「ファクトリエ」を立ち上げた山田敏夫さん(35)に取材。

実は山田さんとは2013年のブルガリのパーティーで、同じ熊本ご出身の大住憲生さんからのご紹介でお会いしていたらしい(熊本ご出身のファッション関係者はとても多いのです)。その時はまだ会社を立ち上げてほやほやの、ほぼ無名の青年だった。たった一人で、資本金50万円からスタートした会社だった。それが今やアパレルを救い、時代を牽引する頼もしき起業家として大活躍中。


お話はとにかく面白く刺激的だった。詳しくは活字媒体に書きますが、社会の課題を解決していくためのビジネスの発想がまさにミレニアルズ。(「庭」の白石樹里さんも33歳とほぼ同世代だし、「気仙沼ニッティング」の御手洗瑞子さんや、「aeru」の矢島里佳さんもこの世代。ほんとうにわくわくすることをやってくれる。)

これまで日の当たらなかった工場に取り分を回し、工場情報をオープンにし、工場で働く人に脚光を当てる。そうしてモノづくりの現場で働く人に誇りを取り戻してもらう。

それを初めてやったとき、某大手アパレルメーカーの役員室に呼ばれ、お偉い方々がずらりと並ぶ場で、「工場の守秘義務は知らないのか。そんな舞台裏を見せるようなことはやめてくれ」と脅されるようなこともあったという。でも山田さんは、みんなが幸せになる仕組みなのだからと信念を曲げなかった。

「行動が心を強くする」という考え方のもと、ひたすら手紙を1000通、書いたエピソード。

「まあまあ好かれる」を廃止し、顧客を熱狂させることをめざす戦略とゲリラ的な行動。

価格決定権を工場に引き渡すという、常識を覆した挑戦がもたらした数々の好影響。

いやもうインスピレーションに満ちた面白い取材でした。

(*これまでのアパレル業界の仕組みがあまりにも生産者を虐げていた、というか従来の仕組みはもはや時代錯誤であることが明らかになったわけですが、同じような不条理な構造は出版業界にも見られます。原稿料の決定権は、ある程度は執筆者にあるべき。それだけ高品質で商品価値のあるものを書くことができる、という前提条件付きですが。工場側がデタラメに高くしても内実がおいつかなければ注文が来なくなるので、結果的に全方位納得の適正価格に落ち着く、という事実はとても示唆に富む。)

 

数々のすばらしい製品も枚挙にいとまがない。

下の写真は汚れがつかない白いジーンズ! 赤ワインやお醤油をこぼしても、さっとふきとるとまっ白。捨てなくなるので、環境にもやさしい。この服地で、ワンピースやスーツを作ってほしいぞ。ほかにも永久保証ソックスなど。

今回は山田さんのお話を聞くことがメインの取材でしたが、次回、ゆっくり製品を手に取ってみてみたい。すべてがメイドインジャパン。国内の600の工場を回り、うち、55の工場と提携して作られた高品質な「工場ブランド」です。

 

 

 

 

 

 

コンテスのデザイナー、ナディア・ノアック=バーバラ氏が顧客招待会のため来日とのことで、ご挨拶にうかがいました。

 

赤坂クラシックハウスにて。

左から2人めがナディア。楽しくて茶目っ気のある、素敵な方でした。

新作はきらめく星座(constellation)が刺繍されたコレクション。きらきらしていてもミーハーに転ばず、やはり圧倒的な品格のあるバッグです。

会場のディスプレイも、「プリンセス」バッグにふさわしく、ティアラや白手袋など。お客様のなかにはお着物の方などもちらほらいらして(ホースヘアは実は和装にもよく合う)、その空間だけ別の時間が流れているようでありました。

猛暑の中の一瞬の非日常ワープ。

 

“Westwood: Punk, Icon, Activist” 試写。五反田イマジカにて。

ローナ・タッカー監督によるヴィヴィアン・ウエストウッド最新ドキュメンタリー。2018年サンダンス映画祭正式出品です。UK、USではすでに公開。配給はKADOKAWA。

 

ヴィヴィアン・ウエストウッドのドキュメンタリーは過去にも2本ほど撮られ、DVDにもなっています。私も大学教師時代にヴィヴィアンをテーマにした授業では必ず使い、自分でも何度も見ています。今回の映画はそれらをはるかに凌駕する濃密で豊饒なものでした。


今年77歳を迎えたヴィヴィアンの仕事とプライベート、活動家としての現在の顔まで、全方向から赤裸々に迫っています。現在の夫アンドレアス・クロエンターラー、ふたりの息子が語るヴィヴィアンも、これまでのヴィヴィアン像をくつがえすものでした。こんなことを公表していいのか……とこちらが戸惑うほどの社内のいさかいや、準備もまともにできてない「海外バイヤー向けプレゼンテーション」の模様、経済状態や人事のことまで収められています。観ているほうの居心地が悪くなるほど。でもこれが「ありのまま」。ありのままの真実だからこそ多くの思わぬ発見がありました。

マルカム・マクラーレンがヴィヴィアンの成功をねたみ、足を引っ張り続けていたこと。経済状態が一時破綻していたこと。無一文からの挑戦だったこと。批評家がこきおろし、テレビの聴衆があざ笑い、それでもエレガントに笑い流して作り続けてきたこと。あらゆる困難から逃げず、パンクに挑発し続けてきた彼女の姿を見ているだけで途中から涙で見られない状態。(評論する立場としてダメな例。笑)



(こちらの写真は昨年のロンドンコレクションメンズに出席したとき、フロントロウから撮影したもの)

ラストにはこれまでのショウのクライマックスがたたみかけるように。私が昨年ロンドンで目前で見たヴィヴィアンの姿もあった(私もちらっと映っていたようだ。笑)。コレクションでは一度たりとも同じ服を着ておらず、一度たりとも同じイメージがなく、いつだって過激で、観客を落ち着かない気持ちにさせる。ただただ圧倒的な情熱とパワーで高揚させ、これが本気で生きている本物のヒューマンだと共感させる。音楽の使い方がまたうまく、いまどきの音楽と、普遍的に美しいクラシックを巧みに使い分けています。クラッシックが流れる時にはだいたい泣ける話になっています。

現在はクリエーションはおもにアンドレアスが担い、彼女は人類の未来を守るためのアクティビストとして過激に活動している。既成の人生ルートのどこかに収まるはずもない。やり方だって自分で考える。どこまでもDO IT YOURSELFな人なのだ。「ファッション」への関心云々に関わらず、ヴィヴィアン・ウエストウッドという人の存在そのもの、生き方そのものに魅了される。私がファッション史に情熱を持ち続けられるのもまさにこんな人との出会いがあるからにほかならない。

 

オフィシャルトレイラーです。

やまない大雨のため、西日本全体にたいへんな被害が及んでいる様子ですね。ツイッターに流れてくる川の氾濫の映像を見るにつけ、恐怖はいかばかりかと拝察します。警報が続き、不安な時間が長引き、お疲れをおぼえていらっしゃる方も多いと思います。みなさまのご無事を切にお祈り申し上げます。

仕事柄、以下のような話題が続くことをご寛恕ください。一瞬の気晴らしにでもなれば幸いです。

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

読売新聞連載「スタイルアイコン」、本日はルイ・ヴィトンのメンズデザイナーとしてパリコレを大成功に導いたヴァージル・アブローについて書きました。

ヴァージル・アブローは、現在のファッション界でもっとも注目を浴びるデザイナーではないでしょうか。昨年のピッティでコレクションを見たときには「ヴァージルって、誰??」という感じだったのですが、あれよあれよという間にトップスターに。

 

下の写真はリアーナとヴァージル。リアーナのバッグ多個持ちは「マルチ・バッギング」のトレンドとして各誌がとりあげていました。ルイ・ヴィトンはバッグで利益を得ているわけで、とにかくモデルの数よりも発表するバッグの数の方が多いので、一人のモデルまたはインフルエンサーがたくさんバッグを持たないと紹介しきれないという事情もわかりますが。

……私のバッグ多個持ちも「マルチ・バッギング」ということで。

 

 

<追記>

今日は特別警戒が発令されたり、松本死刑囚の刑執行があったり文科省の汚職があったりと報道事項多々により、上記の記事を含め、モード欄は延期となりました。来週、平穏に近い日であれば、掲載になります。(私も間接的かつ取るに足らないレベルですが、水害の影響とは無関係ではないということになりますね。)

モードというのは平和あってこそ語れることなのです……。

特別警戒が発令された地域のみなさまの不安はいかがばかりかと思います。長い夜、どうか、どうぞ、ご無事で。

 

 

株式会社ヒロココシノ、ニッコー株式会社、ザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町のスタイリッシュなコラボレーションが実現しました。

近年はアーティストとしても活躍の場を広げているコシノヒロコさんデザインの食器「墨の瞬(すみのとき)」と和食のコラボレーションによる「SUSHI KAISEKI “墨の瞬間”」が、6月29日(金)~9月30日(日)までお楽しみいただけます。ザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町「WASHOKU 蒼天」にて。

昨夜はそのお披露目の会がおこなわれました。


コシノヒロコさんによるアートは食器にとどまらず、のれん、絵画、ナプキンなどにいたるまで取り入れられており、鮨カウンターもがらりとアートな空間に変貌しています。

夜景を背景に飾られるこの日本酒たちもいつにもましてモダンに見えます。



SUSHI KAISEKIは、お造りから壺焼き、握り寿司、最中寿司(←楽しく絶品!)、竹皮寿司、デザートにいたるまで計7種のお料理のコースで、それぞれに合うお酒7種~9種をペアリングすることもできます。

 

 


パーティーは、コシノさん、ニッコー社長の三谷明子さんによるご挨拶、そしてザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町支配人の大森伸翁さんによる乾杯の音頭で開始。


ギャラリー自慢の見た目にも美しく美味しいお料理。

お酒のラインナップもすばらしく。いわば異業種に近い3社の関係者が集まりましたが、とてもオープンな雰囲気であちこちで新しいご縁が生まれ、盛会のうちに終了。


中締めのご挨拶は、プリンスホテル東京シティエリア統括総支配人の武井久昌さん。写真左から、三谷さん、コシノさん、武井さん。


驚いたのは、金沢に本社をもつニッコー株式会社社長の三谷明子さんが富山中部高校の同窓生であったこと! 世界は狭いですね。

 



コラボレーションのテーブルウエアは、プリンスギャラリーのホテルショップでも購入できます。このショップは、厳選された日本のアイテムが揃い、外国人にも大人気のホテルゆかたやオリジナルアロマ、ケーキも扱っています。


レヴィータでスタッフおつかれさま会。この日はほぼ満月で、レヴィータの華やぎもひとしお。

 

<追記>

その後、ニッコー社長の三谷さんとやりとりをして明らかになったことですが、三谷社長の弟さんは私とは中部高校33回という同期で、日医工社長の田村友一さんとのこと。日医工には10年ほど前ですが講演にお招きいただいたこともあります。姉弟で優秀な経営者でいらっしゃるのですね。

イギリスのラグジュアリーブランド(英国王室御用達)Asprey の秋冬新作バッグ発表会。青山の金田中にて。

イギリス本国よりマーケティング・コミュニケーションのトップであるロレーン・クレイグ氏とレザーアクセサリー部門のディレクターであるヒラリー・ルイス氏が来日、素敵なプレゼンテーションがおこなわれました。

ロレーンはアスプレイというブランドの解説。1781年創業で、今年で237年になるイギリス最古のラグジュアリーブランドであること。1847年にニューボンドストリートに旗艦店をオープン、二階には独自の工房があり、クラフツマンシップを大切にしていること。「アスプレイ」のパープルの包装そのものが喜びになっていること(フランスのエルメスのような立ち位置?)。英王室のメンバーにも愛され続け、先日のロイヤルウェディングでメーガン妃がつけていたアクアマリンの指輪がアスプレイのものであること。

映画界でも愛され、レッドカーペットのみならず、「タイタニック」「マッチポイント」「ツーリスト」などの作品内でも使われていること。

などなど、ザ・ブリティッシュスタンダードを世界に示し続けるブランドとしてのアスプレイがわかりやすく親しみやすく伝わる内容でした。

そしてヒラリーは、今期のハンドバッグコレクションについて解説。インスピレーションの源はキューガーデン。エキゾチックな植物ばかりではなく、建物からもヒントを得て、今シーズンのカラーコレクションが展開されています。

クロコダイル、リザードの素材で作られた、鮮やかな発色の高級感あふれるハンドバッグは宝石のようなたたずまいで、ため息ものです。

こちらは私の一目ぼれバッグ。A4が入るこんなおしゃれなバッグがほしいのですが、ほんと、レアなのですよね。

今回もいつものように、「A4が入るバッグ、パーティーバッグ、シューズケース」が一体となったバッグを作ってほしいとプレゼンしたのですが(バッグメーカーの方に会うたびに提案しています)、難しそうねえ……と首をひねられました。そもそもラグジュアリーブランドは、持ち物が少なくてよいノーブルな方々用で、私のような仕事人間はあまり想定されていないのかもしませんね。

どなたか私と一緒にコラボして理想のバッグを作ってくれませんか? いちいち帰宅してバッグまで持ち替えたりすることの難しい日本では需要があるはずなのですが。デザインの構想、御社にプレゼンにまいりますよ~!

その後は、ロレーン(左)、ヒラリー(右)を囲んで、金田中のお料理でランチ。

アスプレイは日本では3店舗しか扱っていないのですね。銀座のサンモトヤマ、大阪のリッツカールトン、そして大阪の高島屋。全世界でもかなり限られた店舗の展開です(ロンドン、ニューヨーク、ビヴァリ―ヒルズ、マイアミ、サンモリッツ、そして日本の3店)。大量生産できるものではないので、一点一点、丁寧に作り、販売しているそう。ハンドバッグも世代を超えて受け継がれていくものなので、3世代で使い続けるということになれば、コストパフォーマンスはよいかも(この手の計算はラグジュアリーブランドがよく使うマジックでもあるのですが。笑)

 

アスプレイジャパンの中村之夫さんは、上の花柄バッグと同じアップリケを施したジャケットでご挨拶。写真でははっきり見えなくて恐縮なのですが、左胸にお花のアップリケがあるのよ。さすがブランドへの愛が大きい!

アスプレイの魅力が伝わるすばらしい発表会でした。お招きいただき、ありがとうございました。

 

☆☆☆☆

 

 

発表会の後はシティホテルのデイユースを使って4時間こもって原稿を書き上げて送り、「心斎橋リフォーム」副社長の内本久美子さんの出版記念パーティーへ。華やかな方々が大勢お祝いにかけつけていらした盛会でした。内本さん、おめでとうございます。

会場で久しぶりにデヴィッド・W・マークス氏にもお会いしました。「AMETORA」日本語版はなんと3刷ですって! 新作の構想も伺いました。中央はイラストレーターの穂積和夫先生。穂積先生も近々、新しい本をご出版されるとのことです。(たまたま3人ともブルーを使ったコーディネートでした。笑) 旺盛な創作活動に刺激を受けます。私も加速して書いていかないと、あっという間に一年も半分。

北日本新聞別冊「まんまる」7月号発行です。連載「ファッション歳時記」第81回「モノが売れないのではない、人が売れないのだ」。

今はほんとに、熱量をもった「人」と関わりたい人が増えているなという実感があります。まずはたくさん食べて自分からエネルギーを発しないとね!

 

男性の服装講座は頻繁に行っていますが、女性ビジネスパーソンの服装講座を初めて行いました。

男性のビジネスウエアほど明文化されたルールがない分、女性のビジネスパーソンの服装指南は難しいところがありましたが、何人か現場の方々にヒアリングをおこなったりアメリカの「古典」を参考にしたりして日本の30代前後くらいのビジネスパーソンに適用できる考え方を整理して話してみました。

同じ服装をしても華やかでよいと見える人と派手すぎると反感を買う人がいる。同じ「控えめ」にしてもシックに見え信頼される人と地味すぎて埋没してしまう人がいる。メイクや姿勢、自信などに印象を大きく左右されるのが女性ビジネスパーソンの服装の難しさでもありましょうか。今後の課題盛り盛りです。

実はこのお仕事のオファーがあった直後くらいに、女性のビジネスパーソンが成功するための服装術の本の監修をするお仕事をいただいたのですが、まさしくその本が、上で挙げた「古典」だったのです。あまりのシンクロニシティにちょっと驚いていました。本のほうは、アメリカで20年前に発売されたもので(さらにその10年ほどまえに改訂前のバージョンが出ている)、おそるべきことに、内容がほとんど古くなっていないのです。アメリカのビジネスパーソンが20~30年前に悩んでいたことが今の日本の企業で働く女性の悩みの種になっているということか。だって今のアメリカのビジネスウエアと聞いて連想するのは「Suits」のジェシカ・ピアソンやドナやレイチェルだよ。笑



 

 

講演後の恒例のおつかれさま一杯、渋谷HUBにて。ほぼ満席のお店が全員、外国人でした。雑多ななまりの英語がとびかう状況、なつかし。鉄板のパブフード。

ブルネロ・クチネリ2018年Fall & Winter 展示会。ブルネロ・クチネリ・ジャパン本社にて。ウィメンズのプレゼンテーションを中心に拝見しました。

 

テーマはFolk Alchemy。インターネット時代の現在は、離れた地域同士、離れた時代、離れた外観などさまざまな要素が混ざり合い、化学反応を起こし、自由で新しいフォークロアも誕生。そうした現代の雰囲気をアイロニックに、でもとてつもなく贅沢に、表現したコレクション。

一点一点が手作業による「アート」。手編みのニットもおそろしく手がこんでいる。上のニットは職人が35時間かけて編んだもので、価格はなんと約100万円だそうよ。

ファブリックとしては70年代を思わせるベルベットが出てきてますが、そのバリエーションも7種類。マッチセットでは、メンズ風の素材が使われていても、ブルネロ・クチネリならではのきらりと光るダイヤモンド刺繍のアクセントが散りばめられていたりして、新時代のフェミニニティを感じさせます。

これは一目ぼれシャツ。透け感ある素材の上に、精巧な刺繍が施されています。

写真ではそのよさが伝わらないのが残念ですが、すべてのアイテムはシルエットが洗練されているのはもちろんのこと、何よりも圧倒的な素材の勝利感を漂わせています。

色に関して面白かったのは「New Monocromatic」という概念。同じ色相の中で、微妙に違う色を組み合わせていくコーディネートが今年風。ちなみに、ブルーグリーン系、エナジェティック・レッド系が今期クチネロの一押し。

 

一方、メンズのテーマはNatural Innovation。中間色の、ぬくもりのある色調の美しさときたら。これらはやはり素材そのものの良さが醸し出す品格ですね。

なんともいえない、イタリア独特のさりげないリッチ感。こういうのを見て打ちのめされてしまうと、「形」よりもむしろ「素材」がいかに重要かがわかります。

この点を意識して、これからお買い物をされる時には、まずは素材を重視されることをお勧めします。ベーシックで素材のよいものを厳選して買い足していくのが賢い「投資」になると思います。安いものをたくさん買ってバリエーションを増やしても表面の安っぽさが上書きされていくばかりですが、上質でベーシックなものを身につけていると、服をとっかえひっかえしなくても、信頼に足る人に見えてくるものです。そのような価値観をもつ人から誘われやすくなれば、結果として公私においてチャンスが増えます。あとは本人がそのチャンスをどう活かすかにかかっているわけですが。(表層が高級でも中身が伴っていなければこの時点でチャンスは消える)

中途半端な安物ばかりたくさん買っても結果として資産を減らす一方でチャンスにも恵まれないということになれば、どっちが人生にとってのよりよい投資になるのか、明らかですよね。同じ予算ならば、安物を5着よりもできるだけ上質なものを1着。その方が人生が明るく回転し始めます。(この考え方を生活の全ての場面に適用していくことで、上質な印象が内面そのものの反映のように見えてきます)

 

 

展示会のおみやげはブルネロ・クチネリの拠点のあるソロメオ村のオリーブオイルでした。オリーブオイル好きとしてはとても嬉しい。ありがとうございました。

 

 

続いて日本経済新聞土曜夕刊連載「モードは語る」。

本日9日付では、理想の完成品よりも不完全なものが何かに向かうプロセスを見たいという現代の「モード」(=心のあり方)について書いてます。

 

記事でもとりあげた「半・分解展」、名古屋展もいよいよ12日から。トークショーは17日(日)です。

<名古屋会場>

日時 6/17(日)13:00~14:30 (受付け開始 12:30)

会場 愛知県名古屋市東区大幸南1丁目1−1−10 カルポート東 4F ギャラリー矢田 第一展示場

お申し込みは、こちらからお願い申し上げます

 

 

その日はナゴヤドームでAKBの総選挙とやらがあるらしく、周辺のホテルはすべて満室だそうです。

で、AKBってなに? 知らないわ、わたくし。笑

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

週末だけ帰ってくる長男がバースデーだからと持ってきてくれた花。素朴な花束ですが、少ないお給料(公務員でも今の20代のお給料って悲しくなるくらい低い。配分が間違ってるのではないか?)から捻出してくれたと思うとひときわ嬉しい。


ドイツの高級ハンドバッグブランド「コンテス」の一日アンバサダーをつとめさせていただきました。

私が日頃より敬愛する方々をお招きし、帝国ホテルのメインダイニング「ラ・セゾン」の個室でランチをいただきながらのサロン。


「ファンタスマゴリック・ホースヘア」(変幻自在のホースヘア)と題したミニレクチャーをおこなったり、コンテスというブランドにまつわるお話を聞いていただいたり。

実はホースヘアは西洋の女性のアンダーウエア(クリノリンやバッスル)にも使われていたことがあるのですが、その件に関連して鹿鳴館ドレス(バッスル使用)の話をすると、すかさずこの付近は鹿鳴館跡地だったと指摘してくださる方がいたりして、私も同時に学ばせていただく楽しい時間になりました。

希少なホースヘアを使ったバッグ、「ジャッキー」です。ハンドルとエッジに皮革が使われていますが、あとはすべてホースヘア。皮革部分のほうが先に傷む、といわれるほどこの素材は丈夫です。一目で品格が伝わるバッグは、世界のロイヤルファミリーやセレブリティに愛用されていることでも知られています。

アート、音楽(と占い)、不動産投資、写真、ホテル、ビジネス、と異なるジャンルで悠々とオリジナルな活躍を楽しむ方々にお声掛けしたのでみなさんが初対面同士でしたが、まったくそのようには思えない盛り上がりぶりで、にぎやかながらあたたかくよい雰囲気に包まれていました。

 




帝国ホテルのおもてなしもスマート。本格的なフレンチのコースにシャンパン(ドゥーツ・ブリュ・クラシック)、白ワイン(サンセール・シャヴィニョル・ブラン2015)、赤ワイン(プレリュード・ド・シャトー・マルソー2013年)。

一点一点のお料理がすばらしいだけでなく、会話のタイミングを見計らったサービス、行き届いた丁寧な立ち居振る舞いも、よい雰囲気に貢献してくれました。

 


シェフ、ティエリー・ヴォワザン氏も挨拶に訪れてくれました。みんなが一斉にスマホを向けると「こわいです~」と。笑


特別にこのようなケーキまで!

 

後列左から、岩佐文恵さん(ブランディングと不動産投資のエキスパートにしてソーシャライト)、林佳代さん(プリンスホテル東京シティエリア統括)、菊池麻衣子さん(パトロンプロジェクト代表、アートPRのエキスパート)、小出寛子さん(ビジネス界では知らぬ人のいないアマゾネス。日米各社取締役を経て現ヴィセラジャパン取締役)、前列左から、小田島久恵さん(オペラ、クラシック音楽の評論家にして「青島ひかり」の名で占い師)、今道しげみさん(写真家。本欄掲載のLiving PhotoまたはComtesseとクレジットのある写真はしげみさん撮影。写真教室も主宰)、そして中野です。

その後、帝国ホテルプラザ内のコンテスブティックに移動し、実際にハンドバッグの数々を手にとっていただきました。それぞれお気に入りを選んでフォトセッション。


ブティックに飾られているのは、ホースヘア。馬のしっぽです。コンテスでは約200色に染め上げることが可能です。馬の一生の間に5~8回だけ、切り取ることが可能とのことです。馬は生きたままで、しっぽはまた生えてくるので、エシカルな素材でもあります。西洋の生活文化には常にホースヘアが共にあります。その詳細をミニレクチャーで解説しましたが、機会がありましたらまたみなさんにもお伝えしますね。


店内でフォトセッションを楽しみましたが、ご自分の好きなものがはっきりしている方ばかりなので、誰もが「なるほど!」と納得するバッグを選んでいらっしゃったのが印象的でした。


コンテスは実はホースヘアとともにクロコダイルでも有名です。こちらはネイビーのクロコ。圧巻の迫力。ちょっとした車一台買えてしまいそうな価格です。

 

お別れ際に、ブティック前で麻衣子さんと。私が持っているのはケイト・フラップです。


皇室の方ももつ「プリンセスバッグ」のブランドとして知る人ぞ知るコンテスですが、より多くの方に価値を知っていただき、親しんでいただきたいという趣旨のサロンでした。それを超えて、ご参加くださった方々どうしの新しいつながりが生まれたことも望外の喜びでした。ご参加くださいましたゲストのみなさま、コンテスのスタッフのみなさま、帝国ホテルのスタッフのみなさま、ミヤビブランドコミュニケーションズの田中雅之さん、ありがとうございました!

 

 

 

 

 

Jun Ashida 広報誌JA  No.110が発行されました。

ファッションエッセイを寄稿しています。お近くのJun Ashidaのショップへ是非お立ち寄りください。

といっても、近くにお店がないという方もいらっしゃいますので、スキャンしたものをアップします。


『「一流に見える」「幸せそうに見える」「知的に見える」ファッション』とは。

 

Twitter アカウント、kaorimode1 にて、日英仏、各国語版を全文アップしていますよ~。そちらのほうが見やすいかも。シェアしやすいし。英語版、フランス語版、海外に広く届きますように。

Vulcanize London 2018 AW Exhibition.

2018秋冬のテーマはRoyal Styles。いつもこのテーマなわけですが、最新バージョンにアップデート。ターンブル&アッサーは映画「ウィンストン・チャーチル」のアカデミー賞受賞を記念して、彼の愛用品、ポルカドットのタイやシルクガウンを復刻。

チャーチルのポルカドット!

裏返した図。触ってもうっとりの品質の高さは目で見てもわかる。結び目が決まる。

安定のギーヴズ&ホークス。

 

軍服アーカイブから、通称「ガイコツ」ジャケットも展示されていました。1860年くらいのもの。長谷川君が入手したら分解を始めそうな。笑

スマイソンには、1960年代からヒントを得たチェリー、キャンディピンクやゴールド、コバルトなどの新色が加わる。ゴールドもぎらぎらせず、上品です。

グローブトロッターはなんと、ロイヤル・エア・フォースとコラボした新作!

アーカイブからの展示も博物館のようで萌えます。

あたかもオーダーメイドしたかのような奇抜な色の組み合わせを駆使した新作も。

ウィメンズではなんといってもGoatの存在感が高まっています。キャサリン妃もかねてから愛用していましたが、メーガン妃も公務で着用したことで、さらに注目度が上がってます。デザイナーはジェーン・ルイス。主張しすぎない贅沢、がコンセプト。

スウィーツのディスプレイはロイヤルウェディングがテーマになっています。

ハリー王子とメーガン妃の結婚式で供されたエルダーフラワーとレモンのケーキ。

そしてウィリアム王子とキャサリン妃の結婚式で供されたケーキ。それぞれのレプリカ。

たっぷり目の保養をしつつ最新ロンドンの空気を浴びたような満足感。スタッフのみなさま、ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「婦人画報」7月号発売です。

シャネルのメティエダールコレクションについての解説を書きました。メティエダールってよく聞くけどいったい何?? 何のためのコレクション?? という疑問にお答えします。機会があったら読んでみてくださいね。

 

 

 

 

 

 

アロマの専門家、平野佐和さんから、「少し早めのバースデープレゼント」として貴重な精油、ローズオットー2013年産をご恵贈いただきました。ありがとうございました!

なんと「5年もの」。香りも熟成するんだ、と初めて知りました。さらに鮮烈で、しかも深みのあるバラの香り。「無意識の層」が覚醒してきます。

 

 

 

 

Akris 2018 FW Collection.

20世紀初めのオーストリア、ウィーンが舞台。機能主義、合理主義、自己表現の自由が生まれ、サロニエールが台頭した時代です。グスタフ・クリムト、エゴン・シーレといった芸術家もこの時代に活躍していますね。

そんな時代の芸術や建築に連想が及ぶ、アート色の強い、美しく知的なコレクションでした。当時を席巻した鮮やかなブルー、グリーンといった力強い色彩、建築様式の要素を取り入れた凝った細部が印象的でした。

左のデニムの生地はメイドインジャパン。右のドレスがの素材はワッフル状の起伏が石畳のようなニュアンスのある模様をあぶりだしており、とても軽く、スーツケースに入れてもしわにならない。ジェットセットを意識した一着ですね。



写真ではわかりづらいのがもどかしいですが、左のセットアップは、カシミヤがベースなのですが、黒い模様はレザーの帯なのです。これを手でカシミヤに編みこむように通して模様のように見せています。オットー・ワーグナーの建築様式を表現。

右はあざやかなピーコックグリーンのシフォンドレスとムートンのコート。この色はマラカイト(孔雀石)の色で、19世紀から20世紀の建築に多く使われた鉱石だそうです。

右のコートは一目ぼれコートでしたが、この柄は、ウィーンで活躍したモダニストの建築家が好んで使った大理石の模様を表現したもの。プリントではなく、わざわざ編んであるそうで、ストレッチも効いてます。

パズルのような楽しい一着は、大きさの異なる大理石からヒントを得た柄で、こちらから見て左側(私の右側)、開いてみると、ていねいに「ひび割れ」の柄まで入っているんですよ!

コレクションにも多用されるブルーが美しい、エルダーフラワーのドリンク。

デザイン、素材の扱い方、テクニック、すべてにおいてたっぷり時間をかけて最高級が追求されながらも、これ見よがしなところがかけらもないさりげなさが素敵でした。こういう洗練こそがアクリスの底力であり魅力なのだとも納得。スタッフのみなさま、ありがとうございました。

 

 

よい気分で朝起きたらあらゆるロイヤルウェディング情報が出そろってました。こちらから情報をとりにいかなくても勝手にどんどん流れてくる。便利な時代になりましたね。もうロイヤルウェディングはお腹いっぱいというほど。

いくつかのニュースメディアからピックアップした情報を、(ほとんど自分のためですが)ランダムにメモしておきます。裏をとるべきものも混じっています。きちんとした考察は25ans で話す予定なので、しばしお待ちくださいね。

こういう情報洪水の時代には、「専門家」と呼ばれる人には、その情報をどのように見るのか?という視点と表現力が問われることになりますね。しかも誰もが「評論家」になれる時代なので、無難な(客観的な)ことを言っても誰も耳を貸さない。独自の芯が通っていないと存在価値もなくなる。特異な方向にエッジをとがらせ続けないと生き残れないので、「好き」でやってる人しか残らない。だから「変人」にはいい時代だ、きっと。

 

・通常、ロイヤルウェディングでは花嫁は馬車の右に乗るのに、メーガンは左側に乗っていた

・ヘンリー王子は 花嫁のベールを上げるのを10分忘れていた

・メーガンのネイルはEssie のBallet Slippers という色だった。8ドル

・ゲストのスーツ姿でひときわ際立っていたのはデビッド・ベッカム。ブランドはディオール・オムだった

・ヘンリー王子が着用したのは、イギリスの近衛騎兵連隊ブルーズ・アンド・ロイヤルズの制服。髭をそってなかったのはいつものヘンリーらしいと逆に好評。ページボーイたちが着用していたのも、ブルーズ・アンド・ロイヤルズのミニチュア版だった

・祭壇までメーガンをエスコートしたチャールズ皇太子。実はメーガンが皇太子に一緒に歩いてくれるよう依頼していた

・メーガンのウェディングドレスはジバンシイのクレア・ワイト・ケラー。ケラーはイギリス出身。デザイナーはイギリス出身者、しかしブランドに関してはアメリカでもなくイギリスでもない、フランス。このようなブランドを選んだのは彼女なりの配慮??

・ヴェールのデザインもクレア・ワイト・ケラー。長さ5mだった。ドレス本体はシンプルだったが、ヴェールにはお約束のイギリス連邦53国、それぞれの国の花が刺繍されていた

・メーガンのティアラは、メアリー王太后(エリザベス女王の祖母にあたる)のダイアモンドバンドティアラで1932年に作られたもの。ブレスレットとイヤリングはカルティエ

・ブーケ製作はフィリッパ・クラドック。使用した花の一部をケンジントン宮殿の庭園でつんだのはヘンリー王子。ダイアナ妃が好きだった「フォーゲットミー・ノット」のほか、スイートピーやスズランがアレンジされていた

・シャーロット王女のドレスもジバンシイのクレア・ワイト・ケラー。靴は「アクアズーラ」

・誓いの言葉からは「obey」がカットされていた(ダイアナ妃もキャサリン妃もカット)。誓いの言葉を言う時、2人が手をがっちりとつないでいたのはロイヤル婚では前例なし。(ウィリアム王子は上品にキャサリンの手をとっていたが、ここまでがっちりとつながなかった)

・美男のチェロ奏者はなんと19歳のシェク・カネー=メイソン。2016年にBBCヤングミュージシャンのコンクールで優勝した新人。メーガン自ら電話で演奏を依頼していた

・二人の結婚指輪を制作したのは、クリーブ・アンド・カンパニー。メーガンの結婚指輪に使われているのはウェールズ地方だけでとれる貴重なウェルシュゴールド。王室では、このゴールド100%の結婚指輪をおくるのが伝統。ヘンリー王子のそれはプラチナである

・レセプションのケーキも前例やぶり。「ヴァイオレット」のシェフ、クレア・タックがデザイン。シチリア産のレモンやオーガニックの卵を使ったフレッシュなケーキ。これまではドライフルーツや洋酒を使った長期保存できるものだった(それを一周年に食べる)

・セレモニーの間、ウィリアム王子のとなりが空席として開けられていたが、それはダイアナ妃のための席だった?

・レセプションのために着替えたドレスはステラ・マッカートニー。指にはダイアナ妃がつけていたアクアマリンの指輪

・メーガンのまとめ髪はいつもどこかほつれているのだが、今回もほつれていた(見直してみて発見)。イギリスのタブロイドを見ると、”Fashionably messy updo”  あるいは”Messy bun” なんていう表現がされていた。なるほど。そばかすを隠さないナチュラルなメイクも、肩の力が抜けていて斬新

・レースもパールもフリルもついてない、素材のよさと構築性だけで見せるドレスは、自信にあふれた抑制と呼びたくなるもの。ワシントンポストのロビン・ギヴァンはこれを”Confident Restraint”と表現。さすがうまいな

 

・ダイアナ妃が残した言葉 ”If you find someone you love in life, you must hang on to it and look after it, and if you were lucky enough to find someone who loved you then one must protect it.”  こういう母の教えをハリーは守ったのね。

・批判をごちゃごちゃ書いてる人もいたけど(こういう人はいつでもいる)、いや、この時代に必要な「多様性の統合」のこの上ない象徴として最高だったと思う。英王室はいつだって「統合の象徴」なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

北日本新聞別冊「まんまる」6月号が発行されました。

 

連載「ファッション歳時記」第80回、「慣例やルールに確たる根拠はない」。

ご笑覧くださいませ。

今日はパリ五月革命から50周年。五月革命がもたらしたファッションの変化について解説しました。

Nikkei Style 電子版です。「パリ五月革命から50年。そのとき装いも変わった」

お時間がゆるすときありましたら、ご笑覧くださいませ。

読売新聞夕刊連載「スタイルアイコン」。今月より金曜夕刊掲載となりました。

本日は、ニューヨーク知事選への出馬を表明した、シンシア・ニクソンについて書いています。


(New York Times より引用させていただきました。ありがとうございます)

ドラマ「Sex and the City」のミランダ役で知られる方ですね。

本文で触れているこのTシャツはもちろん、ディオールの”We Should All Be Feminists” Tシャツを踏まえて作られたもの。

 

お近くに読売新聞がありましたらどうぞご覧くださいませ。

 

<追記>

大安吉日の18日、リッツカールトンホテル東京において、一般社団法人日本フォーマルウエア文化普及協会 (Japan Formalwear Culture Association) の設立記者会見および記念パーティーが開かれました。

この協会は、タキシード専門店「ロッソネロ」の横山宗生さんが理事長となって組織されました。日本独自のフォーマルウエア文化を普及させるとともに世界に発信し、同時に日本の伝統文化や伝統産業の継承および発展に寄与し、地域経済の活性化に貢献するというミッションを担います。(伝統的な繊維産業は、続々と閉業の危機に見舞われています。)

ファッションショーも行われました。衣装もさることながら、音楽もパフォーマンスもセンスよく、新しい時代のリズムを感じさせます。写真で伝えきれないのがもどかしいですが。

日本ならではの着物フォーマル。


モデル勢ぞろいの図。


(理事と顧問、記念写真)

私は横山さんからのご依頼を受けて、協会の顧問としてお手伝いさせていただくことになりました。私自身がこれまで新聞はじめ各メディアで発信し続けてきた疑問点の数々。それを時代に合った形で解消し、これからの日本のフォーマルとして具体化しつつ発信できることに貢献できれば嬉しく思います。「批評」を机上で書くだけなら簡単。問題点を実際に変えていくとなると、現場の力をお借りすることがぜひとも必要です。150年前に迎合や忖度で決まってしまった慣行、戦後にアパレル会社が定めた便宜的な「ルール」を見直す時が来ています。熱意にあふれるメンバーとともに、グローバル時代に合ったフォーマルウエアの意識改革を進めていければ幸いです。同時に、伝統織物の産地に需要が生まれるような仕組みを作ることができればいいですね。貴重なレガシーがどんどん失われていくのを傍観していくのではなく、お役に立てるのであれば、微力でも何らかの貢献ができるよう考えていきたく思います。みなさまからのご助言、ご提言もぜひお寄せくださいませ。

 

 

モデルのみなさまと。私が着ているドレスは「ロッソネロ」の横山さんデザインです。「ロッソネロ」では、4月からドレスの制作も始めています。女性洋装モデルが着ているのも、豪華な西陣織や米沢織、桐生織の着物地をドレスに使ったもので、至近距離で見るとうっとりする美しさです。

横山さんのご人徳もあって、夜からの一般パーティーは大盛況でした。このバタフライポーズは「蝶ネクタイ」の象徴、ということで。

 

さっそくlivedoor newsにとりあげていただきました。こちらです

 

 

北日本新聞別冊「まんまる」5月号発行です。

連載「ファッション歳時記」第79回「生首とジベリーノ」をテーマに書きました。

以下、本文に注としてつけたい写真です。

グッチの生首。

ドラゴン持ちも。

そしてジベリーノ。 貴婦人が手で持つ「アクセサリー」。

 

 

 

上は、昨年、ロンドンでダイアナ妃のデザイナーだったポール・コステロ氏にインタビューしたとき(日本人初だそうです)に、コステロ氏が「記念に」とその場でさらさらと描いてくださったデザイン画です。A3サイズだったので縮小してコピーし、データ化しました。もちろん原画は宝物として残しておきますが、やはり多くの人に見てもらってこそいっそう価値が上がるものもあります。

 

☆☆☆

読者や視聴者のご意見から、予想もしなかった面白い視点を与えられることがあります。最近もっとも印象に残ったのは、銀座ローターリークラブの会長さんからの、私の講演後のまとめのお話でした。「ホリスティックにファッションをとらえていらっしゃるので、生活のあらゆる側面に意識を向けることにつながり、また、これだけ多くの観点からファションというものを考えていれば、生涯を通じて楽しくご研究を続けていけることでしょう」という趣旨の話でした。

「ホリスティック」という言葉は医学ではよく聞きますが、こういう使い方もできるのか、という発見がありましたし、なるほどたしかに、ここまで視野を広げておくと、重点をその時々でホットになる観点に移せばよいので、飽きるというはなさそうですね。

 

何度か掲載していますが、私が自分のFashion Studiesにおいて定義している「ファッションの構成要素」です。↓

 

既成の定義がキュウクツだ、と感じたら、誰にも迷惑をかけないかぎりにおいて、自分で書き換えればよいだけのこと。「リベラルアーツ」の起源は、人を奴隷状態から解放するための学びであったことを忘れずにいたいですね。

 

People and land need healing which is all inclusive – holistic. (By Allan Savory)

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆トークショーのご案内です☆☆☆

「半・分解展」東京・名古屋、各会場で、世界にも類を見ないこの展覧会をプロデュースする長谷川彰良氏とのトークショーに登壇します。

「体感するファッション史 ~半・分解展の現在~」 Save The Date!

