ネクタイを巻きましょう、なんて言ってるその舌の根も乾かぬうちに(^_^;)、ネクタイ巻かなくてもエレガントなスタイルについてのお話です。
「フォレスティエール(forestier:森の番人)」と呼ばれるジャケットがあります。スタンドカラ−にゆったりとしたシルエット、肘パッチがついているのが特徴。
このジャケットを考案したことで有名なメゾンが、フランスの「アルニス(Arnys)」。エルメスがセーヌ川の右岸の保守的なエレガンスの象徴であれば、アルニスは、左岸の、やや進取の気風に富んだインテリのエレガンスの象徴のように見られています。
1933年、ロシアからの移民でテーラーのジャンケル・グランベールがメゾンを創設。芸術家たちが暮らすモンパルナスにも近いことが幸いして、パブロ・ピカソ、ジャン・コクトー、アンドレ・ジイド、ジャンポール・サルトルといった文化人らが集うサロンともなりました。
で、「ラ・フォレスティエール」です。1947年、当時、ソルボンヌ大学で教鞭をとっていた建築家ル・コルビジェが、「黒板に書く際に腕を上げやすく、ネクタイ不要でエレガントに見えるジャケットを」とアルニスに注文。それを受けて誕生したスタンドカラージャケットが、ほかならぬこのジャケットというわけですね。以後、これはとくに自由業のインテリ(詩人とか芸術家とか建築家とか)に愛され、人気の定番アイテムとなります。
もちろん、タイド・スタイルにおいてもフレンチ・シックが漂います。ですがやはり写真を眺めていると、スタンドカラーのジャケットの襟まわりのセンスのよさが印象に残るかな。この写真は、2011-12Autumne Hiverのアルニスのカタログから。最初に見たときには、これがフォレスティエールかと勘違いしてしまいましたが(^_^;)。胸ポケットにフラップ(雨蓋)がついている点、裾がラウンドカットされている点、において違うモデルなんだそうです。ややこしいですが、そのややこしさにつきあうのがまた(服好きな方にとっては)楽しいところでもありますね。
極道系着道楽、島地勝彦さんも、「フォレスティエール」をお持ちでした。ジャケットに合わせてパンツをアルニスで仕立てようとしたところ「お前の馬は、何色だ?」と真顔で聞かれたそうです。馬の毛色に合わせて乗馬パンツを仕立てるというのは、ごく基本のたしなみなんでしょうか。なんかもう、文化が違うというか。
そんなアルニスが、日本で本格的にビジネスを展開するにあたり(正確には、再上陸ですが)、3月1日、お披露目のパーティーを開催。お招きいただき、ちょこっとお伺いしました。
下の写真は現在の社長、ジャン・グランベール氏と、日本人の奥様。ジャンさんは、名刺交換をしたとき、パンスネ(つるなしメガネ)を取り出してかけてらっしゃいました。クラシックなパンスネを実際にかけた方を間近にみたことはなかったので、感激。
会場は、スリーピースで盛装した紳士がずらりで、生花のブトニエール、懐中時計のチェーンなんかも、「ごくふつう」な感じであふれていたのが印象的でございました……。写真左は、会場で遭遇した横浜信濃屋の取締役仕入担当、白井俊夫氏。さすがの堂々たるオーラですね。
日本のメンズエレガンスの生きた見本をたっぷりと目にすることができた、貴重な機会に感謝します。アルニスのご発展を祈りつつ。HPはこちら↓
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