」。リシャール・コラスさんの最終回「ラグジュアリーに挑め」。
25ans誌上であつかましくも「ラグジュアリー・クエスト」なんて連載記事まで書いていたことのある身ではありますが、ラグジュアリーの定義を万人に納得してもらえるように書くというところまでつきつめて探求してはいなかった。コラスさんの定義は明確にしてシンプル、力強く説得力あり。
「ラグジュアリーというのは、何万年も前から人間が求めてきた本能であり、それは、心の豊かさを求める行為だからです。例えば一万5千年も前にクロマニヨン人が描いたラスコー洞窟の壁画には、様々な色を用いて牛などの動物が描かれていますが、すでに絵画が日常を楽しく豊かにしていたことが伝わってきます。ラグジュアリーとは、自分の心が安らいだり、楽しみを発見できたりする状態のことだと、私はその本質をそう捉えています」
「見栄でもなければ、金額でもなく、その人なりの日常のベーシックな衣食住がかなって、それから、何か『ときめく』ことを見つけるのがラグジュアリーです。別の空気が流れたり、ささやかな憧れに歩み寄れたりすること、と言い換えてもいい」
「定義ができれば応用ができます。あなたが手がけている仕事に、ラグジュアリーという視点を入れていくとどうなるでしょうか」
(若い人のクールジャパンは自然な勢いに任せておけばいい、というハナシのあとで)「それよりも、何千年も続く、日本人の遺伝子に組み込まれた繊細で豊かな仕事力こそ、世界に類を見ない能力です。(中略)優雅な『エクセレントジャパン』を商品として売っていくことです」
「ビジネスは合理的にするべきだと考えている男性は特に、人の暮らしに目を凝らし、自分の中に潜むその感覚を引き出して欲しい。これから10年、20年と生き残る仕事力は、そこから生まれてくるでしょう。恥ずかしがったり、言い訳したりして、自分が作ってしまっている壁を守るのではなく、壊せない壁はないと静かに心に決めてください。日本人はラグジュアリーな仕事で、勝ち残っていくと思います」。
…「壊せない壁はないと静かに心に決めてください」。この一言にいたるまでの静かな説得力に、泣けました。地に足がついた、建設的で優雅なエクセレントラグジュアリー。遠慮や負い目を感じることなく、むしろ、堂々と推進していくべき誇らしい価値。いずれ少数派かもしれないラグジュアリークエストを続けていこうとするならば、こういう世界をめざさないとね。
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