<東京会場>

日時 5/26(土)14:00~15:30 (受付け開始 13:30)

会場 東京都渋谷区桜丘町23-21 10F 文化ファッションインキュベーション

聴講料 2,000円

お申し込みは、こちらからお願い申し上げます

 

<名古屋会場>

日時 6/17(日)13:00~14:30 (受付け開始 12:30)

会場 愛知県名古屋市東区大幸南1丁目1−1−10 カルポート東 4F ギャラリー矢田 第一展示室

聴講料 2,000円

お申し込みは、こちらからお願い申し上げます

 

2014年、2015年ごろのリシェスの連載を中心に、新しくpdf化したアーカイブ記事です。なぜだか「magazine」欄のタイトルからpdfに飛べなくなってしまったので、問い合わせ中です。まずはこちらにまとめてアップしておきます。

富裕層向けの雑誌なので、内容も浮世離れしておりますね。

お時間のゆるすときあれば、ご笑覧ください。

 

 

<連載:リシェス・オブリージュ 富の品格>

リシェス創刊号からの巻頭連載です。

第1回 富の品格

第2回 富裕層とエリート教育

第3回 ファーストレディの責務と愛

第4回 音楽とチャリティ

第5回 『富と名声』が向き合う環境問題

第6回 ブランドによる伝統技術の保護

第7回 人々の幸福と植物

第8回 スポーツを取り巻く支援

第9回 未知を求めた旅の果て

第10回 人は、与えるものによって人生を作る

 

<連載: 世界のソーシャルカレンダー>

世界の富裕層はこういうカレンダーに沿って地球を移動しているというお話です。

2015 spring 国際会議

2015 summer リゾート

2015 autumn 

2016 winter ファッションとアート

 

(こちらはリシェスではありませんが、ホワイトハウスコックスのファンブックに寄稿した記事)

・2016年11月16日 「ジェントルマンと馬とブライドルレザー」(Begin編集部特別編集 Whitehouse Cox Fan Book、世界文化社)

日本経済新聞 日曜版Nikkei The Style .

本日は、ブランドの事業継承について書いております。データを集めるのにかなり苦心し、実際におこなった取材も涙をのんで紙幅の都合などでカットし……という幾多の苦労を乗り越えての凝縮された1ページです。ご協力を賜りながら泣く泣く取材内容をカットしなくてはならなかったブランドのご担当者さま、ほんとうにごめんなさい。お話は無駄にしないよう、なにかの機会に活かします。心より感謝申し上げます。


DVF。期待されたジョナサン・サンダースもあっという間に退職。

RL。ステファン・ラーソンは多額の退職金と共にすぐに退職。

CK。ラフ・シモンズを得て、うまくいっている例。

 

でもこういう記事をいくらたくさん書いたところで「業績」の足しにもならない、と面と向かって言われたこともありましたね。

 

いろいろな価値観があります。どうも私はだれか知らない人が作った制度や価値観のなかで「そういうものだ」と言われるままに収まっていることが耐えられないようです。

 

そんな世界もあるし、違う世界もある。今日の記事は苦労して凝縮しただけあって、一字の無駄もなく、面白いと思います。読んでみてくださいね。

<追記>
スキャンした記事をアップしますね。

 

 

 

☆☆☆

ところで、プロフィル写真を4年ぶりくらいに更新しました。

このギャグすれすれな「(笑)」という感じ、どこまで伝わるかわかりませんが。撮ってくださったのは日比谷のフォトスタジオOPSISです。マリア・カラス風のイメージでお願いしたら、こうなりました。不評だったらその時はその時、また別のバージョンで撮ればよいわ。同調から抜けられず口先だけ多様性を唱える社会に対してうんざりするのも飽きたので、一人多様性。笑


“Diversity: the art of thinking independently together.” (ByMalcolm Forbes)

日本経済新聞土曜夕刊連載「モードは語る」。

本日は、日本特有の礼装「カップルなのに男性はモーニング、女性は黒留め袖」の起源について思うところを書きました。ぜひ、読んでみてくださいね。

参考文献は、先日ご紹介いたしました小山直子さんの著書です。

 

みなさん、あの和洋混合の礼装を奇妙だと思っていないんでしょうか? 式場に和洋とりどりの装いの方がいらっしゃるというのはとても素敵だと思いますが、カップルなのに和洋別々、というのは何なのでしょうか。「そういうものだ」というふうに式場から言われるから、まわりがみんなそうしているから、よけいなエネルギーを使わないように従っておく、という方が圧倒的なのではないのかと憶測するのですがいかがでしょう…。

私はそういうのが耐えがたいのですよね。なぜ明らかに奇妙な組み合わせなのに「みんながそうしているから」「これまでそういうものだったから」という理由だけで従わなくてはならないのか。

せめて起源を知りたい、最初に「決めた」のは誰なのかを知りたい、そんな奇妙な組み合わせを平気で「そういうものだ」ということにしてしまえるメンタリティの仕組みを明らかにしておきたい、と考えながら読んでました。

 

それにしても、「みんなそうしているから」という意味不明の理由だけで周囲と同じことをするなんてまったく理解できない、という性格ゆえに、しなくてもいいソンをしてしまっていること多々でした(今もだが)。自分ひとりだけだったらすがすがしく生きていられるけど、子供までそんな背中を見ているから「巻き添え」にしてしまったな、と哀しく思うこともあり。

がっちり日本的な組織人が言う「個性が大事」「多様性が云々」は口先だけのことが多い。今年初め、あるファッション関連の団体のパーティーに出席したら、1000人ほどの出席者のうち女性は一割もいなくて、全員、誰が誰だか見わけがつかないダークスーツ。そして壇上でスピーチする、ダークスーツ軍団の中の一人が「多様性に向けて……」とか話している。シュールでした。

 

<追記 アップしますね>

 

☆☆☆

さて。フォーマルウエアの話題ついでに、以下、お知らせです。

「一般社団法人日本フォーマルウエア普及協会 (Japan Formalwear Culture Association)」の設立記念パーティーがおこなわれます。

前半はプレス向けですが、夜の部はフォーマルウエアに関心のある方でしたらどなたでもご参加できます。

4月18日(水)19:00~21:00 ザ・リッツカールトン東京 2階グランドボールルームにて。

詳細は協会の専務理事、赤木南洋氏までお問い合わせください。m.akagi@nifty.com

 

 

新たにアーカイブ入りしたpdfです。順不同。お時間の許す時あれば、ご笑覧くださいませ。その他アーカイブに関しては、「etc.」でご覧いただけます。

・2017年5月6日 「ネイビーは勝利の色」(Men’s EX 6月号)

・2016年5月24日 「世界に影響を与える指導者はトラッドなのです」(Men’s Club 7月号 No. 665)談

・2011年12月6日 「『カントリー・ジェントルマン』とはいったい何者だったのか?」(鈴木文彦さんとの対談 Men’s Precious 2012年1月号)

・2009年7月1日 「モードがマンガに接近中って、本当ですか?」(VOGUE  7月号 No. 119)談

・2011年7月1日 「インディアンの自然観から学ぶもの」(Equus 8月号)

・2017年4月27日 「ロイヤル婚のレジェンド、美智子様とグレース公妃の魅力」(25ans 6月号)

・2011年4月27日 「英国王室のラブ・ストーリーは、なぜこんなにも人々を惹きつけるのか?」(25ans 6月号 No. 381)

・2011年4月6日 「なぜ、今、『王室御用達』なのか!?」(Men’s Precious 2011 spring)

・2011年4月6日 「英国人にとってロイヤルワラントとはいかなる意味を持つのか」(Men’s Precious 2011 spring

・2010年12月25日 「ケイト・ミドルトン、ウィリアム王子との愛」(25ans 2011年2月号)

・2017年7月28日 「没後20年記念特集:ダイアナ妃という伝説」(25ans 9月号)

・2012年11月1日 「私はわが道を行き、ふさわしいスタイルを貫く。」(チャールズ皇太子特別寄稿『私のファッション論』翻訳 / GQ 11月号)

・2012年11月1日 「プリンスにふさわしい風格」(ビル・プリンス寄稿”Fit For A Prince”翻訳/ GQ11月号)

・2012年11月1日 「時代がようやく追いついた」(GQ 11月号)

・2011年2月26日 「ランヴァン クリエーティビティとリアルを共存させる稀有なるメゾン」(25ans 4月号)

・2011年5月 「人生をまるごと仕事として生きたココ・シャネルに学ぶ『自立』と『自由』」(松竹製作 日生劇場ミュージカル「ガブリエル・シャネル」パンフレット

・2015年6月27日 「師にして姉にして親友の『25ans』と歩んだ35年」(25ans 8月号 No. 431)

・2016年7月1日 「輝いている女たち 第一回 中野香織」(Brilliant Glanz 2016 summer issue)

・2016年12月7日 「ゲラン 美学の結晶『オーキデアンペリアル』洗練の美肌伝説」出演(Precious 2017年1月号 別冊付録)

 

またこちらでは、マンガのキャラとして登場しています。(綿谷画伯×いであつし文豪の「ナウのれん」100回記念号です。)

・2016.12.16  「ナウのれん」100回 (Begin 2017年2月号)本来、もっと長い記事ですが、登場しているところだけ掲載させていただきました。

 

 

 

 

こちらは、先日のTae Ashida コレクション会場での一枚。オフィシャルカメラマンが撮影してくださったもので、オフィシャルインスタグラムにアップしてくださってました。ありがとうございました。ブロンズのドレスは今シーズンのTae Ashidaです。袖は繊細なレースになっています。ブロンズは、昼間の平明な光の下で服だけを見ると派手な印象ですが、夜間の照明の下だと意外に肌になじんでしまいます。

なんでもそうですが、照明しだいでいかようにも見え方が変わりますね。どのように光をあてるかによって見え方が変わるということは、もちろん仕事はじめ人の営み全般について言えそうです。

超大型本です。届いてびっくり。フォトグラファー、クリス・ムーアが60年にわたって撮り続けてきたファッションショーの写真のなかから、時代を象徴するような写真が選び抜かれています。

ココ・シャネルの最後のショーから、ミュグレー、ガリアーノ、マックイーン、ヴェルサーチェといったドラマティックなデザイナー、そして2017年にいたるまで。

ところどころにアレクサンダー・フューリーのテキストが添えられています。

ミュグレーのイマジネーション、開花。

ため息をつくしかない美しいライン。2003年のグッチ。現在の「生首グッチ」からは想像もつかないエレガンス。

サンローラン、1992年。モデルが上着をとったときの衣ずれの音まで聞こえそうな。

問答無用のクリスチャン・ディオール時代のガリアーノ。クレジットを見なくても「ガリアーノ!」とわかる作風。オートクチュールはこうじゃなきゃね。

カメラのフラッシュ、フラッシュ、フラッシュ。これがショーのテンションを上げるんですよね。

けた違いにグラマラスなおよそ500ページにわたる世界。一枚、一枚の写真が、ひとつひとつの作品が、ここまでやるのかという情熱を伝えてくる。

なにか生み出そうとするとき、この写真集はモチベーションを上げてくれる。なまぬるく「こなす」のでは仕事にならない、圧倒的にエネルギーを注ぎ込まなくては人の心はつかめないし、永久に残る作品にはならないのだと戒めてくれる。

350ページほどある本格的な学術書で、この手の研究書を読み慣れていない方にはハードルが高いかもしれないのですが、興味のある向きにはお勧めです。小山直子さんの『フロックコートと羽織袴 礼装規範の形成と近代日本』(勁草書房)。

次回の日本経済新聞の連載「モードは語る」にこの本のことについて、またそこから感じた「日本人の、変わらぬメンタリティ」について書きました。しばし、お待ちくださいませ。

「礼服」に含まれた真の意味、和洋混合フォーマルの起源を丁寧に検証し、明らかにしてくれたよい本でした。御茶ノ水大学に提出した博士論文がもとになっている本とのことです。小山直子さん、リスペクト。

 

昨日は新宿のホテルで次男の学校説明会。知識を得るということがいとも容易くなったいま、得た知識をどのように表現するのか、いかに社会と接点を作って世の中に役立てていくのか、熱中できるニッチなことをどのように社会とからませていくのか、教育の主眼がそちらに移っているということを実感する。学校で授業をするならば、youtube やパズドラより面白いものにしなくてはならない(!)。教師のライバルはyoutuber。だから教師のメインの仕事は一人一人に向き合うコーチングにシフトしていく。5年前の「職業」の枠組みや価値観は5年後には「過去」のものになっているだろう。

(写真のホテルは会場となったホテルの近くだったので帰途に立ち寄りました)

子供の将来を考えながら自分の仕事のあり方もあれこれ考えさせられた良い機会でした。

追加したpdfの中から。続きです。いつか未来に「過去にはこんな見方もあったのか」という資料として誰かの役に立つかもしれないし、何の役にも立たないかもしれない。紙の雑誌も5年後あるのかどうか、なんとも予測できない時代ではありますが、「こんな誌面のデザインがあったのか」という点で面白がられることがあるかもしれない。フォントが揃わずお見苦しく申し訳ありません。いったん他に転記して揃えてから戻す、などいろいろ試しましたがリンクが消えてしまったりと素人には難しく、サポートに聞いてもうまくいきませんので、このままでご寛恕ください。

 

 

 

 

 

 

 

新たに追加した過去作品pdfのなかからピックアップしました。とりわけメンズファッションに関し、10年以上前に書いたり言ったりしていることのなかには、「歴史」になった話もありますが、実はそんなに古くなっていないものも多い。メンズファッションが大きく変化していないからか。たぶんそれも一部。あるいは本質をついているからか。後者が少しはあると思いたい。未熟だったりダサかったり気負いすぎていたりする過去の自分を消去したいのが本音だが、そういうダメだった自分を救えるのも自分しかいない。10年後、今の仕事を見て「なかなかきちんとやっていたな」と納得できる、そういう仕事を今、現在やり続けていかなくてはいけないのだとあらためて自戒。順不同です。ここにピックアップした以外のものは、etc.の欄に。

 

 

 

 

ドイツ生まれのバッグブランド、Comtesse (コンテス)とお仕事をご一緒にすることになり、インペリアルプラザのショップに伺いました。

Comtesse とは伯爵夫人という意味。日本でもその名が知られているのはプリンセスバッグなのですが、丸い持ち手に特徴のあるこのバッグは、世界中のロイヤルファミリーの女性の定番でもあります。


(上段がプリンセスバッグのバリエーションです。)

このブランドのバッグの独特の質感は、ホースヘアの生地を使っていることから生まれています。馬の毛ですね。丈夫で耐水性があり、艶があって美しいことでヨーロッパではかねてより壁紙や家具などに使われていましたが、はじめてバッグに応用したのがコンテスなのです。上の写真のバッグのように、刺繍を施すことも可能です。デコラティブなバッグは最近のトレンドでもありますが、精巧な刺繍は見ているだけで豊かな気持ちになってきます。

PRの田中雅之さん(株式会社ミヤビブランドコミュニケーションズ)がもつのも刺繍バージョン、「コルネリー・カリブ」。飾っておきたいくらいの芸術品。


マンダリン色の生地に刺繍された「コルネリー・カリブ」。元気が出てきそうなバッグ。もつのはカスタマーリレーションの杉浦弘美さんです。

ホースヘアは一度脱色し、カラフルに染め上げることで、多色展開できるようになりました。壁にブルーと赤と白の房がかかっていますが、これがホースヘア。かなり硬くてしなやかな「繊維」でもあることがわかります。

私が持っているのが、新作の「Kate」。ホースヘアと牛革のコンビネーションで、「園遊会」にもデイリーにも使えるという汎用性の高さも魅力ですね。「園遊会」って。笑。

留め金をはじめオーナメントも重厚でエレガント、バッグのアクセントになっています。

 


クロコダイルバッグの美しさも圧巻。これはもう至近距離で見ると目がとろけそうになるほど濃厚で動物的な艶なのですが、留め金や縫製に繊細な配慮が行き届き、官能的なジュエリー級のバッグに仕上がっています。

王道の黒の迫力には負けそうでしたが、このようなネイビーになると意外に軽さも感じさせ、この日の洋服にもなじんで「バッグだけ浮いてしまう」ということもありません。細部の縫製まで丁寧に仕上げられた、品格を漂わせるクロコです。

(この日のスーツはTae Ashidaです。)

春の訪れ、もうすぐですね。寒い時にまいておいたお楽しみの種がひとつずつ芽を出すと思えば待ち遠しさもひとしお。

 

MIKIMOTO展示会。ホテルオークラにて。

今回の主役は「矢車」。ミキモト真珠発明125周年を記念して発売されます。オリジナルの「矢車」は1937年のパリ万博に出品された帯留めです。細工の美しさ、アールデコのデザイン、多機能(パーツを組み立て直すことで12通りに使える)という発想の新しさで宝飾史に燦然と輝く傑作なのです。オリジナル矢車は、(当時のパリで販売されたあと、長い間「幻の宝飾品」となっていましたが、1989年に海外のオークションに出されていたものをミキモトが買い取り、)現在、鳥羽の真珠博物館にあります。

大粒のアコヤ真珠を中心にダイヤモンドやサファイアが放射状に広がるデザインから「矢車」と命名されました。

今回はそれを21世紀のミキモトスタイルで復活させました。ハイジュエリーからデイリージュエリーまで。


手前左の帯留めがオリジナルの形に近い。中央のアールデコデザインのモチーフのバリエーションが、さまざまなアイテムになって復活しています。ベルトは中央にモチーフをもってくると、仮面ライダーベルトのようになる、と真面目な顔でおっしゃったのは広報のKさん。いったんそういう視点が入ってしまうと、そのように見えてしまうのがおそろしいですな。価格はといえば……郊外にちょっとした家が買えそうなほどの「0」が並んでいます。

ブローチをつけるような位置にモチーフがくるのも現代風。

ほかにはピンクのコンクパールも美しいバリエーションが揃っており、ミレニアルピンクの流行に加速をつけそうな勢い。

40㎝ネックレスと60㎝ネックレスの印象の違いのお話や、「家が買えそうなジュエリー」をばんばん購入なさっていく顧客層の国の変化の話などを聞き、時代の流れがもろに映し出されるビジネスであることも実感。詳しくはまた機会があったら紙媒体などで。

オークラ別館のフロントロビーには桃の花。

 

今朝(というか世間的には真夜中ですが)も冴え冴えとした満月を堪能しています。あと一か月もすれば桜の季節ですね。トランジションが満月のように円満にいきますように。


 

過去作品pdf化できたものシリーズ。前回、子供に任せたら何が何やらわからなくなり、しようがないので自分でやってみたらおそろしく手間がかかることが判明。追々、仕事の合間に不定期にアップしていきます。そうこうするうちにも次の締め切りくるし。単行本もあるし。合間っていつ。

順不同です。自分で書いたものが主ですが、インタビューを受けたものもあり。インタビューを受けた記事は「談」と書いてあります。タイトルをクリックするとpdfにとびます。不備あればお知らせください。

「ジョルジオ・アルマーニというブランドが男のスタイルにもたらしたもの」  (Men’s Precious 2015年5月号 2015年4月6日発行)

・ 「ラ・マルセイエーズを! たかが酒場のワンシーンに込めし『尊厳』」(Men’s Precious 2014 年11月号 2014年10月6日)←「カサブランカ」はボギー絶賛ばかりなのですが、実はヴィクター・ラズロのかっこよさが見逃されているのではないかというお話。夫にするならヴィクターだろう

・ 「真夏の夜の嵐」(クロワッサンPremium 11月号  No.60  2012年9月20日)←めずらしく小説スタイルで香水を紹介してみた

 「愛に理由などありません ~『アンナ・カレーニナ』~」(WWD 2013 Spring 2013年2月25日)

・ 「これで王妃もギロチンへ行けるわ ~『ダイアナ・ヴリーランド 伝説のファッショニスタ」(WWD 2012 Winter 2012年11月30日)

・ 「ファッションに見る平和のムーブメント」(25ans 6月号 No. 429 2015年4月28日)談

・ 「クール・ビューティーの心意気」(ミセス 7月号 No.691  2012年6月7日)

・ 「オヤジが巻物を必要とする理由とは?」(LEON 3月号 No.137  2013年1月24日)談

・ 「時代を超えて人々の記憶に輝き続ける60~70年代のジェットセット・スタイル」(Men’s Precious × Precious 2012 spring 付録 「Gucci 男と女の旅する名品物語 2012年4月6日)

・ 「品格こそサクセスの条件」(25ans 2012年1月号 No.389 2011年12月26日)

 

 

To those who are sensitive about the issue of “Cultural Appropriation”

This video is about the “Cultural Appropriation” , produced by a student who studies design at Kyushu University, Japan.  Prof. Shaun O’dwyer at Kyushu Univ. (my former colleague) sent this to me via Facebook.  The student drew all the graphics by herself.  The controversial theme is discussed from both negative and positive sides, and eventually encourage you to feel more free to share our Japanese culture. I quite agree with her.

 

Ms. Karlie Kloss, you did not have to apologize for wearing kimono in Vogue!  At least we Japanese did not take it as offensive to our culture.


(We all felt confused why Karlie had to be so severely criticized.)

 

 

By the way, I was moved by the style of presentation. I think I can call this a kind of millennial style of academic presentation.  If you Americans cannot read written Japanese, you can watch and share the video.  Even if it might be a little immature, I love it.

 

銀座の泰明小学校がジョルジオ・アルマーニの制服(標準服)を採用するということで議論が百出しています。

決まるまでにはそれなりの複雑な事情があったはずなので今の段階で安易に是非を議論するつもりはありません。

ただ、一部イメージだけで、アルマーニを「下品」呼ばわりするニュースやSNS投稿などが目に余るにつけ、スルーしておくべきなのかもしれませんが、やはり敬愛するジョルジオ・アルマーニのために一言、擁護しておきたいと思いました。

 

ジョルジオ・アルマーニは高潔な方で、東日本大震災のあといち早く、震災遺児のために多額の寄付をしていらっしゃいますし、その後のプリヴェ(オートクチュールコレクション)では、日本文化を激励し、賛美する作品を展開して、震災直後の日本を経済的・文化的に支援してくれたのです。今生きているデザイナーのなかでも最も志高く、勤勉で、寛大なチャリティ精神を発揮している一人であることは間違いありません。

そのようなアルマーニの功績も知ろうとせず、一部の偏ったイメージだけで下品呼ばわりすることは、恩を仇でかえすようで、聞くにしのびません。

日本のブランドを採用しないのかという声も出たようですが、イングランドのサッカーチームは、ユニフォームとして(サヴィルロウではなく)イタリアのアルマーニのスーツを着ていたりします。アルマーニ・ジャパンも銀座で長くビジネスをおこなっていることを思えば、そこに国粋主義をもってくることもどうなのかなという気もいたします。

 

とりあえず2018年度は採用されるというアルマーニの制服(標準服)。もう決まってしまったことなので、どのような「効果」があるのか、あるいはないのか、じっくり観察する絶好の機会と、ひそかにとらえています。

 この本、名作です。アルマーニブランドを着る生徒さんが、ジョルジオ・アルマーニとはどのような人物で、どのような意志をもって一代でアルマーニ帝国を築いてきたのか、学ぶチャンスになるといいなと思います。

 

 

*この問題は別のところに論点があり、アルマーニが本題ではないことはもちろん重々わかっておりますが、今はその全貌がわからないので議論しません(しつこいですが)。当事者でもないし。ただ、百出する議論のなかで「下品な海外ブランド」とか「ちゃらいブランド」のような表現でアルマーニが言及されることについて耐えられなくなり、その点のみ、擁護した次第です。

読売新聞1月18日付夕刊「モード」欄。ゴールデングローブ賞授賞式の黒一色についての記事です。

私のコメントも掲載されています。紙幅の都合で、「皆が黒い服を着ることは、強い意志表明の象徴として分かりやすい。ひとつのマーカー(指標)として、前後で時代が変わるという印象を与えた」という文章のみが掲載されていますが、ほかに「ピューリタンの黒」「喪の黒」という話もしました。

庄司正さんの「対等の黒」ということばも、なるほど!ですね。


一つ前の投稿で、ビジネスウエアとしての黒のスカートスーツの話を書いたのですが。ビジネスシーンでもレッドカーペットでも、黒い服の集団というのは独特の圧がありますね。

六本木ヒルズでのブルガリ展。遅まきながら鑑賞しました。


天空に浮かんで見える、歴代美女とセルペンティの写真。夜に眺めたらそれこそ「スター」に見えるんだろうなあ。

さまざまなアーティストによる、ヘビをモチーフとした作品。

ヘビをかたどったオブジェの数々も。こちらはニキ・ド・サンファルの作品。


そしてメインがこちら。ブルガリの歴代セルペンティシリーズの展示。ガラスケース越しとはいえ、至近距離でじっくり鑑賞できます。


一歩、まちがえるとブキミなネックレスですよねえ…。でもぎりぎりのところで美しいのです。あとはつける人の迫力次第でいかようにも見える、というのがセルペンティシリーズの魅力でもあります。

ヘビの頭を留め金に使った、セルペンティシリーズのバッグも。

ブルガリ展は12月25日までです。Hills Lifeに寄稿したエッセイ「ヘビのようにタフに賢くサバイブせよ」もご笑覧いただければ幸いです。

 

 

同時開催中のレアンドロ・エルリッヒも大賑わい。お約束の窓は大混雑。

屋上スカイデッキにも久しぶりに上ってみました。雲一つない青空が広がる、平和な東京。奇跡のような光景は、かえって、日本各地で取り残されている地域の人々の苦難、地球各地で起きている不条理な惨状を思い出させます。表面的で局地な平和に驕らず惑わされず、苦しみや悲しみに心を寄せ続けられる人間でありたい。自分自身が苦境にあると、人の悲しみに共感しやすくなり、人間としてはかえってよいことなのかもしれないとも思う。

 

 

Van Cleef & Arpels バレエプレシューのコレクションにちなんだ、バレリーナによる朗読とマイムを交えたサロン形式の発表会。銀座ヴァンクリーフ本店にて。
(上はシルフィード バレリーナクリップ)


バレエプレシュー(Ballet Precieux)は、ヴァンクリーフ&アーペルを象徴するハイジュエリーのコレクションのひとつ。初めてバレリーナクリップが制作されたのは1940年代だそうですが、1967年に振付師ジョージ・バランシンとクロード・アーペルが出会ったことで「ジュエルズ」が誕生。

(コール・ド・バレエ ネックレス。中央のブルーサファイアの中にバレリーナが)

2007年には「ジュエルズ」の40周年を祝し、バレエプレシュー ハイジュエリーコレクションを発表。さらに、2013年には「白鳥の湖」「くるみ割り人形」などのロシアバレエを讃える傑作が加わります。


(これは金平糖の精のクリップ)

バレエの芸術性とヴァンクリーフの創造性&超絶技巧が加わった、比類ないコレクションなのです。至近距離から眺めると、360度、どころか内側まで、一切、隙のない、ため息もののアートピースであることがわかります。

今回の発表会では、新国立劇場バレエ団を代表するお二人のバレリーナが、「いばら姫」(眠れる森の美女ですね)の一部を朗読し、そのシーンをマイムで表現するという贅沢なプレゼンテーションを楽しませていただきました。

左がプリンシパルの米沢唯さん。右がソリストの木村優里さん。


お二人とも凛として立ち姿が清らかに美しく、うっとりするほどの表現力でした。短い時間とはいえ、一流バレリーナのパフォーマンスを間近で拝見できて、心の栄養をいただいた気分です。バレリーナはとりわけ首の緊張感が美しいのだわ、とあらためて実感。長い長い首、のように見せる肩から背中のラインが隠れたポイントなんですね。

バレリーナクリップそのままのポーズもとっていただきました。指先から視線にいたるまで、完璧です。

お二人それぞれがバレリーナクリップの魅力を語ってくださいましたが、その言葉にも納得。踊る人だからこそわかる点に気づかせていただきました。

お土産にいただいたのは、美しいフラワーボックスでした。開けるとふわっとよい香りがしました。ヴァンクリーフ&アーペルのスタッフのみなさま、素敵なクリスマスプレゼントをありがとうございました。

銀座はクリスマスの装飾で華やか。山野楽器のビル前のクリスマスツリー。

ジュン アシダ本店にて、クリスマスコンサート。つるの剛士さんによる歌とトークのミニライブでした。

ラストを飾るメインソングはもちろん、「君にありがとう」。芦田多恵さん、作詞作曲の都倉俊一さんも壇上に上がり、隠れたエピソードを披露。

現在の音楽状況においては、音程をはずす下手なアイドル歌手でも、コンピューターのコントロールで「上手い」ように録音できてしまうのだそうです。

しかし、つるのさんがこの歌を録音した現場は、都倉さんが目の前で指揮をとりながらのアナログ方式だったとのことです。

そもそも、なぜ都倉さんがつるのさんを選んだのかといえば、「ブラインドリスニング」。たくさんの候補者の歌声を、その主はだれかと告げられないまま聞いてみたところ、ことばが心にまで届く歌い方をしていた人がひとり、気になった。それがつるのさんだったというわけです。

芦田淳・友子夫妻の金婚式において、都倉さんからのサプライズプレゼントとして作られた曲であり、都倉さんは当初、歌い手としては森繁久彌さんのような方を想定していたそう。現在、40代前半のつるのさんは若すぎるかなと思ったけれど、言葉を届けるということを第一に考えて、お願いしたそうです。正解でしたね!

5人の子育てをするつるのさんは、人柄がそのままにじみ出た、あたたかく謙虚で、しかもユーモアにあふれたすてきなトークとパフォーマンスで観客を魅了。「歌手を志したわけではなく、たまたま歌え、と言われて歌ってみたのが好評で、それ以来、歌っている」そうですが、都倉さんまでもが「歌、うまいよね」と絶賛するほど、オーディエンスの「心」に届くような歌い方をなさいます。


(JA誌には、この歌をめぐるエピソードをエッセイとして寄稿しております。上はその英語版。この歌は世界中に広めたい)

愛情あふれる方々のリレーによって紡がれた奇跡の歌。歌われる内容じたいは、私自身の人生にはまったく無縁だったのでそこに漂う感情は想像するしかないのですが、なんとも心のあたたかくなる歌なのです。



コンサート後は、パティシエの辻口博啓さんと多恵さんコラボによる「チョコレートドレス」も展示された部屋に移動し、つるのさんも交じって、ミニパーティー。


ブティックの中も外もクリスマスムードが満載。マリアッチ?による生演奏も。


ミナ・タン・チャームは来年の干支にちなみ、ワンちゃんシリーズがフィーチャーされています。多恵さんが東北の復興のために続けているチャリティ活動の成果です。クリスマスプレゼントにぜひ。

社員のみなさまが(いつもながら)とてもあたたかく、しかもスマートにおもてなししてくださいました。本物のホスピタリティに感動し、また翻って自分も、いっそう喜んでいただけるような仕事をしなくてはと励まされました。すてきなクリスマスプレゼントをいただきました。ありがとうございました。

 

 

「マノロ・ブラニク トカゲに靴を作った少年」試写を拝見しました。映画美学校にて。


情報満載の、ポップで素敵なドキュメンタリーでした。ひたむきでピュア、人とは一緒に暮らせない仕事大好き人間のマノロの人柄にも迫る迫る…。

詳しくは紙媒体で書きますね。

映画美学校の入っているビルにはユーロスペースもあり、こんなカフェも。↓ 映画の写真が額入りで飾ってあり、その世界が好きな人が読みそうな本がぎっしりそろった図書館にもなっています。


実は今、大学の任期が5年×2期で満了(これ以上継続することは不可という規則になっています。米大統領の任期と同じですね。笑)になるにあたり、研究室においてある大量の本やDVDを整理しているのです。多くは学生さんに差し上げているのですが、貴重な古本ゆえに?誰も欲しがらない本も多く、図書館もすでに収容能力が限界とのことで引き取ってはくれず、捨てるにしのびないものもあり、どうしたものかと困惑中です。膨大な量の本とDVDを活かして映画とファッションとイギリス文化をテーマにしたこんなカフェ&バーを営めたら最高だなあと妄想。


服飾美学会研究会で、西宮市の武庫川女子大学を訪れました。


研究発表を拝聴してから、ミュージアムへ。「近現代のきものと暮らし」展が開催されています。

明治初期から昭和戦後期にかけてのきものや写真が丁寧な解説とともに展示されています。(触れることはできませんが、写真撮影は可能です)

合成染料などの技術革新を反映する着物、伝統回帰の表現、礼装、そして大戦下の総動員服、人絹、 国際結婚のための婚礼衣装、さらに着物ドレスにいたるまで、人々が日常の生活のなかで着用していた着物が時代を語ります。


アイフォン8の写真ではわかりづらいかもしれないのですが、右が合成染料で染められた着物。左が天然の藍の色です。1884年に直接染料が合成され、1956年には反応染料が合成されて、より鮮やかに色持ちよく染まるようになったとのことです。


西洋への憧れを表現する着物。洋服を着ることよりもむしろ、西洋風の柄の着物を着ることに憧れの方向が進んだというのが「らしい」ですね。左の赤と黄色の着物はペイズリーの形に似た洋花模様。中央は、唐草の地模様に西洋風の花柄。

 

こちらは伝統回帰を表現する着物。単なる伝統の模倣ではなく、アールヌーヴォーやアールデコの様式、新しい染色技術を取り入れた柄で、「西洋文化を媒介しての自己発見」という文脈でとらえられる、とのこと。


礼装が確立していくのは明治中期。

戦時下は国民服とともに総動員服を着せられることになる。上は防空頭巾。

こちらは「もんぺ」。ずぼんや二部式の着衣が受容され、戦後に洋装への移行を受け入れやすくしたというのは皮肉ですね。


こちらは上衣。人絹(人造絹糸)が国策繊維となり「ス・フ混規則」が出されて生活必需品の地位を占めていく。

人絹による帯。やはり締まりもよくなく、張りもいまひとつで、すぐへたりやすいそうです。

婚礼衣装も時代に応じて変化していく。こちらは、韓国の方との「国際結婚」の際に着用された折衷打掛。間近で見るとゴージャスです。

ほかにも、簡単に着用できる「着物ドレス」の提案や、学生さんのデザインによる浴衣などもあり、多くの学びを得られた研究会でした。より詳しく知りたい方、実物を通してご自分の目で見て考えたい方、ぜひ訪れてみられてはいかがでしょうか。無料で配布されている図録もとてもきちんと作られています。

武庫川女子大学のスタッフのみなさま、服飾美学会のみなさま、そして展示品に関する丁寧な研究発表で理解を深めてくださった樋口温子さま、ありがとうございました。武庫川女子大学は本当に敷地が広く、ゆったりと恵まれた施設のなか、このような資料を収集・展示する力もあり、感銘を受けました。

読売新聞 木曜夕刊連載「スタイルアイコン」。

本日は、9年ぶりの来日の折に、幸運にも(ジローラモさんのおかげです)私のクラスにご講義に来ていただいたキーン・エトロ氏について書いております。

授業内での名言の数々も紹介。(イタリア語の口語そのままでは読んでもわかりづらいので、若干、文章用にアレンジをしております。)

ぜひぜひ、読んでみてくださいね。

大学の授業のゲスト講師として、パンツェッタ ジローラモ氏と、エトロのデザイナー、キーン エトロ氏にご来校いただきました。

ギリギリまで予測のつかないイタリア人らしさ全開のハプニング連続の授業となりました…。



壇上にはじっとしていらっしゃらず、座席の間を回りながら、質問を受け、座りながら、寝転びながら(!)の白熱講義。


イタリア語通訳の方(壇上左)も大活躍。


ミュージシャン志望の学生、イワミくんを壇上にひっぱりあげて歌わせる二人。イワミくん、このお二人にマイク持たせての演奏なんて、一生自慢できるよ!!

