どの世界でも同じだと思いますが、中ではきわめて大きな違いがあるのに、外から見ている人にとっては、同じようなことに携わっているようにしか見えないことがあります。
その昔、叶恭子さんは、あるセクシータレントと比較されてひとこと、「カテゴリーが、ちがいます」とさらりと一蹴したことがありましたが、ときどき私も、そのように言いたくなることがあります。笑
ファッションを研究する、ないし論じる と一口に言っても、実に多様なアプローチがあります。
・ビジネス、産業という観点から研究する(そのなかにも経営・製造・流通・マーケティング・ブランディング・広告・宣伝など細かな分類がある)
・スタイリングという観点から具体的着こなしのルールや方法を論じる
・クリエーション、制作という観点から論じる
・「ファッション・メディア」としてトレンドを創り出す
・ジャーナリスティックにトレンドを調査し、分析し、伝える(モードとストリート、メンズとレディス、都市と地方、日本と海外においてはその方法も伝え方も異なってくる。また、ジュエリー、時計、靴、ヘア&メイク、美容など、ファッション業界とはまた違う独自の業界を築いているジャンルもあり、その扱い方もさまざま)
・アカデミックに考察する(その方法においても、美学的アプローチ、哲学的アプローチ、社会心理学的アプローチ、政治・経済学的アプローチ、文化史的アプローチ、ジェンダー学的アプローチ、倫理学的アプローチなど実に多様)
ほかにもいくつかカテゴリーを設けることができるかと思います。また、厳格に棲み分けがなされているわけではなく、いくつかの領域を横断したりすることも多々あります。私はそのすべてに対し、敬意を表してきたつもりです(たとえ理解が及ばないとしても)。
しかるに、現場(という表現が最適かどうかはわかりませんが)の方はアカデミックな言説に対し「机上の空論」呼ばわりすることが多々あり(私自身が実際に何度か投げつけられました)、文献に基づく議論を主とするアカデミズムの方は、ファッションの現場のありかたを軽視する、ないし関与しない態度を(とくに悪意はなく)貫く傾向が少なからずあります(大昔の話ではありますが、私自身が論文審査でそんな言葉を投げつけられました)。
学生には、できるだけ多くの視点からものごとを見てほしいと願っているので、毎年、異なるカテゴリーから、その人らしい活躍のしかたで社会に貢献している方をゲスト講師としてお招きしています。これまでご来校くださったゲストの方には感謝してもしきれません。それぞれの領域で活躍する方には、惜しみなく敬意を払っていますし、仲良くおつきあいもします。
ただ、異なるカテゴリーの仕事を比較してどうこう言われても……やはり「カテゴリーが違います」とお伝えせずにはいられないこともあります。
全方向に気を配るあまり、やや歯切れの悪い表現ですが、たまのつぶやきということでご寛恕。
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