500ページ近くあるリサ・チェイニーのシャネル伝はとにかくリサーチが細かく、すべての記述を根拠のある文献に基づいて正確に書こうという作者の並みならぬ情熱が伝わってくるのである。

読者としてはついていくのが大変ではあるのだが、ときどき思わぬ収穫がある。

1944年6月6日。ノルマンディー上陸作戦の日。ラヴァット卿率いる第一特殊任務旅団がソードビーチに上陸。武装してないバグパイプ奏者ビル・ミリンがそこでバグパイプを演奏する。ドイツ軍が撃たなかったのは、「頭おかしいヤツだと思ったから」。

本部の命令を無視してバグパイプを演奏させた無鉄砲で粋なラヴァット卿は、なんと、シャネルの運命を変えた恋人アーサー・カペルの甥だった。カペルの血を分けていると知って、この行動に納得。

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シャネルと伝説のビル・ミリンがこんなところでつながるとは。

こういう、まったく予想もしなかったことがらがつながっていくのが学問の楽しみ。

逆に、まったく予想もしなかったことをつなげるのが、エッセイストの腕の見せどころ。

まったく予想もしなかった人とつながるのが、仕事の醍醐味。

無理そうな仕事でもついつい引き受けるのは、断れない性格(性格の問題にしてはいけないのだが)が災いしていることもあるが、その先にさまざまな意味でのつながりの夢を見てしまうからかもしれない。で、結果、自分で自分の首を絞めていたりして^_^;

商学部主催、ファッションビジネス講演、リシャール・コラス シャネル社社長の最終回は、シャネル銀座のネクサスホールにて。

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コラス氏による特別招聘講座3年目、これでいったん最終回。氏の講義を聴くのは4回目くらいになるけれど、いつも楽しくて深い学びが多い。今回も、ラグジュアリーの本質を考えさせられた、名講義でした。

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質問タイムに、コラスさんが考える女性の美しさとは、とは聞かれて、

自分であること。

と答えていらしたのが印象的でした。ココ・シャネルも、時代の流れに逆らい、周囲の目などをまったく意に介さず、自分がやりたいことを、ココの流儀で、次々にやりとげていった。それが結果として、社会の変革を導いた。

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昨日、原稿を書き上げたばかりのケイト・モスに関しても同じことがいえる。周囲がどうあれ、自分であること。それを淡々と貫き、継続して、別格のラグジュアリ―な存在になる。

ラグジュアリー・クエストの旅は、結局、どれだけ本来の自分を活かせるか、という挑戦を続けることに他ならないのですね。

だからこそ、ラスコーの壁画以来、人類の歴史と常に寄り添ってきたラグジュアリーは、これからも決してなくなりはしない。

他人が決めたマニュアルを捨てる。世間が決めるスペックなどをよりどころにしない。「世間並み」のアリさんレースを突き抜けて、ラグジュアリーな海に泳ぎ出でるには、自分をまず知り、一貫した方針にのっとった仕事や行動を、限界突破しながら一定期間継続するのが基本中の基本。などという認識を新たにする。

シャネルビルの横に刻まれた2500人の名前のエピソードは、何度聞いても涙が出る。職人へのリスペクト。どんな小さな仕事であれ、専門の、仕事をする人に対するリスペクトと感謝。これを忘れては人の心をうつラグジュアリーには至れない。人としての品格を、常にコラスさんから学ぶ。ユーモアをたたえ、あたたかさにあふれた本物の品格。こういう人でありたい、というお手本でもある。

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おみやげにシャネルのミニミラー。コラスさんの教えを思い出せる素敵な記念品となりました。

<追記>CHANELついでに。職人技が存分に披露されるメティエ・ダール・コレクション、今年はダラスだったようですね。

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綿谷寛・画伯に描いていただきました。

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リスペクト&感謝。

6日、「matohu」のデザイナー、堀畑裕之さんを中野キャンパスにお招きし、特別講義をおこないました。

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異国から見たジャポニスムでもない、語りつくされてきた「和」でもない、身近にありながら言語化されていないために気がついていないような日本の美意識。そんな美意識に目を留め、それを衣服を通して表現する、という活動を続けている「matohu」。

5年先のコンセプトをあらかじめ設定し、5年分のインビテーションをまとめて、慶長の美を伝える「絵巻物」にするという長いスパンで見た「待とう」の姿勢もユニーク。ファストファッション&グローバリズム全盛の時代におけるこの姿勢こそが、なによりもかっこよくて貴重だと思う。

詳しいお話はOPENERSのほうでも後日アップされますが、本欄では、とくに印象に残った「日本の眼」シリーズから、メモ程度ですがお話いただいた日本的コンセプトをご紹介。

1.かさね色目=風景+色+言葉、で表現される。「花冷え」「川添の菜の花」「イルミネーション」など。風景を思い浮かべ、それを色で重ねていき、言葉を添える。そこに現出する豊かなイマジネーションにあふれる世界。

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2.無地の美。むらや茶渋、ひびわれにこそ美を見てきた日本。お盆の塗装がはげていく過程にも同じ美が。とすると、ふだんなにげなく素通りしている景色の中にもこの美はあるかも。はげかけた塗装。表面がはがれかけた樹の幹。それを生地で表現すると…?