 

「自然の姿に学ぶ」「身体が感じることに敏感になることがインスピレーションの源」「インスピレーションは、呼吸から」など、多くのことを教えてくださいましたキーン氏からは、サイン入りTシャツまでプレゼントいただきました。


サインを入れてくださった狼の顔の部分です。”Super Kaori We enjoyed a lot lot! Top Teache! With Love. Kean”とあります。”We”というのは、壇上の講師たちも客席の受講生たちも取材陣もすべて含めた”We”、と解説してくださいました。客席の間を歩き回りながら楽し気に話していたキーンさんのことばだからひとしお、ありがたみがある。ほんと、熱い一体感があったなあ。

ご助力いただきました事務室、資料室、広報課のみなさま、エトロスタッフのみなさま、通訳の方、取材してくださったLEON編集部のみなさま、ファッション通信のみなさま、そしてノリノリで盛り上げてくれた受講生のみんな、ありがとうございました! 講義後はみんなすっかり、エトロファン。未来の顧客が大量に生まれた瞬間でした。笑

授業の模様は、後日、エトロの公式ホームページやLEON本誌で掲載される予定です。

400名ほどの参加者全員との写真はとても無理だったので、3回に分けての記念撮影となりました。

それにしても。キーン・エトロ氏9年ぶりの来日のタイミングがぴたりこの日に合い、ご来校くださることができたのはほんとうに幸運でした。1週間前までは想定もしていなかった奇跡の時間が実現できて、最高に嬉しい。「自分が学生だったら受けたい授業」というのをいつも考えて行動してきましたが、明治大学での最後の学期になって、想定をはるかに超えるごほうびが降り注いできた感じ。

“All good things are wild and free”.  ご紹介いただいたエトロの映像に流れたこのモットーを胸に、ワイルドで自由でいこうとあらためて思えた日。

ETRO 公式インスタグラムにアップされています。日本の国旗のある狼の顔の写真があるところをスライドすると、3枚、出てきます。

 

 

イタリア大使館にて、ドルチェ&ガッバ―ナの「アルタ モーダ、アルタ サルトリアとアルタ ジョイエッレリア」という豪華絢爛なコレクションが発表されました。


今年の桜の季節に、20余年ぶりに来日を果たしたドメニコとステファノ。日本の文化や人々に感銘を受けたデザイナーが再来日したのです。好きになったら本当にすぐ来てしまうというところ、情熱的なイタリア人らしいですね。


今回は、美しい庭園をもつイタリア大使館全体がデザイナー自身のアトリエに見立てられ、デッサン画や仕立て途中のドレスが飾られた館内をモデルが練り歩くという前代未聞のスタイルでおこなわれました。

クラシックなイタリアのテーラリング技術を活かしたスーツや、美しいビジューやファーをあしらった芸術品のようなドレスが、100作品以上、紹介されました。日本の着物をデザイナー独自の解釈でとりいれたルックも登場。ひとつひとつが、贅沢このうえない生地で作られ、手縫いで作られています。ヘッドピース、アクセサリー、バッグ、靴、メイク、それぞれの細部にいたるまで、彼らの美意識に貫かれています。写真ではなかなかその迫力が伝わらないのですが、あまりの美しさに感動のあまり気絶しそうになります。美しさの表現に遠慮なし。制限なし。フルスイング。それがこのブランドのたまらない魅力です。



テーラードスタイルも圧巻。生地のなめらかな美しさ、シャープなライン、艶やかな色使いにため息が出ます。


こんなやりすぎなくらいのファー使いができるのも、ドル&ガバならでは。痛快です。



喝采を浴びながら登場するドメニコとステファノ。


ショウのあとは、大使館庭園に、この日のために特設された薔薇のテントでランチ。テントには天井画風の装飾も描かれ、金屏風が立ち、いたるところに薔薇、バラ、ばら。文字通り、ラ・ヴィ・アン・ローズな空間でした。

日本文化に対する敬意も表現されていました。厚かましくも箏の前で記念撮影させていただきました。

着ているのはドルチェ&ガッバ―ナのドレスですが、いつもながら、俗にいう「着心地」はほんとによくないのです。「デザイナーが理想とする女性美を表現した、この形の中に入りなさい」という厳しい服なのです。着るコルセットというか。背筋がいやおうなくのび、肩甲骨が後ろに引っ張られて胸郭が開き、必然的に自信あふれる姿勢になり、ゆったり堂々としたイタリアンマダムのような歩き方になる。これが、身体の苦しさをはるかに超える心の快感をもたらします。ほかの「楽な」服では絶対に得られない、心身の覚醒をもたらすほどの、「本物の着心地」の意味が、服を通して実感できるわけですね。西洋の女性が長らくコルセットを手放そうとしなかった理由のひとつも、そのあたりにあると思う。


ゲストは200人をゆうに超えていたように見えましたが、一人一人に、自宅から大使館までの送迎ハイヤーが用意されました。ハイヤーの運転手さんいわく、「うちの会社の全車がこの日のために出ています。それでも足りなくて、他の会社からも出ていますね。日曜日にこんなことがあるのは、前代未聞です」。前代未聞の心のこもったおもてなしで、ますますファンとの絆を強固にしたであろうドルチェ&ガッバ―ナ。また近々の来日を楽しみにしています!

「家庭画報」10月号発売です。

パリ&ミラノ ファッション特集の巻頭にエッセイを寄稿しました。

美容院や歯医者さん(←かなりの高確率で家庭画報がおいてある)などでお手にとられることがありましたら、ご笑覧くださいませ。

 

 

私自身のリアリティはといえば、人に誇れるスタイルだのエレガンスだのはかけらも持ち合わせておらず、エラソーなことを言えた立場でもないのですが、掲載する文章の舞台が「家庭画報」ですので、場の空気に合った「演技」で書いております。媒体・内容に応じて文章のトーンや話法は書き分けています。お断りするまでもないのですが、時々、文章のテーマやトーンと舞台裏をいっしょくたにされて当惑することもあるので……。

もっとも困惑するのは、ダンディズムの歴史を解説しているだけのに、なにか私自身まで葉巻を手に持って(←このイメージじたい、歴史の途中で派生した誤解から生まれているというのに)「ダンディズム」を体現しているような人であるはず(なければならない)と見られたりすることでしょうか。体現している人はそもそも自分のことを語りません。ましてや「ダンディズムとは」などとは恥ずかしすぎて言わないでしょう。だから私が動物園のガイドのように解説しているのです。

 経済学者の伊藤元重さんと、きもののやまと会長の矢嶋孝敏さんによる『きもの文化と日本』(日経プレミアシリーズ)

きものの歴史と現状における具体的で生々しい実態、業界の内部でどのようなことが起きているのか、そして「やまと」がどのようにきもののファッション化を仕掛けてきたのかということが、対談形式でわかりやすく書かれている。きものをファッション化することに貢献した矢嶋さんのビジネス観、きものの歴史観も興味深く、きものの歴史と現状と未来を学びたいという方だけではなく、ビジネスヒントを探したい方にも推薦したい本。

 

以下は、個人的になるほどと思った点、ランダムなメモです。

・きものに袴は大正時代の女学生の格好。誰が仕掛けたのか?

・花火大会とゆかたがセットになったのは最近。世間の記号に乗っかっていく。

・回転寿司が登場したことで寿司のマーケットが広がった。本格的なものしか存在しちゃいけないなんて、そんなおかしな話はない。補完関係にある。

・羽織はそもそも女性が着てはいけないものだった。発祥が陣羽織ゆえに男の服装。しかし、江戸時代に深川の芸者だけが羽織を許される。彼女たちはそれを誇り「羽織芸者」を名乗る。

・ゆかたはもともと「湯帷子」。平安時代に貴族たちが、これを着たままお風呂に入っていた。(当時は蒸し風呂)湯上りに汗取りのために着ることも。江戸時代には庶民でも風呂屋に通う。当時は混浴だから、衣を着て入った。だから「浴衣」。大衆ファッションだった、という意味で、平成に入ってゆかたから「きもののファッション化」が始まったのは偶然ではない。

・ゆかたをきものの入門編と位置付ける。

・いまの若者はアメリカやパリに憧れることもないかわり、日本の文化に対する後ろめたさもない。日本文化を不自然に卑下することがないぶん、ニュートラルにきものと向き合える。

・若い人はきものが古いなんて思っていない。わかりにくいと感じているだけ。一方、お年寄りはきものをわかっているけど、もういいと考えている。

・「わかりにくさ」「着にくさ」「買いにくさ」が着物の問題点。

・わかりにくいと高く売れる。「普段着としてちょっと着てみたいな」というニーズに、今の業界は応えられていない。

・五千円札の樋口一葉の襟は個性を主張するファッション。なのに現代人は、なぜかきものに関してだけは「これは正解」「これは不正解」という感覚をもっている。カジュアルなきものが消えて、フォーマルなきものしか存在しないことの弊害。フォーム=形式だから守っているだけでいい。

・「結婚式で着ていいきもの」「結婚式で着てはいけないきもの」が存在するという刷り込み。一葉の時代には、そういう感覚がなかった。

・みんなが「正解は自分の外にある」と感じていれば、その正解を知っている人が優位に立つ。ルールをつかさどる司祭みたいになって。ルールを複雑にすればするほど、消費者より優位に立てる。その不安につけこんできたのが戦後のきもの業界だった。売る側からしたら高額なフォーマルのきものを売るほうがいい。フォーマルの場合、個人の美意識は関係なくなる。「こういうものなんです」といわれたら、よくわからないまま買うしかない。いくらでも高いものが売れる。

・戦前にはカジュアルも存在した。フォーマルしか存在しなくなった分水嶺は1976年。(石油ショックは1973年。選別が始まった) イージー化が始まる。1976年にはダウンベストを街中で着るように。

・そんな状況のなか、敷居を高くしていったのは「ホームランの夢」。ミッチ―ブームと団塊世代の成人式。この二つの成功体験が離れない。9回裏の逆転満塁ホームランみたいな現象だったにもかかわらず。

・宝石業界では「4℃」。1970年代は37500円の免税点があって、そこを超えないと税金はかからなかった。そこで、その値段以下の宝石を売る。古い宝石屋からは「あれはジュエリーであってジュエルではない」とバカにされたが、しっかりブームになる。

・洋服の場合は、戦後に生まれたビジネスだから、流通が未整備。オンワードのように新しい流通形態(委託取引、派遣社員つき)を作るしかない。

・新興勢力のほうが、新しいモデルを作ることができる。戦後、コカ・コーラが日本に上陸したとき、飲料の流通システムは確立していて、入り込む余地がなかった。そこで自販機を考え出した。そうするとまったく新しい自販機マーケットが生まれ、巨大化していく。

・1980年代のニューキモノ。供給過剰で3年で崩壊。

・「きものの格」は着物業界の策略。シチュエーションごとに1枚ずつ買わせようという作戦。

・きものそのものに「格」があるという考え方が根付くのも、1976年以降。

・アンディ・ウォーホルがデニムのパンツにタキシードジャケットを着てフォーマルな場に現れ、以後、装い方を変えたのは「ソーシャルイノベーション」。

・伝統とは、変革の中で生き残ったもののこと。最初から伝統を作る人なんて存在しない。

・市松模様は、佐野川市松という18世紀なかばの歌舞伎役者が着た衣装が由来。

・大衆文化となり、「自分が参加するもの」でなくては、生き残れない。世界遺産をめざすのではなく、生きた文化のまま、産業化することで生き残る道を探せ。

・日本人衣服の歴史は4つの時期に分けられる。宮廷文化の時代、武家文化の時代、町人文化の時代、近現代。

・帯の結び目は、19世紀初頭までは前だったり、横だったり、後ろだったりした。世界のファッション史のなかでも、後ろにポイントをもってくるのは珍しい。そもそも後ろで結ぶことに合理性がない。

・友禅は、人の名。宮崎友禅斎という画家。プロの画家が衣服のデザインをやっているというのは、外国ではありえない。きものは平面仕立てなので、いくらでも絵をつなげられる。「絵を着る」ことができる。「文様を着るための衣服。それが小袖だ」(by 丸山伸彦教授)

・訪問着は1915年に三越百貨店が発明。visiting dressを直訳したもので、昼間に着る社交着。要は、庶民に夢を見させる提案。いままでの普段着より、ワンランク上のきものを着てみませんかと。応接間も大正時代の考案。訪問着という新しい概念を提案しつつ、庶民が買える値段にした。だからこそヒット。

・ウールも木綿も麻も、洋服の世界では低い扱いを受けていない。絹より格下だと考えているのは、きものの世界だけ。1970年代まではいろいろな素材があった。いまは可能性を限定してしまっている。

・きものは4段階で変化。江戸時代に小袖が誕生した時に「着物」が生まれる。近代、洋服が入り、着るものイコール和服ではなくなったが、その後も和服のことを「きもの」と呼ぶ。1980年代に入って「キモノ」が登場、2010年代から誰も見たことのないKIMONOが現れる。

・赤福の濱田益嗣社長は、味には3つあるという。見て食べたいと思う「先味」。食べてみておいしいと思う「中味」。そして食べた後、また買ってもいいなあと思う「後味」。3つ目を大切にすることで未来が生まれる。

・高額商品には絶対にストーリーが必要だし、店員にはそれを説明する義務がある。

・一時、日本人が米を食べないと大騒ぎした。だけど、吉野家の牛丼、コンビニのおにぎり、回転寿司の3つが米を救った。自然と米を消費してしまう仕組みを作ったことが重要。きものだって、きものを着るというスタイルを売ることで、残せる。手厚く保護することできものを残そうとしても、無力。みんなが自然ときものを着たくなるような仕組みを作る。そして売れる市場を創る。そこから産地へお金を回していく。つまり、文化を産業化する。

・便利で早くて安くてという世界共通項が多いのが文明。誰が作っても同じ味になる。(カップヌードル) 一方、お茶なんかは、入れる人によって味が変わる。これは文化。

・きものを着ることは毎日違う形を作り上げること。きものを着ると、昨日までと同じ場所にいても、まったく新しい自分が発見できる。インナートリップ。時間の流れ方が変わるし、自分の所作が変わるのを実感できる。

ほかにも示唆に富む話が満載だった。2020年のゴール「きものの森」に向けて、改革の行方を見守っていきたい。

Sheila Cliffe, “The Social Life of Kimono: Japanese Fashion Past and Present”. Bloomsbury.

  キモノの歴史、現在を描くとてもアカデミックな本。これは今年の3月に発売された英語版だが、日本語版が発売されたら物議を醸すのではないか。

なんといっても、「日本の着物を殺しているのはきもの学院」という旨を書いているのだから。

着物は本来、これほど着付けにうるさいものでもなく、因習にとらわれたものでもなかった。なのに、教条主義的なきもの着付け教室ではとても細かなルールを順守すること、がまんすることを強いられる。それ以外の着方をするだけで批判されるし、着物が本来もっていたエロティシズムがまったくなくなっている。これが着物から人を遠ざけている最大の要因。なるほど。

それを論じるための歴史的根拠が挙げられている点がすばらしい。現在の着物のルーツになっている江戸の小袖はたしかに、もとは下着だったのだ。身体を絞めつけ過ぎず、裾からちらりと見える襦袢の赤や裏地などがエロティシズムを演出していた。西洋にわたり、コルセットからの解放を促したのも、まさにこの時期、室内着として着られていたキモノだった。

 

21世紀に入って、着物人気がグローバルに広がり、世界中で自由な着物の着方が提案されている。(そのなかのいくつかは「文化の盗用」などと不当なバッシングにも合っているわけだが。)日本でも、きもの学院系の原理主義を破壊すべく、自由な着方を提案するスタイリストやデザイナーが続々が登場している。若い女の子も自由気ままな着方をしている。これに眉をひそめる原理主義者が多いことも知っているが(彼女たちは、自分たちこそが正しい着物の伝統を守っていると微塵も疑っていない)、しかし、本来、着物がもっと自由で楽でエロティックでさえあったことを知れば、着物の未来のためにも、現在、試みられている自由なアレンジはある程度、奨励されてもいいのかもしれないと思う。それが衰退の危機にある着物産業の発展を促すことを思えば、いっそう。

 

アカデミックなアプローチながら、写真も豊富で、一般の読者にも難しくない。より多くの日本の読者に読んでいただくべく、日本語版の登場を切に希望します。(もし、すでに企画が進行中でしたら、完成を楽しみにしています。)

 

明治大学主催クールジャパン サマープログラムの一環として、世界各国からの短期留学生を対象に「Japonism & Fashion」をテーマに70分間のレクチャーをさせていただきました。駿河台キャンパスのグローバルフロントにて。

19世紀のジャポニスムに始まり、1980年代の黒の衝撃、21世紀現在のネオジャポニスムにいたるまでを一気に概観してみました。言葉が足りない分はビジュアルに頼るしかないので、用意したビジュアルスライドも60枚超(当日の朝に完成)。拙い英語のレクチャーでしたが、みなさま笑顔で寛大に聞いてくださいました……。講義後の質問も活発で、しかも鋭くて驚き。こちらが世界水準にならなければ(まだまだまだまだ遠い)と身が引き締まる思いがしました。よい体験をさせていただきました。

プログラム参加のみなさま、国際連携担当のスタッフのみなさまに心より感謝申し上げます。

 

 

 

 

 

本日付けの日本経済新聞「The Style」。先週に引き続きダイアナ妃の話題です。

ダイアナ妃のパーソナルデザイナーとして妃の日常着をデザインしていたアイルランド人のデザイナー、ポール・コステロ氏にインタビューした記事を書いています。

ダイアナ妃のパーソナルデザイナーとしてのコステロ氏を日本人がインタビューするのは(日本のメディアが記事にするのは)初めてのことだそうです。(釜石のコバリオンを使ったリングのデザイナーとしては一度NHKでちらりと紹介されました。)

ぜひご覧くださいませ。
ケンジントン宮殿で開催中のダイアナ妃展では、主に夜会に着られるフォーマルなステイトメントドレスを中心に展示されています。コステロ氏が作ってきたのは、いくつかの公式訪問服を除けば、ほとんどが日常着。そのため、今回の展覧会には展示されていません。


「マイ・ホース」(私の馬)と言って笑うコステロ氏(左)。右は息子さんでコステロブランドの広報を担当するロバート。

コステロ氏には6人の息子さんがいらっしゃいます。

2010年のロンドンファッションウィーク。ずらりと並んだ6人の息子さんがメンズのショウを締めくくりました。Six Sons. なんという壮観。

コステロ氏が釜石産の合金コバリオンを作って作る「クラダリング」の話も紹介しています。


(インタビュー中にさらさらとデザイン画を描いてプレゼントしてくださいました。)

 

 

*English version of the arcile

  

On Paul Costelloe – Princess Diana and Japan Claddagh Ring

23rd July 2017

 

Twenty years after her death, Princess Diana is still very much loved as “everyone’s princess”.  The image of the “royal but familiar princess “ has also been influenced by fashion. The designer who contributed to that image is none other than Paul Costelloe (72), one of Ireland’s leading fashion designers. From 1982 until 1997 when Princess Diana passed away, he served as her personal designer. I had the pleasure of interviewing him at his design studio in London.

 

It was a coincidence that Princess Diana found him. When Mr. Costelloe opened a boutique near Windsor where the residence of Queen Elizabeth II is located, the designs in the window caught the eye of the Princess. “She understood and liked my tailoring immediately”, Mr. Costelloe said.

 

Upon receiving a request from Princess Diana, Mr. Costelloe went to Kensington Palace for fittings. At the time, an Irish designer was perhaps not so welcomed by the staff of the palace.  But Diana was sure to give him a warm welcome. Mr. Costelloe remembers those moments well. “I always brought her a bouquet of flowers” he said.

Many of the styles requested by the Princess were worn on her official tours around the world, including print dresses created using Irish linen which she wore during a formal visit to Australia. But his most frequent work was her daily wear – outfits worn for her day-to-day responsibilities such as collecting the two young princes, William and Harry, from school. These outfits were functional but smart and beautifully tailored. It was these “everyday pieces”, which combined the elegance of the princess herself and the relaxed and real manner in which she lived her life, that helped to foster the image of Diana as “everyone’s princess”. Princess Diana sent Christmas cards every year to Mr. Costelloe until she died. And Paul is proud to call himself “everyone’s designer”.

 

“What kind of person was Princess Diana, from the viewpoint of a personal designer?” I asked Mr. Costelloe. After thinking for a while, he put it like this: “She had guts…she became a real game changer.”  She fought against prejudice, and talked honestly about her feelings, expressed in her own words. By breaking the standard mannerisms and customs of the royal rules she fundamentally changed the way the Royal Family should be and should behave. Mr. Costelloe says he feels happy Diana’s revolutionary words and actions have influenced her two sons in a positive way throughout their lives.

 

Mr. Costelloe is now working closely with a Japanese family-owned company that produces a cobalt-chromium alloy, Cobarion, in Kamaishi City, Iwate Prefecture. He is working with the firm on the design and development of an exclusive Claddagh Ring – the first of its kind to be made in this metal which is only produced in Iwate Prefecture and nowhere else in the world. The Claddagh Ring first emerged in Ireland in the 17th Century. It’s iconic heart, crown and hands motif has become a globally recognized symbol of love, friendship and loyalty.

 

The ring was launched in Japan in 2017 to coincide with the 60th anniversary of the establishment of diplomatic ties between Japan and Ireland but more importantly is a symbol of remembrance and solidarity for the lives lost in the tsunami which struck north-east Japan and Kamaishi City in March 2011. A wave engraved around the band of the ring is a reminder of the disaster and the many lives that were lost and all those affected. In a ring designed by the “everybody’s designer”, I feel that I can see the charitable spirit of Princess Diana living on – someone who strived to give love and friendship to the injured and suffering.

 

原文の言語: 英語

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読売新聞夕刊連載「スタイル アイコン」。

本日は、ブルトン・ストライプを流行させたアイコン、芸術家のパブロ・ピカソについて書いています。

これが「ピカソのマン(手)」と題されたドアノーの写真。このシャツはブルトン・トップ(Breton Top)と呼ばれます。柄の名はブルトン・ストライプ(Breton Stripes)。

(French Sailors in Breton Stripes)

 

日本語ではこの柄を「ボーダー」と呼ぶことが定着しているようですが、

英語のborder に「横縞」の意味はありません。縞柄は、横も縦もstripe。

うめだ阪急のプレミアムウォッチフェア。

IWCの南出留理さんのスマートで的確な進行と解説のもと、Code of Beauty, Code of Lifeについて話をしてきました。IWCのコード・オブ・ビューティーとは論理であり、それは黄金比や「生命の花」などの数学的な規則的パターンを基盤にしていること。そこから出発して、ダ・ヴィンチに関わる人、ダ・ヴィンチの各モデルが連想させるさまざまなスタイルアイコンにおけるCode of Life のお話など、私の勝手な連想もまじえつつ。

どうも反応が薄いかな……まずかったかな……(時計のメカニカルな話を期待していらしたゲストの方には見当違いな話だったかも……笑いどころ?も思い切り外したし……)と思って落ち込んでいたら、終了後、ひとりの女性がやってきて「75歳ですが、今日の話を聞いて人生を変えようと思いました」と。

感激しました。
こういう方がたった一人でもいてくださると、少し報われた感がありますね。私も感想はできるだけ伝えるようにしようと心に誓ったできごとでした。ありがとうございました。

他社ブースですが、一着50億円といわれる宇宙服や、

日本初の「機械遺産」に認定された腕時計も展示されていました。「ローレル」という名前が大正ロマンっぽくていいですね。

豊かな時計の世界を楽しませていただきました。時計については学べば学ぶほど奥が深いことをあらためて実感しました。

ゲストのみなさま、およびお世話になりましたスタッフのみなさまに、心より感謝申し上げます。

本日付けの日本経済新聞 The Styleにおいて、ダイアナ妃ファッション展のことを書いております。

写真が大きく、ゆったりした構成で作られたきれいな紙面です。どうぞご笑覧くださいませ。

*日本のメディアではしばしば「ダイアナ元妃」と表記しますが、英語ではPrincess Diana のままで、「Ex」などつかないのです。だから、私はできるだけ「ダイアナ妃」として表記しています。

 

 

ストリートファッションフォトグラファーのシトウレイさんに、ゲスト講義に来ていただきました。(6月23日)

「好き!を仕事にする」をテーマに、故郷の石川県の話から始まり、大学時代にモデルとしてデビューしてのちストリートファッションフォトグラファーに転身することになったきっかけ、独立、さらに「好き」を徹底してきわめることで仕事の幅を広げ続けている(ラデュレとのコラボをするほど!)現在にいたるまでの、キャリア構築と人生とファッション写真についてのお話。

ストリートを撮るということで、その国の裏事情まで映し出すことがあるということ。

被写体にインタビューすることで、その人自身の個性(とファッション)がより魅力的に浮かび上がってくるということ。

妥協せず、自分の好きなことだけを貫いていけば結局それが信用となり、ブランドとなっていくこと。

来るチャンスにはとりあえず乗っかってしまうこと、スランプやピンチも前向きにとらえることで成長のチャンスになっていくこと。

シトウさんご自身が楽しんでいらっしゃるので、ホール全体に楽しさが伝染し、刺激的な時間となりました。


終了後も、「質問」や「一緒に写真撮ってください」リクエストの長い列。シトウさん、すてきなレクチャーをありがとうございました!

 

ピッティ最後の日のショウは、OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH 。ピッティ宮殿にて。

ショウ開始が22:00とあり、どれだけ苛酷なのかと心の中で恨む…。疲労も積み重なってかなり消耗してはいたが、なんとか気力だけで起きている。

先に軽く夕食をということで、コーディネーターTerashimasa さんのパートナーの勤務するホテルのテラスレストランに再び。

夕刻は昼間と違う雰囲気で、なんとも幻想的な夕暮れを楽しみました。



すみません、こんな場所でしかできないドルチェヴィータごっこでした…。

 

22:00にピッティ宮殿へ向かうも、始まる気配はナシ。このショーのために屋外に巨大な、特別な階段状のベンチが作られている。フロントロウではあったのだが、席がなかったと怒るカップルが目の前に陣取り、フロントロウの意味がまったくなくなる。プレスの人が注意しても「招待状があるのに席がないのはおかしいだろう」と逆ギレ、移動する気配はない。こういうのはあきらめるにかぎる。客席全体からイライラした空気が漂う。


22:30あたりからようやく始まり、ピッティ宮殿に大きな文字で「ポエトリー」が流れていく。世界のあり方や戦争に抗議しているのだろうか。これがとにかくうんざりするほど延々と続く。なかなかモデルは登場しない。

いいかげん眠気をがまんするのも限界に来たところでショウが始まるものの、会場が広すぎて、モデルが「遠い」。よく見えないまま、あっけなくすべて終わる。

終了直後、正直すぎるジャーナリストのOくんが「くだらん!」と叫ぶ。たしかに、壮大な舞台設定、強いメッセージで斬新な演出を意識したものなのかもしれないが、観客のことをあまり考えていない印象だった。22:30開始という時間といい、「暗くて遠くてよく見えない」ショウといい。実際にどのような作品が発表されたのかを知るためには、撮られた写真だけをあとから見るほうがよほどよさそう。(デザイナーはストリートファッションに対するしっかりした知見の持ち主として高評価の方なのです。ただ、今回の見せ方が、狙いすぎだった。)

とはいえ、夜のフィレンツェの裏通りなんかも、こんなことがないとなかなか歩かないので、見ることができてよかった。映画で見たような光景。

真夜中の橋の上や下でも酒盛りをしている人々がいる。酔って川に落ちる人もいるらしいが、とくに対策などは講じられていないそうです。

 

翌朝。ようやく帰国。とはいえパリのシャルル・ド・ゴールでトランジット、待ち時間8時間と聞いてほとんど気絶しそうになるが、ラウンジでシャンパン飲んだり写真の整理したりしているうちに意外とあっという間に過ぎる。

10日間の休みなしの取材の旅でしたが、なんだか3か月ほど過ごしたような。脳内の一部分が書き換えられた感じというか、別次元にシフトした感じがする。

 

詳しい内容は追々、活字になっていきます。自分のための備忘録のような旅レポにおつきあいくださいまして、ありがとうございました。

 

フェラガモミュージアム。

フィレンツェにおけるフェラガモの影響力の大きさはいたるところで感じる。フェラガモが経営するホテルが数件、レストラン、ワイン、ファッション、などなど。

この建物はフェラガモが買い取ったもので、本社オフィスも美術館もこの建物のなかにある。

美術館のテーマは随時変わる。今回は1927年。これはフェラガモがアメリカからイタリアに帰国した記念すべき年。船での帰還なので、展示においても航海がイメージされている。


靴がみんな小さい…。足が小さかったのだろうか。



20年代といえば、このシルエットですね。頭はボンネット、ストンとしたギャルソンヌスタイル。


当時のセレブリティたち。

フェラガモのほか、今回は時間がなくて観られなかったのですがグッチも展覧会をおこなっている。そもそも町中が芸術的な雰囲気。


コーディネーターMayumiさんのパートナーが勤務するホテル、Tornabuoni Beacci のテラスで少し休憩。ここがもうなんとも雰囲気のある素敵なホテルでした。イタリア名をもつ日本のジャーナリストも常宿にしていらっしゃるとのこと。


世俗の時間の流れが感じられない、別世界。


少し英気を養ったその後、某ブランドのファッションショーを見るために、酷暑のなかシャトルバスでレオポルダ駅まで。レオポルダ駅といっても電車が止まるわけではなく、上の写真ですが、中も格納庫のようで、歴史的な建造物らしい。(こちらのショーに関しては、座席の割り当てられ方において運に恵まれず、よく見えなかったのでコメントを控えることにしました……。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Baguttaの時点ですでに20時すぎ、日本にいれば当然、本日の業務終了としていい時間なのですが、夏至前後のヨーロッパ、まだ外は明るい。これで帰らせてはもらえず、さらにこれからHugo Bossのショー会場へ移動します。

この日(13日)の朝はロンドンにいました。疲労もとうに極限超えしていますが、経験的に、極限超え、限界超えをすることによって次の次元に行けることも知っている。(不本意な仕事であれば過労死してしまうかもしれないというぎりぎりのところなので、すべてのケースにあてはまるというわけではありません。) もうこんな無茶ができるのはあとどれくらいだろうと思いながら、とりあえず、ほとんど意地だけで行く。


会場は、閉鎖取り壊しが決まった煙草工場。建物の中からの照明の演出が考えつくされており、映画の世界に入ったような錯覚を覚えます。





幻想的で退廃を感じさせる場所に似会うクールなコレクションでした。


終了後はパーティーフードとお酒がふるまわれます。

日本ではかえってなかなかお会いできないファッションジャーナリストの方々とお話することができるのも、ファッションウィークや見本市の楽しみですね。左からコーディネーターのMayumi Terashimaさん、中野、世界各地のファッションウィークを飛び回るYu Masuiくん、そしてジャーナリストのTakuro Ogasawaraさん。それぞれ率直に本音を語る方々で、疲れも吹き飛ぶひと時を過ごさせていただきました。

この日の最後は、ヴィクトリア&アルバート美術館で開催されているバレンシアガ展。

ここはケンブリッジ時代にも、週末にロンドンに来るたびに通った大好きな美術館。


外側は当時のままで懐かしい、ところが、中は大胆に変貌している。そこがいかにもイギリスらしい。
バレンシアガ展はすばらしかった。すべて撮影可能というのもこの美術館のいいところ。撮影されたものが出回ると人が来なくなるので撮影不可にする、というのは主催者側の大きな勘違いです。写真が出回れば出回るほど、人は「本物」を見に来るんです。フラッシュさえ禁止にすれば、来場者に写真撮影を許可するのは、来場者を増やしたければ、メリットになるはず。

詳細に関しては、また機会をあらためて書きます。


次回はピンク・フロイド展ですって! これを見るためにまたロンドンに来なければ!と思わせるクールな「次回予告」。

 

最後のディナーは、ピカデリーのThe Wolseley で。



やはり王道をいくスコッティシュ・サーモン。鱒ずしと錯覚しそうなシンプルなレイアウト。

とても天井が高く、開放的なムードで、好みのど真ん中でした。

(くどいですが)私は小食で、雰囲気のよい店で正統派の(凝りすぎていない)料理を2品ほど食べてシャンパンとワインを1~2杯いただければそれで大満足、デザートも不要という単純なタイプです。そういうタイプにはこの店は気楽なのにリッチな気分を味わえて最高でした。味にうるさい人はまた違う意見かもしれません。

食事が終わる頃、ロンドン在住のソーシャライトで25ansブロガーでもあるSatoko Matsudaさんがご主人さま(←とても優しくて奥様思い♡)とともに合流してくださって、コペンハーゲンファッションサミットの資料をお持ちくださいました。ひととき、ロンドン社交界のお話で盛り上がり、楽しいひと時を過ごさせていただきました。ありがとうございました!

かくしてロンドン取材は無事に終了。終始、晴天に恵まれたのは幸いでした。予定していたショーが見られなかったなどのハプニングもありましたが、予想外の収穫も多々ありました。今回の成果は後日、順に記事になる予定です。どうぞお楽しみに。

疲労も極限にきていて、このあたりで東京に戻りたいのはやまやまですが、取材はもうひと山分残っています。そのままフィレンツェに向かいます。

 

5日め、12日の午前中はさすがに動けず、少し体力の回復を待ってから、午後のヴィヴィアン・ウエストウッドのショウからスタート。場所はシーモア・レジャーセンター。公民館のような体育館のような場所。すでに外は一目でヴィヴィアンのファンとわかる人たち、彼らを撮るカメラマンらで大混雑。



シートには”We are Motherfucker”と題されたコレクションテーマ、というかアジテーション文が。各モデルのメイクは、次のものを表す、と書かれています。ハート=愛、自由な世界。ダイヤ=欲望、腐敗、プロパガンダ。クローバー=戦争。スペード=シェルやモンサントなど地球を凌辱する巨大企業。現代社会のもろもろのコントロールに対し、抵抗していこうというメッセージ。


開始前、ゲストのファッションを眺めているだけでも相当面白い。


どのショウにも共通しているのですが、おしゃれな方は靴に凝りますね。

向い側のフロントロウも、おそらくファッションエディターらが多いと推測するのですが、個性的な人がずらり。


いよいよ開始。期待を裏切らない、過激で、メッセージ性の強いルックが続々。


ただランウェイを歩くのではなく、サーカスダンサーが大胆なポーズをとりながら踊り、挑発し、移動していく。



フィナーレは大歓声、大喝采。スタンディングオベーション。こんな熱い反応で盛り上げる大勢のファンがヴィヴィアンを支えている。

 


ラストにヴィヴィアンがサーカスダンサーに肩車されて登場した時には鳥肌が立った。なんとかっこいい人なんだろう!


よほどバックステージにかけつけてインタビューしたかったのだが、日本のPRに「混み過ぎていて無理です」と止められる。今から思うに、そこを突破していくべきだった。ヴィヴィアン・ウエストウッドならそんな行動も歓迎してくれたような気がする。


デザイナーに敬意を表して、いちおう、ヴィヴィアン・ウエストウッドのセットアップを着ていったのです(レッドレーベルですが)。しかし私が着るとパンクなイメージからほど遠くなりますね。人込みを突破していくくらいのガッツが足りないのだな。

ちなみに、この服の左肩のボタン(ヴィヴィアンのロゴ入り)だけ、ブロガーさんたちが熱心に撮影していきました。笑


ヴィヴィアン・ウエストウッドはやはりロンドンファッションの女王であると確信した午後。

一日が長い。普段ならこれで眠り始めているところ、これからこの日のビッグイベント。ハケットロンドンによるテムズ川クルーズ。19:30テムズ埠頭のハケット号にて。


ロック帽子店で買ったのはこのハットでした。

今シーズンのテーマがヘンリー・ロイヤル・レガッタということで、船内にはボールドストライプのジャケットやクラブタイで装ったメンズも多く、気分が盛り上がります。

ちなみにハケット・ロンドンはヘンリー・ロイヤル・レガッタのオフィシャルパートナーになっています。HRRに関する詳しい情報は、こちら、HPに。

ハケットの新作コレクションも一応、船内に展示はしてあるのですが、とくに解説があるわけでもないし、みなさんおしゃべりに夢中で誰も観てない。PRの方によれば、この「服なんて関心がない」態度を見せるのが紳士ワールドの感覚なんだそうです。笑

ハケットもそうですが、他のブランドも、ただ服だけを提示するのではなく、その服がしっくりと似あう背景のなかで(ライフスタイルの一環として着用されるアイテムとして)提案しています。

ミスターハケットはさすがのレガッタ風味のジャケット。左はBLBG社長の田窪さん。


レガッタ名物のシャンパンアイスも供されました。シャンパンがそのままシャーベットになっています。

10時半近くなって暗くなったころ、ようやく船はテムズ川ミニクルーズに出航します。このころになるとゲストはほとんど帰ってしまっており、ごく少数の残ったゲストのみ「ザッツ・ロンドンナイト」という贅沢な夜景を楽しむことができました。終盤に差し掛かったぎりぎりのところで本当のお楽しみが出てくるというパターン、これも紳士文化のひとつの型に則ったものでしょうか。

A summer cruise to remember forever.

