“Westwood: Punk, Icon, Activist” 試写。五反田イマジカにて。
ローナ・タッカー監督によるヴィヴィアン・ウエストウッド最新ドキュメンタリー。2018年サンダンス映画祭正式出品です。UK、USではすでに公開。配給はKADOKAWA。
ヴィヴィアン・ウエストウッドのドキュメンタリーは過去にも2本ほど撮られ、DVDにもなっています。私も大学教師時代にヴィヴィアンをテーマにした授業では必ず使い、自分でも何度も見ています。今回の映画はそれらをはるかに凌駕する濃密で豊饒なものでした。
今年77歳を迎えたヴィヴィアンの仕事とプライベート、活動家としての現在の顔まで、全方向から赤裸々に迫っています。現在の夫アンドレアス・クロエンターラー、ふたりの息子が語るヴィヴィアンも、これまでのヴィヴィアン像をくつがえすものでした。こんなことを公表していいのか……とこちらが戸惑うほどの社内のいさかいや、準備もまともにできてない「海外バイヤー向けプレゼンテーション」の模様、経済状態や人事のことまで収められています。観ているほうの居心地が悪くなるほど。でもこれが「ありのまま」。ありのままの真実だからこそ多くの思わぬ発見がありました。
マルカム・マクラーレンがヴィヴィアンの成功をねたみ、足を引っ張り続けていたこと。経済状態が一時破綻していたこと。無一文からの挑戦だったこと。批評家がこきおろし、テレビの聴衆があざ笑い、それでもエレガントに笑い流して作り続けてきたこと。あらゆる困難から逃げず、パンクに挑発し続けてきた彼女の姿を見ているだけで途中から涙で見られない状態。(評論する立場としてダメな例。笑)
(こちらの写真は昨年のロンドンコレクションメンズに出席したとき、フロントロウから撮影したもの)
ラストにはこれまでのショウのクライマックスがたたみかけるように。私が昨年ロンドンで目前で見たヴィヴィアンの姿もあった(私もちらっと映っていたようだ。笑)。コレクションでは一度たりとも同じ服を着ておらず、一度たりとも同じイメージがなく、いつだって過激で、観客を落ち着かない気持ちにさせる。ただただ圧倒的な情熱とパワーで高揚させ、これが本気で生きている本物のヒューマンだと共感させる。音楽の使い方がまたうまく、いまどきの音楽と、普遍的に美しいクラシックを巧みに使い分けています。クラッシックが流れる時にはだいたい泣ける話になっています。
現在はクリエーションはおもにアンドレアスが担い、彼女は人類の未来を守るためのアクティビストとして過激に活動している。既成の人生ルートのどこかに収まるはずもない。やり方だって自分で考える。どこまでもDO IT YOURSELFな人なのだ。「ファッション」への関心云々に関わらず、ヴィヴィアン・ウエストウッドという人の存在そのもの、生き方そのものに魅了される。私がファッション史に情熱を持ち続けられるのもまさにこんな人との出会いがあるからにほかならない。
オフィシャルトレイラーです。
返信を残す
Want to join the discussion?Feel free to contribute!