3.映り。一つだけでは生まれなかった美しさが、組み合わせることで互いに映えあうこと。料理と器、花と花器など。

4.見立て。質実剛健な道具、うちすてられた廃材を、花器に見立てて別の命を与えるなど。

5.やつし。格式のあるもの、豪華なものをあえて簡素にすること。遠山の金さんや水戸黄門もこれにあたる。そっけない麻に見えるんだけど、実はシルクで、着た人にしかその贅沢さはわからないようなもの。繊維をあえてとかしてぼろぼろに見せるんだけど、実はそのぼろが千鳥柄になっていたり、下の色を透けて見せさせたり。

6.あはい。余白や間に漂う詩情。空間恐怖のように装飾で埋め尽くす西洋的な美の概念にはない世界。

はっとさせられる哲学的で詩的な見方を教えられた、「あはい」豊かな時間となりました。言葉を得ることによって、風景やファッションの見え方が変わる。まさにそんな瞬間を体験しました。美しさは、見る人の心の中に生まれるものであり、身近な美に気づき、想像力を働かせることでこそ新しいファッションが生まれるのだということも、実例とともに実感。日本特有の繊細な思考にして表現、自信をもって世界への発信を続けていっていただきたいと強く思います。

待つことによって成熟を促すのは、素敵なこと。そうですね。あんなこんなの、さまざまな人との関係も、結果を焦らず、待ちましょう^_^;

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キャンパス前で記念写真。私が着ているのが、先日、店舗におうかがいしたときに買った今シーズンのmatohuのコートです。丁寧に紡がれたたっぷりとした服地、ひとつひとつ異なる形の「あはい」あるポケット、千鳥が舞う白い裏地、さりげなくつけられた首元のファーなどに、デザイナーの繊細な美意識が感じられる、着心地のよい一着です。…にもかかわらず、留めてない胸元のボタンがあるとか、着るヒトの繊細さがあまりにもなさすぎでほんとにごめんなさい(T_T)

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今年も賛同しました。OPENERSのメリー・グリーン・クリスマス

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シーズンズ・グリーティングカードもちらほら舞い込むようになりました。2013年、目標の何分の一にも届かなかったけれど(T_T)、少しでも来年以降につなげるように、ラストスパートをかけてまいります。

ミス・ユニヴァース・ジャパン2014 富山大会で審査員をつとめさせていただきました。
着物、カジュアルウエア、水着、ドレス、それぞれにおいてウォーキングでアピールしつつ、最後はスピーチと審査員との質疑応答で内面もアピールする、ハードな2時間。

26歳(年齢制限の最年長)のおふたりがとびきり輝いて完成度が高かった。グランプリの高橋映さんは4回目の挑戦。さすがの貫禄。舞台を降りるときに少し顔を残して消えていく、などこまかなところまで完璧だった。スピーチもすばらしく、「えー」や「あのー」などという余計な音が一切ない、優雅な話しぶり。準グランプリの佐野美沙代さんも、2度目の挑戦とのこと。佐野さんのポージングや表情にもすばらしく魅了されましたが、グローバルな舞台で競うには身長がやや足りない(といっても164センチ)だけ。佐野さんは、アフターパーティーで話した時に、私のブログ記事の"Don’t Dream, Be It"に励まされた、と話してくれました。またお会いしたくなるチャーミングな方です。ほかの出場者のみなさまもそれぞれに鍛え上げた力をアピール、経験や鍛錬とともに増していく力強い美を披露してくださいました。

アフターパーティーで、記念写真。左がともに審査員をつとめたモデルでタレントの池端忍さん。中央がグランプリに輝いた高橋さん。

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去年のミスの平野さんもゲストとしてトークショー。保育士である彼女は、富山の観光大使としても活躍中。選ばれてから出会う人が変わって人生が変わった、と。

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そうなんですよね。出会いがないと嘆くのではなく、きょろきょろしたり愚痴を言いあったりするひまがあれば、自分の活躍できるステージを上げる努力をすればいい。そうすればそのときの自分にふさわしい出会いに恵まれる。

彼女が履くのはユニバースの「義務」である13センチヒール。これはユニバースのステージでは必須なのだそうです。で、富山には売ってないので出場者は苦労したそうな^_^;。富山ビューティー底上げのために、まず靴屋さんやセレクトショップさん、がんばってください(笑)。

ミスコンは女の品評会だのなんだのと批判も相変わらずあるけれど、ユニヴァースにかんしていえば、長期にわたる合宿での総合的なトレーニングに耐え、人前で堂々と振舞い、話し、瞬時に受け答えをする教養を養い、その成果をステージで競うわけだから、なんというか、野球少年にとっての甲子園みたいなものではないかと思う。女力だけではなく、人間力を磨く絶好の機会だと思う。

その後、おやじたちにいいように利用される、という話も聞くこともあるが、いや、逆にそういう下心はいいように利用してやるのだ(笑)。それだけの賢さと強さを備えてこそ、女の中の女である。イメージモデルは不二子ね。

美は力。美は希望。美はインスピレーションの源。観客を魅了した出場者のみなさま、あっぱれ!でした。この経験を生かし、今後の人生がますます輝いていくことを祈っています。

「笑っていいとも」回顧ブームにワルノリして。実は私も2回、出演しました^_^; 昨年か一昨年の10月(もう、どっちだったか覚えてもいない…)。普段からテレビを見ないし、いまもテレビがない生活。あるけど故障したまま。時間を削っても観たいDVDはプレイヤーで観るし。ちょこっと出たからといって自分は観ないし。

という、テレビ感覚がまったくない人間なので場違い感マックスでしたが。数分の出演のために待ち時間が異様に長く、打ち合わせとはまったく異なる展開に臨機応変に合わせねばならず、テレビ業界の方々のたいへんさを知るよい機会になりました。リスペクト。

今から思えばタモリさんともっとお話しておけばよかった。という後悔は先に立たず…。今ならだいぶ悟りに近づき(笑)恥ずかしいこともないのですが、1,2年前はまだ相当シャイだった。

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写真は実家の母撮影。