フォートナム&メイソン、セリフリッジ百貨店についても最新のディスプレイを見ておかねば。というわけで駆け足で訪問。

店舗内のディスプレイは、とてもわかりやすく、眺めているだけでも楽しいミュージアムのようになっていました。


フォートナムメイソンの入り口では、トップハットのドアマンがいい味だしています。日頃はとなりのおじさんのような装いなのだと思います。お仕事のためのコスプレ。

セルフリッジ百貨店入口にて。入っていきなり広々とした香水売り場で、文字通りむせ返りそうな匂いに迎えられます。入口に香水売り場があるのは、においを外に逃がしやすくするためだそうです。日頃はブティックでしかお目にかかれない、各ブランドのエクスクルーシブラインがすべてそろっているのもセルフリッジならでは。すべて3万円超えクラスの香水。またとないチャンスなのでいろいろ試香してしばし夢の時間を過ごしてしまいました。

靴売り場が顕著でしたが、こちらもミュージアムのように商品を並べており、一点一点、デザイナーの作品を比べていくのは、まさに美術館体験と似ているように感じました。


ヌーディストのサイクリストたち。文字通りフルヌードで自転車に乗っている人もいるんですよ。驚愕でした。一瞬で走り去っていくので、不快なものを見たという気はせず、眺める人たちも寛容な笑顔で。

メンズファッションウィーク期間は、メイン会場だけなくロンドン全体がお祭りを盛り上げる。メンズの聖地、ジャーミンストリートでも道路でファッションショーをしたり、特別なインスタレーションをおこなったりしています。



ジャーミンストリートの守り神といえばこの方。ボー・ブランメルさま。


ルー・ダルトンの店では、ショーウィンドウに生身のモデルが入り、動いたりおしゃべりしたりしながら最新コレクションをアピール。ルー・ダルトンは女性のクリエイティブディレクターです。モデルはみなつるんとして「かわいい」印象の男の子たち。


写真を撮る人、撮られる人があちこちにいて、地味な賑わい感。


ターンブル&アッサーは長く続いた外壁の修復もようやく終わり、少しリフレッシュされた外観。


おなじみのブランドの「本店」「ジャーミンストリート店」というのはやはり心ときめくものですね。


連日、快晴に恵まれています。スーツでやや汗ばむくらいの暑さ。


ジャーミンストリートから少し外れたところには、ロック帽子店が。「キングスマン」にも登場した、世界最古の帽子店です。



大きな古時計と並ぶ、クラシックな帽子の数々。そして美しい帽子ケース。


上階は女性用の帽子やファシネーターが並びます。ロイヤルアスコットも近いので、帽子を売るには最適なシーズンですね。

試着しているうちに、明日夜のイベント用に最適なハットと遭遇。買ってしまいました。
六角形の素敵なハットボックスに入れていただきました。しかしこれはさすがに日本に持って帰れないので、箱はコーディネーターのYumiさんに引き取ってもらい(収納ケースとしても使え、お部屋のアクセントになるそうです)、帽子はかぶって帰ることに。帽子はかぶりなれないと「じゃま」と感じることも多いのですが、それにゆえにたぶん、帽子とのつきあい方を学ぶよい機会。

11日。Me Londonの朝食、モーニングのメニューに「ホワイトオムレツ」というのがあったので、どんなだろうと思って頼んでみた。クリームソースでもかかっているのかと想像していたら、なんと、卵の白身だけを使ったオムレツだった。見た目はおしゃれすぎるほどなのですが、ありえない味でした。


すべてにおいておしゃれすぎる、というのもやや疲れるものですね……。ホテルに入ると、ホテル自慢のオリジナルのアロマが迎えてくれるのですが、これも狙いすぎの最先端で、疲れて帰ってくるとややついていけない感に襲われます。ホテルのホスピタリティも実に多様。よい経験をさせていただいています。

気をとりなおし、ホテルから歩いて3分の、ロンドンファッションウィークメン、メイン会場へ。

このスーツもアトリエサルトの廣川さん作。今回の出張のために、前回の型紙を使って、途中のフィッティングを省いて超特急で作ってもらいました…。廣川さん、ありがとうございました。

フロントロウに座ってファッションショーに参加するには、やはり空気をぶち壊しにするわけにはいかず、それなりの配慮が必要なのですね。

まずはE. Tautzのショー。
こんな打ちっぱなし風のショー会場。



少しゆるい空気感をただよわせるテーラードを中心に。ハイウエストで、ややオーバーサイズ気味の太めのラインが特徴。


クリエイティブディレクターのパトリック・グラントが、最後にちらっと登場。喝采を浴びていました。デザイナーというよりもむしろマーケッターという印象。E. Tautzを立て直した敏腕”ビジネスマン”としてBBCに特集されたこともあるそうです。

会場には熱烈なグラントのファンが詰めかけていました。ひときわ目をひくイケメンさんがいるなあと思ったら、モデルのデイヴィッド・ギャンディでした。LFWM(London Fashion Week Men’s)のアンバサダーもつとめるスーパーモデル。あちこちで記念撮影に応じていました。

サンダーバ―ドから飛び出してきたようで、あまりにも美しすぎてリアリティがない。笑。

ファッションウィークでは、日頃メディアでしか見かけない有名人が何気なく混じっているのも面白いですね。

10日、午後7時でまだ明るい。一日が長いとなかなか仕事も終われない。かなり体力もきつかったのですが、ソーホー地区に新しくオープンしたRag & Boneのパーティーへ。

店内はラグ&ボーン的なファッションの男女でひしめく。

テラスの壁には一面に骨の絵。

道路にあふれるゲスト。

ストリートファッションに関しては、一時、ソーホーの勢いが減じていたのですが、最近、再び盛り返しているそうです。キティスカートの男子も、何でもないようにしっくりと風景に溶けこんでいます。


午後8時過ぎでもまだ明るく、パブでは人が外で立ち飲み。


今回の取材、ロンドン編は、ロンドン在住のYumi Hasegawaさんにお願いしました。きめ細かにアレンジしていただき、ありがとうございます。


帰途、9時半ごろでようやくこのくらいの暗さになる。夜のロンドンも照明が美しく、ムード満点です。


 

その後、いよいよダイアナ妃展へ。詳細に関しては、後日、活字媒体で書きますので、こちらではさらっとね。



社交界デビューに際し、ハロッズで買ったというドレスからスタート。



学芸員のマシュー・ストーリー氏の解説のもと、ダイアナ妃が社交界デビューから晩年にいたるまでに着たドレスやスーツ、それぞれにまつわるエピソード、デザイナーと結んだ関係、およぼした社会的な影響を学んでいきました。

これまでにかなりダイアナのファッションについては書いたり話したりもしてきたのですが、それでも新たに発見したことが多々。




写真で何度も見て、よく知っていたはずのドレスであっても、細部の工夫のすばらしさはやはり、肉眼で見ると初めて心に迫ってくるものなのですね。

それにしても背の高い方だったのだわ。

原稿はどこから何を書くべきか……。字数制限のあるものを、いざ書いてしまうと、「書けなかったこと」がどうしても出てくるのです。それが気になるとなかなか仕上がらなかったりするのですが、最後には、割愛分もまた書かれたことの厚みにつながると自分を無理やり納得させるしかないのですね。

10日、夕方はケンジントン宮殿へ。ダイアナ妃展が目的ですが、その前に、宮殿内を見学。広大な庭園でくつろぐ人々がけっこう多くて、公園と勘違いしそうなのですが、ここは「パーク」ではなく「ガーデン」。あくまでも、宮殿内の「庭」なのです。




柳のように下に垂れさがる大木。夜に遭遇したらかなりコワそう。


ケンジントン宮殿とは、1689年以来、イギリス王室の王や女王らの住まいとなってきた「ステート・アパートメンツ」です。ジョージ2世とキャロライン王妃、メアリ2世、ヴィクトリア女王、ダイアナ妃らがこの「アパートメンツ」のなかで過ごしました。


天井も壁も、隙間なく美術で埋め尽くされております。



窓から見えるガーデン内の白い像はヴィクトリア女王。その先には広大な池が。


18世紀、ロココスタイルの宮廷衣装も展示されています。間近で見ると、ぎっしりと宝石や刺繍がぬいつけられていることがわかります。壮麗というか、これはまさしく権力を見せつけるための衣装だったのですね……と理解できる。かなりの重さだったことがうかがわれます。



こんな豪華なタペストリーも。保存状態がかなりよい。


ハイテンションの勢いで、「女王の椅子」というのに座ってみました。笑


シャフハウゼンのときも感じましたが、ヨーロッパの曇って3G的というか、厚みがある。

10日、エドワード クラッチリーのショウ。場所はバービカン、シャフツベリープレイス、アイアンモンガーホール。


歴史的価値のある建物で、どんなショウが行われるのか、かなり期待が募ります。


時間、国、ジェンダー、肌の色、文化、全てを越境して紡ぐ、最高級素材を使った斬新なルックが続々登場。


バックステージに紛れこんで話を聞きました。次世代の鬼才ですね。



配られたメモから。”The irrelevance of gender; the relevance of sex.  Prog-rock Mediaeval rivivalism.  The role of Wakashu in Edo-era Japan. Poetry, not romance.”

荒唐無稽に見えますが、すべては一点ものの、彼のために特別に作られたテキスタイルから作られています。間近で見ると、リッチで豪華なのです。

マックイーンやガリアーノを生んだ、これがロンドンの底力。

ダイアナ妃関連の取材。パーソナルデザイナーとしてダイアナ妃のドレスを作っていたアイルランド人デザイナー、ポール コステロ氏にインタビューしました。

こちらが日本人だからこそ初めて語ってくれた、アイルランド人の目から見たダイアナ妃像。日本人ジャーナリストとしてのこの話題でのインタビューは初めてとのことで、記念にさらさらとデザイン画まで描いてプレゼントしてくださいました。貴重なお話の数々、必ずよい形で世に伝えます。

 

 

オフィスの前。立っているのは、息子さんでPRのロバート。

実はポールは現在、復興支援として釜石とコラボレートしてアクセサリーも作っています。


ケースの上に彫られているのは、アイルランドの「愛」の象徴。

 

詳しくは後日、活字で。

日本経済新聞土曜夕刊「モードは語る」。第4回の本日は「ゴープコア(Gorpcore)」について書いております。

Givenchy 2017 SSより。

ノームコアの次なる造語、Gorpcpreとは。

ご笑覧くださいませ。
This is Gorp.

北日本新聞別冊「まんまる」7月号発行です。

連載「ファッション歳時記」第69回。クルト・クラウスが時計界に起こしたイノベーションとその意義について書いております。

5月にお目にかかった伝説の時計師、クルト・クラウス氏。


1985年にクラウス氏が考案した「シンプルな」(!)永久カレンダーの設計図を説明するクリエイティブ・ディレクターのクリスチャン・クヌープ氏。

読売新聞夕刊連載「スタイル アイコン」。本日は、フランスの新大統領エマニュエル・マクロン氏について書いています。


就任式でのスーツは450ユーロという庶民的な価格であることが話題になりました。妻のブリジットが着ているのは、ルイ・ヴィトンからの借り物、と報じられました。

 

スーツをダウングレードすることで得られた支持。興味深い大統領選でした。

機会がありましたら、ご笑覧くださいませ。

Meiji.net 最終回が公開されました。こちらです

6回にわたり、お付き合いくださいましてありがとうございました。

Meiji.net 第5回 「日本のファッションの常識は世界の非常識」。公開されました。こちらです。

同じことを100回くらい(←おおげさ)書いたり話したりしているような気もしますが。

 

お時間ゆるせばご笑覧くださいませ。

Meiji.net  トレンドウォッチ第4回 「プラスワンアイテムの効果」、公開になりました。

こちらです。

 

お時間ゆるすときがあればご笑覧くださいませ。

大学の先生がこんなアイテムをすすめていいものか??と生真面目な私はしばし躊躇しましたが……。しばらく考えて、しかし、なぜこんな不便きわまりないものがいまだ根強く生き残っているのか?を考えるための体験アイテムとしてならよいのかな、と。見えないところなのですが、下着が人の意識に与える効果は侮れないのです(男性・女性ともに)。もちろん、他に考えるべきことが山ほどあります。ぜひにとは言いません。

Meiji.net 第三回、Signature Fashionについて。公開になりました。

お時間ゆるすときがありましたら、どうぞご笑覧ください、こちらです

本音の、正直なところをいえば、

実は当初いただいた質問のなかには「どんな店で服を買うといいのですか?」「店員との付き合い方は?」はじめ、あまりにも即物的でハウツーすぎるものが多く、これにまともに答えていると、( インテリぶるつもりはかけらもありませんが、) こんなことを大学で教えているのか?と誤解されるかもしれないという内心のおそれがありました。

アカデミックな場でファッションを論じることについて、機会をいただいてからのこの10年、もっと違うレベルで戦ってきたつもりでした。でもやはり情報の発信が圧倒的に足りないのか届ける力量不足なのか、世間の思い込み(ないし無関心)とのギャップは相変わらずです。

世間の需要との兼ね合いの中で、やや妥協的な発信も時にはせざるを得ない時もあります。それさえも信用として積み重ねていけるかどうかは今後の仕事次第ですね。(気を引き締めるための自戒でした)

 

本日の日本経済新聞 The NIKKEI Styleに、4月にドルチェ&ガッバ―ナにインタビューした記事が掲載されています。写真も美しく、目の覚めるような紙面になっています。ぜひぜひ、ご覧くださいませ。

ショウのこと、ディナーのことも書きたいことはたくさんありましたが、紙幅の関係で割愛せざるをえなかったのが心残りです……。

それにしても本当に豊かな時間だったなあ。パークハイアットでの単独インタビューも、101人の男女日本人モデルを使った壮大なショウも、スカラ座を移した赤テントでのディナーも。そして送られてきたデザイナーからのサンキューカード。けた外れのラグジュアリーを体験し、デザイナーの誠実な人柄にふれ、多くのことを学ばせていただいたお仕事でした。

明治大学情報サイトMeiji.net 第二回が公開されました。こちらです。

自分のいやなところもすべて受け入れるというのは、ほんとうに勇気のいることですよね。でもすべてはそこから始まるということも実感しています。世間の誰か(あなたの勝手な思い込みかもしれない)が決めた「すてきな理想」、その理想に至らない自分に苦しむという非生産的なことはいったん手放して、今、この瞬間に何をすればこの場を最大に輝かせられるのかということにあらゆるエネルギーを集中する。その命の輝きのような印象が時間とともに積み重ねられていき、それが魅力として他人の心に焼き付けられていく(こともある)のではないかと感じています。

あらゆる命は、類例がないからこそ、「ほかに似てるものがない」からこそ、貴重で、価値があるのです。規格や「平均」や「標準」に近づけたいって、それ、工業製品のことですか?

 

☆ちょっとくどいかもしれませんが、他SNSで質問があった(欠点を曝すことは自己満足に堕すことにつながるのではないか?という趣旨)ので、「欠点を強調する」と言うことに対しての私の考えを補足しておきます。

ここで言っているのは欠点を曝す、というよりも、世間が欠点と評価していることに対して恥じない、という程度の意味です。他人の不快をものともせずに「どうだ!」と開き直るのは厚顔無恥で、それこそ自己満足に堕しているだけだと思います。

「欠点」とされていることに恥じることなく開き直ることもなく、自分自身がそれを受け入れていることを示し、やるべき行動をする、そこに好感が生まれていき、その暁には「欠点」とされていたことがチャームポイントにさえ転じることがある、そのような意味です。

外部記者の方による疑問に答えていくという形のインタビュー記事、しかもボリュームが限られていることもあり、つっこみどころが満載かと思います。お気軽にご意見をいただければ、意図するところを可能な限り答えさせていただきます。

 

 

 

おかげさまで、第一回めは同サイト内で読まれている記事ランキング第一位を獲得しました。ありがとうございました。

明治大学が運営するMeiji.net 。本日より6回に分けて「トレンドウォッチ」に登場します。

主に30代前後の社会人を読者対象として意識し、明治大学の教員が外部のライターさんの身近な疑問に答えていく、という形式のコーナーです。

小難しいことは言わず、「ファッション」に対して若干の抵抗や不得意感を感じている方にもリラックスして受け取っていただけるような回答を心がけました。

お時間の許す時にでも、ご笑覧くださいませ。

それにしてもこの場違い感はなんというか…… まじめにやればやるほど私のコーナーだけがジョークみたいな気がする。

本日の日本経済新聞、The NIKKEI Styleで、女性のパワースーツの歴史と現在について書いております。キャプションもすべて書きました。

紙も上質でクラスマガジンのようなThe NIKKEI Style、機会がありましたらぜひご笑覧くださいませ。

13日(木)夜、東京国立博物館 表慶館にて、ドルチェ&ガッバ―ナのアルタ・モーダ、アルタ・サルトリアのコレクションのショウが行われました。

レッドカーペットを歩いて建物の中に入るとそこはルネサンスのイタリア?! 300人のゲストが全員揃うまで実に長時間待たされたのですが、その甲斐あって、けた外れなほどの美しさを極めたアルタ・モーダ&アルタ・サルトリア(オートクチュール)コレクションでした。男女のアジア人ばかりのモデル100人以上。一度のコレクションでこれだけの数を見たのも初めてのこと。疲れているはずなのにテンションはどんどん上がっていく。それはそれは圧倒的な体験でした。



女性のドレスはすべて、後ろ姿が印象的なのですが、「一人では着られない」仕様になっているのですね。装飾としても存在感ある留め具は見ていると美しいのですが、留めていただく(はずしていただく)ためのパートナー、あるいはお手伝いのメイド?がいるということが前提となっています。



私の目の前には阿部寛さん。斜め前にはドルガバのドレスをまとった米倉涼子さんや大地真央さんや、お名前を知らないけど顔をみたことのある俳優さんたちがずらり。ゲストはほぼ全員、ドルガバを着こなし、このブランドの世界観を一緒になって盛り上げていたという印象。


フィナーレはステファノとドメニコが登場し、拍手喝采の中、ゲストひとりひとりと握手したりハグしたり、熱い一体感で盛り上がりました。


プレタのドルガバも「一人では着られない」。涼しい顔をしてはおりますが、パートナーもメイドもいない私はドルガバのスタッフにさりげなく助けてもらってようやく着付け完了という次第(^^;)

ショウの終了後は、特設テントに移動してディナー。スカラ座のイメージをそのままもちこんだというテントも、退廃的なほどに濃厚な色彩と装飾にあふれていました。

300人のゲストのディナーは、おもてなしする方も大変だと思いましたが、デザイナーがひとつひとつのテーブルを回って大サービス。私がいたテーブルでは、先日のインタビューの内容をちゃんと覚えていてくれて、それを押えたうえでの「ジェンダーレス、NO!」の議論を滔々と。無尽蔵のエネルギーに圧倒されました。


同じテーブルで楽しく過ごさせていただいたみなさま。前列左からThe Rake Japan編集長の松尾健太郎さん、Men’s Precious 編集長の鈴木深さん、中野、後列左からWeb Leon 編集長の前田陽一郎さん、INFAS.com映像制作部担当部長の神保誠さん。

それにしてもスターデザイナーの来日パワーというのはおそるべし。ショーの翌日、翌々日も銀座や表参道のドルガバブティックでは、デザイナーとのじかの交流にファンが熱狂した模様です。

20+α年ぶりに来日し、すばらしいコレクションとおもてなしで感動させてくれたステファノ・ガッバ―ナとドメニコ・ドルチェ、きめこまやかなご高配を賜りましたDolce & Gabbanaのスタッフのみなさまに心より感謝申し上げます。

 

読売新聞夕刊連載「スタイルアイコン」。

本日は、スコットランド民族党(ウィキペディアなどでは「スコットランド国民党」となっていますが、こちらが読売新聞での統一訳語ということで、そのように表記しております。Scotland National Party)党首にしてスコットランド首相のニコラ・スタージョンについて書いています。

ほんとにワクワクさせてくれる方です。

それにしてもこの写真。スコットランド首相とイギリス首相が並ぶ迫力ある写真ですが、デイリーメイルは正直すぎるタイトルをつけて、性差別主義だとバッシングを浴びました。ブレグジットとレグジットがだじゃれになっている、いかにもイギリスのおじさんが好みそうな見出し。

これはメイ首相がEU離脱を正式に通知する前日におこなわれた会談の写真。2人とも靴が印象的。メイ首相はあいかわらず奇抜で、ヒョウ柄にゴールドの装飾があしらわれた靴。二人ともふだんは赤をはじめカラフルなのですが、シリアスな会談のときは二人ともネイビーを着るのですね。

 

本紙記事には上の写真は掲載されておりませんが、この写真も頭の片隅に思い浮かべつつ、あわせてお読みいただければ幸いです。

Dolce & Gabbanaのデザイナー、ドメニコ・ドルチェとステファノ・ガッバ―ナが20年ぶりに来日。日本経済新聞のご厚意により、単独取材をさせていただきました。新宿パークハイアットにて。

左からステファノ(右腕に自分の名前のタトウーを入れている)、The Nikkei Style担当の太田亜矢子さん、中野、ドメニコです。

フェミニニティの話題になったときに、ステファノに”Are you Japanese? You’re super feminine.” と言われました。笑。女装が効いたのか。

面白ボキャブラリーが満載の、充実したインタビューでした。

詳しくは後日、The Nikkei Styleにて。

パークハイアット内のジランドールでランチをいただきながら、6月のファッションシーズンに向けて太田さんともろもろの打合せ。


やはり取材をしたり話を聞いたりするのは最高に楽しいなあ。新聞の世界では「取材に行ってメモをとってくるのは<下>の仕事で、<上>はそれを見て記事をまとめる」という序列?もあるそうなのですが、ファッション記事に関する限り、現場の空気感を体験してみてはじめてわかり、書けることもある。ドルガバの本質を2人の話しぶりから感じられた、とても手ごたえのある取材になりました。感謝。

一般社団法人社会応援ネットワーク(高比良美穂 代表理事)が出版する、若者応援マガジンYell  vol.2。

スーツについて取材を受けました。「仕事と服装の関係について教えてください」というタイトルで、話したことをまとめていただいた記事が掲載されています。

フリーペーパーです。

こちらからより詳しい中身をごらんいただけます。

昨日より、日本経済新聞  土曜夕刊での新連載が始まりました。

スタートの日が3月11日になったのは偶然ではありますが、決して驕らず、使っていただけることに感謝して努力を続けるようにという天からの声とも感じ、身が引き締まる思いがします。

日本経済新聞において7年ほど毎週続いた連載「モードの方程式」を卒業してから、ほぼ10年経ちました。もう10年。熱いカムバックコールにお応えし、連載を再開することになりました次第です。(厳密にいえば、最初の「地球は面白い」を加えて3度めの連載となります。)

さすがに今お引き受けしている仕事量では毎週とはいかず、月一度の連載となります。

「モードは語る」。

世界のファッション現象を、キーワードをたどりながら追っていきます。初回のテーマは、「ジェネレーションM」。ムスリム、ミレニアム、モダン、モデスト。

生かされている意味を考えるべきこの日に、かつてのご縁が再び繋がる仕事が始まることを、厳粛に受けとめています。驕らず、必要とされる場で、ささやかであれ求められる貢献ができるよう、精進します。

Mikimoto 展示会にお招きいただきました。14日、銀座ミキモトビルにて。

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花びらをジュエリーで表現したMikimoto Petales Collectionより、Ginza バージョン。といえば花の種類は当然、桜ですね。Les Petales de Ginzaは、桜がテーマ。ピンクゴールドでかたどった花びらに、ダイヤモンドをちりばめてあります。花びらがひらひらと舞い降りていく情景を表現しています。

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この写真では、ゴールドとダイヤモンドの繊細さがわからないのが残念ですが……縁のほうまできらきらとダイヤモンドが輝き、視線が吸い寄せられていきます。

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ジュエリーをひきたてるデコレーションにも、「花びら」モチーフが随所にあしらわれ、一足早い桜の季節を堪能させていただいた気分です。

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ハイジュエリー部門も逸品ぞろい。下は、とりはずしてブローチにもなる、和の花をかたどった繊細なジュエリー+パールネックレス。

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おみやげは、今話題のChocolatinesのチョコでした。J-Waveの別所さんの番組で話を聞いた時から気になっていたので、タイムリーな出会い。シカゴのショコラティエ、和田理恵子さんの作る高級な「宝石」チョコで、アカデミー賞受賞式のおみやげにも使われているそうです。宝石をイメージした8種類のチョコの中から、「ダイヤモンド」を選んでいただきました。容器が指輪のケースのよう。開けると中にはシャンパントリュフ味の「ダイヤモンド」をイメージしたチョコレート。お味も見かけを裏切らず、ハイグレードでした。

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15日付朝日新聞夕刊ファッション面「私にフィット 楽しむオーダー」という記事で取材を受け、コメントが掲載されております。ご笑覧くださいませ。asahi-order-2asahi-order-1

横浜信濃屋さん 創業150周年記念クリスマス&信濃屋レジェンド白井俊夫さんお誕生日、ダブルのお祝いパーティー。3日(土)、横浜みなとみらい リストランテ・アッティモにて。

150周年を記念して、創業当時に信濃屋さんが作っていた鹿鳴館時代のドレスが復刻されました。

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オールシルクの復刻ドレスを、パーソナルスタイリストの政近準子さんが着用したほか、信濃屋のお客様、スタッフ、そしてどさくさに紛れて私も、鹿鳴館スタイルのドレスを着用させていただきました。

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バッスル(後部をホッテントット風に拡張させる装置)を着用し、そのうえからスカートをかぶり、ボディス、ジャケットを着用する。仕上げはヘッドピース。一人では着られません。スタッフ二人がかりでの着付けです。

小物もポイントで、パラソル&白手袋、または本&白手袋をもつのがたしなみだったとのこと。アートなパラソルも、ひとつひとつ、手作業で仕上げられています。

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(左がオールシルクの貴重な復刻版ドレスを着る政近さん。右はファッションレスキュー頼富さん。男性の社交スーツも色とりどりで、美しい風景でした。)

これを着て2時間半ほど会場で社交したり写真を撮られたりと過ごしていたのですが、なかなか気分が高揚するものです。当初、懸念していたほど苦しくもなく、むしろ意外と着心地はよかったです。(立ちっぱなしでさすがに足はいたくなりましたが…(^^;))

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うしろが盛り上がるバッスルスタイルを間近に見て思ったこと。横に並ぶと、そのくびれに思わず腰に手を回したくなりました。女の私でもそうなのだから、ましてや男性は……。笑 横&後ろ姿に誘惑を生む仕掛け、これでなかなかセクシーなドレスであったのだなあと感じ入った次第です。

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メンズファッション業界重鎮の鈴木晴生さま、白井俊夫さま、赤峰幸生さまによるトークショー。

最後は恒例の、白井さん演奏によるカントリーミュージックのご披露もあり、二重のお祝いにふさわしい会として華やかな盛り上がりでした。

鹿鳴館ドレス復刻コレクションに関しては、こちらに詳しいので、ご覧くださいませ。

横浜信濃屋さま、あらためまして、150周年おめでとうございます。白井さま、お誕生日おめでとうございます。貴重な復刻ドレスを着る機会を与えていただき、着付けをおこなってくださった信濃屋スタッフのみなさま、かけがえのない時間をともに過ごしてくださったゲストのみなさま、ありがとうございました。

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どの世界でも同じだと思いますが、中ではきわめて大きな違いがあるのに、外から見ている人にとっては、同じようなことに携わっているようにしか見えないことがあります。

その昔、叶恭子さんは、あるセクシータレントと比較されてひとこと、「カテゴリーが、ちがいます」とさらりと一蹴したことがありましたが、ときどき私も、そのように言いたくなることがあります。笑

 

ファッションを研究する、ないし論じる と一口に言っても、実に多様なアプローチがあります。

・ビジネス、産業という観点から研究する(そのなかにも経営・製造・流通・マーケティング・ブランディング・広告・宣伝など細かな分類がある)

・スタイリングという観点から具体的着こなしのルールや方法を論じる

・クリエーション、制作という観点から論じる

・「ファッション・メディア」としてトレンドを創り出す

・ジャーナリスティックにトレンドを調査し、分析し、伝える(モードとストリート、メンズとレディス、都市と地方、日本と海外においてはその方法も伝え方も異なってくる。また、ジュエリー、時計、靴、ヘア&メイク、美容など、ファッション業界とはまた違う独自の業界を築いているジャンルもあり、その扱い方もさまざま)

・アカデミックに考察する(その方法においても、美学的アプローチ、哲学的アプローチ、社会心理学的アプローチ、政治・経済学的アプローチ、文化史的アプローチ、ジェンダー学的アプローチ、倫理学的アプローチなど実に多様)

ほかにもいくつかカテゴリーを設けることができるかと思います。また、厳格に棲み分けがなされているわけではなく、いくつかの領域を横断したりすることも多々あります。私はそのすべてに対し、敬意を表してきたつもりです(たとえ理解が及ばないとしても)。

しかるに、現場(という表現が最適かどうかはわかりませんが)の方はアカデミックな言説に対し「机上の空論」呼ばわりすることが多々あり(私自身が実際に何度か投げつけられました)、文献に基づく議論を主とするアカデミズムの方は、ファッションの現場のありかたを軽視する、ないし関与しない態度を(とくに悪意はなく)貫く傾向が少なからずあります(大昔の話ではありますが、私自身が論文審査でそんな言葉を投げつけられました)。

学生には、できるだけ多くの視点からものごとを見てほしいと願っているので、毎年、異なるカテゴリーから、その人らしい活躍のしかたで社会に貢献している方をゲスト講師としてお招きしています。これまでご来校くださったゲストの方には感謝してもしきれません。それぞれの領域で活躍する方には、惜しみなく敬意を払っていますし、仲良くおつきあいもします。

ただ、異なるカテゴリーの仕事を比較してどうこう言われても……やはり「カテゴリーが違います」とお伝えせずにはいられないこともあります。

 

全方向に気を配るあまり、やや歯切れの悪い表現ですが、たまのつぶやきということでご寛恕。

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尾原蓉子先生『ファッションビジネス 創造する未来』出版記念ご講演&パーティー。表参道アニヴェルセルにて。

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ファッションビジネス界を超えて、錚々たる方々が発起人として名を連ね、続々と挨拶のスピーチ。

元・文科大臣の遠山敦子さん(尾原先生の右)は東大白金寮で尾原先生と同室、58年来の親友だそうです。坂東真理子先生とも久々に再会して嬉しかった!(相変わらずお元気でお忙しいようで、お写真をご一緒する間もなく、お帰りになられましたが)

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実績を重ねていらしたからこその、これだけの人望。

確実に、きちんとした仕事を重ねて信用を積み重ねていけば、20年後もさほど悲観することはない、と希望をいただきました。

ファッションジャーナリストの生駒芳子さん(中央)、デザイナーの横森美奈子さん(左)とも久しぶりに再会できて楽しかった!11-15-2016-4

 

それにしても、ファッションビジネス業界というのは背広(スーツではなく)族が圧倒的多数なのでした。

この激動の時代には自らが率先してDisruption(システムを崩壊させること)しないと、他者にdisruptされてしまう、という印象的な話が尾原先生の講演のなかにありました。連日、縮小・閉鎖のニュースが報じられるファッションビジネス業界を見てもそう思うし(もうかつてのような隆盛は二度とない、と尾原先生は断言)、自分自身のあり方においても、一部、機能不全を起こしている考え方や行動はディスラプトすることを今日からの課題にしようと決意。同じ壊れるにしても、他者にやられるのではなく、自らが主体になって壊す、というのが重要。壊したあとにどう再建するのかも。

トランプ大統領の誕生は、いま世界中で起きているDisruptionの明快な象徴でもあったのですな。

 

 

過激に破壊し、過剰に混沌した20年そこそこの命をまっとうしたシド・ヴィシャスは、思えば命がけのディスラプターだった。

Undermine their pompous authority, reject their moral standards, make anarchy and disorder your trademarks. Cause as much chaos and disruption as possible but don’t let them take you ALIVE. (By Sid Vicious)

 

芦田多恵さんデビュー25周年インタビューでした。ジュン  アシダ本社にて。

20周年記念インタビューをさせていただいてから、はや、5年。この5年に本当にいろんなことがあった……としみじみ回顧しつつ。

奇しくも25年前の同じ日、11月1日がデビューコレクションの日だったそうです。

詳しくは次号のJA誌に書きます。

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斉藤工さんによる、多恵さんのドキュメンタリーは、こちらをご覧ください。デザイナーの日常が非常に興味深いし、最後は目頭が熱くなります…。

 

 

そして下の写真は、25年の作品のなかから代表作をピックアップした、Tae Ashida「塗り絵」ブックの表紙。先日の25周年記念コレクションのおみやげとしていただきました。幼少時にスタイル画を描いて「着せ替え」なんぞやっていたのを思い出し、なかなか楽しいのです。

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思えばJA誌に書かせていただいて、ほぼ10年近くなるのだ……。感慨深い。

このたびJクオリティ認証第一号となったのが、グランプリを獲得した三陽商会のSanyo 100年コートです。

三陽商会が2013年に会社設立70周年を迎えたことをうけ、「コートのSanyo」を象徴するようなものを作りたいという思いから発足したプロジェクトです。

「日本における匠の技を集結させ、世代を超えて永く愛してもらえるコート」がテーマ。100年オーナープランを打ち立て、たとえばベルトが痛んだ、生地が色あせた、というときにも、三陽商会が100年にわたってケアし続けるとのこと。

実際、着用させていただきましたが、見た目よりも軽く、とても着心地がいい。細部に至るまで丁寧な作りで、三陽商会のプライドの象徴、という言葉にも納得がいきました。デザインにクセがないことも、タイムレスで着続けるための条件ですね。

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このコートにつき、ある方から、「トレンチなのにベルトにDリングがついていない」と指摘がありました。トレンチコートと銘打っているわけではないので細部をそこまで再現する必要はないのではと思いましたが、やはり、服にうるさい方にとっては、細部こそが重要になるのですね。いちおう、開発担当者である三陽商会の梅本祐助さんに質問してみました。

以下は、「トレンチ型の100年コートにDリングがついていない理由」、梅本さんからの回答です。長すぎるところなど、ほんの少しだけ、アレンジを加えてありす。

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三陽商会の歴史に登場したトレンチコートの代表作『ササールコート』が原型だからです。
100年コートは元々開発する際に、三陽商会の象徴となるものを作りたいとのコンセプトや想いがありました。
もしコンセプトが本物のトレンチを作りたいから始まっていれば、おっしゃるようにDリングを付ける事もあったかもしれません。
デザイン面でのリソースになっているのは、弊社創業者吉原信之が1959年に当時三陽商会で一番ヒットした(1シーズン5万着売れた)と言われている、映画3月生まれでジャクリーヌササールさんが着た『ササールコート』がベースになっております。
Dリング以外にも背中のアンブレラヨークやガンパッチ等、特徴的なデイテールがデザインソースで当時のトレンチコートにもDリングが付いておりませんでした。
ササールコートは婦人のトレンチコートなので紳士では付けようか?との議論もあったことは事実
ですが、三陽商会らしさを大切にしたかったことや、紳士婦人で並んだ時に違和感の無いように、Dリングをなくしています。
また、もう一つの理由として、

100年コートが描く未来に向け必要が無い付属品だと判断したからです。

ご存知の様にトレンチコートの起源は1914年に英国陸軍が第一次世界大戦の際、塹壕用に作ったコートです。元々はタイロッケンのコートをベースに作られていると思いますが、当時戦時中だった為に、手榴弾をぶら下げるようとDリングが付いておりました。

また当時は腕を負傷した兵士が袖を通し易い様にラグランスリーブにしていたり銃や水筒を掛けられるように肩章が付いていたりと、デイテールの全てに意味があり塹壕が戦争中に必要な装備を付けトレンチコートは作られていました。
上記の事から紳士用のコートがトレンチコートの起源という事だと思いますが、ササールコートを創業者が作った時代は女性が社会に進出して、お洒落着としてトレンチコートを着ており、女性のコートにDリングを付けるということはおそらくですが創業者は考えなかったと推察しています。
また、三陽商会は1943年に設立し最初の3年はコートを作っておりませんでした。(当時は石を切る機械やパンクしないゴムボールを作っていたそうです)
その後に起きた第二次世界大戦により創業者は全てを失い、軍隊時代の友達から防空暗幕が日本画材という会社の倉庫に眠っているのを聞き、雨を凌ぐレインコートを1946年に作りました。
非常に大変だったと想像される時代の中で、二度と我々も戦争が起きて欲しくないとの思いもあります。

色々と調べましたが特にDリングについては武器等をぶら下げる以外に意味が無く、今の時代やこれからの未来に必要のないものだから外しました。

私がもし仮にバーバリーの企画をやっていてトレンチコートを作るなら必ず原点であるトレンチコートをコンセプトにするのでDリングを付けます。
またメンズで本物のトレンチコートを作る事が目的であればもしかしたらDリングを付けるかもしれません。しかしながら、今回の100年コートは男性も女性も親から子、子から孫へ受け継いで欲しいとの思いがあります。2013年の当時から100年先を考えて未来に向け意味のないものは付けないとの理由が一番大きいかもしれません。
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とても説得力のある回答ですよね。このような作り手の思いがわかると、コートの見え方も変わってくることがあります。
さらに詳しくは、こちらから。

またしても日本ではまったく報道されていないので、いちおう概要だけでも知っておきたいファッション事件として、ごくごく簡単にご紹介しておきます。

9月中旬におこなわれたNYコレクションで、もっとも物議をかもしたのが、マーク・ジェイコブズでした。

白人モデルが黒人文化の象徴であるドレッドヘアを、カラフルなかつらとして「盗用」したことで、Twitter上で大々的なバッシングが起きました。

VogueやDazed & Confusedなどのモード系の雑誌は、そんな「言いがかり」などスルーしてジェイコブズ賛。他文化からの「盗用」など気にし出したらファッション史など成立しないので、この態度は正しいと私は思っています。

Timeなど一般紙は「編み込みヘアの議論などどうでもいいじゃないか。アフリカン・アメリカンが置かれているシビアな現実をもっと直視せよ」と。(この態度は、圧倒的に正しい。)

その後、ワシントンポスト紙で、ピュリッツアー賞受賞のファッションライター、ロビン・ギヴァンが、マーク・ジェイコブズを擁護する記事を書きました。すると今度はギヴァンまでがバッシングの対象になりました。

植民地支配を受けたことがなく、文化に「上」も「下」もつけず、よい「舶来」のものはどしどし取り入れて自国の文化にしてきた日本人には「はあ?」という問題なのでしょう。ほとんど日本で報じられていませんが、昨年の「ボストン美術館キモノウェンズデー事件」で引き起こされた「文化の盗用」問題は依然、くすぶりつづけているようです。

昨年のボストン美術館キモノウェンズデー事件に関しては、こちらに寄稿しております。

無理解と不寛容は日本ばかりでなく、もっとも愛と寛容の世界であるはずのファッション界にも広がっているというのがなんとも悲しい。

どんどん最新ニュースが更新されていますが、今の段階までのおおよその流れは、こちらをご覧ください。

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ブルネロ・クチネリ氏が来日、31日、イタリア大使館で開かれたパーティーにお招きいただきました。FullSizeRender (154)            (左がクチネリさん。右は通訳の方です)

ブルネロ・クチネリは1978年創業、色彩豊かなカシミアニットからスタートしました。

会社は歴史の古いソロメオの村にあります。14世紀に建てられた城の内部を修復し、1985年に本社を移転。人々に不利益を与えることなく利益を追求する「人間主義的」資本主義を掲げるファッションブランドです(途上国を搾取するファストファッションのやり方の対極を目指すというエシカルな企業)。

人としての尊厳は責任感を生み、責任感から創造力が生まれる、というのがクチネリの考え方。働く人の内面の質や満足感が、最終的に、製品の質の高さとなって表れています。

2012年にはミラノ株式市場への上場を果たします。取引初日は、始値より50%増の終値7.75ユーロで取引を終え、近年のIPO価格としては最高値をつけます。

弱者を搾取しなくても、働くすべての人を尊重し、環境や歴史を守りながら、利益を追求することができるという「倫理的」に成功するファッション企業として、近年ますます評価を高めています。

(イタリア語を英訳したバージョンですが、クチネリ氏の目指すところ)”I believe in capitalism. I need to make a profit, but I would like to do it with ethics, dignity, morals. It’s my dream.”  (By Brunello Cucinelli)

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大勢の人人人。日本庭園を臨む芝生にも人があふれるくらい。ハイヒールで降りたらずぶずぶ芝生にめりこみ、あれだけの人が歩いていたことを思うと翌日の芝生のお手入れはたいへんなことになっていたのではないかと危惧します……大使館のスタッフのみなさまごめんなさい。

 

「ZOOLANDER No.2」。猛烈におバカすぎることで大人気を博したファッション業界映画の第2弾。
あのデレク・ズーランダーとハンセンが、いまどきのファッション業界に帰ってきて、モデル、デザイナー、SNS、エコ、有機、トレンド、おしゃれ建築、MET GALAパーティー、メディア、若すぎる(幼すぎる)SNS有名人、若さ絶対主義、プラスサイズ、その他得体のしれないファッショントレンドや業界のシステム、蔓延するナルシシズム、大ヒット映画なんかをことごとくコケにしていく。ベン・スティラーによるズーランダーのおバカぶりはパワーアップしており、ファッション業界有名人の本人が出てきたり、「あの人だな」とわかるパロディが出てきたりするので、そんな「人」や「事情」がわかる人にとっては、かなり笑える。アナ・ウィンター、ケイト・モス、マーク・ジェイコブズ、アレキサンダー・ワン、ヴァレンチノ、スティング、ジャスティン・ビーバー、etc. 出てくるだけで爆笑。逆に言えば、知らない人にとっては、(人物が何者なのかわからないと)イライラさせられる展開もあり、まったくの駄作かもしれない。

あまりの想定外で嬉しくなったのが、カンバーバッチのジェンダーレスモデル、ALLとしての登場。あきらかにアンドレイ・ペジックのほのめかしがありますね。バッチ君のファンはここだけ観る価値あり。

面白いと思った言い回し。

“I’ve missed not knowing things with you.” (おまえとバカを競っていた頃がなつかしい)

