昨日、あるプロジェクトの打ち合わせの後に連れて行ってもらった、とっておき感のあるバー。渋谷の猥雑すぎる喧騒の中に、「え?」とびっくりするような静かなたたずまいの店が。


昭和初期の古い民家を改造した、レトロモダンな「Bar すがはら」。天井には、どっしりとした梁が見える。

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靴を脱いでスリッパに履きかえて、厚い一枚板で作られたバーカウンターに座るのだけれど、照明といい、雰囲気といい、あらゆる要素がなんとも落ち着くのですね。お酒の種類も多い。

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ぎくりとしたのは、芋虫がまるごと入ったお酒の瓶。酒好きの間では常識なんだそうですが、私は初見。メスカルという、まあ、テキーラもこれの一種、というお酒らしいのですが、生の芋虫を入れることで、アルコール度数が正しく高い、という証明になったとのこと。(ある程度高いと、芋虫がそのまま保存される) 

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ボトルの最後の酒を注いで、芋虫がでてきて、それを飲み干したら幸運が訪れるのだとか。メキシコではイモムシを粉状にひいた食品もあるそうなので、まあ、別になんということはないらしいのですが・・・。それにこんな程度でぎょっとしていたら、マムシ酒とか、さそり酒なんてどうなる。でもやっぱり、芋虫さんとひきかえの幸運は、ちょっと遠慮したいかな^_^; 私はおとなしく、イチゴのカクテルにしとく。でもイチゴの形状っていうも、改めてみると不気味だな。最初に食べた人は勇気が要ったかも。イチゴも芋虫も神の創造物という意味では平等のはずなんだけど。

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芋虫メスカルのようなキャパ超えのモノや、民家改造バーのような新しいイマジネーションに出会うたび、およそ人間の想像力とタフネスに限界はないことを思い知らされる……。

大量の仕事と連日の社交で少し疲れが出たのか、昨日は熱まで出た。悲喜こもごも、いろんなことが盛りだくさんに起きた一週間だった。コントロールできないことが暴走している現実もある。どんなにそのことを考えても現実が変わるわけではない。コントロールできるのは自分自身のみ。そんなときは、ひたすらブッダとか千手観音(になった自分)をイメージする(笑)。すべて受けとめ、対処できることには善処し、くだらなすぎることは、微笑んで流していく努力をする。しかるべき時がくれば、すべて、納まるべきところへ納まるだろう。心の痛みも、少しずつ、癒えていくだろう。そんなふうに考えながら安らかに過ごすには、まだまだ強い意志の力が要る。闘いの本当の相手は、外界の「敵」ではなく、自分自身だと思う。

PTA総会も無事終了し、次年度の役員へバトンタッチした。フルタイム率が高かったメンバーだったが、だからこそ、「慣例」をばっさばっさと省略して、風通しのいい効率的な運営ができた。ひとりひとりが、忙しい中でも「自分ができること」に貢献、というポジティブな姿勢だったので、横並びの協力体制がスムーズにできあがった。生活のペースや性格に応じた役割分担が、ごく自然に定まっていった感じ。いざ前向きで明るい気持ちでやってみれば、一年前の心配はすべて杞憂だった。もちろん、想定外のトラブルは起きるし、それなりのエネルギーを使ったのでたいへんはたいへんであったけれど、仕事やただの社交では得られない、貴重な、得難い経験ができた。こういうメンバーとともに奉仕することができたことを誇りに思うし、心からの感謝でいっぱい。総会を終えて帰るとき、ともに役員をつとめた友人が「かぐや姫が月に帰っていくみたい」とつぶやいた(笑)。かぐや姫はさすがにないけど(-_-;)、一年間「アウェイ」でがんばった感はあるかな。アウェイに身を置いてみてこそ、見慣れたはずの景色も違って見えてくるし、自分自身も強くなっていける。とりあえずしばらくは、PTAに時間をとられて滞っていた「ホーム」の仕事に全力を尽くさなければ。

