金融資産とラグジュアリーを切り離す
ココ・シャネルがコスチュームジュエリーによって金融資産とエレガンスを切り離してしまい、1920年代にふさわしいエレガンスを示したことで結果的に女性解放をもたらしたように、…
サロン・ド・パルファン2024
サロン・ド・パルファン2024。
上はイギリス発のブーディカ・ザ・ヴィクトリアス。存在感大。
ナルシソ・ロドリゲスはじめ、今年初登場の高級ブランドが多いし、クリベ…
「消えゆく光に対して果敢に挑め」
企画を途中まで進めながら「その後なくなりました」という通告を出すメンズファッション誌が出てきたり、王者的存在だったメンズファッション誌が休刊になったり、かつての栄光と誇りはどこにといったという感のある界隈になったこの頃ですが、灯を消やさないようふんばっている方々もいます。
時代の変化を受けオワコンと言われてしまう業界はここだけではない。外部からそう言うのは簡単だが、逆流のなか、踏みとどまり、バトンを次世代につなぐ希望を持ち続けて奮闘している人もいる。
こうした人たちの気高い努力によって、本質的なエッセンスは、形を変えるかもしれないけれど、必ず次世代に残るだろう。
敬意をこめて、「インターステラー」にも引用されていたディラン・トマス(1914-1953)の一節を届けたい。
Do…
毛皮もダウンも「悪」ではない
H&Mグループが2025年までにヴァージンダウンの使用を廃止するなど、ファッション業界全体がファーのみならずダウンも使用を控える方向へとますます進んでいることを受けて。NewsPicks…
スタイルは「よし・あし」ではなく「ある・なし」で語られる
ファッション用語で頻出する「スタイル」というのは、少なくとも英国紳士学においては、「いい・悪い」ではなく、「ある・なし」で語られる。
「スタイルがある」とは、「強い信念がある」とほぼ同義で、ファッショナブルかどうかという問題とは無関係。ましてや身体的美醜とも全く関係がない。
紳士ワールドに由来するものは、デザイナーやテイラーの名前ではなく、「スタイルのある人」の名前がついている。
ウェリントン・ブーツ
プリンス・オブ・ウェールズ・チェック
ラグラン・スリーブ
カーディガン
チェスターフィールドコート
ノーフォークジャケット など。
サヴィルロウのスーツにしても客の注文で作るのが基本。テイストを持っているのは客であるという大前提がある。だからかつてはどこで作ったかわからないようにしていた。
「デザイナーズブランド」の対極ですね。オズワルド・ボーティングあたりからサヴィルロウでもブランド化が進むのだが
身だしなみは大切ですが、身だしなみ以外に真剣勝負するものをもっていることが、スタイル確立の第一歩でしょうか。
Photo:…
朝日新聞「万博 デザインの挑戦」コメントしました
朝日新聞13日付「万博 デザインの挑戦」というコシノジュンコさんインタビューの記事。最後に万博とファッションについてコメントしました。
コシノさんの言葉が力強い。「今を感動することが未来に通じる」という名言。…
高価格の理由:輪島塗とクチネリ
12日付日経コラムのこぼれ話です。
そんなわけで輪島・千舟堂の岡垣社長は、ブルネロ クチネリの表参道店で展示販売会をすることになった。
輪島塗の作品をクチネリの店…
輪島・千舟堂とブルネロ クチネリ・ジャパンの交流秘話
日本経済新聞連載「モードは語る」。12日付夕刊では、ブルネロ クチネリ・ジャパンと輪島千舟堂の交流「秘話」を書いています。
この内容は、私が自主的に輪島に取材に…
きものやまとコンセプトショップ、開店おめでとうございます
きものやまと表参道コンセプトショップ、12日にオープン。おめでとうございます。レセプションに伺いました。
きものやまとの全ラインナップに加え、アクセサリー、バッグ…
GQ 斎藤幸平さんとの対談がウェブ公開されました
GQ誌上で斎藤幸平さんと対談した記事が、ウェブ版に公開されました。
ラグジュアリー/クラフツマンシップ/サステナビリティ、が主なテーマです。
編集部・高杉さん、ライ…
アルチザンとラグジュアリー
職人さんにもいろんなタイプがいる。指示されたことを忠実になぞるのが得意なタイプと、自分のオリジナリティをついついどこかに発揮したくなるタイプ。
ただし、その2タイプも厳密に分かれるわけではない。指示されたことを忠実におこなっているうちに、熟練し、次第にオリジナリティを発揮したくなってうずうずしてくる、というパタンもある。
「日頃は指示された仕事を忠実にこなし、その仕事で貯めたお金を資金として、年1~2回、個人の名前を出して展覧会をおこなっていくのが、経済的にも、精神的にも、最もバランスがいい」、と輪島の職人さんを統括する「塗師屋(ぬしや)」(=親方)さんである千舟堂・岡垣社長は語っていた。
伝統工芸の職人でなくとも、各業界の仕事人にも、もしかしたら同じようなことが言えるかもしれない。指示されたことをきちんと行う、という仕事をベースにしながら、年1回ほど、独自の創造性を発揮するクリエーションを披露できる機会をもつ、というような。
写真は、輪島取材時に、岡垣社長が蒔絵職人からピックアップしてきたばかりの名刺入れ(許可を得てアップしています)。自由に何でも作っていいよ、というと、テーマを決めたときよりも誰もが2割増しですばらしいものを作ってくる、と岡垣社長は話す。
職人に責任と創造性の自由を与えるととんでもなく素晴らしいものを作り、ラグジュアリー製品として売れる、というブルネロクチネリの話を思い出す。
Artisans…
スーツ生誕358年
本日、10月7日はスーツの誕生日でございます。
10月7日をスーツの誕生日と考える根拠はこちらです。サミュエル・ピープスの日記、1666年10月8日の記録。11行目あたりから 「国王陛下は昨日、枢密院において、衣服の流行を定め、それを決して変更しないという決意を宣言された」。…
「ルール」の背後に、それを創る人がいる
すでにXとThreadsに投稿して何日か経っているのですが、いまだに反響が多いので、こちらにも載せておきます。モーニングと燕尾服の違いに関する話です。影響力のある多くの方…
パルファンサトリより暁の茶事に着想を得た「WABISUKE」発売
パルファンサトリの待望の新作「WABISUKE」が完成、発売の運びとなりました。まずはおめでとうございます!
