6月末の天皇皇后両陛下の英国公式訪問で披露された写真や映像は、両国間の友情や信頼や愛にあふれていて、世界中の人々に美しい記憶を刻んだと思います。
勲章はじめジュエリーやファッションも各場面で素晴らしい働きをしていましたね。カミラ王妃のジュエリーやファッションに関してはいつものとおり、イギリスではすぐに詳細が報道されるのですが。精緻な刺繍や優美な生地の質感が画面越しからも伝わってきた皇后雅子様の衣裳ブランドや生地の産地に関しては、一切の報道がありませんでした。ティアラに関してのみ、少し伝えられたのみ。
日本のファッションや伝統産業を世界に宣伝するのにまたとない機会であったと思うのですが(実際、キャサリン皇太子妃は公務のたびに着用ブランドが報道され、イギリスファッション界に絶大な貢献をしています)、なぜ一切公表されないのでしょう??
素朴な疑問をもったので、宮内庁のHPから問い合わせてみました。半月ほど経って、以下のようなお返事をいただきました。支障のない内容だと思いますので、シェアいたします。
「お問い合わせの件については、契約相手方等を公表していませんので、回答を差し控えさせていただきます。
なお、参考ではございますが、ドレスコードの指定のあった行事は以下のとおりとなります。
・イブニング・ドレス
国王王妃両陛下主催晩餐会
・デイ・ドレス
歓迎式典
国王陛下主催午餐会
無名戦士の墓御供花
国王王妃両陛下とお別れの御挨拶
V&A子ども博物館
オックスフォード御訪問」
まずはご回答いただいたことに心から感謝したいと思います。ですが、やはり「契約相手を公表していないので回答を差し控える」というお答えです。
なぜでしょうね? 公表すると、競合からの売り込みが激しくなったり、そのブランドや産地が注目を浴びることで周囲からの嫉妬によるバッシング問題が起きたりする?? 契約相手本人が遠慮する??理由は推測するしかないのですが、あの精緻な刺繍で歴史に残る白いコートドレスを作ったデザイナーが、何らかの形で報われるとよいですね。
こういう機会はやはり、作った人にも脚光を当てて称賛することが、デザイナーにとっても国にとっても良い影響しかもたらさないように見えるのですが(他国の王室の例が顕著です)。日本の考え方は違うようです。
ちょっと文脈は違うのですが、いま、パリオリンピックでのモンゴルの衣裳が話題です。デザイナー、ミシェル&アマゾンカのインスタグラムで、細部の写真を見ることができます。
https://www.instagram.com/michelamazonka/
見れば見るほど、モンゴルの歴史やアイデンティティを刺繍や細部に精緻に織り込んだ、すばらしい作品であることがわかります。このブランドが世界的に飛躍する契機になったと同時に、モンゴルの洗練されたイメージが格段に上がりました。
日本はオリンピックや万博で着用されるユニフォームなど関しては公表されることもありますが、とりわけ最近は、肝心のデザインが「どうしてこうなるのだ?!」と疑問を抱かざるをえない結果になることも多々。美しさというのはブランドイメージに直結します。誰が見てもヒドイ、というデザインは国およびそのイベントの印象をだだ下げするばかりだと感じるのですが、この点に関してあまり真剣に考えられていないようです。
パリオリンピックはLVMHやジャックムス、ケリングなどがここぞとばかりあらゆるビジュアルにおいてイメージコントロール。やはりワクワクするほど素敵なのです。くやしいけど(笑)