そんなこんなの各種イベントがてんこ盛りだった今週、いちばん寛いで楽しかったのは、イギリス関係者数人と久々に「ル・パラン」を訪れた時。

ターンブルアッサーのフラワーホールドは、数回来てなじみになったらようやく教えてもらえる、とか、

ビスポークと吊しの両方着こなせてこそホンモノ、だからチャールズ皇太子のターンブルアッサーの吊しは正しいとか、いやそうではない実はあれには裏があってほんとうのところは、とか、

Vulcanize Londonの"z"、あれは正しくは"s"なんだけど、モンティパイソンみたいな意味があってあえて"z"になってる、でも別にそれは一般に知られなくてもよくてわかる人がわかってニヤッとできるのがいい、とか、

ここ(ル・パラン)のインテリアは完璧だけど、これで床がミシミシと言ったらもっといい、とか、トイレも昔のロイヤル・ドルトンの絵が描いてあるやつを探してこなきゃ、とか、

延々とマニアックな議論で12時まで過ごしたシンデレラタイム。

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通常のマティーニより強いボンド・マティーニを2~3杯飲んで平気という酒豪ばかりだったが、さすがにマスターは私には配慮してくれて、小さなバカラグラスに作ってくれた。勝手ながらこれをボンドガール・マティーニと命名させていただきます。

かぐや姫やらシンデレラやらボンドガールやら、なんか今日は厚かましいわね(-_-;) ま、せめて脳内だけでもヒロインになりきらないと厳しい現実はなかなか乗りこえられない、ってことで、ご寛恕ね(T_T)。

 

昨日は、日本モデリスト協会総会にて、講演させていただきました。新宿の文化学園にて。お題は「そうだったの?この服、このことばのルーツ!」 

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モデリストとは、アパレル業界以外では聞きなれないことばですが、講演後の懇親会でこのような説明を聞かせていただきました。「パタンナー(型紙を作る人)+夢+コミュニケーション」。

実際に企画者の意図をくみ上げて服を作り上げていくうえで
重要な部分を担っているプロフェッショナルな技術者です。

モデリストに関する詳しい説明はコチラ↓
http://www.ifashion.co.jp/jnma/modelist/background.html

懇親会ではたくさんのよいご縁に恵まれました。

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モデリスト協会のみなさま、ありがとうございました。またお会いしましょう!

http://www.ifashion.co.jp/jnma/notification/130420.html

木曜夜、マルキシさんの主催で、ブリティッシュ・プレミアム・ブランド・ナイト。
網町三井倶楽部はパープルの照明でライトアップされ、幻想的な雰囲気。

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たくさんのイギリスブランドの逸品を間近に目にできる豪華な夜でした。服地ブランド、ハリソンズ・オブ・エジンバラが創業150周年を迎えた記念レセプションでしたが、

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あわせて次のようなブランドがブースを出していました。ダイヤモンドウォッチメーカーのバックス&ストラウス、香水のペンハリガン、

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そして傘のフォックス、テイラーのヘンリー・プール…。

会場は盛装のゲストで大盛況でした。ライトアップされた広大な庭園にはアストンマーティンが三台。レアな一台は、岐阜のオーナーからわざわざこの日のために借り受けてきたものだとか。

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写真は主催マルキシの三代目社長の岸秀明さん。お招きありがとうございました!

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☆昨日は「サライ」記事のための取材で、錦糸町の「松徳硝子」へ。繊細な「うすはり」はじめ、手作りのガラス製品の数々を見ながら、これをさらに現代にプロデュースしていくためのさまざまな切り口をうかがう。

「バカラ」にはバカラのやり方がある。メイドインジャパンであるからこその闘い方を考えさせられました。

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工場も見学させていただく。45人の社員の方々が、それぞれの持ち場でダイナミックに仕事。1000度を超えるという火の熱気に、失敗作のガラスが割られる音…。けっこうドキドキ緊張します。

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かつて日本の観光地にはほとんど「ガラス館」があった、という話に笑う。言われてみれば、なんだか温泉地でガラスの工作つくった記憶が……笑。

取材終了後、錦糸町のロッテホテルの地下のブリティッシュパブ、HUBでスタイリストの堀さんと小休止&打ち合わせ。その後まだ仕事の予定があったため、アルコールフリーのドリンクで我慢せざるをえなかったけど、モヒート風のミントスカッシュは、疲れを一掃してくれる新鮮なおいしさでした。