調香師の大沢さとりさんから直々にご紹介いただきました。フレグランスエキスパートの地引由美先生もご一緒で、「WABISUKE」に対する理解と愛情がいっそう深まりました。
WABISUKE(侘助)でイメージされているのは、「暁の茶事に宿る侘び寂びの香り」。
茶道の「暁の茶事」という特別な儀式に着想を得たそうです。
夜明け前の闇に包まれた茶室に、朝の光が差し込み始める暁の時間。床の間には一輪の侘助椿(わびすけつばき)が佇み、その足元に光が届く瞬間の静謐な緊張感。奥には墨絵。蝋燭の灯りと朝日が溶けあい、茶事が終わる。そんな情景をさとりさんは語りました。
まさにそんな情景が脳裏に浮かび上がるフレグランスです。トップノートはパチュリとダバナ(インドヨモギ)、ミドルにカモミールがきて、ラストではアンバーや墨や香木が深い余韻を残します。高貴な日本らしさの印象。
「利休が侘び茶を通じて伝えたかったことは、身分や階級にとらわれず、人は誰もが自由であるということ」とさとりさんは語ります。まさに利休は当時における「新しいラグジュアリー」を考え、表現されていたのですね。
10月22日ローンチ(10月16日伊勢丹先行発売)です。
I'm…
上質剛健への変貌。トッド・スナイダー インタビュー記事公開
トッド・スナイダー氏へのインタビュー記事がウェブ版GQで公開されました。こちらです。
あのウールリッチが今シーズンからステージを変えます。伝統モチーフはそのままに、ちくちくしない、イタリアのカシミア100パーセントの新しいアメリカンカジュアルへ。発想のヒントはいつも日本から。
多くのコラボに貫かれるトッドのビジネススタイル、"True…
フェリス女学院大学でラグジュアリーの講義
フェリス女学院大学 緑園都市キャンパスで「ラグジュアリーの変遷と時代を創るファッション」というテーマで講義をさせていただきました。150名の学生さんたちの丁寧なコメ…
競合を超えて、ウェルビーイングのその先へ
資生堂のオープン・イノベーション・プログラムfibonaと、ポーラのマルチプル・インテリジェンス・リサーチセンターmircがタッグを組んで、次世代のウェルビーイングの価値を創造する前衛的な研究がおこなわれております。
資生堂とポーラが共に研究をする。これだけでも驚きですが、光栄なことに大阪大学の佐久間洋司先生と共に外部講師としてお招きいただきました。
資生堂とポーラ、総勢20名ほどの精鋭研究員の方々とともに刺激的な議論の時間を過ごさせていただきました。
同業種の競合を超えて人類の未来のためにともに研究するというプロジェクト。こんな若い世代が活躍する日本は頼もしい。
トップの写真はfibonaのリーダー、中西裕子さん、大阪大学の佐久間洋司さん、そしてポーラmircのリーダー、近藤千尋さん。ありがとうございました。
Shiseido…
マギー・スミス 安らかに
朝、BBCが大きく報じていたのがマギー・スミス(89)の訃報でした。女優としてのキャリアは長いですが、晩年のはまり役、ヴァイオレットおばあさまとしての数々のしびれる名言も記憶に鮮やかですね。
「もし論理を求めるなら、イギリスの上流階級の中にはありません」の説得力ときたら。
「希望とは、私たちが現実を受け入れないようにするための誘惑」も渋いし、
「主義主張というものは祈りのようなもの。とても立派ですが、パーティーでは気まずいわ」も肝に銘じておきたい名言です。
こんなセリフは、マギー・スミスの存在感があってこそ、重みとユーモアを同時に備えて心に届きました。
ダウントン映画の中ではすでにお葬式済みで、最後の最後まで女優として生きた雄姿を見せていただいたような感慨があります。
ご冥福をお祈りします。感謝をこめて
(写真はDownton…
アルチザンとラグジュアリー
トッド・スナイダー氏のインタビューに関し、メインの記事はGQでの公開までお待ちいただくとして、こぼれ話。
雑誌の表紙に書かれた「アルチザン(職人)」という言葉に、…
MIKIMOTO The Bows
MIKIMOTOが今年6月にパリで発表したハイジュエリーのコレクション"The Bows"が銀座ミキモト本店7階でお披露目、プレス発表会に伺いました。一般公開は9月28日~10月14日。ただ、このボディジュエリーはもうお嫁に行ってしまうとのこと。最後に至近距離で拝見できて眼福でした。
そのほかにもリボンモチーフの迫力ジュエリーがずらりと揃い、ドキドキが止まりません。というかこれだけのピュアな真珠(と巨大宝石)の輝きを浴びていると、魂まで清められるような感覚を覚えます。
真珠で二重のフリルを作っています。信じがたいような技巧が発揮されています。
Yuima…