久々に2度、部分的に3度読みしてしまった本。内田樹&岡田斗司夫の『評価と贈与の経済学』。日本の現状と将来を、鋭くてユニークなキーワード満載で、ポジティブに楽しく論じ合うといった感のある対談集。以下、とくに面白いなと思った論点、個人的なメモ程度ですが。
・表紙がイワシ。というのも今の日本の社会は「イワシ化」しているから…って。笑。小さい魚が普段は巨大な群れになって泳いでいる。リーダーはいない。突発的に何かが起きたらバラバラになる。
・「自分の気持ち至上主義」。自分のなかの気持ちの盛り上がりが絶対で、それがなくなったら「もういいんです」とやめてしまう。仕事に対しても、恋愛に対してもそうで、相手に対して責任を持たない。「心が折れる」というのも、閾値を超えて壊れるのではなく、閾値が下がってもたなくなる。
・草食化するワケは、欲望を逆手にとって利用されるのが怖いから。誰かにいいように利用されるくらいなら、欲望を持たないほうがいい、というスタンス。
・SNS、ブログ、ネットによる「完全記録時代」。失敗は生涯指摘される恐ろしい時代が今。
・キャッシュ・オン・デリバリーは、信用が成り立たない関係の取引。信託能力に自信があれば、「いまもらえなくても、いつか」が成り立つ。「次はない」と思っている人間だけが、同時交換・等価交換をうるさく求める。自分が差し出したものが先方の要求以上であれば、「おお、次回もぜひ」と必ずなる。
・「成果主義」をペラペラ言葉にしているヤツは、成果の力や奥行きや影響を信じてない。人間の営みは、「棺を蓋いて事定まる」もの。
・いいことしてると、自尊感情がわき、それだけで生命力が向上する。これも報酬。
・「一家を構える」システム。「次郎長三国志」みたいな。親分には定職がないけど、取り巻きがあれこれ工夫して暮らせる。上納金でなんとかやってける。英国王室のシステムもまさにこれ。笑!相手は大家にすぎないから、平気で悪口が言える。
・才能のある人は、天からそれを贈与されている=負債を負っている、のだから、次の世代へパスする義務がある。社会に還元、贈与する義務がある。
・拡張型家族というあり方。ジョン・ウォーターズ組、ドリームランダーズがその例。深刻なトラウマを抱えた人たちと共同作業で映画を作る。しかもお気楽な娯楽映画を。家業は映画製作。小津組も。
・自己実現が優先するなんて、狂ってる。最優先すべきは「集団が生き延びること」。単独で「誰にも迷惑をかけない、かけられない」生き方を貫くより、集団的に生きて「迷惑をかけたり、かけられたり」するほうが生き延びる確率が高い。自己決定・自己実現のイデオロギーはもう通用しない。
・「おはよう」「おやすみ」「いただきます」「ごちそうさま」「いってきます」「いってらっしゃい」「ただいま」「おかえり」「の八語を家族全員が適切なタイミングで口にできれば、家族制度は十分もつ。
・「先生」とは「機能」。コンテンツを提供しなくていい。最終的な回答を与えなくていい。教師の仕事はどうやって学びを起動させるトリガーを見つけるかだけ。
・先生がすばらしい先生であることを世間に立証する唯一の方法は、弟子が才能を発揮し、市民的成熟を遂げたことを満天下に知らしめること。
…前半メモ以上。後半また後日。
内田先生による、現在の日本の学校教育についての見方も鋭い。↓
http://blog.tatsuru.com/2013/04/07_1045.php