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久々に2度、部分的に3度読みしてしまった本。内田樹&岡田斗司夫の『評価と贈与の経済学』。日本の現状と将来を、鋭くてユニークなキーワード満載で、ポジティブに楽しく論じ合うといった感のある対談集。以下、とくに面白いなと思った論点、個人的なメモ程度ですが。

・表紙がイワシ。というのも今の日本の社会は「イワシ化」しているから…って。笑。小さい魚が普段は巨大な群れになって泳いでいる。リーダーはいない。突発的に何かが起きたらバラバラになる。

・「自分の気持ち至上主義」。自分のなかの気持ちの盛り上がりが絶対で、それがなくなったら「もういいんです」とやめてしまう。仕事に対しても、恋愛に対してもそうで、相手に対して責任を持たない。「心が折れる」というのも、閾値を超えて壊れるのではなく、閾値が下がってもたなくなる。

・草食化するワケは、欲望を逆手にとって利用されるのが怖いから。誰かにいいように利用されるくらいなら、欲望を持たないほうがいい、というスタンス。

・SNS、ブログ、ネットによる「完全記録時代」。失敗は生涯指摘される恐ろしい時代が今。

・キャッシュ・オン・デリバリーは、信用が成り立たない関係の取引。信託能力に自信があれば、「いまもらえなくても、いつか」が成り立つ。「次はない」と思っている人間だけが、同時交換・等価交換をうるさく求める。自分が差し出したものが先方の要求以上であれば、「おお、次回もぜひ」と必ずなる。

・「成果主義」をペラペラ言葉にしているヤツは、成果の力や奥行きや影響を信じてない。人間の営みは、「棺を蓋いて事定まる」もの。

・いいことしてると、自尊感情がわき、それだけで生命力が向上する。これも報酬。

・「一家を構える」システム。「次郎長三国志」みたいな。親分には定職がないけど、取り巻きがあれこれ工夫して暮らせる。上納金でなんとかやってける。英国王室のシステムもまさにこれ。笑!相手は大家にすぎないから、平気で悪口が言える。

・才能のある人は、天からそれを贈与されている=負債を負っている、のだから、次の世代へパスする義務がある。社会に還元、贈与する義務がある。

・拡張型家族というあり方。ジョン・ウォーターズ組、ドリームランダーズがその例。深刻なトラウマを抱えた人たちと共同作業で映画を作る。しかもお気楽な娯楽映画を。家業は映画製作。小津組も。

・自己実現が優先するなんて、狂ってる。最優先すべきは「集団が生き延びること」。単独で「誰にも迷惑をかけない、かけられない」生き方を貫くより、集団的に生きて「迷惑をかけたり、かけられたり」するほうが生き延びる確率が高い。自己決定・自己実現のイデオロギーはもう通用しない。

・「おはよう」「おやすみ」「いただきます」「ごちそうさま」「いってきます」「いってらっしゃい」「ただいま」「おかえり」「の八語を家族全員が適切なタイミングで口にできれば、家族制度は十分もつ。

