7日(土)夜に新宿伊勢丹でおこなわれた、ISETAN MITSUKOSHI X MEN’S EX の「10テイラー&10マイスター」のパーティー。

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その道を極めた日本のマエストロたちと直に会話できた、有意義なひと時でした。アトリエ・イプシロンの船橋幸彦さん。日本人初のパンタロナイオ(ズボン専門の職人)尾作隼人さん。ミラノスタイル伝道者、ペコラ・ギンザの佐藤英明さん。精緻さにおいてロンドンの靴を凌駕する靴をつくる福田洋平さん。そしてサヴィル・ロウの老舗ヘンリー・プールで花形カッターをつとめる鈴木一郎さん。一人一人の詳しいお話と写真(ピンボケですが)は、フェイスブックにアップしております。

ここでは、私の専門に近いゆえ、もっともインパクトの大きなお話を聞かせてくださった鈴木一郎さんのお話から一部紹介。

ウエスト高め、裾長めの英国スタイルのスーツは、優雅でセクシーだが、ボディにかなりフィットさせて作られる。これを職人用語で「スプレイド・オン(sprayed on)」という。スプレイをかけて、そのままボディを固めたイメージ?

衝撃だったのは、サヴィルロウでも、中国にもっていって縫製し、英国で仕上げて、それを「メイド・イン・イングランド」とうたっているということ。ここ数年の状況。そのほうがはるかにコストがかからず、しかも、アジア人のほうが縫製は上手だったりするのだそう。

ヘンリー・プールの日本での受注会のときなどには、鈴木さんはあえて表に出ない。英国人がお客様に対応する。そのほうが日本人は喜ぶのだ、ということを鈴木さんは知っているのですね。

「英国の伝統」。そんなファンタジーに、日本人はお金を払います。批判や皮肉ではなく、装いにおいては、なんらかのファンタジーというのは不可欠なのですね。

ファッション誌というのも、わたしは半ば「フィクション」ととらえているところがあります。この服が着たくなるような、このアクセを身につけたくなるような、ファンタジーを提供するフィクション。アティテュードを定めるようなマインドの方向付けをするストーリー。全部が全部そうだとはいいませんが、とりわけ、ハウツーではなく(私は着こなしのハウツーなど知りません)、「巻頭言」を書かなくてはいけないときには、読者の心にロマンを呼び起こすようなお話を考えています。

話が飛びました。「伝統」なるものもまた、そのようなファンタジーの一つになりうるのです。

ということで、日本が世界に誇る職人さんたち。熱い情熱をもって、不断の努力を続け、現在の地位を獲得してきた方々です。すべての方のお話に共通していたことは、日本人は手先が器用で、勤勉で、感性にもすぐれ根気があるために、モノづくりにおいては世界のトップクラスだということ。そのことに自信をもち、堂々と世界と闘っていくべきということ。

ひとりひとりが、謙虚ながら、確かな自信にあふれ、それが本物のオーラとなって輝いている素敵な方々ばかりでした。

日本には世界に誇れるすばらしい職人たちがこんなにもいる、ということをぜひ皆様にも知っていただきたい。

記念写真より。左から、1年4か月待ちの靴マイスター、福田洋平さん。ブランメル倶楽部のテイラード麗人、山内美恵子さん。中野。サヴィルロウ老舗ヘンリー・プールの花形カッター、鈴木一郎さん。そして日本でもっとも名の知られたミラノスタイルのサルトの一人、佐藤英明さん。

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彼らの座り方、そこはかとなく日本男児っぽくて、それがまたいいと思いません? ^_^;

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