「1」は80年代のファッション界の空気の総括映画でもある。セクシーなサントラは夏によく似合う。

Van Cleef & Arpelsの新作発表会にお招きいただきました。

メインは「ペルレ」コレクションの新作。「ペルレ」は2008年に登場したコレクションで、職人さんの手仕事によるゴールドのビーズが特徴。

 

ゴールドビーズの歴史そのものは1920年代までさかのぼる。きっかけになったのは、1922年にエジプトのツタンカーメン王の墓が発見されたこと。エジプト風のジュエリーが流行し、金属の粒を連ねた細い糸が、ジュエリーのモチーフを引き立てるために多用されたとのことです。

書棚に並ぶのは、膨大な量の本……と見えて、これは顧客からの注文リストです。このブランドの歴史の重みを物語ります。

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試着させていただきました。ブレスレットは、ペルレ ゴールドパールブレスレットと、ペルレ クローバーブレスレット。幅のあるクローバーブレスレットは、細かいゴールドのビーズでぎっしりと縁どられています。指輪はペルレ クルール アントレ レ ドア リング。緑の石はマラカイト、白く見えるのはダイヤモンドがぎっしりセットされたゴールドです。「アントレ」、すなわち指と指の間に石が見えるような珍しいデザインです。ほかに赤いカーネリアン、ブルーのターコイズをセットしたバージョンがあります。

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“These gems have life in them:  their colors speak, say what words fail of.”  By George Eliot
(「宝石には命が宿る。ことばにならないことを語りかける」 ジョージ・エリオット)

 

 

本日(21日)付けの毎日新聞夕刊一面に、史上4番目の若さで新・名人となった棋士の佐藤天彦さんのインタビューが掲載されています。

インタビュー当日は同席させていただき、ファッション観や将棋観をたっぷり伺いました。たいへん頭の回転の速い方です。

紙面には、私のコメントはひとことだけさらりと書かれておりますが、将棋の闘い方と通底する彼のファッション観はていねいに論じるに値するので、また別の機会に書きたいと思います。

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インタビュー当日の記念写真。佐藤名人は、アン・ドゥムルメステールのフル装備に、靴はドルチェ&ガッバ―ナ。細部の凝った装飾が写真では完全にご紹介できないのが悔しいところですが、十字架のチェーンや靴の装飾など、雰囲気だけでもご覧くださいませ。ヘアカットも、服の雰囲気に合わせて考えられているとのこと。

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インタビュー場所、将棋会館。

 

こちらから読めます。

「ビル・カニンガム&ニューヨーク」 。原稿を書くためにDVDで再見。前に見た時はまだビルが生きているときだった。もうこの人はいないのだ、こんな人はもう二度と出てこないだろう。これはやはりとても価値のあるドキュメンタリーだ。求道者のような、子供のような彼の姿に、最後は泣かされる。

詳しくは活字で書くので、おぼえておきたい彼のことばのなかからいくつか記します。

A lot of people have taste, but they are not daring enough to be creative.
(誰でもセンスはある。ただ勇気がないだけ)

Fashion is the armor to survive everyday life.
(ファッションは日々を生き抜くための鎧)

Money is the cheapest thing.  Freedom is the most expensive thing.
(金なんて安いもの。自由ほど価値のあるものはない)

It’s not work.  It’s pleasure!
(仕事じゃない。好きなことをしているだけです)

変人じゃなくて、むしろ、まっとうで正直な人なのですよね。忙しすぎて恋愛をしたことも一度もない、でも心から仕事が楽しかった、と。一週間に一度、教会へ行くのは「必要だから」「人生を導いてくれるよきガイド」。この答えを口にするまでにとても長い時間がかかっていた。表には出さない葛藤もあったであろうことがうかがわれる。胸に迫るシーン。

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イギリスのEU離脱が決まり、キャメロン首相が辞任。

世界が騒がしいこんなときだからこそ、KEEP CALM AND CARRY ON. アイザック・ウォルトンのSTUDY TO BE QUIET. 日常の仕事を淡々と続けます。

ヴァルカナイズロンドン ウィメンズ2016AW展示会にうかがいました。

キャサリン妃御用達ブランド、キャサリン・フッカーはますます好調。コートのバリエーションも増えています。テイラードの高度な技術に裏付けられた、かわいらしさとかっこよさを両立させる服。着たとたんにきりっと背筋が伸びます。

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ほかにもゴート、ウィッスルズなどモダンブリテンを代表するブランドの新作の数々を目にして、感覚を更新。

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スマイソンでは、シェイクスピア生誕400年を記念した手帳を発売。表にはシェイクスピア作品から厳選されたセリフが刻まれています。

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グローブトロッターからはリバティとコラボした新色「エミリア」が登場。淡くシックなピンク×グレーです。

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キャサリン・フッカーのコート。セーターなど着こんだときには不向きですが、薄手のワンピースの上にこれ一枚だけ羽織る、というときにはきりっと決まります。こちらのモデルほか、いくつかの新作は受注のみの生産になるそうです。お問い合わせはヴァルカナイズロンドンまで。IMG_2953

 

 

ちょっと時間が経ってしまい、恐縮です。大阪のトークショーから一日おいて再び関西へ。3日、京都国立近代美術館で4日より開催されているポール・スミス展の開会式&内覧会にお招きいただきました。FullSizeRender (4)

ちょっと時間が経ってしまい、恐縮です。大阪のトークショーから一日おいて再び関西へ。3日、京都国立近代美術館で4日より開催されているポール・スミス展の開会式&内覧会にお招きいただきました。ポール・スミスの初期のショップから仕事部屋、頭のなか、ありとあらゆる業界とのコラボレーションなど、ポールの世界を見せていく。FullSizeRender (5)
いちめん、ボタンで埋め尽くされた圧巻の壁。

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服が登場するのは一番最後にちらっと。メンズ・レディスいっしょくたにぎっしり、というのはちともったいない気がしました。ここをもっと膨らませたらボリューム感のある展示になったのになあ。FullSizeRender (8)

というか、あらゆる領域に広がっているいまのポールの世界においては、服が占める割合というのはそのくらいなのかもしれないな。などなど考えながら。FullSizeRender (11)
こんなフォトコーナーもあるのもいまどきですね。インスタグラムにアップすると、カードにして印刷してもらえます。この日はポール・スミスの今シーズンのワンピースを着ていきました。彼の作る女性服は、どこかさっぱりしていて、透け感のある素材でもセクシーにならない(笑)。ま、着る人によるといわれればそれまでですが。

 

紀尾井町に特設されている「旅するルイ・ヴィトン」展のプライベートビューにお招きいただきました。

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この展示は圧巻ですね。材木商だった創始者の話にはじまり、交通機関の変化とともに鞄とファッションがいかに変化してきたのか、すばらしい演出で堪能することができます。現在の作品もちらほら混じるあたり、ブランドの宣伝としてこれ以上はないと思われる迫力。

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さきに鞄があってモノをいれるんじゃなくて、モノにあわせて鞄をオーダーしていたんですね。食器やグルーミンググッズ、靴、ブラシ類、楽器、とにかくありとあらゆるモノ。それができる階級がヴィトンを育てたということでしょうか。IMG_2533

本棚をそのまま持ち運んでいたという「証拠」のルイ・ヴィトンケースにもおどろき。

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日本のコーナーでは、海老のマークつきの海老蔵さんの海老色ヴィトンとか、

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板垣退助のヴィトンとか。

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ルイ・ヴィトン六本木店のスタッフによる「アート・オブ・パッキング」のパフォーマンスにも感動しました。ハワイ二泊三日分、30アイテムをコンパクトにスーツケースに入れるという、マジックを見るような技の披露。感心してしまい、大学でも学生たちにその技の秘訣を伝授(笑)。

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これからますますファッションとアートは不可分になっていきますね。

ポールスミスの六本木店にも立ち寄ってみましたが、世界最大の旗艦店というこちらも、アートハウスのようになっています。5.15.2016.1            (店内壁面のみ撮影可能ということで了解を得ました)

 

本日、富山で行われるG7に向けて、5月14日付の北日本新聞に 寄稿しました。女性政治家のパワードレッシングについての話です。紙面が大きく、一度にスキャンできなかったため上下二枚に分割した結果、やや見苦しいですが(^-^;

5月14日北日本新聞 上5月14日北日本新聞 shita

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朝日新聞5月5日付の文化・文芸欄。とてーも興味深い。歴史問題の解答としてはこれで「正しい」と思いますが、「ファッション文化史」の問題となれば、この「解答例」は「間違いではない」という程度の正解なので、100点中40点というところかな。ココ・シャネルによる価値転覆(20点)、フラッパーの台頭(20点)、アールデコの要素(20点)を加えて初めて100点になります。ファッション学は広い視野を求める分、厳しいのだ。笑

Don’t take it seriously!   (Just in case)

三菱一号館美術館にて大好評開催中の「パリ・オートクチュール」展。遅まきながらようやく観ることができました。

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オートクチュールとは、顧客の注文に合わせてデザイナーの主導でつくられる一点ものの服。19世紀後半にパリに誕生してから現在までの歴史を、およそ130点のドレスや小物とともにたどることができます。

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撮影が許可されている部屋がひとつあるというのも、いいですね。カタログの平板な写真ではなく、「来た、観た、撮った」で完結したい願望がささやかに満たされます。笑

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ディオール、バレンシアガ、ジバンシー、シャネル、サンローラン、ゴルティエ、ラクロワ、アライア。やはり現物の立体的な構築感は迫力が違い、とりわけ20年代のビジュー縫込みドレスや、バレンシアガの複雑な構成のドレスなど、文字通り目がくらみそうな美しさ。

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グローブに金の爪がついたこの手袋は、スキャパレリによるもの。さすがシュールレアリスムの女王。
ドレスは着るとまたちがう顔を見せるので、着てみたらどのようになるのか、あれこれ想像しながらの充実の体験でした。

5月22日まで開催されています。

三菱一号館美術館開館6年目にして初めてのファッション展。今年はあちこちでファッション展が開かれていますね。喜ばしい限りです。

 

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Special Thanks to Ms. Hanae Sakai

京都国立近代美術館にて、ポール・スミス展が開催されます。詳細はこちら

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7月3日(日)午後2時よりトークセッションがあり、私も登壇させていただきます。関西方面のみなさま、よろしかったらぜひどうぞ。お目にかかれますことを楽しみにしています。イベント詳細は、こちらです。

 

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トークセッション「メンズファッションの歴史と現在」
日時:7月3日(日)午後2時~3時30分
ゲスト:中野香織氏(明治大学特任教授)
百々徹氏(京都造形芸術大学准教授)
モデレーター:蘆田裕史氏(京都精華大学講師)
会場:京都国立近代美術館 1階講堂
定員:先着100名(午前11時より1階受付にて整理券を配布します)
※聴講無料(本展覧会の観覧券が必要です)

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2日夜にはタダシ・ショージの屋形船にお招きいただきました。

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横浜・みなとみらいのぷかりさん橋から2時間ほどのエンターテイメント。

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船内ではロックな三味線・太鼓・笛に合わせたタダシのドレスによる日舞もあり、和洋が渾然となったタダシの今シーズンの世界を楽しませていただきました。4.2.11
タダシの今シーズンのコレクションのテーマは日本。藤、あやめ、桜など日本らしい花々をモチーフにしたドレスや、藍色はじめ和の色を印象的に使ったドレスなど。モデルとして着こなすのはミス日本酒のみなさま。船内は畳なので、モデルたちの足元もぺたんこのぞうりですが、それが不思議と違和感なくなじんでいました。

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同じテーブルでご一緒したのは、 2月のブガッティのパーティーでご縁をいただいた、ラスベガスの不動産王、フィリペ・ジアード氏ご一行さま。彼の友人である、レバノン出身の歌姫ナジワ・カラムさんも初来日です。そして彼のビジネスパートナーである日経グローバルの皆見由紀子さんはじめ社員のみなさま。ナジワは中東、ヨーロッパ、アメリカでは知らぬ人がいないスーパーセレブで、ファッションアイコンでもあります。ハイジュエリーブランドのスポークスマンでもあり、アラブ系としては初めての「ロレアル」のキャンペーンモデルになった美女です。この日もジミー・チュウの前衛的なバッグを自然にもち、よい香りを放ち(アラブの香水とクリードのコンバインだそうです)、ただものではないオーラを放っていました。日本では中東の文化そのものの情報が少なく、あまり知られていないことが、この日は幸いしました。パパラッチが寄ってこないという状況にかなりほっとしていらっしゃるようでした。大スターなのに周囲への気遣いも忘れず、おだやかで優しい微笑みを絶やさない、素敵な方でした。(右から2人目がナジワです。その左隣がフィリペ。)

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ナジワは私に”I know you. I met you before.”と。私も何か深いシンパシーを覚えたんですよね。前世で会っていたかもしれない……。

 

Kimono and Cultural Appropriation: The Positive Side of Appropriation and Misapplication of Fashion 

A Look into the Kimono Wednesday Controversy at Boston Museum of Fine Arts

By Kaori Nakano

(Special thanks to Ms.Nikki Tsukamoto Kininmonth, and Prof.Shaun ODwyer, for the English version)

Between the summer and fall of 2015, “cultural appropriation” became somewhat of a buzzword in fashion news abroad.

It all began in July when the Boston Museum of Fine Arts was forced to cancel their “Kimono Wednesdays“ kimono try-on event, due to public criticism. The event was meant to celebrate the homecoming of a painting featured in the Japan leg of a traveling exhibition titled “Looking East: Western Artists and the Allure of Japan”.

That painting, which was the center of the scandal, was Claude Monet’s La Japonaise, in which his wife, dressed in a bright red uchikake -a kimono robe usually reserved for bridal costumes- turns around to strike a pose toward the viewer. The weekly event was intended to attract visitors by offering patrons a chance to wear some similarly exquisite uchikake robes and pose in front of the painting for photos. Japan’s national broadcaster NHK, which had originally provided the uchikake to be tried on by patrons of the “Looking East” exhibition in Japan, had donated them to the Boston MFA to use and display as it liked.

It seemed like an event fit for the social media age; “try it on, take a selfie, upload and share.” But the event attracted guests of a rather unexpected kind – young and angry Asian American protestors bearing placards with slogans like “This is offensive to Asians” and “Cultural Appropriation”. Their message was also spread through fierce social media protests: Asian culture should not be stolen or superficially appropriated by a white supremacist culture.

On July 7, the BBC and New York Times reported the MFA’s announcement that it was cancelling the kimono try-ons (though Kimono Wednesdays continued). A new protest subsequently erupted, this time against the cancellation.

The counter protestors’ message in a nutshell was this: because very few Japanese were taking part in the original protests, the protestors were using the event as an opportunity to soapbox their views on Asian American identity. The counter protestors insisted that accusing Kimono Wednesdays of being a “white supremacist approach discriminating against Asians” was misguided, as the event had been organized through cooperation between Japanese and American parties, as a cultural exchange event.

It was Japan’s kimono industry and other related manufacturers that were potentially affected by these events, and a number of kimono designers have expressed their concern about it. Socially conscious Americans who admired the kimono began to avoid wearing it, from fear of being criticized for cultural appropriation. All this was occurring when Japan’s fast fashion retail company Uniqlo had just released their casual kimono wear and yukata lines for the global market.

The debate seemed to intensify as Halloween neared last year. Young Americans were now worried whether dressing up as a geisha would be cultural appropriation, and even I was receiving such inquiries, to which my response was; “Go ahead – dress yourselves up!”

On January 2016, Boston Museum held a conference concerning a serial debate, but the discussion there was very limited, dominated by identity politics rhetoric, and only one Japanese person spoke up and was critical. So I would like to comment on this case from a view point of fashion historian.

Let’s try to assume for a moment that wearing the kimono in disregard of how it was originally intended to be worn is indeed cultural appropriation. A perfect example of this would be the kosode gown, a traditional outerwear for men and women of samurai rank, brought to Europe in the 19th century and appropriated as room wear. For European women who had to wear a corset as part of their daily wear, the kosode gown was introduced as something more comfortable to slip into when relaxing in the privacy of their home. Looking up the English dictionary even today, the kimono will be described as “room wear” or “dressing gown” – a complete misapplication of the term.

However, it was Paul Poiret, a fashion designer of the early 20th century, who found inspiration in none other than this kimono for his corset-free dresses. Thus, the centuries-old custom of the corset diminished, allowing 20th century mode style in the West to blossom. Throughout history, fashion culture has developed via dynamic exchange between cultures. Through being cut away, or “stolen” from its original context (at times with misinterpretation), it leads to completely new and unexpected creations, which then later come back to their original culture as a new form.

This opinion may make more sense to contemporary Japanese, who have, without considering questions of their superiority or inferiority relative to other societies, welcomingly embraced various cultures. Japanese also usually feel rather honored to have their culture “appropriated”: David Bowie, the British superstar who left us recently, was very famous for “borrowing” his face paint, androgynous look and orange colored hair from Kabuki theatre, and Japanese people applauded him for doing this. But for people who still bear the scars from the dark days of segregation and oppression, having their culture “borrowed” on a superficial level does equal to appropriation. Even if it does not feel relatable to the Japanese, it is important to remember at the back of our minds that such thoughts still persist strongly in our world.

It is almost clear that people in Fashion industry does not care about which culture is inferior or superior. Fashion history so full of examples of “cultural appropriation” that it is even absurd to discuss about such tough question. We can hear the interesting comment from the people in fashion industry in the preview of upcoming documentary movie about Vogue, following the days leading up to the annual Met Ball . The 2015’s gala theme was “Chinese Whispers: Tales of the East in Art, Film and Fashion”. A lot of people expected the event and subsequent exhibition should be rife with racial insensitivity and cultural appropriation, especially in this mood around the Boston Museum. But, it seems the  film doesn’t skirt around the tough questions.  Only Andrew Bolton, the Metropolitan Museum of Art’s Costume Institute curator, tells to the camera, “There’s a lot of political hurdles. Some of the topics that the exhibition is addressing could be interpreted as being racist.” And I am sure they will ignore all claims if they should occur, because it is simply “not fashionable” , or even nonsense,  to take up such claims seriously.

As if to prove the feelings above, NY collection held in February 2016 acclaimed the Kimono Collection by Hiromi Asai. Models are western women, including colored people, who wore about 30 designs featuring colorful kimono of Kyo-yuzen dye and Kyo-kanoko shibori tie-dye accentuated with obi in Nishijin-ori brocade, which wowed the audience at the runway show. Ms. Hiromi Asai, the brand producer said; “We want kimono to become familiar with a wide range of people beyond the boundaries of culture and race.” And there occurred not a single discussion about appropriation.

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(By courtesy of the producer,  Ms. Hiromi Asai)

Something I saw recently in the news felt like a faint ray of hope amidst news stories riddled with darkness and despair – the gentle emergence of Muslim Lolita fashion within Islamic cultures. Young Muslim women are now “borrowing” the Japanese Gothic Lolita style and donning frilly pastel colored hijabs – and it is an incredibly cute sight to behold.

Personally, I simply see this movement as an expression of admiration for Japan’s Lolita fashion. Imagine if no culture was considered superior or inferior to others, and if dark histories of our past were not brought up each time we wished to casually “appropriate” each other’s styles, simply because we admired and adored them. I think “appropriation” of fashion can be one of the most direct and loving ways of saying “yes” to another culture.

Responding to the love call from Muslim women, Uniqlo has teamed up with Muslim fashion designer, Hana Tajima, to create a modest ‘lifewear’ collection for women, which includes traditional wear like kebaya and hijabs. It seems to me this is one modest and modern step of the cultural infusion through fashion, which will lead us to understand each other.

I wonder, or rather pray, that sharing such a sense could one day make this world a more peaceful place.
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(Alfred Stevans, La Parisienne Japonaise. 1872.   From Wikimedia Commons)

Kaori Nakano is a fashion historian and professor at Meiji University in Tokyo.

“Where must we go, we who wander this wasteland, in search of our better selves?” -The First History Man  (Cited from “Mad Max Fury Road”)

今回のアカデミー賞で議論を呼び起こしたのが、衣装デザイン賞受賞のジェニー・ビーヴァンでした。作品は「マッドマックス フューリーロード」(日本語タイトル 「マッドマックス 怒りのデスロード」)。

これを機内で見たのですが、最初の数分間でもうやめようかと思った。殺伐とした世界のなかに、残虐で、具合が悪くなりそうなシーンがえんえんと続く。ところがしばらく我慢して見ているとぐいぐいこの世界に引き込まれていくんですね。これは神話の世界、ジョセフ・キャンベルの世界と気づいた時には、かなりどっぷりはまりました。常に車が疾走しているのでスピード感も半端でなく、さらにゲームのように襲い来る敵を次から次へと倒していくときの快感も加わる。観終ったら完全に魅了されていました。気分の悪くなりそうな、荒廃した世界の風景もその世界なりの美学に貫かれて、細部にいたる美術の工夫があることがよくわかる。

 

というふうに納得すると、やはり衣装デザインの力もパワフルだったことがあらためてわかります。歴史的な衣裳と違って、こんなポスト・核戦争のすさんだ未来世界の衣裳をゼロから考えるというのは、そうとうにクリエイティブな仕事です。

シャリーズ・セロンが演じるフュリオサの「トクシック(toxic)」な戦闘着。コスプレしたくなりますよね。笑

だれもが納得する根拠あって受賞したビーヴァンなのですが、セレモニー当日は、スカル柄入りの革ジャン、ジーンズにスカーフという、ロングドレスにタキシードだらけの会場にあってはかなり浮きまくる装い。

プレゼンターのケイト・ブランシェットのブルーのドレスがまたお姫様ゴージャスだったので、対照がより際立って見えました。

そんなビーヴァンの登場を露骨に「喜ばない」オーディエンスもいて、拍手なし、しかめっつらで腕組み、という観客の映像も一緒に流れてしまいました。

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ビーヴァン自身はイギリス人だけあって、「これでもドレスアップしてきたつもりなの」と笑いをかましておりましたが、「自分はドレスが似合うような人間ではない」という自覚もあり、あえての場違いな装い。しかも作品があの砂だらけのマッドマックスワールドの衣裳だから、この反逆的な「衣装」もそれなりの理由あっての装いであるには違いありません。

批判も多々ありますが、世界が注目する圧倒的なドレスアップの場にあって、おそれずひるまず自分らしいスタイルと作品への愛をミックスしてみせたビーヴァンに、私としては敬意を表したいという気持ちが強い。自分には到底できません。

いずれにせよ、ビーヴァンのこの日の装いは、マッドマックスの衣裳とともに、映画の歴史・アカデミー賞の歴史に刻まれることになるでしょう。

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それにしても。砂とトラックと石油と銃とスキンヘッドに見慣れてきたあたりに、ふいにあらわれた「ワイヴズ」たちの白い柔らかな衣装の鮮烈な美しさときたら。当分の間、残像として残りそうです。

コスチュームの詳しい情報については、こちら。 音楽もいいですね。

 

What is the most thrilling aspect of fashion is, it sometimes helps us to reveal the most unexpected side of ourselves.

2015年感謝のまとめシリーズその2。ファッション、ライフスタイル全般に関するエッセイに関しても、多くの媒体で書かせていただきました。もっとも印象深かった仕事は、「ソーシャルカレンダー」連載も担当していたリシェス誌での特別記事、シェリー・ブレアさんへのインタビュー記事です。8.29.1      (8月29日 プリンスホテルさくらタワーにて)

25ansでは35周年記念巻頭エッセイを、レギュラー執筆陣の一人として寄稿させていただいたのは感無量。ラグジュアリー、ダイアナ妃、ロイヤルスタイルなどその後に続くテーマはすべて25ansでの仕事がスタートでしたから。読売新聞、北日本新聞「まんまる」、両連載もともに50回を超える長期連載となり、多くの人に感想などのお声をかけていただけるようになりました。アシダジュンさんの広報誌JAも、もう10年近く書かせていただいており、長いお付き合いが続くのはなによりもありがたいことと感謝しています。最新号には満を持して?「ファッション学宣言」を書きました。もう後に引けない思いです。

Japan-in-Depthに寄稿した「ボストン美術館キモノウェンズデー事件」総括記事はウェブ上でも話題となり多くの方に読まれ、いま、英語版を準備中です。また、GQ誌に書いた「ノームコア」の記事は、ウェブ版がいまだに根強く読まれ続けています。トレンドの話であるからこそ、普遍性をもつ文体で確実に書いていくことの大切さをあらためて肝に銘じています。

さらに、多くのブランドから、コレクション、ショールーム、展示会、新作発表会へお招きいただき最先端のファッションがうまれゆく現場に立ち会うことができたことは幸いでした。そしてある高級化粧品会社×ファッション誌タイアップの「輝く女性10人」の一人に選んでいただいたのはおまけのような幸運!

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フレグランス、ビューティー関連の展示会、発表会にも数多くお招きいただき、よい香りと新しい情報が途切れることのない一年でした。心より感謝申し上げます。
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Special thanks to Jun Ashida, Tae Ashida, Mikimoto, British Luxury Brand Group, Regina Romantico, Tadashi Shoji, Richesse, 25ans, Kitanippon Shinbun, Yomiuri Shinbun, Sarai, Precious, Mitsukan Water Research Center, Japan-in-Depth, GQ, Shiseido, Guerlain, Sisley, Parfum de Rosine, Penhaligon, Different Company, Fueguia, Jo Malone, Dunhill, Valentino, Ferragamo, Laboratory Perfume……

Japan In-depthに掲載された記事のバックアップです。

投稿日:2015/11/29

[中野香織]【ファッションにおける「盗用」「誤用」の効用】~ボストン美術館「キモノ・ウェンズデー中止事件」~

 

今年の夏から秋にかけて、海外のファッションニュースに頻出したキーワードの一つが、「文化の盗用(cultural appropriation)」でした。発端は、7月のニューヨークで起きたボストン美術館の「キモノ・ウェンズデー中止事件」です。ボストン美術館は、「東方を見る:西洋のアーチストと日本の魅力」展をおこない、キモノ・ウェンズデーというイベントを企画していました。

1876年にクロード・モネが描いた「ラ・ジャポネーズ」という名画がありますね。モネが自分の妻に赤い打掛を着せて見返り美人のポーズをとらせている有名な絵です。来場者は、モネの絵に描かれたような豪華な打掛を着て、絵の前で写真を撮ることができることになっていました。NHKも打掛を用意するという形で協力していました。

SNS時代らしい「着て、撮って、アップ」したくなるイベントです。ところが予期せぬ出来事が起きたのです。アジア系アメリカ人の若い抗議団体がプラカードをもってキモノ・ウェンズデーにやってきました。「アジア人を侮辱する、文化の盗用」などと書かれていました。同時に、抗議団体はソーシャルメディアを駆使して、美術館に対する激しい批判を続けました。要は、「白人至上主義的な上からの目線で、アジアの文化を表層だけ都合よく盗用するな」という抗議でした。

7月7日、美術館はキモノ・ウェンズデーのイベントを中止しました。BBCとニューヨーク・タイムズがこの経過を報じると、こんどはイベント中止に反対する抗議が起きました。

カウンター・プロテスター(抗議団体に反対する人)たちの議論は、わかりやすく言えば、次のようなものです。抗議団体のなかに日本人はいない。抗議者たちは、アメリカにおけるアジア人のアイデンティティを主張したいがために、このイベントに便乗して乗り込んだだけだ。キモノ・ウェンズデーは、日本とアメリカが協働しておこなった文化交流のイベントであり、それに対して「白人至上主義目線から見たアジア人蔑視」という議論をふりかざすのは、筋違いである、と。

あおりを食ったのは、日本のキモノ関連産業です。社会問題に意識の高い、善良なアメリカ人のなかには、キモノに魅力を感じても、着ればひょっとしたら「文化の盗用」としてバッシングを受けることになるのではないかとおびえ、着ることを控える人が出てきました。ユニクロが世界的にカジュアルキモノや浴衣を展開しているタイミングで、です。

ハロウィーン前にはさらに議論が過熱しました。「ゲイシャ」の仮装をすることが「文化の盗用」になるのかどうかと心配するアメリカ人の声が高まり、私にまで問い合わせがくる始末。もちろん「どんどん着てください」と答えましたが。

百歩譲って、キモノをその本来の着方を無視して都合のよいように着ることが「文化の盗用」にあたるのだとしたら、19世紀にヨーロッパへ渡った武家の小袖こそ、いいように「盗用」された顕著な例といえるでしょう。なんといっても、小袖がヨーロッパでは部屋着として着られたのですから。当時のヨーロッパの女性服は、コルセット着用を前提としたもので、小袖は、コルセットをはずした私室でリラックスウエアとして着られていました。今でも英語の辞書でkimonoをひくとroomwear (室内着)とかdresssing gown(化粧用ガウン)なんていう意味が出てきます。まったく誤用されていたわけですね。

ところが、ほかならぬそのキモノにヒントを得て、20世紀初頭のデザイナー、ポール・ポワレが、コルセット不要のドレスを創ります。それ以降、西洋では数百年間続いたコルセットの慣習は廃れ、西洋モードが花開いていきます。

文化がその本来の文脈から切り離されて「盗用」され、時には誤解されながら、予想外の新しい創造が生まれ、その成果がまた元の文化に還ってくる。そうしたダイナミックなやりとりのなかでファッション文化は発展してきました。

とはいえ、それは様々な文化を「上」「下」の意識なく、鷹揚に受け入れてきた日本人の「正論」なのかもしれません。差別や迫害を受けてきたという負の記憶が消えない人たちにとっては、「優位」に立つ側が、「下位」にある文化の表層のいいとこどりをするのは、「盗用」に相当する。私たちにはピンと来なくても、そのような感覚がいまだに世界には根強くはびこるのだという現実も、頭の片隅に留めておいたほうがよいのかもしれません。

殺伐としたニュースが続く闇の中、かすかな一筋の希望の光のように見えているのが、イスラム圏におけるムスリマ・ロリータのひそかな流行です。イスラム教徒の女性たちによる、日本のロリータファッションの「盗用」です。パステルカラー、フリルを多用したヒジャブ姿の女性たちのなんと「カワイイ」ことか。

私の眼には、日本のロリータファッションに対する彼女たちからのラブコールにしか見えません。「上」「下」の意識なく、過去への禍根なく、素敵と感じたものを軽やかに「盗用」しあう感性が、なんとか世界を平和に変えていけないものかと、祈るように、思います。

I was invited by Prof. Shinji Koiwa and gave a lecture for the Koiwa Seminar at Hitotsubashi University. 11.24.4It’s about the Great Composers seen from the history of western fashion.
Discussed about the portraits of great composers, such as Liszt, Beethoven, Bach, Brahms, Mahler, Wagner, Chopin, Clara & Robert Schuman, etc., from the perspective of fashion history. 11.24.3It was first time for me to tackle this theme, and poured a lot of time and energy into the preparation.  But I was rewarded more than that. Inspired so much from the questions and discussions made by the musical professionals after the lecture.

Campus of University looks so academic, stately and beautiful, colored with yellow and green. Reminded me of Komaba days… I love this atmosphere. 11.24.2 A wonderful day. A day to remember forever. Thank you all, who shared the precious time.11.24.5

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一橋大学大学院 言語社会研究科の小岩信治先生にお招きいただき、研究科の先生や大学院生の方々を対象に、「ファッション史から見る音楽史」について講演しました。

はじめてのテーマで準備に手間取りましたが、これまで作曲家の肖像をそのような視点から眺めた人はいなかったということで(小岩先生のアイディアです)、喜んでいただけたようです(I hope)。私自身も、リサーチを通してすべてが新しい発見で、逆にこのテーマをもっと深めたいと思うようになっています。レクチャー後にもたくさんのご質問やご意見をいただき、それを今あらためて調べているところです。

終了後は国立の老舗店で、ワインを飲みながら歓談しました。専門分野は異なれどヨーロッパ文化に精通するプロフェッショナルな方々ばかりで、ハイコンテクストな会話を楽しませていただきました。

黄色に輝くイチョウ並木とコントラストをなす、壮麗でアカデミックな建物。ギンナンの匂い。駒場時代を思い出しました。この雰囲気、心の底から落ち着きます。忘れがたい一日になりました。小岩先生、言語社会研究科のみなさま、ありがとうございました。またお目にかかれる機会を楽しみにしています。

An inspiring book by Prof. Ayumu Yasutomi. “Who I really am”.

I, as a fashion historian, share the idea written in this book:  Beauty is a gold mine of your own, which could be found only by digging yourself.

This is exactly what I am talking in the lecture of Fashion Studies.  Fashion is not about decorating you, nor shaping you into the trendy stereotype .  It is about  liberating you. Giving you confidence to become who you really are. That is why I believe Fashion Studies can be one of the last fort for the Humanities.

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女性装で活躍している男性(ゲイではない)、東大教授の安冨歩さんの『ありのままの私』(ぴあ)。

美しさの追求には勇気が必要だったが、それが安冨先生の精神にはてしない安らぎを与えていったという、体験から生まれた話に非常に説得力がある。

「『自分は、美しさなどとは無縁だ』と思いこんでいた男装時代、そのことが、私を深く傷つけてきたことに気づきました。それは、女性装するかどうかは、関係ありません。男性として生まれたら『美』とは関係ないよ、ということそれ自体が、男に対するひどい暴力なのです」

「美しさは、作るものではありません。掘り出すものです。自分自身という金鉱を探し出して掘り当てる。そうすると人は美しくなるのではないでしょうか」

「自分自身がある、そのあり方のままに生きることが、人間に与えられた唯一の使命だと信じています。そのような生き方は、さまざまの外部の力とぶつかりますが、それを恐れずに勇気をもって生きるべきであり、その試練から学び、成長することが、人間にとって最高の倫理だと思っています」

日本はもともとトランスジェンダーには寛容で、両性を具有し、越境できる異能の人は、神と人との仲介者扱いされていたという指摘も興味深い。日本語の「性同一性障害」って、あきらかに間違ってることばですよね。Gender Identity Disorderを訳したものだそうですが、「障害」じゃないの。トランスジェンダーなの。レアTを見よ。アンドレイ・ベシックを見よ。唯一無二の、かっこいい存在なの。

 

この本を読みたいと思ったきっかけは、次のインタビュー記事でした。
東大教授、安冨歩さんのインタビュー記事より。

「他人から道でジロジロ見られることは、今でも多いですよ。もしも理論的に何も考えられなかったら、怖かったかもしれません。でも、親しい友人知人はもちろん、初対面であっても、まともな人なら、女性の装いをしているからといって、私をジロジロ見るような失礼はしないんです。

たとえば、黒人を差別的な眼差しでジロジロ見る白人がいたら、問題は黒人じゃなくてその白人の中にあるんですよ。自分とは違う奇妙な人間を露骨に見たりする人は、その人自身が問題を抱えているということを露呈しているにすぎないんです。

つまり、白い目はそれを向ける人自身の中に問題がある。そのことを思想的に理解していたので、視線の暴力に怯えるようなことはありませんでした。むしろ、そのような視線を実際に体験できたことは、私の思想に大きな影響を与えてくれました」

「それよりも考えなければならないことは、フランツ・ファノンという思想家が指摘したことですが、差別される人々が、自ら帯びかねない暴力性です。なぜならこのような白い目にさらされて、それを自分が原因だからだ、と思っていると、深く傷つきます。そして残念なことに人間の本性として、自分のせいで傷ついたと思い込んでいる人は、その傷から発生する暴力を、我が身に帯びてしまうのです。その暴力は無意識のうちに発動し、自分に向かえば自傷してしまい、他人に向かえば、他の人を差別したり、暴力を振るったりしてしまいかねないのです」

だから各人が自分を解放し、ありのままを生きること、他人がそれを寛容に受け入れることは、暴力のない社会を作ることにもつながるんですよね。ひいては万人の幸福としてかえってくる。「自分を掘り出すことで形づくる=ファッション」は、そのあり方を、導くことができる。

女性装といってもさまざまで、たとえば20年前からこのような格好で活動しているお福さん。サロン・ド・シマジではじめてお会いしたのがきっかけでしたが、先日、変身前の長谷川高士さんとしてお食事をご一緒して、お話をうかがい、多くの気づきを得られました。人生のどん底にあったときにお福が「降臨」し、美しいお福になりきることで、長谷川さんの人生が好転していったという。もうダメだということきに、違う自分になることで元気になり、救われる。トランスジェンダーを意識的におこなってみることは、無意識のうちに人を縛る偏見から自分を自由に解放する第一歩でもあるのかもしれません。ofuku

 

8日にパレスホテルでおこなわれた、ミキモト秋のコレクション。10.8.13
パールとダイヤのベルトや、10.8.12たすきのようなパールのネックレスなど、目を奪われる芸術的なパールに感動。これをたすきがけしてリレーをしてみたいなどとけしからん妄想が走る。王勺風バトンの先にはキティがかたどってあってカリナンダイヤモンドが埋め込まれているとか。すいません、ただの妄想です。好きだなあと思うものを見ると妄想トリガー入ってしまいます。10.8.7
「ピクエ」など難度の高い職人技を守り、継承することを目的とした、超絶技巧を尽くしたデザインのシリーズも。素人の写真ではそのすばらしさを再現することは不可能ですが、実際に近づいて見れば見るほど圧巻。

下はかじられたザクロのモチーフ。中の実一粒一粒が深い輝きをたたえていて、吸い込まれるよう。

10.8.11
メンズジュエリーもますます充実。帆船や⚓のモチーフも素敵ですが、ワイングラスをかたどったピンブローチにはには「ワイン」がちゃんと入っていて、ウィスキーグラスには氷が入っているのです。この洒落っ気をジュエリーで表現するのはなかなか大変だと思うのですが、それを軽々と実現しているところに老舗の底力を感じます。10.8.9

フォトスポットが不思議の国のアリス風で悪ノリ記念写真。ご案内くださいましたスタッフのみなさま、ありがとうございました。10.8.14

何度も書いてますが、究極の憧れの女はやはりアイリーン・アドラーにヴェスパー・リンド。女には基本興味をもたない最高の頭脳をもつ男が「比類なき女」と認めた唯一の女がアイリーンであり、世界中の美女を知る最強の男が唯一心の底から愛した女がヴェスパー。まあ、自分がそんな存在になれるわけもなく、非現実的なロマンティックな夢ゆえに憧れるわけですが。そんな話を、レジィーナ・ロマンティコのオーナー・デザイナーである角野元美さんと交わしていて、せめてそんな女が着るような服を作ってほしい、と厚かましくもお願いしたのです。2年ほど前の話です。

そんな難しい服、お願いする私も私ですが(ほんとに申し訳ありません)。ドラマや映画のなかでキャラクターが着ている服の模倣ではなく、最強の男がかなわないと認める女が着る服というきわめて抽象的なイメージに基づいたまったくオリジナルな服。そんな服をなんと元美さんが試行錯誤の果てに、完成させたのです。2年越しのお約束を果たしてくれた元美さんの誠実なお仕事ぶりに、深い感動と、心からの敬意を覚えます。

モデルが私で至極恐縮のかぎりなのですが、ヴェスリーン・スーツ。(しかも勝手にヴェスパーとアイリーンから造語してるし)8.10.2
これはボレロをはおったときのシルエット。ボレロって一歩間違えると婚活服みたいにダサくなるのですが、そうならないぎりぎりのバランスを保っています。元美さんは、このボレロのバランスにいちばんお悩みになったとか。

8.10.1
ボレロを脱ぐとスリーブレスのワンピースになるのですが、いたるところに工夫が凝らしてあります。まずは背中に入った絶妙なスリット。

そして正面。きちんとした襟で首元を隠しながら、ぎりぎり上品な三角形でデコルテを見せる。しかも、リボンでデコルテがセクシーに二分割される…という、エロいのか修道女風なのかよくわからない(ここがポイントですね)悩ましのデザイン。

スカート部分も、アイリーンやヴェスパーなら当然タイトであろう…という期待を爽快に裏切ってあえてタイトにせず、適度に広がりのある品のよいシルエット。膝が見え隠れする永遠不滅の丈。8.10.3

そしてしわにならず、通気性高く扱いやすい素材はレジィ―ナならではのもの。元美さんが考える「大胆セクシー」と「女性の永遠のかわいらしさ」と「上品の秘訣はひとつかみの野暮」が見事に融合した、比類なきスーツです。これを着ると、せめて中身だけでもアイリーンやヴェスパーに近づかねばと、マインドが変わります。これが服のパワーですね。難題に2年間かけて応えてくださった元美さんに、あらためて、とびっきりの愛と感謝を捧げます。

このスーツはレジィーナ・ロマンティコで商品化されています。ボレロ単品のみの販売も始めるそうです。撮影は南青山店にて。

 

海外ではノックオフ(模造品)の裁判を頻繁にやっているけれど、日本はノックオフ天国、だれも裁判をおこさないことをいいことに、やりたい放題がまかり通っていた。

そこに歯止めをかけたマッシュ社長、近藤広幸さん。快挙。というか「これと同じものを作ってくれ」と工場にもちこみ、廉価でECサイトで販売して、何年もの間、年間70億円も儲けていたというGio が悪質すぎる。記事は、WWD 7月13日号、Vol.1870.img137しかもGio側は開き直り、Viviなどのメジャーなファッション誌で、親和性の高いタレントを使って広告まで出していたという。テレビCMまで始めていたとなれば、消費者だってパクリかどうかなんて疑わないだろう。

その背後には、ファッション業界全体にはびこるいいかげんな慣習があった。デザインをぱくってもおとがめなし、消費者も同じであれば安いほうを買う、と意識が低すぎた(というか、そもそも消費者はそこまで深く考えて買うわけではない)。雑誌編集側も、思慮がなさすぎた。広告費さえ入ればなんでもいいのか。

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商品形態模倣という不正競争防止法違反で刑事告訴が受理され、逮捕されるのは、日本初のことだそうです。近藤社長の冷静で粘り強い証拠集めにも頭が下がるし、警察もよい仕事をしてくださったと思います。デザインの模倣は犯罪となる。こういう意識が、商品を提供する側、消費する側、メディア、社会全体に広まることを期待したい。

それにしても日本のデパートの売り場にも赤いソウルの靴が増えてきましたが。側面と底面がコントラストをなす場合に限り、赤い靴底はクリスチャン・ルブタンの商標ですよ? 大丈夫なんでしょうか。2012年にルブタンがサンローランとやりあった裁判でそのような認知が徹底されたと思うのですが。国境を越えたら模倣もおとがめなし?