・「先生」とは「機能」。コンテンツを提供しなくていい。最終的な回答を与えなくていい。教師の仕事はどうやって学びを起動させるトリガーを見つけるかだけ。

・先生がすばらしい先生であることを世間に立証する唯一の方法は、弟子が才能を発揮し、市民的成熟を遂げたことを満天下に知らしめること。

…前半メモ以上。後半また後日。

内田先生による、現在の日本の学校教育についての見方も鋭い。↓

http://blog.tatsuru.com/2013/04/07_1045.php

この一週間、入学式やら新学期やらパーティーやら食事会やらで幸運な出会いに多々恵まれた一方、別れも目白押しだった。仕事やら所属研究会やら所属団体やらが異常に増えすぎてどうにも中途半端なことが多くなってきたので、エネルギーを集中して成果を出すためにいくつかをナミダをのんで脱けさせていただいた。あまりにも不義理と身勝手を繰り返す友人に断腸の思いで別れを告げたり、ふとしたことで機嫌を損ねさせた友人に去られたりもした。大波のように押し寄せる出会いと別れの波に感情が落ち着かず、昨夜は寝不足の上に酔いがまわって柱でしたたかにまぶたを打ち、今朝起きたら右まぶたが青紫色に内出血していた。打ったのがこの場所でよかった。ナチュラルアイシャドウとしてごまかせる。たぶん。私はやはり強運のもちぬしだ(と思うことにする)。別れの儀式のトリは今朝、PTAの仕事を通してお世話になった副校長の離任式。「きちんとお別れをする」ということの大切さを痛感する。役員全員でお送りした花束。「カスミソウとパステルカラーはやめてね」と注文したらこっくりとシックにまとめてくださった。いつも<特別な気持ち>を美しく表現してくれる、大好きな花屋。

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Don’t cry because it’s over.  Smile because it happened.  ~Theodor Seuss Geisel

「終わってしまった、といって泣くんじゃない。終わらせることができた、と笑いなさい」。

癒えがたく思える痛みにも、「日にち薬」が確実に効いていくだろう。そして新しいシーズンの幕が、開いていく。

<追記>新しいシーズンの目標などを考えていたところ、タイミングよく、ジュン アシダの超優秀プレス、クマイさんが、先月のTae Ashidaコレクション会場での写真を送ってくださった。撮られていることを意識していない一瞬なので、他人の目に映る自分を、ヒトゴトのように見ることができる。なんだか、カンロクあるなあ。体型もだけど、雰囲気も。顔の各パーツは大きすぎるし、骨太だし。これは、コワイわ。笑。でもまあ、両親も子供もおんなじ顔だし。この現状をまず自分が真正面から受け入れていくことからしか、新しいスタートはなさそうですね。

先日、友人のバースデーパーティーで会った「メンタルコーチ」のような方が、「あなたに必要なのは、新しいことを開拓していくんじゃなくて、本来の自分を整理すること」と助言してくれたことがひっかかっていた。当面の目標はこれかな^_^;。

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日本の同質性を脱し、イノヴェーティヴな「変人」を増やそう、ということで、以前、当ブログでもご紹介したFB友、博報堂の川下和彦さんが、「HENGINE 01」(仮)会議を立ち上げました。ENGINE 01のもじりでもあるんですが、ENGINEに「H」がついただけで、HENGINE (変人)となるのは、ちょっとした発見。

金曜夜は、川下さんがHENGINEと見込んだ(?)立ち上がりメンバー、作家の鈴木光司さん、歌手の広瀬香美さん、なぜか私の4人で、変人会議。赤坂「ひかわ」にて。鈴木さん、広瀬さんは初対面でしたが、陽のオーラをがんがん発するブレのない変人ぶり。

その後の「二次会」として、鈴木光司さんのご自宅に招いていただきました。
訪れる前に聞かされていた言葉は、「ぼくの奥さんは、最高の女性で、僕の理想」。
突然の遅い時間の訪問になったにもかかわらず、奥様、お嬢様ともに、満面の笑顔、オープンハートでもてなしてくださいました。

鈴木さんと奥様は小学校時代の同級生で、鈴木さんは10歳のときにすでに「彼女と結婚する」と信じて、ラブレターを送っていたそうです。次女にあたるお嬢様もそのラブレターをご覧になったところ、「あなたは僕の太陽だ」となるべきところ、「あなたは僕の太洋だ」になっていたとか。無意識に書いた当時としては、「誤字」になるんだろうけど、現在の鈴木さんの海の男っぷりを見るに、やはりこの字しかありえない。太陽+大洋=太洋、もう無敵ですね。

お嬢様によれば、「ママはなにがあろうと、必ずパパを立てる」。
これが、「最高の女性で、僕の理想」として愛され続ける秘訣!
そういえば白洲次郎が正子にあてたメッセージにもClimax of my ideals (理想の極致)という言葉がありましたね。こんなふうに公言し合える関係は、幸福の境地だと思う。
強い信頼の絆で結ばれた、すてきなファミリーです。

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いただいたサイン入りのご著書。
両側が黒く長く垂れているのは、「貞子」のイメージだそう。笑。

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「世の中に生息する、いい変人に会わせるのも、父の重要な役割」という鈴木さんのことばで、私もHENGINEと認めていただいたことになるかな^_^; 変人は変人を引き寄せるというか、巷の評価や他人が作ったノウハウではなく、自分の心の直感を基準にして、目の前にいる人に誠実に行動していた結果、予想外の素敵な出会いに恵まれたというのが実感。川下さんと神に感謝。このまま淡々と変人やってまいります。

<補足:ご参考までに、以下、川下さんによる「H型人材」の定義です>

「H型人間とは、タテに2つの専門性を持ち、ヨコに広い視野と見識を持っている人材。
Hという文字のてっぺんとてっぺんをくっつけると、Aになります。つまり、H型人材とは“Answer”をつくり出すことができる人材なのです。

H型人材の代表と言えば、アートとテクノロジーという2本の柱を融合させた故スティーブ・ジョブズが思い浮かびます。

H型人材のHは“Hybrid”の頭文字であると同時に、同質性に媚びない“Henjin”の頭文字でもあります」

人とのご縁であれ、仕事であれ、目の前のことに対して、なにか無心で行動しているときに、ふわっと偶然のドライブがかかって、まったく予期しなかったところへ導かれ、それがこの上なく完璧な場所。ということがしばしば起こる。ぼんやりとそんな力のことを考えていたら、腑に落ちた文がコレでした。

「UOMO」5月号、「仕事の学校」から。川村元気×沢木耕太郎。

沢木「あらゆる創作物は偶然によってドライブがかからないとよりよいものにならないことがあるんだよね」

ただ、なにもせずにタナボタを待っていても、よりよいものにしてくれる「偶然のドライブ」はかからないのよね。ひたすら集中と苦闘の長い時間があって、まったくゴールすら意識しなくなった無心のときに、神のご褒美のようにそんなドライブがかかった、と感じる瞬間がある。いい仕事になった、と感じられるのはほぼこんな瞬間。出会うべき仲間と出会った、と感じられるのもこんな瞬間。自分の意志で目指した場所へ到達するんじゃなくて、意図したよりもはるかにすばらしい<圏外>へ受動的に導かれる感覚、これが至福の感覚だなあ。

自分が想定する目標なんて、タカがしれているし。もうひとつ、同誌から沢木さん語録。

沢木「1人で登れない山もあり得るわけで、そういうときにソロで生きられる力のある人が緩やかなパーティーを組むのが、何かを達成するときにはいちばん強い。だから大切なのは『どこにいてもソロで生きられる力をつけろ』ってこと。新たなパーティーに誘ってくれる人がいるときに、参加できる力を身につけておくことが生き方の理想型だと思う」

チャーチルの「地獄を経験しているなら、そのまま突き進め」の真意は、このあたりにあるんですよね。地獄のトンネルのその出口で、偶然のドライブがかかる。地獄のトンネルを抜けることができれば、ソロで生きられるタフネスを身につけていることになる。その暁に、より魅力的で強力なパーティーと組むことができるステージが待っている。

そんなパーティーと出会う秘訣(という言い方はなんだかキモチワルイけれど)は、ふりかえってみると、やはり目の前の人に対し、丁寧に誠実に接することに尽きる。「いい出会いはないかな」ときょろきょろしたりする人、「ここは私の居場所じゃない」と心ここにあらずのような人には、だれも寄ってはこないのだ。いまこの瞬間、目の前にいる人に対し、あたたかく誠実に接していると、その人が、友達とか縁者を次々に連れてきてくれる。そんな、友達の友達の友達のなかに、お宝のような出会いがある。

N響ホームページ内「カレイドスコープ」に寄稿しました。演奏されるウォルトンの楽曲から連想が導かれるまま「英国王室行事の底力」。

機会がありましたら、ご笑覧ください。できればウォルトンの「王冠」をBGMに流していただければ、なお光栄です(笑)。

http://www.nhkso.or.jp/library/kaleidoscope/3745/

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本文とは関係ありませんが、上の写真はウィリアム&キャサリンのロイヤルウェディングのときのゲスト。男性は、だれも白いネクタイなんてつけてない……。白いタイにブラックスーツは、あくまでも日本独特の習慣。