ルブタン裁判の詳細な経緯に関しては、こちらをお読みください。

 

評判のよくない東京五輪の「おもてなし制服」。たしかにダサいとは思いますが、ダサいことが必ずしも悪いことではない。

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14日付朝日新聞の社会欄。最後の引用が、なかなかいいです。

「外国人も声をかけやすいと思う。だって、こんな格好していて、悪い人なんていないよ」(ボランティアの長谷川紀生さん(61))。

たしかに!笑

 

「それどころではない」時代であることはよくわかっています。しかし、それはそれ、これはこれ、アイザック・ウォルトンが17世紀、革命のさなかに「釣魚大全」を書いたような気持ちで、淡々とファッションビジネス界のことを書かせていただきます。第二次世界大戦中、「贅沢は敵だ」の時代でさえ、「千總」は職人技術を死守するために「着ることができない」超絶技巧着物を作り続けていました。どんな産業であれ、携わっている多くの人の生活があります。ご寛恕いただけましたら幸いです。
13日に三菱一号館美術館カフェにおいておこなれたミキモトコレクション2015-2016。

今シーズンの目玉は、長いネックレスとタッセルを組み合わせた「Skipping Rope Collection」。なわとびコレクション、ですね。7.13.5留め具で長さを変えられます。揺れるタッセルがなんとも優雅。

中央には、長さ3メートルのパールのなわとびが展示されていました!!! ぐるぐるとスカーフのように巻いて装うのだそうですが…。家が買えそうな価格(◎_◎;)
7.13.4

ちらちらとセクシーにゆれるディナーリング。食事の時って手元に目が行くのですよね。このリングは高い悩殺力を宿しています。7.13.8

そしてチャリティのためのギフトアイテム。7.13.6「ミキモト」からは、ト音記号のピンブローチ。「ミキモト インターナショナル」からはリボンでト音記号を書いたボールペン。売り上げの一部は、アジアン・カルチュラル・カウンシル(ACC)を通じて、アジアの芸術文化の支援に役立てられます。ボールペンは贈りやすい価格でもあります。

今回も高い職人技術に裏付けられた芸術的なコレクションで、眼福でした。ミキモトスタッフのみなさま、ありがとうございました。7.13.9

「サライ」7月号発売です。特集「紳士の持つべき傘」巻頭で、取材を受けて協力させていただいた「傘の文化史」が掲載されています。

傘の歴史年表つきです。6.8.1

続くページには傘の見方と選び方、サライ厳選ブランドの傘の特徴、ユニークなオーダーメイド傘、そして傘の修理店情報にいたるまで、傘に関する最新情報が満載です。

100円で使い捨ての傘が買える時代ではありますが、傘職人の智恵と技術を後世に伝えるべき道具にして工芸品でもあります。

一本のよい傘を買うことで、伝統技術の継承にも貢献できるのですね。

また、使い捨て傘の残骸はもえないゴミとなり、地球環境に負担をかけます。

100円傘と上質な傘、上手に使い分けていけたらいいですね。

機会がありましたら、どうぞご笑覧くださいませ。
(クリックするとamazonにとびます)

グローブトロッターの新作発表会が表参道の金田中にておこなわれました。

美しい庭園を背景に、千總とのゴージャスなコラボレーションの数々が発表されました。6.5.6

和の盛装がりりしい千總の取締役製作本部長・磯本さん(右)と社長の中田さん(中央)、ギーヴズ&ホークスのスーツにターンブル&アッサーのシャツ姿も完璧なBLBG社長の田窪寿保さん(左)が、白い手袋をはめ、同時に静かにケースを開けて中を披露、という演出のため息もののすばらしさ。6.5.5金田中が特別に作成した、和のアフタヌーンティー。仕掛けが随所にほどこされていて、目に美しく舌に美味しい、驚きに満ちた懐石料理でした。6.6.8

デザイナーのシャーロットとも再会できて喜び合う。ロイヤルベビーと同じ名前のシャーロットは、千總の着物でゴージャスに。6.5.14

和服を入れて運ぶのにこれほどみごとなケースはあろうかという迫力。200万円を超えるのだとか。6.6.7

千總さんには一昨年、リシェスの取材で訪れており、スタッフの皆様とは久々の嬉しい再会となりました。BLBGのみなさまともよくお仕事をご一緒させていただきます。志の高い大好きな方々が、互いのよいところを生かしあって、2×2=10という勢いのすばらしいコラボレーションを創り上げる、その祝賀の席に立ち会えることは、本当に感慨深く、ワクワクするものですね。心より光栄に思いました。ますますのご発展をお祈り申し上げます。6.5.4

ラルフローレンの展示会。表参道のラルフローレン旗艦店プレスルームにて。

今回、最も感激したのは、チャーチルが大戦中に着た仕事着「サイレンスーツ」にインスパイアされたフォーマルなツナギ。右端です。5.28.13

レディスにも同じものがあって、違いはズボンのタックの方向のみ。メンズはフォワード(内側)にタックが向いており、レディスは外側に向いている。メンズのタック内側向きというのは、ラルフローレンの特徴だそうです。

ストライプのスリーピーススーツの美しさにも目を奪われました。さまざまな角度で交差するストライプ、ため息ものです。5.28.12

上の写真左の、チェスターコートも品格があります。

レディースも。手仕事の迫力が生むエレガンスが圧巻。5.28.7

ファーもありますが、いまいちしょぼっとしている。でも、「ファーのために育てられ殺される動物の毛皮を使ったのではなく、自然に死んだ動物の毛皮を使っていますよ」ということで、あえてこのまま。「エシカル」ないまどきの風潮が背景にあるのですね。なにごとも、表面だけを見るのではなく、背後の文脈を読んで解釈する必要があるということ、ファーひとつとっても実感します。5.28.10

詳しくご案内くださったプレスの内田良和さん、大橋秀平くんと記念写真。ありがとうございました!5.28.9

 

北日本新聞別冊「まんまる」5月号発行になりました。manmaru 5連載「ファッション歳時記」第44回 『「人を外見で判断してはいけない」という葛藤が渦巻いたミスコン』。最近、対談などでも話しているテーマではありますが、きちんと活字で書いてみました。

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アニヤ・ハインドマーチの展示会。道路標識にインスパイアされたコレクション、”Diversion”。

イギリスでおなじみの道路標識のモチーフがあしらわれたユニークで笑えるバッグや既製服。ふざけているようで、実は上質の素材を使って高度なテクニックを駆使して作られている。アニヤらしい真剣なアソビ心で勝負する作品の数々に、共犯者のような(厚かましいかぎりですが)共感を覚える。

 

コレクション映像が会場に流れていました。クライマックスではオレンジの道路作業員の制服を着たゲイのコーラスによるライブの合唱!感動ものでした。

コレクションの鮮明な写真はこちらからもご覧いただけます。

20日におこなわれたTae Ashida の秋冬コレクション、グランドハイアットにて。img111「不思議の国のアリス」のBGMに合わせて披露される、胸騒ぎが起きるような斬新でミステリアスなコレクション。ラップ風ジャケットとスカートで作るシルエットや、ワンピースにフードつきベストをあわせて作るレイヤードスタイルは、従来のアイテムの組み合わせからは生まれない新鮮さにあふれ、はっとさせられる。img110ラストの数着のソワレは、ドラマティックな音楽効果もあいまって、あまりの美しさに涙が出たほど。毎シーズン、エレガントに挑戦を続ける多恵さんには、いつも大きな刺激を受ける。リスペクト。3.20.1ショーを無事成功させた多恵さんと記念写真。着ているのは今シーズンのTae Ashidaです。ヤボに転びがちなヒョウ柄を品よく都会的に仕上げるセンスは、多恵さんならでは。

10月末に登壇させていただいたVogue Night at Esprit Diorのレポートが公開されています。

お時間の許すときにでもご笑覧くださいませ。

Vogue_night_2

http://luxelife.vogue.co.jp/_feature/cdc/141201/

エスプリ・ディオールでは、10月のヴォーグ、11月の日仏フレグランス文化財団、12月のフォーブズ、と三度にわたり印象深い登壇の機会をいただきました。

それぞれに聴衆が異なるのでまったく違う話をしましたが、おかげさまでディオールのことならなんでも聞いて(笑)くらいの勢いで学ぶことができました! 心より感謝します。

2日(火)夜におこなわれたForbes ×Dior のイベントにおいて登壇させていただきました。銀座エスプリ・ディオールにて。

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オーディエンスは、このForbes女性特集号に出ている方や女性読者の方々で、日本のビジネス界を代表するそうそうたるメンバーがずらり。

女性エグゼクティヴのファッションというか暗黙のドレスコードの変遷をメインの話題として、海外から見た「日本らしさ」をディオールをがどう表現しているかといった話などを。とても楽しんでいただけたようで、ほっと安心。。。

ご参加のみなさまそれぞれが個性の立ったファッショナブルな装いで、なによりも目の輝きが強い! 好奇心旺盛でオープンマインド、場を楽しもうという明るい意志にあふれているのです。私が逆にエネルギーのおすそ分けをいただき、日本の経済界の頼もしい未来を見せていただいたような、鮮烈な印象が残ったイベントでした。

ご参加くださったみなさま、ありがとうございました。

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Forbesの編集長、高野真さんも、ディオールのスーツで。

実はこの日、乗るはずの電車が折悪しく人身事故で不通、タクシーも大行列で乗れず、というパニック状態のなか、畏友さつきさまがSOSに応じて車ですぐに助けにきてくださいました。結局、道路も大渋滞で進まず、紆余曲折あってなんとか登壇ぎりぎりの時間にかけこむことができました。打ち合わせをするはずだったのに長い長い移動時間となってしまったその間、どっしりと構えて出場のタイミングを合わせてくださったForbesのスタッフ、Diorのスタッフのみなさまの対応、MCの方の臨機応変なアレンジに、本物のプロフェッショナリズムを感じました。いつもそうなのですが、今回はとくに危機的な状況を多くの方々に支えられて乗り切ることができました。関わってくださったすべての方々に、深く感謝します。

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Forbes とDiorのすばらしいスタッフのみなさまと。ありがとうございました!

東京ミッドタウン、21-21デザインサイトで「イメージメーカー」展開催中。土曜日は鑑賞がてら、舘鼻則孝さんのトークショーにうかがいました。

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ひと月前ほどアトリエにインタビューにうかがったばかりですが、オフィシャルなトークもまたたしかなボキャブラリーを駆使してすばらしかったです。アートを超えて普遍的な結論にまでおとしこめる力量は、かなりの成熟を感じさせますが、28歳なんですよね。アンファンテリブル。

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ヒールレスシューズのインスピレーション原になった高下駄も、舘鼻目線で制作。ぽっくり。円形を二つに割って左右のゲタになるが二つそろえると絵が完成する。鈴までついている。歩くと鈴の音がする。

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かんざしの彫刻は、「富山チーム」こと、富山は高岡市の鋳物関係者とともに作っている。「引退のスキを与えないように発注し続ける」という、職人さんに対する舘鼻さんの優しさがいい。富山の職人は微妙な敗北感を抱いているけれども、舘鼻さんは腕のいい職人を探し求めて富山にたどり着いたのだと彼らに告げる。コラボというよりもコミュニケーション。この関係が作品に血を通わせる。

それにしても、この彫刻の英語のタイトルがHairpin(ヘアピン)。まあ、間違いではないでしょうが(^-^;

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これも職人技が光る作品。純銀を特殊な塗装で加工してある、「ムサシガワさんの工房」と言っていたがどこだろう。上ふたに太陽が描かれ、その下へ順次、雲、雷、雨粒、海へと続いていく。飛行機がない時代、雲の上は神の領域だった。「雲の上にはいつでも青空」ということを人は知らなかった、という舘鼻さんの指摘にはっとする。

ヒールレスシューズで世に出る、ということになったときに、彼は、他に作っていたドレスやバッグなどをすべて引っ込めたという。「どういう存在で有意義になれるのか?」 その打ち出し方を取捨選択するという戦略的姿勢にも感心。(比べちゃいけないが、私にはまったく欠如している姿勢…イタタタ)

香水講座にゲスト講師として来ていただいた地引由美さん(左から2ばんめ)と、フレグランススペシャリストの村岡輝子さん(左)もお誘いしました。舘鼻さんを囲んで記念写真。3人でミッドタウンを歩いていたら知人に遭遇、「君たちは美術館のショーピースか」とからかわれましたが、香水関係者って、言われてみれば確かに、どこか浮世離れしたところがありますな…。

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アイデンティティ×コンテンポラリー=トラディショナル・ジャパニーズ。トラディションとはあくまで未来から見たトラディション。それを作り上げるのは今この瞬間を生きる私たち、という力強いメッセージは、多くの人と共有したいテーマです。

ランヴァンの秋冬展示会。リッツカールトン東京にて。

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テーマはSwinging in the dark。トライバル&ゴシック&ロックな印象で、がつんと力強いアイテムが勢ぞろい。

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パールをひとつひとつ手で縫い付けてフリンジ風にした贅沢なシルクワンピースとか。

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メンズではショッキングピンクのスニーカーが目をひきました。メンズピンクはGQも特集してましたが、たしかに最近、増えている印象。着ているのは業界人周辺だけかもしれないけど。

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ひときわ存在感のあった、トライバル感がユーモラスなお帽子をかぶらせていただきました。笑

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そのまま雨笠としてかぶっていきたくなったほどの、外はどしゃぶり。「嵐の夜」ってちょっとワクワクするね。昔っからナニカが起きるのは「嵐の夜だった。」と相場は決まっている(?)

ヴァルカナイズロンドン×バーニーズニューヨークのイベントが続きます。26日(土)には、バーニーズ銀座店にて、ハケット・ロンドンの創始者ジェレミー・ハケット氏と、綿谷寛画伯のトークショーが。画伯がその場でハケット氏の似顔絵イラストを描くパフォーマンスをするという贅沢な機会でした。

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ハケット氏はポケットチーフをしない。それについて、ネクタイもアクセサリーもぜんぶやっちゃうtoo muchはいやだからと。さりげなくどこかに引き算をして、これみよがしにはならないのがイングリッシュジェントルマンの流儀。

といっても「ジェントルマンはこうする」みたいなことを、ほんもののジェントルマンは決して言わない。という話も(笑)。

ポケットチーフの代わりに、レザーの犬の形をした「しおり(ブックマーク)」を提案、画伯がそれをつけてきていました。即席でプレゼントにもなる。いいアイディア。

この日のハケットさんのツイードジャケットは、エリザベス女王のダイヤモンドジュビリーにちなんで作ったもので、肘のパッチがなんとダイヤモンド型。この茶目っ気がイギリス人。上着の袖もターンバックで、細部が生きている。

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お父さん世代(70年代あたり)の装いはいやだけど、おじいさん世代、あるいはウィンザー公ぐらいにさかのぼると、「着たことがない」ので新鮮に映り、ファッションのインスピレーション源になるのだとか。

画伯のイラストが進行する過程をライブで見られたのは幸運でした。「ほんとに終わるのかな?」と不安に思わせて最後に一気にさらっと完成。パフォーマンスも見事でした。

一言入れるセリフを聞かれてハケットさんはかなり慎重に考え、「It is not what to wear, but how to wear」(何を着るかではなく、どう着るか)、と言ったのですが、それを超訳してMCのバルカナイズロンドン社長、田窪寿保さんが、「どう見られたいかではなく、自分がどうありたいかが問題、ということですね」と。なるほど、そういう解釈になるか。

この英語、どこかで聞いたことがある……と思ったら、テイラーのTaishi Nobukuniさんが、明治大学にレクチャーに来てくださったときにテーマに掲げた言葉でした。ファッションを究める人は同じところに行きつくのですね。

会場にて田窪さん、画伯と記念写真。画伯が着ているのは、この日のためにBatakで仕立てたというコーデュロイのスーツ。クラシックな本格的コーデュロイで、なんと2.5キロもあるそう。服を着るのも体力ですね。赤いソックスが効いていました。エキセントリシティも「英国らしさ」のひとつですね。また、田窪さんのスーツはサヴィルロウ一番地のギーヴズ&ホークスだそうです。少しイタリアンな(?)テイストを入れて、「ど・ブリティッシュにしない」のが田窪さん流。

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その後、打ち上げの会。ロンドン×ニューヨーク+東京ツイストの楽しさを見せてくださったジェントルメンです。左から、バーニーズのPR新井さん、同クリエイティブディレクター谷口さん、ハケットロンドンの大西さん、中野、バーニーズ社長の上田谷さん、ヴァルカナイズ社長の田窪さん、ハケットさん、綿谷画伯、です。

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23日(水)におこなわれたジュン アシダ 2014S/S コレクション。グランドハイアットにて。

いつもながら、30か国の大使夫人が参列の、国境なきエレガンスの祭典といった雰囲気。この光景を目にするといつもしみじみと実感すること。「ブランドの格を決めるのは、お客様である」「ファッションは、世界平和に貢献する」。ジュン アシダの服を着た大使夫人のいる国が、日本と戦争しようなどと思うはずがない(笑)。

ジュン アシダ創業50周年記念のコレクションでもある。グローバルに、しかも社会的レベルの高い客層に支持されるエレガンスをぶれず貫き通して、半世紀。この偉業は並大抵のことではない。

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コレクションの最後に不意打ちのドラマが。いつものごあいさつのあと、淳先生がなんと奥様の友子さんの手を引いて再び登場したのである。そして、お二人でもう一度、ごあいさつ。ジュン アシダの世界を支えてきた「ミセス」である。パリの生地見本市、プルミエール・ビジョンに通い、生産者とじかに信頼を築いて生地を確保してきたのは、ほかならぬ友子さん。実際に服を着る最初のモデルとなり、細部にわたる着心地をチェックしてきたのも友子さん。内外から「ミセス」と慕われ、すばらしいファミリーを育ててきた、芦田淳のかけがえのないパートナー。50年目にして初めての表舞台への登場である。思わずナミダがこぼれる。社員の皆様も目頭を押さえている。

芦田淳が支持されるのは、創りだすファッションの世界が美しいからというだけではない。ファッションを通してさまざまな愛のすばらしさを教えられるのである。夫婦愛、家族愛、社員愛、仕事への愛、お客様への愛、そしてファッションを通じての世界平和の希求。丁寧に仕事や人に接すること、地道に勤勉に自分の務めを果たすこと、若々しい好奇心のままに行動してみること、つまりはどうやって生きるべきかを教えられるのである。予期せぬ感動を与えてもらって、そんなこんなのことが頭をかけめぐった、忘れられないコレクションになりました。

一週間前にコレクションを無事終えた多恵さんと、記念写真。

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先日、ご紹介した’I am a Dandy’。本の出版を祝って、サヴィルロウ一番地のギーヴズ&ホークス本店でパーティーが開かれたそうなのですが。

出席した方々のユニークな個性にしばし釘づけ。(上のリンクから出席者のファッションが見られます) 

クラシカルダンディが好きな人は眉をひそめるかと思いますが、今はまあ、「トレンド」としてのダンディズムの表現は、こんなことになってる(のもアリ)なのですね。

こういうの、なんて形容するのかと思って関連ブログなどチェックしていたら、swellegantという表現にいきあたりました。swell+elegantね。日本語でどう訳せるんだろう? 当面の課題です。

[E:maple]だいぶ時間がたってしまったが、8月29日付の朝日新聞、ファッション欄、「欧州ブランド、日本人とコラボ」。今シーズンに見られる第三次ジャポニスムの流れを紹介。以下、備忘録として。数式メモで御免。

・ロエベ×渡辺淳弥 「ロエベ・アンド・ジュンヤワタナベ・コムデギャルソン」。

 ロエベの高級革×淳弥のデニム=贅沢さ×ストリート感覚=上品さとロックの反骨精神。

・モンクレール×相澤陽介=モンクレールW

 ダウン×ジャガートなどカジュアル異素材。ひじやひざ部分が曲げやすいようにステッチを施すなど、東京ブランドらしい「かゆい所に手が届くような仕立て」。

・プチバトー×メゾン・キツネ(黒木理也+ジルダ・ロアエック)

○日本独自の伝統的な美意識=非対称的で平面的な構成、異なる要素の大胆なミックス感覚、素材への深い配慮

>自然の微妙な変化を愛で、自らも自然の一部として共に生きようとする日本人の姿勢

○第三次ジャポニスムは、和魂洋才の新しいカジュアル感覚。

[E:maple]こちらも。WWDジャパン7月15日号。vol.1756。

「鎌倉シャツ」がNYマディソンアヴェニューに進出、黒字の見通し。200ドル前後の同品質のものを79ドルで提供するというのは、驚きをもって歓迎される。ただ、試行錯誤も多く、その一つが胸ポケット。

「日本ではペンや定期券を入れる人が多い。貞末会長も欧米の正統派のドレスシャツにポケットがないことは承知していたが、日本では胸ポケットのないシャツは売れないため、そのまま残していた。だが現地では総スカン。『世界で活躍するビジネスマンのためのシャツを作ってきたのに、海外で「鎌倉シャツ」を馬鹿にされたのでは話にならない』と社内の反対を押し切り、国内の商品を含めて胸ポケットの撤退を決めた」

「またブルー系を大幅に増やし、ダブルカフスのシャツを拡充したのも、顧客の意見に従ったMD変更」

シャツに胸ポケットは異端です。でも日本人にとっては便利なんですけどね…。「正しさ」と「利便性」のせめぎあい。メンズビジネススーツのシステムにおいては、「正しさ」が勝利するというエピソード。

[E:maple]同号、目次ページのChat Chat!

ミュージシャンの久保田利伸がポール・スチュアートのCMに出るに際して。

「ノリを追求した落ち着きのない音楽をやっている自分が、ビシッとしたスーツを着るミスマッチがオシャレ。僕だけでなく世界中のファンキーミュージックピープルが、ビシッとしたスーツやネクタイでステージに立つことが増えている。良いスーツを着るとスイッチが入り、ノリの激しい音楽を歌うのが気持ちいい」

スーツにはこんな効用もあり。

10日におこなわれた、ミキモトコレクション2013-14 A/W。銀座のミキモトホールにて。テーマはオペラ。オペラから連想が導かれたさまざまな美しい新作を堪能しました。

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オペラレングス(80㎝)のネックレスに自由なアレンジを加えることができる、ボウタイをモチーフにしたブローチ兼ショートナーとか、

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パーツを自由に動かして自由な位置で止めることができる
「ジュエルズ・イン・モーション」とか、
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完成品としてのパールジュエリーをおとなしくつけるのではなく、
つける人が主体的に個性的なアレンジを楽しむことにポイントが移るシーズンとなるようです。

「トレモロ」にも驚き。「複数の音を小刻みに演奏する技法」がトレモロだが、なんと、中央にあしらわれたダイヤモンドが小刻みに揺れ続けているのだ…。どういう仕掛け? モテ本のなかには「男は揺れるものに弱い。揺れるイヤリングをつけよ」みたいなことが書いてあったりするが、揺れっぱなしのこれはどうなのか?笑。とにかく近距離で視界に入れば目が離せなくなること必至のジュエリー。

じつをいうと、最近のパーティーシーンや会見などで気になっているのは、
「イヤリングもネックレスも一切つけない」、ついでに髪も巻かない、という、どシンプル化のトレンド。

つけるにせよつけないにせよ、人の個性が主役として感じられることがだいじ、ってことですね。

ノージュエリー化のトレンドは一時的に若い層に見られるかもしれないけれど、でもやはりある程度成熟すれば品格のあるジュエリーは必ず必要になってくる、とパールジュエリーの未来をアツク語るプレスの八木千恵さん。
いつも真珠愛にあふれた楽しいお話を聞かせてくださいます。

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おみやげの一輪のバラ(生花)の花びらには、MIKIMOTOの刻印が!驚。

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昨日はブルックス・ブラザーズ主催のギャッツビーナイトでした。
青山迎賓館の入り口にはレッドカーペット。

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ジャズの生演奏もあり、バーテンダーによるフレアもあって、
中はそのまんまジャズエイジの雰囲気。
シャンパングラスまでフルート型「ではなく、20年代(風)。

プールまであって、映画のように飛び込みたくなる衝動にかられる。笑。

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バズ・ラーマン版ギャッツビーのコスチュームデザイナーは、キャサリン・マーティン。実際に映画のなかで着用されていたコスチュームが展示されていました。

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メンズはブルックスブラザーズのアーカイブからインスピレーションを得てマーティンがデザイン、さらにそれをブルックスが製作したものだそうです。

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メンズファッションがうっとりものの美しさでした。眼福の夜に感謝。

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昨日は、ミキモトが真珠発明120周年を記念して開催している「輝きを紡ぐパールネックレス展」へ。銀座ミキモト本館にて。

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この展示はパール&ファッションに関心のある方にはおすすめです。写真の「着るジュエリー」にもうっとりですが、ヨーロッパにおける権力の象徴としてのパールの歴史から、日本の明治・大正・昭和・現在のパールまで、貴重な資料をもとに楽しみながら真珠の知識を深めることができます。

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ウエスト位置とネックレスの長さの関係を考察するというユニークな試みにも、笑いながら(失礼)感動。6日までだそうです。なんと、入場無料よ! 

この展覧会を見る前に、銀座ミキモト別館、ミキモトブティックの3階にあるミキモトラウンジというティールームで、プレスの八木さん、市川さんと歓談。

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このラウンジは本当にすてきなところで、開放的な吹き抜けにイクラのような(笑)豪華な照明が上下する、非日常的な豊かさに満ちた空間。

広くとられた窓の形がひとつひとつ異なり、フロアをまたいだ窓まである。吹き抜けのどまんなかに長いらせん階段があるのも、柱がない(!!)建築だからこそ。

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この建築は伊東豊雄さんによるもので、国際的にも話題になったとのこと。外から見ると、こんな感じ。写真はミキモトブティックのフェイスブックページからシェアさせていただきました。

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スイーツは横田秀夫シェフプロデュ-ス。朝のかぎられた時間に手で摘まれた高級茶葉に、蘭の花で香りづけしたというお茶も、世俗にまみれた心身を浄化してくれるようなおいしさ。コースターにはBiginning of Happiness と書いてある。このビル全体のコンセプトだそうですが、言われてみれば、幸せの予兆かなと思わせる「気」に満ちている。

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プレスの八木さん(左)、市川さん(右)と、ミキモトラウンジにて。楽しい時間をありがとうございました!

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近くのMatsuya Ginzaでは、スヌーピー×日本の巨匠展をやってました。日本の伝統工芸とスヌーピーがコラボした作品の数々、キッッチュな面白さもあって楽しめました。おみやげコーナーのレジは長蛇の列。スヌーピー人気を目の当たりに。こちらも6日までだそうです。

21日(金)におこなわれたTae Ashida A/W コレクション。東急セルリアンタワー、ボールルームにて。

大胆なカッティング、精緻なテクニック、ひねりのきいたニット。今どきのエッジが効いていながら”女の子”のファンタジーが基本にあるというあたりが、多恵さん流かな。わくわく楽しませていただきました。

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タキシード風ジャケットにヘビ柄のブラウス。理屈ヌキに、たまりませんね♡

会場でフランソワーズ・モレシャンさんにお会いしました。ひときわ存在感を放っていらっしゃいました。77歳になるそうですが、驚異的なみずみずしさ。好奇心にあふれて、おしゃれに気を配っていれば(=他人の目を楽しませようというサービス精神と思いやりを忘れなければ)、こんなにも素敵でいられるという模範例のようなお方。なんだか希望がわいてくる。

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多恵さんの「ミス・アシダ」ブランドのほうにしても、「ミス」がつくけれど、私もよく着るし、50代のママ友たちにもファンが多い。「20代向け」とか「30代向け」のような年代のくくりがない(=あまり気にする必要がない)ところがいいのですよね。現代感覚と、”女の子”魂((^_^;))を忘れない、エイジレスなハートをもつ女性のための服になっている。イタイ、と言いたい人は言うがいいわ。明日どうなるかわからない人生であれば、世間が決めた「らしさ」のくくりなどにかまってるヒマなんてないのよ。

カール・ラガーフェルド監督、キーラ・ナイトレイ主演で、ココ・シャネルの映画がつくられるようです。ドーヴィル開店100周年を記念して。シャネル度200%ではないですか。

http://www.vogue.co.uk/news/2013/03/19/keira-knightley-chanel-film—stars-as-coco-mademoiselle

カール大帝ついでに。WWD JAPAN vol. 1735 3月11日発行号。WWD CEO SUMMIT INTERVIEW vol.3 「カールが語る”正しい”デザイナ―のあり方」より。

「この業界での”大成功”なんてはかないものだ。絶賛を浴びたコレクションを発表しても、何シーズンかすると、解雇されたり、辞任したり、引退したり、病んでしまったり、亡くなったり……。私自身のことではないから詳しい背景はわからないが、現在、ファッションは興味深い時期に差し掛かっていると思う。最高に笑えるのは、フランスのビッグブランドのアーティスティック・ディレクターは皆フランス人じゃないということだ。『ルイ・ヴィトン』はアメリカ人、『セリーヌ』はイギリス人、『ディオール』はベルギー人。妙なことだと思わないかね」

「競争ほど健全なことはないよ。競争が存在しなかったら、寝ていても成功できる世界になってしまう。ファッションにおいては『確かなこと』など何一つない。だから私はファッションが大好きなんだ」

毀誉褒貶の激しい人ではあるが、このような命がけの、なにひとつ確かなことのない、気まぐれでおそろしい業界で、何十年もトップに君臨し続けているというのは、それだけでたいしたもの……というか、偉大なことだと思う。

14日にグランドハイアットでおこなわれた、ジュンアシダA/W 2013-14コレクション。


25か国の大使&大使夫人もかけつける、グローバルなエレガンスの基準を確認できる貴重な機会でもあります。大使夫人のなかにはヘッドピース(お帽子とまではいかない、頭部のアクセサリー)を美しく装う方も多い。さすが、場慣れした貫録。

82歳になる芦田淳先生は、日本発のエレガンスの王道を世界に発信し続けている国宝級のデザイナーだと思う。時代が変わろうとも決して揺るがない、筋の通った「芦田ラグジュアリー」な作品の数々に酔いました。

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写真はシルクジャガードのコート。裏がキルティングになっている贅沢な作り。襟を立てると、後光のように見える。ルネサンス期ヨーロッパの宮廷服を連想させる襟。ほかにも裏地がファーがはられたマントや、ゴールドのブロケードのコートなど、素材・デザイン・細部への気配りにいたるまで完璧に極めたアイテムの数々。

コレクション後の会場でのスナップ。25ans & Richesse編集長、十河ひろ美さんと、芦田多恵さん。ものすごく高いレベルの仕事を着実に、しかも大量にこなしながら、優雅と微笑みと思いやりを忘れない、リスペクトする素敵な方々です。

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24日(金)は、theory 南青山店一周年記念パーティーにお招きいただきました。theoryはニューヨーク発ブランドで、モノトーンを基調とした都会的で流麗かつ機能的なデザインが特徴。都市部でスマートに働く男女の支持が高いブランド……というのが私のイメージです。レディースのパンツのシルエットの美しさには定評がありますね。現在、日本ではファーストリテ―リングの傘下にあります。

南青山の店舗では、有機野菜が販売されたり、ニューヨークを連想させるグッズが展示されたりと、お祭り気分を盛り上げるディスプレイで迎えていただきました。

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二階へは懐中電灯を渡されて足を踏み入れるのですが、そこは完璧な暗闇。ライトで照らすと、theoryの秋冬コレクションが展示されている……という仕掛け。マネキンのなかに本物のモデルが混じっていてときどき動いたりして。フィンガーフードのテーマもブラック、トレイや家具もブラックで、いたるところシックな黒のバリエーション尽くし。

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スペシャルなゲストにもお会いしました。後姿のあまりの「できる!」オーラに、この女性は只者ではないはずだ、と目が吸い寄せられていたのですが……

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とりわけ足元が誘惑的なのですね。ロングスカートのスリットからちらりと見える足は黒の網タイツで覆われています。靴底が赤のヒール(おそらくルブタン)に、ピンクのポンポンつき。この見せ方!!!男でなくても思わず後を追いたくなります(*^_^*)

こちらを振り向く瞬間をドキドキしつつ待っていたら、やはり、女優の萬田久子さんでした。theoryとのつながりは深い方なので、ご来場なさっていて納得なのですが、間近で目にするスタイリッシュな着こなしとたたずまいには、さすが!とほれぼれ。あつかましく、ツーショットを撮っていただきました。ピンボケになってしまってごめんなさい。しかも私はいつもながらのマイペースのプリントワンピで、場違いご寛恕m(__)m

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熱帯夜でしたが、思い出に残る楽しい夜になりました。theoryのスタッフのみなさま、ありがとうございました!

英「ガーディアン」紙が掲載する、チャールズ皇太子のファッションフォトギャラリー。日本ではあまり見かけなかったショットがずらり。この方はすでにファッションアイコンとしての地位を確立しているが、それはおもにスーツスタイルにおいての話。このギャラリーでは、胸毛+水泳パンツ、ポロニット姿なども紹介。タキシードの着こなしも個性的で、皇太子はなかなか冒険的なことをなさっているということがうかがわれる。

http://www.guardian.co.uk/fashion/gallery/2012/jun/13/prince-charles-style-icon

そういえば、前記事の「完璧以上ダンディ」氏が、チャールズ皇太子の手は指も太くたくましくていい手だ、と指摘していた(細部の観察がとにかく冷徹な方なのである)。戦争にも行き、土いじりをする、ヤワではない英国貴族の伝統に連なる手。

パレスホテルのプレオープン。地下のショッピングアーケード内に、bliss 開店とのことでお招きをうける。オーガニックコスメと、メゾン系フレグランスのセレクトショップ。

日本初上陸のブランドがけっこうあって、なかでも気になったのが、フレグランスのYOSH。パフューマ―のYosh Hanさんご本人がプレゼンテーションしてくださっていて、しばしおしゃべりを楽しむ。アメリカの男性の間で「ダンディズム」を気取るのが流行っており、それはヒゲを生やしたり香水に凝ったり20年代~30年代風のスーツを着たりすることなんだって(@_@;)

心の深いところを抱擁してくれるような、センシュアルな香りの数々にうっとり。なかでもOMNISCENTという名の、優しくも複雑な香りにすっかり呪縛されてしまった。一歩間違うとマダムっぽくなりすぎるところ、ぎりぎりとどまってモダンに仕上げてある。深く吸い込むと、心の疲れが癒されていくみたいな……。しばらくこの香りと付き合ってみることにする。

写真右がYoshさん。アメリカ人だが、お母様が台湾人で、名前は日本語の「芳子」に由来するのだそう。「芳香」の「芳」ね!素敵な女性です。

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ロイヤルウェディングから一周年、ということで各紙がケンブリッジ公爵夫人キャサリンのファッション効果を特集していた。ビジュアルと具体的な数字が楽しかったのがテレグラフ。

ブルネット(褐色)のヘアカラーの売り上げ増。Nice’n Easyというブランドでは30%増。Libelulaのベルベットコート、310ポンド、ケイトの写真が出てから数時間で完売。Penelope Chilversのブーツ、475ポンド、2010年にケイトがそれを履いた姿で写真に出てから75%増。コーラル(サンゴ色)のジーンズ、アスダで471%増。肌色ストッキング、Tights Pleaseで90%増、デベナムズで65%増。ファシネーター(ヘアアクセサリー)、ピーコックで95%増。バーバリーの裾がフリルになったコート、ケイトが着用してから一日で完売、アスダのコピーは300%増。

などなどの多大な経済効果をおよぼしているらしい。

http://fashion.telegraph.co.uk/ (ここから、The ‘Kate Effect’ on fashion trends one year on という記事へどうぞ)

コンサバティブで今どきのかわいらしさもあり、真似できそう~と思わせるのがケイトスタイルですね。とんがってないので万人に好感を与えるし。経済効果は世界中に及び、日本も例外ではない。ロイヤルエンゲージメントの際にケイトのアイコンドレスとして一躍有名になったISSA LONDONは、ついに銀座三越に出店。このブランドにとって世界初となるショップらしい。レギンスなど死んでもはかない膝丈ワンピース至上主義の私もISSAファンなので、ひそかにうれしい。

写真は、やはり注文が殺到したというジョセフのジャケット。…だが心惹かれたのはむしろ後ろのモーニング姿の紳士たち。カラフルなネクタイとウエストコート、ブートニエールのコーディネイトが素晴らしい。ケイトのモダン・コンサバはこういうモダン&伝統的ジェントルマンスタイルが健在な文化でこそ生きるスタイルでもありますね。

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7日(土)夜に新宿伊勢丹でおこなわれた、ISETAN MITSUKOSHI X MEN’S EX の「10テイラー&10マイスター」のパーティー。

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その道を極めた日本のマエストロたちと直に会話できた、有意義なひと時でした。アトリエ・イプシロンの船橋幸彦さん。日本人初のパンタロナイオ(ズボン専門の職人)尾作隼人さん。ミラノスタイル伝道者、ペコラ・ギンザの佐藤英明さん。精緻さにおいてロンドンの靴を凌駕する靴をつくる福田洋平さん。そしてサヴィル・ロウの老舗ヘンリー・プールで花形カッターをつとめる鈴木一郎さん。一人一人の詳しいお話と写真(ピンボケですが)は、フェイスブックにアップしております。

ここでは、私の専門に近いゆえ、もっともインパクトの大きなお話を聞かせてくださった鈴木一郎さんのお話から一部紹介。

ウエスト高め、裾長めの英国スタイルのスーツは、優雅でセクシーだが、ボディにかなりフィットさせて作られる。これを職人用語で「スプレイド・オン(sprayed on)」という。スプレイをかけて、そのままボディを固めたイメージ?

衝撃だったのは、サヴィルロウでも、中国にもっていって縫製し、英国で仕上げて、それを「メイド・イン・イングランド」とうたっているということ。ここ数年の状況。そのほうがはるかにコストがかからず、しかも、アジア人のほうが縫製は上手だったりするのだそう。

ヘンリー・プールの日本での受注会のときなどには、鈴木さんはあえて表に出ない。英国人がお客様に対応する。そのほうが日本人は喜ぶのだ、ということを鈴木さんは知っているのですね。

「英国の伝統」。そんなファンタジーに、日本人はお金を払います。批判や皮肉ではなく、装いにおいては、なんらかのファンタジーというのは不可欠なのですね。

ファッション誌というのも、わたしは半ば「フィクション」ととらえているところがあります。この服が着たくなるような、このアクセを身につけたくなるような、ファンタジーを提供するフィクション。アティテュードを定めるようなマインドの方向付けをするストーリー。全部が全部そうだとはいいませんが、とりわけ、ハウツーではなく(私は着こなしのハウツーなど知りません)、「巻頭言」を書かなくてはいけないときには、読者の心にロマンを呼び起こすようなお話を考えています。

話が飛びました。「伝統」なるものもまた、そのようなファンタジーの一つになりうるのです。

ということで、日本が世界に誇る職人さんたち。熱い情熱をもって、不断の努力を続け、現在の地位を獲得してきた方々です。すべての方のお話に共通していたことは、日本人は手先が器用で、勤勉で、感性にもすぐれ根気があるために、モノづくりにおいては世界のトップクラスだということ。そのことに自信をもち、堂々と世界と闘っていくべきということ。

ひとりひとりが、謙虚ながら、確かな自信にあふれ、それが本物のオーラとなって輝いている素敵な方々ばかりでした。

日本には世界に誇れるすばらしい職人たちがこんなにもいる、ということをぜひ皆様にも知っていただきたい。

記念写真より。左から、1年4か月待ちの靴マイスター、福田洋平さん。ブランメル倶楽部のテイラード麗人、山内美恵子さん。中野。サヴィルロウ老舗ヘンリー・プールの花形カッター、鈴木一郎さん。そして日本でもっとも名の知られたミラノスタイルのサルトの一人、佐藤英明さん。

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彼らの座り方、そこはかとなく日本男児っぽくて、それがまたいいと思いません? ^_^;

ネクタイを巻きましょう、なんて言ってるその舌の根も乾かぬうちに(^_^;)、ネクタイ巻かなくてもエレガントなスタイルについてのお話です。

「フォレスティエール(forestier:森の番人)」と呼ばれるジャケットがあります。スタンドカラ−にゆったりとしたシルエット、肘パッチがついているのが特徴。

このジャケットを考案したことで有名なメゾンが、フランスの「アルニス(Arnys)」。エルメスがセーヌ川の右岸の保守的なエレガンスの象徴であれば、アルニスは、左岸の、やや進取の気風に富んだインテリのエレガンスの象徴のように見られています。

1933年、ロシアからの移民でテーラーのジャンケル・グランベールがメゾンを創設。芸術家たちが暮らすモンパルナスにも近いことが幸いして、パブロ・ピカソ、ジャン・コクトー、アンドレ・ジイド、ジャンポール・サルトルといった文化人らが集うサロンともなりました。

で、「ラ・フォレスティエール」です。1947年、当時、ソルボンヌ大学で教鞭をとっていた建築家ル・コルビジェが、「黒板に書く際に腕を上げやすく、ネクタイ不要でエレガントに見えるジャケットを」とアルニスに注文。それを受けて誕生したスタンドカラージャケットが、ほかならぬこのジャケットというわけですね。以後、これはとくに自由業のインテリ(詩人とか芸術家とか建築家とか)に愛され、人気の定番アイテムとなります。

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もちろん、タイド・スタイルにおいてもフレンチ・シックが漂います。ですがやはり写真を眺めていると、スタンドカラーのジャケットの襟まわりのセンスのよさが印象に残るかな。この写真は、2011-12Autumne Hiverのアルニスのカタログから。最初に見たときには、これがフォレスティエールかと勘違いしてしまいましたが(^_^;)。胸ポケットにフラップ(雨蓋)がついている点、裾がラウンドカットされている点、において違うモデルなんだそうです。ややこしいですが、そのややこしさにつきあうのがまた(服好きな方にとっては)楽しいところでもありますね。

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極道系着道楽、島地勝彦さんも、「フォレスティエール」をお持ちでした。ジャケットに合わせてパンツをアルニスで仕立てようとしたところ「お前の馬は、何色だ?」と真顔で聞かれたそうです。馬の毛色に合わせて乗馬パンツを仕立てるというのは、ごく基本のたしなみなんでしょうか。なんかもう、文化が違うというか。

そんなアルニスが、日本で本格的にビジネスを展開するにあたり(正確には、再上陸ですが)、3月1日、お披露目のパーティーを開催。お招きいただき、ちょこっとお伺いしました。

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下の写真は現在の社長、ジャン・グランベール氏と、日本人の奥様。ジャンさんは、名刺交換をしたとき、パンスネ(つるなしメガネ)を取り出してかけてらっしゃいました。クラシックなパンスネを実際にかけた方を間近にみたことはなかったので、感激。

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会場は、スリーピースで盛装した紳士がずらりで、生花のブトニエール、懐中時計のチェーンなんかも、「ごくふつう」な感じであふれていたのが印象的でございました……。写真左は、会場で遭遇した横浜信濃屋の取締役仕入担当、白井俊夫氏。さすがの堂々たるオーラですね。

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日本のメンズエレガンスの生きた見本をたっぷりと目にすることができた、貴重な機会に感謝します。アルニスのご発展を祈りつつ。HPはこちら↓

http://www.prestige-import.co.jp/

本日のうっとり。エリザベス2世の「ザ・女王」スタイルです。クリムゾン・レッドのローブにケープ、アクセサリーは王冠と白手袋とシルバーのバッグ。裾持ちとして頬を紅潮させた美しい少年をしたがえる……ってもう女王にしか許されない時代錯誤感あふれるスタイル。この圧倒的な魅力、たまりません。

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王室なんて何のためにあるのか?という廃止論が出るたび、やはりこの方がいらっしゃる限り、無条件に「ないとさびしいじゃない!」という理屈にもならん理屈で擁護したくなる。伝統や権威の象徴、威厳と魅力を兼ね備えた象徴は、ぜったいに社会にとって必要だと思う。いろんな考えや意見をもつ人の心が、そこに向かって引き寄せられまとめあげられていく唯一の圧倒的な支柱というか。

フェイスブック上で遭遇した情報。「株式会社大京」さんの、営業社員の服装ガイドラインを定めたニュースリリースが公表されていた。

男性は、プレスされた白いワイシャツ(カラー、ストライプは避ける)、紺または濃いグレー、黒系のスーツ(ストライプの強いスーツはNG)、靴は黒の紐靴。ネクタイは派手すぎるものを避ける。

女性は、襟付きの白いブラウス、スーツ着用で色は紺または濃いグレーや黒系、靴はヒールが必須だけれどそれが高すぎるのはNG。

http://www.daikyo.co.jp/dev/files/20120309.pdf

ニッポンの営業マンってなんでみんな同じ恰好をするのだろう?と常々疑問に思っていたのだが、これが「たいへん好印象を与える」(ほんとですか?)ガイドラインなのですね。あらためて文書でこのように示されると、はあ…と納得せざるをえないところもあるのだけれど。

これが「制服」。リクルートスーツの発想も、この延長上にあるのね。社員以上に個性を主張するわけにはいかない。まあ、着る方も、見る方も、余計なことを考えなくてよくて、その点はラクだというのはわかるけれど。女性の「制服」、襟付きの白いシャツというのは何なのだろう。いずれにせよ、日本独自で発達していった服装ルールとして、とても興味深い。いろんなことがもやもやと頭をかけめぐり中…。

人前で見せることにはなっていない、というアイテムだからこそ、見えてしまったときの衝撃は大きいものです。

サスペンダー。ブレイシズ(braces)と呼ばれることも多い、いわゆる「ズボン吊り」です。

日本では子どもや老人のもの、というイメージもあるようですが、私のイメージとしては、ジェームズ・ボンドにマイケル・ダグラス。ラリー・キングも有名だけど。どちらかといえば、男のパワーアイテムという位置づけです。

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上のゴードン・ゲッコー(「ウォールストリート」)は「見せる」ことで力を誇示しましたが、「効く」のはむしろ、本人も意図しないところで「見えてしまった」瞬間です。

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シャツと同色の白なのでわかりづらいですが、不意打ちを食らうようにちら見えしてしまったジェームズ・ボンドのブレイシズの色っぽさときたらどうでしょう。見せるアクセサリー的に着用しているゲッコーとちがい、<見せることにはなってない下着感>を残しているのがいいですね。まるで「パンちら」を見ちゃった男子高校生の喜び方みたいで(^_^;)恐縮なのですが、たぶん、似たような心理的インパクトなのかもしれません。

先日、まったく予期せぬ場面で、意外なブレイシズ姿を目の当たりにしてしまい、問答無用に悩殺されてしまった経験から、ブレイシズの威力を今一度、知っていただきたいと思った次第です。もちろん、トラウザーズのフォーマルなラインを崩さず着用する、という本来の機能は言うまでもないですが、女性のガーターベルトと同様、「前時代的で、かなりめんどくさい」アイテムであることが、機能を超えるセクシュアルなパワーを発揮していることは間違いありません。その場合、意図して「見せる」んじゃなくて、「見えてしまう」ことが重要であるのも、ガーターベルトと同じですね。

ブレイシズは本来、ウエストコートで隠すのが正しい? もちろん、正しいのがお好きな方は、上の戯言には目もくれず、どうか正しい道をきわめてください。

夏のブランメル倶楽部のイベントで、お仕事をご一緒したテイラー、鈴木健次郎さんのミニトークショウつき受注会@銀座和光。

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日本にパリのテイラー文化を伝えたい、という熱い志のもと、少しずつ仕事の重点を日本へ移していきたいとのこと。

いつもながら感心するのだが、鈴木さんの、自分のヴィジョンを伝える表現力というのはとても高い。「黙っててもわかるだろう」なんて甘いことが通用しない異国で鍛えられたのか、あるいは元々表現力が豊かであったのか、いずれにせよ、メッセージがブレず正確に、しかも熱を帯びて、きちんと伝わってくる。

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以下、かなりランダムだが、彼の話の中からなるほど、と感じた点。

・フランスは階級社会であるから、日本のように「好きだから」語るとか、「好きだから」こんな服を買う、という発想があまりない。語るスポーツひとつとっても、階級によって異なる。当然、階級によって、作るスーツも違う。

・パリのスタイルといっても、フランスのテイラリング産業を支えている多くの人々は、外国人移住者であったりする。異なる宗教観、文化をもつ外国人が、自分のフィルターを通して、フレンチスタイルを形づくっている。そこが面白いところでもある。彼ら職人は「世界でいちばん美しいものが集まるのはパリ」という信念をもっており、自分にしかできない美しい物を作ろうとすることに、職人としての誇りをもっている。

・パリの上流階級のエレガンスのエッセンスは、「ディスクレ」(英語でいう、discreet、控えめな部分における美しさ)にある。教育、支払い方、チップの渡し方、すべてにおいて「ディスクレ」な態度が貫かれている。服においてもそうで、誇張されたスタイルはよしとされない。部分的な意匠で驚かせたりはしない。その服はどこの?と聞かれるのは、野暮の極み。着る人自身がエレガントに魅力的に見えるカッティングこそが、最重要事項として求められる。このあたりの美意識は、日本人にも通じるところがあるはず。

・自分が作るスーツにおいては、空気感を重視している。日本人の体型にぴたりと合わせてスーツを作ると、マッチ棒のようになってしまいがち。それでは美しくないので、立体感や奥行きを重視し、前面に空気の層を二重、三重に入れる。そうすることで、動作やしぐさに服がついてくる。日本の「着物をまとう」感覚と同じ。空気の層でゆとりがあっても、ウエストをシェイプしているので、ぶかぶかに見えることはない。

・フランスの顧客はテイラーに3度のチャンスを与える。一度目は、「体に合った」服。二度目は、その人の動作や癖や着心地やポケットに入れるものの習慣などに応じてゆとりを考慮した服。三度目はテイラーの美意識の反映も許すような服。三度の「テスト」にパスすれば、「レッセフェール」、あとは信頼して任せてもらえる。

・あと5年から10年足らずで、パリからテイラーはいなくなる。パリにはすばらしいテイラリングの伝統があり、何年もかけてレベルを上げてきたはずなのに、肝心のパリのテイラーがそれを次代へ伝えていこうとしない。その点が「継承」重視のアングロサクソンと違う点で、残念なところである。せっかくパリで修業を積んだ自分は、そのような貴重なパリのテイラリング文化をなんとしても日本へと伝えたい。その使命感をもって仕事をしていく。

テイラリングは文化を背負う。そして誰かがそれを、明確な言葉とそれを具現化する作品を通して伝えていかねばならない。孤独でハードルの高い仕事を辛抱強くやろうとしている鈴木さんは、仕事への向き合い方においても、多くのインスピレーションを与えてくれる。

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◇ブランドのイメージを高めるために、有名人に自社ブランドの服を着てもらう。セレブリティ・エンドースメントと呼ぶのだが、その逆パターンが、最近立て続けにニュースになっていた。

新しいところでは、ラコステ。7月22日にノルウェーで77人を無差別に殺害したBreivikが、ラコステ愛用者だった。ワニのマークがくっきりとわかる赤いセーターを着て警察の車に乗った写真が、世界に配信されてしまった。

ラコステ側はブランドイメージが傷つくことを恐れ、ノルウェーの警察に、Breivikにラコステを着用させないように懇願。だけど、Breivikは囚人服を着ることを拒否し、自分の服を着続けることを主張しているのだという。で、現場検証のために再訪した犯罪現場でも、やはりラコステを着て、写真に撮られている。

ラコステにとっては、悪夢でしかない。とんだ災難でしたね…。

記事のソースは英「インデペンデント」9日付。Lacoste begs police: please stop mass killer wearing our clothes.  by Tony Paterson.

http://www.independent.co.uk/news/world/europe/lacoste-begs-police-please-stop-mass-killer-wearing-our-clothes-2351641.html

◇もうひとつは、アメリカのアバークロンビー&フィッチ。8月18日前後に各紙で話題になっていた古いニュースなのだが。オールアメリカンなイメージのあるアバクロだが、人気テレビ番組「ジャージー・ショア」に出演している俳優、マイケル・ソレンティーノに、「ウチの服を着るのをやめてくれたらお金を出す」と申し出たとのこと。というのも、ソレンティーノとアバクロのイメージが結びつくことが「著しくブランドイメージを傷つける」ことになるから。

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ソースは、8月11日付「テレグラフ」。Why pay a celebrity not to wear your clothes? By Stephen Bayley. 

セレブリティ・逆エンドースメント。着られたらイメージダウン。着ないでくれたらお金を出しますって…(笑)。服はいったん世に出たらもうあとはブランドが関与するところではないはずなのだが。

セレブリティ・エンドースメントの支配がいかに現在強力なのかということを、あらためて知らされたお話でもあった。

◇ガリアーノの人種差別スキャンダルが勃発し、反ユダヤ人発言をしたとして侮辱罪に問われてから6か月。昨日、パリで有罪判決が下りた。罰金6000ユーロ。約65万円。予想したより軽い。でも、「これだけで済んだ」わけではない。彼はその天才を発揮させるべき職を失った。

これを乗り越えて復活してほしい、と応援しているファンはまだ世界中に大勢いる。

◇上記のは「ニュース」だが、以下、やや「過去のニュース」記事のメモ。ひょっとしてあとからなにか関連事項がでてくるかもしれないので、メモしておきたい。

「グローバリゼーションはストリートスタイルをダメにしたか?」というNYタイムズのディベートルーム。8月22日付のGQシニアエディター、ウィル・ウェルチのコメントが興味をひいた。以下、大雑把な概要の訳。(Too Self-Aware, by Will Welch)

現在のストリートスタイルの皮肉は、それがオンラインに存在するということ。人々は、ランウェイのコレクションや、キャンペーン広告の代わりに、インスピレーションを求めてウェブ上でストリートスタイルをチェックする。

ストリートスタイルは、本来、グローバリゼーションの影響を受けないスタイルとして生まれているはずのものだった。しかるに、アピールはグローバルになっている。東京にもNYにもラルフローレンやユニクロがあるから、とかそういう問題ではない。

ストリートスタイルをダメにした要因があるとすれば、それはその人気。当初は、フォトグラファーも、個性的な日常着を表現豊かに着こなした人々の写真を撮っていた。でも、あまりにも人気が出てくるようになると、今度は、人々のほうがカメラのために装い始めるようになり、競ってカメラに収まろうとするようになった。ハデになればなるほど、カメラに収まりやすくなる。そうすると、ストリートスタイルがランウェイのようになる、という悪しき状況が生まれてしまった。

ストリートスタイルは、「え?ボクがですか?」という何気ない感じがよかったのに、今はそれがなくなり、「ボクを見て見て!」というのが増えている。もうファッション界はこれに飽きて、次のおもしろいことを探しはじめている。

記事の概要以上。

ひとことでいえば「もうストリートスタイルは終わり」っていうことでもあるのだが。たしかに、いま「ストリートスタイル」はあっちでもこっちでも飽和状態で、しかも出てくる人がみんなモデル気分で写っているので、なんとなく食傷気味である…。ストリートが自意識過剰のランウェイ化しちゃったら、本物のランウェイにかなうはずもない。そのような「モード」(=時代の気分)をきっちり把握した記事だと感じる。

ストリートスタイル、リアリティテレビ、SNS…。当初は「なにげない日常をのぞく」のがよい、というところから始まったのかもしれないが、今や完全に演技的な世界。「見られる自分」を意識してプロデュースしている。

7月13日(水)に行われた、シャネル(株)代表取締役社長、リシャール・コラス氏の特別講演。明治大学商学部主催のファッション・ビジネス特別講演シリーズ、前期の最終回である。

リシャール・コラス氏の今回の講演のテーマは、LUXEのプレイヤー(コラス氏はactorという言葉を使っていらしたが)。ブランドのトップによって戦略が変わるということを、具体的なラグジュアリーブランドの例を引き合いに出しながら、お話いただいた。個人的にはツボにどまんなかというか、大好きすぎるほどの話だったので、わくわくしながら拝聴。「事実」やデータの裏にある、さまざまな人間くさいお話は、やはり「プレイヤー」のひとりでなくては語れない内容。ジョークを交えてのとても楽しい90分で、時にげらげら笑いながら、あっという間に時間がきてしまった。以下、とりわけ印象に残ったお話の概要を、ランダムにメモ。

・Boom, Consolidation, Expand, Crisis ときて、ラグジュアリービジネスの今はReboundの時期。

・リーマンショック後のラグジュアリービジネスの動向。アメリカは回復が早く、すでに「健康的」な数値を見せている、ということに軽く衝撃を受ける。2010年は日本以外は成長していて、なかでも最大の伸び率を見せているのが中国であり、なんと30%増。日本だけがマイナス10%という「非健康的」な伸び率。要因は2つ。まずは、日本はすでにマチュア・マーケットになってしまっており、おじいさん、おばあさんの世代は富のシンボルとしてラグジュアリー製品を購入したが、豊かになった日本の若い世代はもはやラグジュアリー製品を買う必要を感じていない。その2。観光客を呼べなくなった。これまでは中国人が来るときだけ売れたということがあったが(日本での売り上げの20%が中国人観光客によるもの)、これがなくなった。ただし、観光客を呼ぶためのインフラをどんどん作れば、第2のブームがくる可能性はある。

・ラグジュアリー市場は全世界で20兆円。かなり巨大なマーケットである(スイス、マレーシア、エジプトの国全体より大)。ちなみに日本は436.7兆円。

・キープレイヤーであるLVMH、PPR、リシュモンなどの、それぞれの歴史と市場規模、店舗数、売上高なども、数値をすべて示して教えていただいた。なかでもトップの考え方がわかるエピソードが印象に残る。たとえばLVMHのベルナール・アルノー。彼はアメリカで不動産業などにも携わっていたのだが、ブランドビジネスの重要性に気づいた。気づかせてくれたのが、NYのタクシーの運転手。「NYのタクシーの運転手は、フランス大統領の名前を知らないのに、クリスチャン・ディオールを知っている」。で、アルノーはクリスチャン・ディオールの買収にも成功している。

・エピソードの続き。リシュモン・グループのカルティエ。70年代にペランが、「マスト・ドウ・カルティエ」(豊かになる人は、これを持たねばならない、としてカルティエ製品を位置づけ)を提案して以来、急激に伸びる。ぺランは、ラグジュアリーのなかにマーケティングを持ち込んだ最初の人。これ以来、ラグジュアリーは大衆的になっていく。ちなみにぺランはただのセールスマンだった。

・グッチの場合。オーナーのパワーによってブランドの元気が左右されている、もっとも顕著な例。

・ラルフ・ローレン。ローレンはWASPではないが、WASPのコードを引っ張って大衆に夢をもたせることで、ファッションブランドを成功させた。日本では西武百貨店と組んでライセンスビジネスもおこなっているが、本家ものも同時進行。ライセンスがあってもイメージダウンせず、ライセンスと本物を共存させ成功させている、唯一の例。

・ブランドのオーナーが変われば戦略も変わり、元気になったりそうでなくなったりする。上場すれば、3か月ごとに株主の前で報告しなくてはならないので、いやでも短期的戦略をもたざるをえない。短期的戦略をとれば、ブレることが多い。軸がブレると力が落ち、そこをついてニセモノもふえてくる。

・シャネル社は上場していないプライベートカンパニー。非上場のため、売上高なども公開していない。だからこそ、ブレない戦略をとることも可能。

・ブランドにとってのデザイナーとはどのような位置づけなのか? (これは学生の質問に答えての話)  ブランドに雇用されるデザイナーには、ブランドのエスプリ把握とデザイナーのセンス、両方が求められる。デザイナーが交代するのは、往々にして、ブランドのエッセンスをつかみきれていないとき。ブランドのエッセンスのなかに自分のパワーを入れているデザイナーが、成功する。カール・ラガーフェルドはそのよい例。ココ・シャネルの名言のひとつに、Fashion Fades, Only Style Remains. というのがあるが、「スタイル」というのがほかならぬブランドのエッセンス。かといって移り変わる「ファッション」も不可欠。移り変わるファッションと、根っこの部分にあるスタイル、ブランドにはこの両方が必要なのだ。根っこ、すなわち伝統と歴史さえあれば、ブランドは死なず、またいくらでも元気になりうる。ブランドは何度でも復活できるのだ。その点で人間と同じである。

などなど、興味は尽きなかった。ブランドとは、とても人間くさいもので、またブランドの成長過程は人間の成長にもなぞらえることができるものだということまで、教えていただいた。コラス先生、および招聘してくださった商学部に心より感謝します。

6月10日に90歳の誕生日を迎えたエディンバラ公フィリップ(エリザベス女王の夫君)。そのスーツスタイルをたたえる記事が、英ファイナンシャルタイムズに。6月3日付、Regally restrained. 記者はマンセル・フレッチャー。

女王と結婚後、60年間の間、「公人」として人前に出てきたフィリップ殿下だが、その外見がなにか批評の対象になったことは、一切なかった。慎み深く、謹厳で、威厳もある。理想的なビジネススーツのモデルとなり続けてきた。シングルのグレーか紺のスーツ、白か淡いブルーのシャツ、シルクのタイと黒い靴、唯一の「装飾」がきりっと折りたたまれた白いポケットスクエア。

完璧に抑制のきいたユニフォームでなんの批判も受けない、ということで、このスタイルは現政治家にも継承されている。デイヴィッド・キャメロン、バラク・オバマ、トニー・ブレア、ニック・クレッグはみな同様のスタイル。サヴィル・ロウのテイラー組合のチェアマン、マーク・ヘンダーソンはこのようにコメント、「フィリップ殿下の装い方には、最高にすばらしい、目立たぬ賢さがある(There is the most wonderful low-key smartness about the way he dresses)」。

殿下のスーツを少なくともここ45年間つくっているのは、Kent, Haste & Lachter のジョン・ケント。1960年代に、ケントがHowes & Curtis にアンダーカッターとして加わり、殿下のトラウザーズをつくったことからご縁が始まる。1986年にケントが独立したあとも殿下のテイラーであり続け、昨年、ケントが現在の会社をはじめたときにはすぐにロイヤルワラントを取得した。殿下の好みは渋め。「シングルのジャケット、フロントは2つボタン、カフスは4つボタン。ベントなし。ポケットにもフラップなしで玉縁かがりのみ。トラウザーズはクラシックでプリーツはあってもバギーなし」。

この40年間の間、メンズファッションは激動期でもあった。ロックンロール、ヒッピーカルチュア、ニューロマンティックを経てヒップホップへという流れがあった。スーツにおいても、アルマーニによる「デコンストラクション」があり、ヨウジ・ヤマモトによる再構成があり、ヘルムート・ラングやエディ・スリマンによる革新を経て、トム・フォードによる70年代風ルネサンスがあった。こうしたあれこれの騒動を横目に、殿下のスタイルで変わったところといえば、トラウザーズのカットをスリムダウンしたことと、ラペルを少し長くしたことだけ。

こうしたパパの厳格さを見て育った長男のチャールズ皇太子は、ちょっとダンディ入っている。ソフトショルダーのダブルを好み、ポケットチーフもカラフルだしパフって入れたりしている。この父子関係は、オーソドックスを好んだジョージ5世の好みに反して、ど派手なスタイルセッターになってしまったウィンザー公との関係を思わせる。

「殿下はカジュアルをお召しになることがあるのか?」という質問に対し、彼のテイラーはちょっと間をおいて、ドライに答える。「熱帯にお出かけになるときには、軽量のコットンスーツをおつくりしました」。

マーク・ヘンダーソンの締め、「多くの点で、殿下は典型的なブリティッシュ・ジェントルマンであり、スタイルは永遠であるということを私たちに思い出させてくれる」。

……以上が記事のおおざっぱな概要。ジェントルマン気質とダンディ気質は、常にささやかに対立しつつ共存していくものであること、あらためて感じ、にやっとさせられる。殿下のような典型的なブリティッシュ・ジェントルマンがかたくなに「模範」を示し続けてくれるからこそ、アンチテーゼとしてのメンズファッションがおもしろくなってくるのだ。フィリップ殿下、90歳のお誕生部おめでとうございます!

◇「サライ」7月号発売です。連載「紳士のものえらび」でトラヤ帽子店のパナマ帽について書いています。機会がありましたらご笑覧ください。

今月号の特集は「美術の見方」。東西の名画がたっぷりなうえに、デスティネーション美術館の紹介も多数。「ベネッセアートサイト直島」とか「霧島アートの森」とか、名高い「自然のなかの美術館」がきれいな写真とともに紹介されているので、しばし脳内旅行も楽しめる。

◇5月の「ニュース」だけどメモ。「赤いソール」のクリスチャン・ルブタンが、YSLに対して4月、訴訟を起こしていた。それに対し、YSLが反論という記事。5月25日付、英「インデペンデント」、You don’t have sole right to red soles, YSL tells Louboutin. 記者はスザンナ・フランケル。

ルブタンは、90年代のはじめに、ネイルラッカーで靴底を赤にすることを思いつき、それがステイタスシンボルとなった、と主張。

YSLは、ルブタンには独占権はない、と反論。赤いソールは70年代くらいからちらほら作っていたし、そもそも歴史をさかのぼれば、17世紀のルイ17世の靴底も赤だし、「オズの魔法使い」のドロシーを家に連れて帰った靴もルビーレッドだった、と。

ルブタンは、YSLが「ほとんど同じ」シグニチャーソールをコピーしたことに対し、YSLに62万ポンドの損害賠償金を要求。ルブタンは40か国で50万足以上を売り上げており、2008年にUS特許庁から特許を受けている。

YSLのオーナーはPPR。こっちも強力な弁護士を用意してくるだろう。この決着はどうなるのか、Let’s see.

日本でも靴底をピンクに塗ったりしているブランドがありますね。赤以外の色だったらOKなんだろうか?とか、グローバルブランドでないところ(ルブタンと競合してないところ)だったら大丈夫なのか?とか、あれこれ考えさせられる。

一時期、日本の若い男の子の間でも流行った「ズボンの下げ履き」。英「ガーディアン」に最近の状況を伝える記事が出ていた。5月9日付。’Belt Up, youg man’ by Alex Needlam. 以下、面白いと思った部分を大雑把に抜粋。

Sagging Trousers (ずり落ちトラウザーズ)で下着を見せることに関し、フロリダは「禁止」。それ以前にもこれを禁じる圧力の前例は多数あり。オバマ大統領は、2008年の大統領選中に、MTVで「ブラザーたちよ、ズボンを引き上げよ」と発言。その一年前、ルイジアナのデルカンブルの市長は、お尻の下までジーンズを下げれば、6か月の禁固刑と500ドルの罰金を課す、と。

こうした権威からの圧力にもめげず、ずり落ちジーンズはストリートからはなくないどころか、形を変えて生き残っている。なぜに、かくもしぶとく?

答えはシンプル、「反抗」。このスタイルは、刑務所発。刑務所内での囚人は、自殺防止のため、ベルトを与えられない。ベルトなしでズボンをはかされるのだ。お尻を半分見せるはき方は、刑務所を連想させるのに、ストリートでこれをやると刑務所に入れられかねない。二重の犯罪的なイメージ。

また、「ケツを見せる」というのは、相手を侮辱する行為として、ヒップホップカルチュアでは何世紀にもわたって続く。ティーンエイジャーの間でグローバルに浸透しているSagging Trousersは、このカルチュアのややおとなしい変形版。

女性が浅めにジーンズをはくと性的魅力がアップするとみなされるが、男の子の場合、モラルパニックを引き起こすだけで、下げ履きには性的な意図はまったくない。それどころか、ゲイはだいたいにおいて、下げ履きを避けてきた。

下げ履き歴の長い、20歳前後の男の子たちへのインタビューもあり。「セレブもスケボー仲間もみんなこういうスタイルだから」という答えが多い。「お尻の肉がないのでこうなっちゃう」という拍子ぬけの答えも。流行し始めた90年代当初と違って、あまり「反抗」の意図は感じられないどころか、とんがった自己主張感もない。「みんなこうなので」。「あんまり考えてないし」。

真剣に考えているオトナがバカみたいに見えてくる皮肉。それこそが、今風の「反抗」?(これは私の個人的な感想)

キャサリン妃がウェディングドレスに選んだことで再評価の機運も高まっているブランド、アレクサンダー・マックイーン。NYのメトロポリタン・ミュージアム・オブ・アートで創始者の故アレクサンダー・マックイーンの作品の回顧展が行われている。NYタイムズにスージー・メンケスの記事(5月2日付)と、ほんの少しの作品だが、スライド写真あり。

http://www.nytimes.com/slideshow/2011/05/02/fashion/fmet03.html

死のイメージ、血、野蛮、SM、闇、プリミティズムなどの、ダークなロマンティシズムを洗練の「美」に昇華して、気持ちをざわめかせたり、苦くて甘美な感情をかきたてたり、思考を促したりしてくれる。

悪名高い「バムスター」(下げ履きパンツの元祖になった)が、サヴィルローのテイラードの技術があったからこそ可能だったという指摘に、なるほど、と。基礎的な力量ががっちりあるからこそ、想像を自由にカタチにできるのだ、たぶん。

ガリアーノのほうは、現在、裁判がおこなわれている。数週間前に弁護士を「解雇」していたりと、あまりはかばかしい進展ではないようだ。(ともにイギリス出身のマックイーンとガリアーノは、同じめまぐるしいモードのシステムの犠牲になったデザイナーではないかと思い、ついセットにして考えてしまっている)。

「ニューヨークタイムズ」がツイッターでやっている「ファッションIQテスト」、以前にもご紹介したが、またオタク魂をくすぐる問題がぞろぞろ出ているので、最近の問題のなかから、ご紹介。

A. 最初に防水ウールを発明したのは、次のどのブランド? 1)バーバリー 2)バーブァ  3)アクアスキュータム

B. 「ナイロン・マガジン」のクリエイティブディレクターだったモデルは、次のうちの誰? 1)ヘレナ・クリステンセン  2)ケイト・モス  3)エル・マクファーソン

C. 「パーソンズ」(アメリカのデザインスクール)でバレエ団のキャプテンだったデザイナーは、次のうちの誰?  1)ジェイソン・ウー  2)トム・フォード  3)マーク・ジェイコブズ

D. リネンショップとして創業したのは、どこ? 1)バーニーズ  2)ハーベイ・ニコルズ  3)オープニング・セレモニー

E. デトロイト出身のデザイナーは、次のうちの誰? 1)ジョン・バルベイドス 2)ラルフ・ローレン  3)フランシスコ・コスタ

さて、いくつわかりましたか?

Yokohama

冬のみなとみらい、頭がいたくなるほど風は冷たいですが、空気はすっきり澄んできれい。

さて、答えです。

A. 3 1853年、アクアスキュータムのジョン・エメリーが発明

B.  1   ヘレナ・クリステンセンは1999年、ナイロン・マガジンのクリエイティブディレクターをつとめていた

C.  3 マーク・ジェイコブズは「パーソンズ」でバレエ団にいた!

D.  2  ロンドンのスノッブな高級百貨店ハーベイ・二コルズは、1813年、リネンショップとして創業

E.1 最近、人気急上昇のジョン・バルベイドスは、デトロイト出身

ちなみに私は「まぐれ」でAを正解できただけでした……。

おそろしく審美眼の高い「モノクル」の編集長、タイラー・ブリュレ様が、ミラノコレクション及びミラノのショウルームのトレンドを通して予測した、2011年秋のメンズウエア(マーケット)の予測。英「ファイナンシャルタイムズ」21日付。ざっと抜粋をメモ。

1.ミスター・USAを見限るな。

 スーツにフォーカスした多くのイタリアのブランドは、アメリカの顧客向けの売上げを上昇させている。ビジネスを成功させたいと願うアメリカ人男性は、シャープな印象を作る必要があり、もはやドレスダウンによってなんらかのアピールができる時代ではない。アメリカのビジネスマンはヨーロッパやアジアの同僚にならって、すっきりスマートなシルエットを採用したがっているのだ。

2.日本を見限ってもいけない。

多くのイタリアのファッションブランドは(大なり小なり)日本ヌキでビジネスはできない。日本人男性は、わかりやすいラグジュアリーブランドには走らない。日本人男性が買うのは、Boglioliのブレザー、Felisiのバッグ、Butteroの靴、Bigiのネクタイである。実際、小さなイタリアのブランドは、日本において記録的な好況期を迎えている。

3.中国の「ファッション・ドラゴン」は「メイド・イン・チャイナ」をほしがらない。

ヨーロピアンブランドであっても中国に生産工場を移したものは、ビジネスが減速している。洗練された中国人は、自分ちの裏庭で縫製されていながら「メイド・イン・イタリー」のタグがついたバッグなどほしがらないのだ。

4.韓国のエンジンに注目。

中国の成長は興奮ものだが、今年大きな好況をもたらすのは、韓国の小売業者のバイヤーであろう。韓国の男は、東京の男のようにドレスアップしたがっている。日本に次いで大きな可能性を秘めるマーケットとしてこの市場を見ているバッグ、アクセサリーのブランドにとって、これはグッドニュース。

5.未来はテイラード

しばらく続いたワークウエアのブームは終わり。メンズウエアはテイラードの方向へ向かうだろう。

日本人男性のファッション行動の観察に関しては、さすがタイラーというか。日本の男性の、洗練されすぎなほどにマニアックなファッション感覚が、イタリアの小さなブランドの経済状況をうるおしているという報告に、あらためて日本男性のファッションパワーを実感する。海外投資もいいけど、ふんばっているドメスティックブランドにもお金をつかってあげてください。

中国の「ファッションドラゴン」の行動も痛快。中国製なのにバッグのハンドルだけイタリアでつけて「メイド・イン・イタリー」にしている某高級ブランドに対する、痛烈なしっぺがえし。

「カール大帝」ことシャネルのデザイナー、カール・ラガーフェルドがフォルクスワーゲンのテレビコマーシャルに。

パリ生まれのスタイリッシュなカーだと感心していたら、アシスタントが「ドイツ製です」とささやく。カール、シックとドイツは両立しうることを発見、みたいな流れ。

カールは自身がドイツ人であることをあまり喜んでおらず、「自分はヨーロピアンである」と常々公言していた。だからこそ、「パリの美ではなくて実はドイツの美だった!」のCMが生きる。

http://www.youtube.com/watch?v=MAsIUVUQv1Q&feature=player_embedded

完璧にマンガのキャラのようになっている自分自身を楽しんでいるカール。インタビューでも必ず皮肉のきいた(カールしか言わないような)ひとことを言ってくれるし、演じてもユーモアが立ち上ってくる。年と共に、鋭さに磨きをかけながら、ああいう余裕の貫録を備えていくのは、いいなあ。

ドルチェ&ガッバーナがイタリアのボクシングチーム、「ドルチェ&ガッバーナ ミラノ・サンダー」15人のユニフォーム(というのか、サテンのボクサーショーツとガウン)をデザインしたことにちなみ、スポーツとファッションブランドの「ドリーム・チーム」にふれた記事。英「ファイナンシャルタイムズ」23日付、記者はマリオン・ヒューム。

ドルチェ&ガッバーナはボクシングだけでなく、すでにイギリスのサッカーチーム「チェルシーFC」と3年契約ずみ。オフィシャルスーツを作っている。スタンフォード・ブリッジの西側スタンドには「ドルチェ&ガッバーナ ラウンジ」があり、インテリアにいたるまでドルガバ色で染めている。こうなる前には、「アルマーニ・カーサ」のインテリア用品で整えられていた。

ファッションブランドがスポーツと手を組む。古くは1920年代、ジャン・パトウがテニスのスザンヌ・ランランのウエアをデザインしたことから始まるが、マーケッティング的にスポーツとスタイルを結びつけたのは、ジョルジオ・アルマーニ。1995年、アルマーニはサッカー選手を「現代の新しいスタイルリーダー」と位置づけ、リバプールのゴールキーパー、デイヴィッド・ジェイムズをエンポリオ・アルマーニのゲストモデルとして歩かせ、下着の広告にも起用。デイヴィッド・ベッカム、クリスティアーノ・ロナルドも「チーム・アルマーニ」に加わる。最近ではテニスの世界チャンピオン、ラファエル・ナダルも。アルマーニは、「アルマーニ・ジーンズ・ミラノ」というバスケットボールチームも所有している。

トッズはイタリアのサッカーチーム「フィオレンティーナ」を所有。

ロロ・ピアーナはポロチームと組んでいる。自身が「ポロ」をするラルフ・ローレンは、実は自分のチームをもっておらず、「ブラック・ウォッチ」チームのスポンサーをする。

エルメスは4月、パリのグランパレで、ショウ・ジャンピングのコンペティション、’Saut d’Hermes’を開催する。

ゼニアはスキーリゾートを所有している。

エミリオ・プッチはブランドを立ち上げる前、オリンピックのスキー選手だった。

ポール・スミスは、スーツとともにバイクも売っているが、少年のころ、ノッティンガムのビーストン・ロード・クラブでレーサーをしていた。

ステラ・マッカートニーは2010年のオリンピックで、イギリスチームのユニフォームをデザインする。

ダナ・キャランは長年、ニューヨーク・ヤンキースとスポンサー契約を結んでいる。「契約は自然なこと。DKNYとヤンキー・スタジアムはニューヨーク的なスピリットを共有しています。ともに私たちの文化であり、ストリートであり、集合的な意識(collective consiciousness)なのです」とキャラン。

サッカーがファッショナブルなのはもはや当然になった感があるが、ドルチェ&ガバーナが乗り出したことで、これからはボクシングまでが「モード」になっていく勢い。柔道や空手に影響が及ぶのも時間の問題!?

「ウォールストリートジャーナル」アジア版で、2010年メンズのトレンド、トップ5の紹介。22日付。記者は、ジェイソン・チョウ、おそらく中国系の方? 今の「アジアのクール」はもはや一昔前のようにトウキョウにはない、現在はソウルであり、注目を浴びているデザイナーはサウス・コリアンである、という断言がキビシい現実をつきつける。

トップトレンドとして挙げられたのは、「マッドメン」効果の、60年代モダニティを感じさせるスリムタイ、スリーピーススーツなど。ドン・ドレイパー・ルックですね。日本ではまだこのドラマが一部の熱狂的ファンのみにしか観られていないようなのが、ちょっと惜しまれる。

マン・バッグ(男のバッグ)もアジアのトレンドだったのだとか(ま、主に中国において、ですかね)。女性と同様、男性がルイ・ヴィトンのバッグをもつ姿が見られたそうです。

格子縞ルックとツイードもトレンドとして挙げられていた(日本ではほとんど見なかった……)。

中国のレトロスニーカーも、話題になったそうだ。Feiyueという「復活」ブランド名が挙げられていた(知らないし)。

中国視点の強い、いわば必ずしも公平にアジア全体を見渡しているわけではない記事とはいえ、西洋から見た「アジアのファッショントレンド」=「東京のファッショントレンド」だった時代が、確実にゆるやかに過ぎ去っていくのを感じる。

バイク乗りのクラブ「Hells’ Angels」が、自分たちのロゴをパクったとしてアレクサンダー・マックイーンを訴える。インデペンデント28日付ニュースで知る。

暴走族かと思いこんでいたが(失礼しました)、Hells’ Angelsは、1848年にアメリカで結成された、由緒ある(?)バイク乗りたちの非営利相互協力組織のようなものであるらしい。

ロゴマークは、横顔のスカルが、ギリシア神話の軍神マルス風ヘルメットをかぶっているデザイン。「デス・ヘッド」と呼ばれているもの。

スカルがあっちこっちのファッションアイテムにくっつく昨今、このロゴマークに目をつけるメーカーやデパートその他があとをたたず、「ヘルズエンジェルズ」側は、このロゴマークに類似したマークをつけるあらゆるファッションアイテムの撤退を求める訴訟を起こした。そのなかに、アレクサンダー・マックイーンの860ドルのドレスもある。高級デパートのサックスも訴えられている。最近ではディズニーともこのロゴマークをめぐって闘っていたらしい。

バイカーたちにとっては、ハーレーにもホンダにもまたがる気のないヤツらに、ファッションとしてデスヘッドをちゃらちゃら使われるのは許せん、というところもあるだろう。ましてや、金もうけのタネに使われて売れなくなったらポイ捨てというのでは、たまったもんじゃない。

それにしても、誰もがマネしたくなるというのも納得の「デスヘッド」のロゴ。考案者のセンスに感心。

ニューヨーク・タイムズの「T マガジン」が、ツイッター ‘The Moment’ で、ファッションIQテストというのを発信している。私自身はツイッターはまったくやらないが、IQテストがある程度まとまった段階で、不定期にチェックして楽しませていただいている。

マニアックな問題ばかりなのだが、モードニュースがオタク級に好きな人は、挑戦しがいがあるかも? 最近のテストから、比較的簡単なレベルに属するテストを、いくつか抜粋して紹介。

Q.1 次のデザイナーのうち、アルマーニ、プラダ、YSLすべてのブランドで働いたデザイナーは誰?

a) ステファノ・ピラーティ   b) トム・フォード  c) クリストファー・ケイン

Q.2  次のモデルのうち、11歳のときにリチャード・アヴェドンに撮影されたのは、誰?

a) ブルック・シールズ   b) シンディ・クロフォード  c) ミラ・ジョヴォヴィッチ

Q.3  バイアス・カットの考案者としてクレジットされているデザイナーは、誰?

a) マリー・クワント  b) オッシー・クラーク   c) マドレーヌ・ヴィオネ

Q.4 当初、シンプルなエプロンだけを作っていたブランドは、どこ?

a) アクリス  b) エスカーダ  c) エレス  d) アルベレタ・フェレッティ

Q.5 ベルギーのブリュッセル生まれのデザイナーは、次のうちの誰?

a) リズ・クレイボーン   b) オレグ・カッシーニ  c) 二コル・ミラー

さて、いくつわかったかな?

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写真は恵比寿ガーデンプレイスのコスモス。とくに意味はないのですが。「間」。

さて答えです。Q1,が a のステファノ・ピラーティ、Q2は c のミラ・ジョヴォヴィッチ、Q3が c のマドレーヌ・ヴィオネで、Q4は a のアクリス、そしてQ5が a のリズ・クレイボーンでした。

ファッションIQが高ければ高いほど、世間からは冷ややかな視線を浴びそうですね……。

◇ロンドン発のメンズ秋冬トレンドとして、テイラードのひざ丈オーヴァーコートが復活、という記事。ファイナンシャル・タイムズ、22日付。

ここしばらくは、冬場でもトレンチとか、ピーコートなどが主流だったが、フォーマルへの回帰の流れか、テレビドラマ「シャーロックホームズ」の影響か、ミリタリーの流れか、今冬はエレガントなロング丈のコートが大きなトレンドになる、と。

日本の市場にもそのうちにちらほら出回るとは思う。でも、スーツにナイロンジャケットが定番、という日本のビジネススタイルには、いつどの程度浸透するのか。こちらはこちらで独立したカルチュアになっている感もある。

ロンドン発のトレンドといっても、作り手にとっては、とにかく「去年とは違う」アイテムを買ってもらわないとビジネスにならない、というのも本音としてあるだろうし。

◇フェイク・ファー人気がリアル・ファーの需要を押し上げている、という記事。インデペンデント、17日付。

テクノロジーの発達で、フェイクファーがとてもしなやかで加工しやすくなり、リアル・ファーとの区別すらつかないくらいに完璧になった。

かくして、いたるところにリアルかフェイクかわからないすてきなファーが気軽に使われるようになる。「ファーは動物虐待に加担」というPETAが作り上げたようなムードは薄まり、文化的にファーはOK、という流れになっている。それが逆に、ヴィンテージ・ファーも含めたリアル・ファーに対する人気を高めることになった、と。

偽物が、本物に対する需要を刺激する。

皮肉だが、本物が真に「ホンモノ」であれば、いろんなケースでこの法則は成り立つように感じる。

◇某女性大臣のヴォーグ出演に関し、英紙の報道を見ていたら、いい格言に出会う。

Shirts should not speak louder than words.

「服は、ことば以上に大きな声で語ってはならない」

政治家はじめ、ことばを武器ないし商売道具とする方は、心に刻んでおいたほうがよいでしょう。自戒をこめて。

「ミス・アシダ」2011 S/S コレクション@恵比寿ガーデンホール。

エッジイな洗練とかわいらしさ、正統派エレガンスと茶目っ気のあるハズシ、保守的風味と艶っぽい大胆が、選び抜かれた素材と高度なテクニックによってなんの矛盾もなく調和する、という芦田多恵ワールドを堪能。そのまま「すぐに着たい!」と思わせる作品ばかり。

大柄のシルクシフォンとレザーの組み合わせを軽妙に生かした作品が目をひく。ミディ丈、ロング丈のスカートでも、前後の長さをアシンメトリーに変えたり、布をあえて重ねてひらひらさせることで、逆に軽やかさが生まれることを知る。各パーツの縁取り、レースのあしらい方、後ろ姿のアクセントにいたるまで、きめ細やかで丁寧な仕事ぶりが貫かれており、それが作品全体の品格につながっていることも感じる。一流の仕事というものは、分野がまったく違う仕事にも適用できると思わせるインスピレーション源に満ちている。

多くのモデルの髪型が、夜会巻きのバリエーションで、前髪のみ極端に長いなどの退廃風味がアクセントになっている。冨永愛も金髪のロックな夜会巻き風で登場、ひときわ迫力あり。強い眼力をもつこの人が着こなすマリンジャケット+白のハーフパンツが、強烈に印象に残る。

「サライ」誌記事のため、「デンツ」のグローブに関するお話を、「リーミルズ・エイジェンシー」の長渕靖社長にうかがう。

一双3万円~5万円の手縫いの革手袋には、なるほど価格だけの時間と手間ひまがかかっていることを知り、納得。詳しくは本誌にて。

「リーミルズ・エージェンシー」はデンツのほかにも、ジョン・スメドレーのニット製品、ジョンストンズのカシミア製品、パンセレッラの靴下などなど、スノッブな英国ブランドを数多く扱っていて、ちょっとした興奮続き。下の写真はジェイムズ・ボンドも愛用のパンセレッラ。英国仕様のカラフルな柄や、「脛が見えない」ロングホーズもそろう。この靴下についてはまたあらためて取材したくなる。

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「英国王室御用達」のはずなのに、マークがついてないブランドばかりであることに気づく。「最近では、意識の高いブランドは、逆にあえてつけない」傾向があるらしい。ロイヤルワラントをありがたがるのは、イナカモノ(地理的な意味においてではなく、メンタリティにおいて)ということか? この背景については、気になったので、正確な実態を調査中。

ドイツの「シーサー」という下着ブランドとも、驚きの出会い。説明されなければ、「おじいさんの箪笥の中から出てきた」ような印象なのだが、下着としてはかなり高価な品である。くたっとした雰囲気、しぶい色出し、布でくるんだ上に箱に収納するパッケージという細部などに、「いまどき」の男性に好まれるであろう絶妙の「こだわり」感覚が見え隠れする。

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「こだわり」というワードじたいは、「サライ」ではNGなのですが。

「ナガホリ」秋の創美展@帝国ホテル。「孔雀の間」にひしめく豪華な宝石の数々に目の保養をさせていただく。「スカヴィア」や「レポシ」などの遊び心のある大胆なデザインのジュエリーを目にすると、いつもながら、脳内を電気が走る感じ。スケールと歴史と発想が違う。値札には「0」が数え切れないほどついているのでチェックする気にもなれない。ひたすら美術品として崇める。

今回、感動的な出会いだったのは、「ロイヤル・アッシャー」のダイヤモンドである。なんでも「セックス&ザ・シティ」に登場してからアメリカでの売り上げが急上昇したというダイヤモンドなのだが。もとよりそんなミーハーなブランドではない。

1854年、オランダのアムステルダム発祥、創設者は技術者のアイザック・ジョセフ・アッシャー。1907年に、史上最大のダイヤモンド原石「カリナン」(3106カラット、621.2グラム)のカットを、当時の英国王エドワード7世にゆだねられる。

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カリナンのレプリカは写真左から2番目。あとの道具は、これをクリービングするためだけに準備された特別なツールたち。

このカリナンは、9個の大きなダイヤモンドと、96個の小さなダイヤモンドにカットされたのだが、そのうち最大のものは、「偉大なアフリカの星」と呼ばれて英王室の王笏に、二番目に大きなものは大英帝国王冠に飾られている。会場にはそのレプリカが飾られる。レプリカとはいえ、金銀ダイヤ3000個、真珠270個、ルビー、サファイア、エメラルド、オコジョの毛皮がついた、かのインペリアル・ステイト・クラウン実物大を間近に感じて、しばし静かに感慨にふける。

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王笏は、十字架のもとでの君主の俗界における権威を象徴し、戴冠式の時に、国王または女王の右手に渡される。この引き渡しの時の式文が、タイトルに記した文句。

GOD SAVE THE QUEEN.

「ジュン アシダ」2011 S/S  コレクション@グランドハイアット東京 ボールルーム。

永遠のエレガンスの模範だなあ、とあらためて感動。流行を超えてコンサバティブだけどモダンエッジが効いていて、国境・時代を超えて万人が好感をもつであろう普遍性のある優雅を感じさせる。素材、カッティング、ディテールがひとつひとつ凝っていてバリエーションは多いのに、トータルで見ると「ザ・芦田淳ワールド」として不動の統一感を保っている。BGMもクラシック音楽のモダンバージョンで、コレクションの雰囲気にぴたり合っていた。

31カ国の駐日大使、大使夫人も来場。

長期にわたる先駆的でグローバルなキャリアに対し、芦田淳先生はこのたび、フランス共和国芸術文化勲章オフィシエを叙勲された。

おめでとうございます!

Ja

2011年春夏のパリ・ファッションウィークは「ポスト・サイズ・ゼロ時代の幕開け」として記憶されるという記事、ガーディアン9月30日付。

パリコレ2日目に行われたコレクションでは、「プラスサイズ」(太めサイズ)モデル、4人の子を出産後復活した40歳のモデル、スパイクヘアの素人モデル、妊娠中のハリウッドスターなど、サイズゼロ(がりがり)モデルではなく、バリエーション豊かな女性たちがランウェイで見られたという。

バレンシアガのニコラ・ゲスキエールは、レギュラーモデルのなかに、街でみかけた素人、ヴェテランのステラ・テナントやアンバー・ヴァレッタ、妊娠中のミランダー・カーを。

ザック・ポーゼンは、クリスタル・レンをはじめとするプラス・サイズのモデルを。

どちらのショウでも、「非・サイズゼロ」モデルは、特別扱いされるわけではなく、ごく自然に流れの中に溶け込んで歩いていたとのこと。

ポーゼンのコメントが引用されていた。彼が服を作る対象は、「人生と、そのなかに含まれる最善のこと~恋愛や友情や食事~を愛している女性たち」。

とすれば、モデルの体型や年齢が多様になるのも、ごく自然な流れということである。

ロンドン・ファッション・ウィークではすでに意識的にモデル多様化のトレンドが創り出されている。でもパリ・コレクションだけは特別な「権威」、という雰囲気がどことなくあった。そのパリでの多様化現象の兆しである。

この流れは拡大するのか、一時的な試みに終わるのか、気にとめて見ておきたいところ。

2011年春夏のパリ・ファッションウィークにおいて、ピエール・カルダンが10年ぶりにコレクションを発表したというニュース。カルダンは88歳である。

60年代にスペース・エイジのコレクションで時代を方向づけ、形作った、すでにヒストリカルな伝説の域に達しているデザイナーである。車のインテリアからチョコレートまで、ライフスタイルを幅広く「デザイン」し、ライセンスビジネスを手がけた元祖でもある。

復活コレクションは、蛍光色や原色の宇宙飛行士風ボディスーツや男女おそろいのビニールコート、ラバーのアクセサリーや眼鏡(?)、UFO風帽子、幾何学的なミニドレスやサイバー風味の入ったパニエつきドレスなどなど、60年代のカルダンを21世紀風にアレンジ、といった感のあるコレクション。

レディ・ガガも最近、カルダンによるメタリックなコスチューム&帽子を着用したというし、最初のブームから50年たっていたら、今の人の目にはまったく新鮮に映っているかもしれない。

そんなことよりも、88歳で、10年ものブランクを経てパリコレに「復活」したカルダンの意志と情熱と行動力に心を打たれた。ココ・シャネルも80歳で「復活」している。周囲の嘲笑などものともせずに。50前ですっかり挫折した気分になってたのが、心底恥ずかしくなる。

80年代のメンズファッションに多大な影響を与えたオリバー・ストーンの「ウォール・ストリート」(1987)、その続編が間もなく公開ということで、あちこちで「ウォール・ストリート」ファッション特集が組まれる。(日本では来年1月末公開のようである。)

続編のタイトルは’Wall Street : Money Never Sleeps’(「ウォール・ストリート: 金は決して眠らない」)。リーマン・ショック版ウォール街? ゴードン・ゲッコーを演じるのは前と同じ、マイケル・ダグラスで、コスチューム・デザイナーも前と同じ、Ellen Mirojnick。チャーリー・シーンがやってた役の立場に相当する若手俳優には、シャイア・ブラーフ。

80年代の映画が世のメンズファッションに影響を与えた「パワールック」アイテムといえば、ネイビーのストライプスーツ、シルクのポケットスクウェア、フレンチカフのシャツ、サスペンダー、襟とカフスだけ白の、カラフルなクレリックシャツ。

The Wall Street Journal、22日付けの記事によれば、ファッション業界はすでに続編の映画の影響が波及することに備えているとのこと。NYのトレンディなシャツメイカー、Jack Robie からMohan’s Custom Tailors まで、映画のスタイルを紹介するプレスリリースを顧客に送っているらしい。(ということは、備える、というよりもむしろ、映画にあやかって新商品を売りたいという戦略?)

ゲッコーの着る「不況期のパワールック」に興味がひかれるところだが、コスチューム・デザイナーのことばを借りれば、ゲッコーはテイラーに行って新しいスーツを"Gekko-ized"(ゲッコー化)していく。写真のなかで目を引いたものは、スリーピーススーツで、ウェストコートに襟がついているタイプ。服地はドーメルやホランド&シェリー。水平ストライプのスーツもあるそうで、いったいどんな仕上がりなのか。

ポイントはむしろアクセサリーの方にあるようだ。ヴァシェロン・コンスタンタンやIWCの時計、ダンヒルの諸々のメンズアクセサリー、ヒッキー・フリーマンのシャツ、バートン・ピエイラの透明セルフレームのメガネ、懐中時計チェーンなど。

シャイア・ブラーフも、一着6500ドルのスーツを6着、映画のなかで着用するとのこと。シャツは白の2ボタンカラーでタイはエルメス。カジュアルではベルスタッフの革ジャケット。

おそらくブランドとのタイアップも無関係ではないと思われるが、不況時代のアメリカ的パワースーツがどんな風に表現されるのか、現実のメンズファッションに影響があるのかないのか、ウォッチしたいところ。

◇ニューヨーク・タイムズ紙4日付、ニューヨーク・ファッションにおけるアジア系アメリカ人の台頭を分析する記事。興味深かったので、ダイジェストを備忘録としてメモ。

今年の6月、CFDA(Council of Fashion Designer of America)が新人賞を授けたのは、すべてアジア系のデザイナーだった。メンズウエア部門がリチャード・チャイ(韓国)、ウィンメンズウエア部門がジェイソン・ウー(台湾)、そしてアクセサリー部門が、アレクサンダー・ウォン(中国)。

今週の木曜からニューヨーク・ファッション・ウィークが始まるが、注目を集めるデザイナーの多くは、アジア系である。上記の3人のほかには、タクーン、フィリップ・リム、デレク・ラムなど。1995年には、CFDAのメンバーだったアジア系アメリカ人は10人ほどだったのに、今日では35人も。

アジア系デザイナーが台頭する理由は、1980年代のニューヨークでユダヤ系のデザイナー(カルヴァン・クライン、ダナ・キャラン、ラルフ・ローレン、マーク・ジェイコブズ、マイケル・コース)が活躍した理由とほぼ同じ、と記事は分析する。ユダヤ系移民は、まず労働者として、次に工場経営者、製造業者、小売業者として、そしてついにデザイナーとして、ニューヨークの服飾産業に関わり、一大服飾産業地区を作り上げた。今日のアジア系アメリカ人の祖先も、服飾産業にさまざまな形で(工場労働者からモデルにいたるまで)関わっている、と。

たとえば中国系の移民であるデレク・ラムの祖父は、ウェディングドレスをつくるファクトリーを経営していた。父は香港から衣類を輸入する仕事をしていた。だがデレクは、もっとクリエイティブなことに関わりたいと思い、名門デザインスクール「パーソンズ」に入学して1990年に卒業。2002年に自身のブランドを始める前は、マイケル・コースのもとで働いていた。

最初は「デレク・ラム」のコレクションはさっぱり売れなかったという。数シーズン後、ようやく動き始め、いくつかの賞を受賞して、2007年にマンハッタンに店を開き、「トッズ」の服とアクセサリーを手掛けるようにもなる。最近、上海と北京へ行って、自分の認知度の高さに驚いたという。10年前にはまだファッション・デザイナーという仕事に対する偏見があったが、今では中国人の目には「傑出したキャリア」のひとつとして映り始めている。

アジア系デザイナーがモード業界で脚光を浴びる背景に、ファミリーがNYで移民として広く服飾産業に関わっていた経緯があるという指摘が、発見というか納得というか。

だから、ここでいう「アジア系」に日本が入っていないのを別に嘆く必要はなく、日本は日本で、オリジナルの文脈から発信していけばよいとは思うのだが。ただ、日本ファッションを底上げして盛りたてる層やムーブメントが、他国に比べてあまりにも希薄というか、エネルギー不足に感じられるのが、少しさびしい。

外に1分出ているだけで汗がふきだす猛暑。だからといって、スリーブレスの服を着ていくと、いったんオフィスの冷房にさらされただけで、肩あたりが冷え冷えする。でも暑苦しいジャケットなんて、さらに考えたくない。

そういうシチュエーションで重宝しているのが、ミス・アシダのボレロスリーブのニットである。サマーニットなのでさらっとしているうえ、一見、肩と二の腕をふんわりと優しく覆ってくれる半袖ながら、実は脇が完全にオープンで、汗を完全に外に放ってくれるのである(外からは、まったくそうとは見えない)。汗染みを心配しなくてはいけないことからも、解放される。マッキントッシュのコートにもこんな工夫があった。あれは穴あけであったけれど。こちらは、ボレロ風の袖が、スリーブレスのニットにくっついている(脇を除いて)といったデザイン。

この秀逸なボレロスリーブは、ワーキングマザーでもあるデザイナーの芦田多恵さん考案。

汗をため込まず、すべて外に発散し、気になる二の腕も覆い、見た目も仕事仕様で、エレガントである。機能的優雅(プラクティカル・エレガンス)のお手本のようなデザインだと思う。

名古屋にて世界コスプレサミットの視察。今や外務省も支援するイベントである。午後のパレードは、仁王門通⇒東仁王門通⇒新天地通⇒大須観音通の一時間強。

37度ぐらいありそうな猛暑の昼下がり、コスプレイヤー+プレス+カメラ小僧+観客+ただのやじうまなどが入り混じって、大混雑のサウナ状態である。

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アーケードの中は明らかに酸素不足で、息苦しくなるほどだったが、厚着のコスプレイヤーはハイテンションでカメラのためにポーズをとるなど大サービス。

途中に給水スポットまであったが、水分補給しているのは観客ばかりである。たぶん、観ているよりコスプレイヤーになって歩いているほうがぜったい楽しい。

国籍不明のコスプレイヤーやプレスも多数。英語でもないフランス語でもないロシア語でもない、何語だろう!?という言語が多数とびかっている。

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かろうじて言葉が通じた何人かのコスプレイヤーに聞いてみたところ、衣装は自分で作っている、ということだった。

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なんのコスプレなのかほとんどわからないのもまじっていたが、Photo_8

凝る人はコンタクトレンズで瞳まで赤く変えたりして、とことんやっている。

異様な熱気のなか、「コスプレで世界平和」な空間が一瞬あやしく現出していた・・・・・・。

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ロンドンのセントラル・セント・マーチンズといえば、ファッション界のトップで活躍する高レベルのデザイナーを数多く輩出してきた名門デザインスクールである。ジョン・ガリアーノ、故アレクサンダー・マックイーン、ステラ・マッカートニー、クレメンツ・リベイロもここの卒業生。 その名門校の2010年の卒業コレクションでは、アジアのデザイナーの活躍が顕著だったという。英「テレグラフ」9日付けの記事。「インデペンデント」も同様の報道。 アジア、すなわち韓国、中国である。10年前は、モード界で「オリエンタル」といえば日本であった。現在では韓国、中国がメインで、日本ではないのである。 韓国のRok Hwangは、セリーヌに入社することが決まり、同じく韓国のJung Sun Leeのコレクションは、ハロッズが購入。このふたりはMAコース。 BAのショウでは、中国のYi Fangがロレアル・プロフェッショナル賞を受賞。 アメリカではすでに、アレクサンダー・ワン、ジェイソン・ウー、フィリップ・リム、デレク・ラムなど、アジアのバックグラウンドをもつデザイナーがめざましい活躍で、21世紀のモードを牽引している。 日本のファッションは発信のしかたが違うから、と言われれば、まあそれまでなのだが、10年前と比べるとたしかに日本のデザイナーが話題にのぼることが少なくなっている感も否めず、やや、さびしい気もする。

◇英「テレグラフ」19日付で、ここ50年間での「アイコン的」なドレス、ベスト10の発表。

1.スパイス・ガールズのひとり、ジンジャー・スパイス(Geri Halliwell)が着た、ユニオンジャックのミニドレス(これはデザイナーものではなく、ミニドレスにティータオルを縫いつけただけのものだった)。

2.エリザベス・ハーレーが「フォー・ウェディング」のプレミア(1994年)で着た、ヴェルサーチェの安全ピンドレス(これで一躍ハーレーは時の人に)。

3.マリリン・モンローが「七年目の浮気」で着た、白いドレス(地下鉄の通風孔の上でふわっ)。

4.オードリー・ヘプバーンが「ティファニーで朝食を」で着た、ブラックドレス(何度もコスプレの対象に)。

5.レディ・ガガが「ブリットアワード」で着た、白い衣装。

6.ダイアナ妃のウェディングドレス。デザイナーはエマニュエル夫妻。

7.カイリー・ミノーグが2000年の「スピニング・アラウンド」のビデオで着た、ゴールドのホットパンツ。

8.ジェニファー・ロペスがグラミー賞授賞式で着た、グリーンのヴェルサーチェのドレス。

9.ビヨークが2001年のアカデミー賞授賞式で着た、白鳥ドレス。デザイナーは、Marjan Pejoski(ビヨークが「卵」を産んでました)。

10.シンディ・クロフォードがアカデミー賞授賞式で着た、赤いヴェルサーチェのドレス。

着る人のキャラクターとばっちり合って、人とドレスが互いに引き立て合っているようなとき、歴史に残るドレスが生まれ、それを着る人も、後世まで語り継がれるアイコンとなってきたことが、よくわかる。

◇英「インデペンデント」19日付、シセイドウが「ディジタル・コスメティック・ミラー」という、ヴァーチャルに製品を試すことができるものを世に出したという話を知る。

記事は、シセイドウに続き、ティソー(時計ブランド)がセルフリッジズと組んで、ヴァーチャルに製品を試すことができるシステムを導入、という話がメインなのだが。

英シセイドウの試みは、日本ではおこなわれているのだろうか? 

英各新聞のメンズスタイル欄に最近頻繁に登場しているのが、ニック・クレッグ。野党第二党のLib Dem(自由民主党)の党首で、童顔の43歳である。先だってのテレビ公開討論会では、現首相で労働党党首のゴードン・ブラウン、野党第一党の保守党党首デイヴィッド・キャメロンをおさえて、高ポイントを獲得していた。

ネクタイが象徴する3人のテーマカラーがわかりやすい。ブラウンは赤よりのパープル、キャメロンはブルー、そしてクレッグは金色である。

英「フィナンシャルタイムズ」17日付のヴァネッサ・フリードマンの記事によれば、金色のタイは、マークス&スペンサーのものであるようだ。ライラックやパープルのタイの政治家が多い中、金色はとにかく目立つし、暗い時代に輝かしさを与えてくれる。(日本の現首相も、いっとき金色のタイで話題になったことを思い出す・・・・・・)

クレッグのスーツスタイルも、政治的な立場のメタファーになっている、という指摘。ブラウンの「武装としてのスーツ」スタイルと、キャメロンの「サヴィルロウなんだけど袖をまくりあげたりワークブーツを合わせたりもする」いまどきリッチスタイルの、どちらにもころばない中庸のスタイルだと。クレッグのスーツはトラディショナルで、目立たない、既成服が多い(白かブルーのシャツ、ダークスーツでピンストライプなどはなし、イエーガーやポールスミス風のクラッシックスタイル)。このスタイルが、まさにクレッグの立場を象徴している、と。

指摘されてみると、たしかに、スタイルが「人」を表わしているなあ、と見えてくる。そういうふうな見方(言葉)を提示できるジャーナリストがいて、そういう言葉を掲載できるメディアがある、というのは、ちょっとうらやましいな、と思う。

サヴィル・ロウにお仕立てスーツを作りにくるミュージシャンの話、英「フィナンシャルタイムズ」1月30日付け。いつか役立ちそうな話だったので、備忘録まで。

始まりは1960年代から70年代初期。サヴィル・ロウのテイラー、エドワード・セクストンがビジネスパートナーのトミー・ナッターとともに、ミック・ジャガーはじめ当時のロッカーたちのスーツを作り始めたこと。他のテイラーたちは、幅広のラペルや変わったタイを見てとても不愉快だったらしい。「ミックはトラウザーズを極端に細くし、ハイウエストにするのを好んだ」そう。

セクストンとナッターは、ビートルズの「アビーロード」のアルバムジャケット用のスーツも作る。セクストンはまた、ポールの娘、ステラ・マカートニーの師ともなる。現在のセクストンの顧客のなかには、ピート・ドハティやデイヴィッド・グレイも。ちなみにスーツの価格は3000ポンドより。

90年代にはアルマーニやヒューゴ・ボスの既成服スーツに走っていたスターも、現在はサヴィル・ロウに来ているらしい。ラップのブリンブリン(金ぴか誇示)に対する反動もある、と。

また、テイラーのリチャード・アンダーソンは、顧客にジョージ・マイケルやブライアン・フェリーがいるが、歌手には特殊なアレンジをするという。演奏した時にちょうどよい長さに見えるよう、腕を長めにつくるとか、汗を吸収するために脇下に小さなパッドをつけるとか。

ロールスロイス、カントリーでの邸宅と並んで、サヴィル・ロウのスーツがロッカーにとってのサクセスの象徴になっているというシメ。

ロックってそういうコンサバな価値への抵抗からスタートしたんじゃなかったのか?と読後ふと疑問がよぎったのであったが。

2009年イギリスの「ベストモデル」に、ミック・ジャガーの娘、ジョージア・ジャガー(17)が選ばれた、というニュース。

http://www.independent.co.uk/life-style/fashion/news/strolling-stone-micks-daughter-named-britains-best-model-1837386.html

「インディペンデント」のコメント欄には、「彼女の顔が<魅力とはほど遠い>ように見える自分は頭がおかしいのか?」というような投稿がのっていた。

やや出っ歯ぎみ(しかも歯の間隔がはなれている)の口元、目じりさがりぎみの目は、パパのミックゆずりかな。ミックだってけっしてハンサムではなかったかもしれないが、そんな基準をけちらす濃厚なカリスマで目をひきつけた。ジョージアも、美人の基準にすんなりおさまる美人ではないからこそ、なにか目を離せないようなこってりしたものを発している(ように見える)。少なくとも、ジョージアの「代わり」はいない。

イギリス発のモデルは、そもそも、わかりやすい美醜の基準をゆさぶってきたからこそ別格なのである。ツイギー。ケイト・モス。アギネス・ディーン。

ジョージアが今後どう化けるか、あるいは消えていくのか。

ベスト・ラベルとしてはバーバリー。納得の受賞である。クリエイティブ・ディレクターのクリストファー・ベイリーは、今年、ほかにもファッション関連の賞をいくつかとっている。

「アウトスタンディング・アチーブメント(傑出した業績)」を評価されたデザイナーは、ジョン・ガリアーノ。ずっとエネルギッシュに先頭を走り続けているガリアーノには、いつも驚かされっぱなし。枯れない才能に感嘆する。

京都国立近代美術館で「ラグジュアリー<ファッションの欲望>」展を観る。

世界一のコレクションをもつKCI(京都服飾文化研究財団)が、王道を行く展示を、それこそ贅沢に見せてくれました。ラグジュアリーに関する連載をもつ身としては、いったい「ラグジュアリー」の表現を考えるにはどういう視点があるのか?ということをサブテーマとして抱きながら観ていたのですが。

セクションは4つに分かれます。「1.着飾ることは自分の力を示すこと–Ostentation」「2.そぎ落とすことは飾ること–Less is more」「3.冒険する精神 –Clothes are free-spirited」「4.ひとつだけの服–Uniqueness」で、トータル80余点。

どのセクションもコンセプトが明確に際立っていて、これまでのKCIの展示で見たことがある服があったとしても、新しい視点から見直すことができました。とりわけ圧巻だったのが、「冒険する精神」のセクション。コム・デ・ギャルソンの服が、「もとはこんなにシュールな形だったのだ!」ということを力強く写した畠山直哉の写真と対峙する形で展示されています。世界を驚かせた日本のデザイナーによる、不思議なのに構築的な美しさをたたえる作品が、ずらりと並ぶさまには静かな感動をおぼえました。

「ひとつだけの服」セクションのマルタン・マルジェラの作品も、楽しい驚きの連続。王冠でつくった服、クリスマスツリーに飾るモールでつくった「コート」、貝がらみたいなアクセサリーパーツでできた「ジャケット」、3つの異なるウェディングドレスをつぎはぎしたウェディングドレスなどなど、笑いもとりつつうならせる超個性的な一点ものばかりです。

個人的に欲望を刺激されたのは、1920年代のフランスの靴会社がもっていたというヒールのサンプルコレクション。ラインストーンによるデコレーションが、ヒールにぎっしり。これ、今つくると流行ると思うんだけどなあ(ちなみに、いま、「アビステ」さんにデコ指示棒をリクエスト中です)。

ソニーのプレステ3によって作品の細部まで高画質で見ることができる、という新技術にも驚きました。生地の縫い目までリアルに拡大して見ることができる!すごすぎ。これも現実化してほしいものです、ぜひぜひ。

KCIのアシスタントキュレーター、石関亮さんについていただき、詳しい解説や学芸員ならではの苦労話を聞きながら観るというとても贅沢な鑑賞をさせていただきました(ありがとうございました!)。「なぜ、世界不況のこの時期にラグジュアリー展なのですか?」とあえて聞いてみたら、「世界のムードが暗いからこそ、美しく贅沢なものを見てよい気分にひたっていただきたいのです」とのことでした。たしかに、とても豊かな気持ちにさせてくれる展示です。東京展は10月から。こちらには別のサプライズがあるのかどうか、今からとても楽しみ。

せっかくの京都なのだから、ということで先斗町の「卯月」さんで食事。雨だったので川床はできませんでしたが、京都情緒はたっぷり堪能いたしました。

ミシェル・オバマとカーラ・ブルーニ・サルコジのファーストレディファッション対決ばかりが華々しく報じられたG20サミットおよびオバマ夫妻のフランスのストラスブール訪問だが(いや、すいません、いちばん重要な議題は経済問題であることは重々承知してます、はい)、男性首脳の装いについても、ちらほらと興味深い報道が見受けられた。

英ファイナンシャルタイムズによれば、ロンドンG20の記念品として各国の参加者に贈られたのが、ティモシー・エヴェレスト(首相ゴードン・ブラウンや保守党党首デイヴィッド・キャメロンのスーツを作っているテイラー)のタイであるという。

オバマ大統領、ブラウン英首相、サルコジ仏首相、というまったく異なるセンスの持ち主たちが同じようなダークブルーのタイをつけていたのが気になったが、ひょっとしてあれがそうだったのか? (そこまでは報じられていなかった)

ティモシー・エヴェレストのコメントも紹介されているが、そのなかになんと、日本男性のファッションセンスに対する称賛があった! あらゆる国の中で、日本の代表団のスーツスタイルがもっとも決まっていると。

「日本人は、肩、胸元、首のVゾーンの美しい見せ方を心得ている。彼らはノット(タイの結び目)に大きな注意を払っており、頭と顔が大きければ肩幅を狭くしたりラペルを強調したりしちゃいけない、ということを理解している。彼らが好むもう一つのスタイルは、上着のラペルのノッチ(V字の切れこみ)をより高い位置にもってくること」

ついでに、エヴェレストは、日本男性のタイレススタイルも褒めている。日本人はカジュアルスタイルのセンスがある、2005年のクールビズキャンペーンが成功したおかげ、と。

公式写真を見る限り、という条件付きなので、動いたとき、なども考慮に入れるとまた違う見方も出てくるのかもしれないが、いやともかく、あのティモシー・エヴェレストから日本男性の公式ファッションのセンスが讃えられたのである。スーツの着こなしでは定評のある麻生総理効果? ともあれ、日本を代表して参加した方々、あっぱれ!でした。WBCだけじゃない。ファッションでも世界一ですよ(笑)。