北朝鮮のミサイルが今朝もまた発射されました。情勢がいっそう緊迫していることを感じますが、直接、私が交渉に行けるわけでもなければ抗議行動をしてどうなる相手でもない。外交・防衛を担うプロフェッショナルの方々に最悪の事態を防いでほしいと希望を託しつつ、Keep Calm and Carry On. 恐れてばかりいても何もならず、避難といってもどこにどんな危険が飛んでくるのか全く読めない状態。知人のなかにはすぐに上海に飛べるような用意をしているという方もいますが、私は海外に頼れる知人がいるわけでもないし、家族をおいていきたくもない。こんな時の最善の過ごし方は、日常の業務をいつも以上に丁寧に務め、会う人に笑顔を向けていくこと、という気がしています。たとえ能天気に見えようと、とりあえずは淡々といつも通りの日々を過ごすこと。不安のなかでこそ意識的にこのように心がける一日の終わりと、その翌日の始まりが平穏だと、心から感謝したくなります。本当に大切で必要なものとそうでないものがはっきりとわかってくるのも、実は「今日を生きることができた奇跡」を実感するこんな時だったりしますよね。
さて、少し時間が経ってしまいましたが、せっかくの貴重な機会をいただきましたので、シャフハウゼンDay 3 のその2、写真と個人的な印象を中心に、記録だけ残しておきます。
Gerberstubeでのランチを済ませたあとは、再びIWC本社へ。
CMO(マーケティング最高責任者)のフランチェスカ・グゼルとの会談です。マーケティングのプロフェッショナルとしてチョコレートの「リンツ」でも働いた後、引き抜かれてIWCに来た女性です。今回の同行者のなかにマーケティングのプロが二人もいた(竹尾さんと武井さん)ことで、とりわけ質疑のときにはきわめてハイコンテクストな会話が交わされていました。
私が深く共感を覚えたのは、男性社会において女性が最高責任者としてリーダーシップを発揮するための条件の話になったときです。振り返ってみれば私も同じことを感じていたし、他の同行メンバーも大きくうなずいていたので、スイスも日本も変わらないのだなと思いました。これについてはまた別の媒体で機会をあらためて書きます。
(左から谷本有香さん、中塚翠涛さん、フランチェスカ・グゼルさん、中野、武井涼子さん、竹尾純子さん)
少し休憩をはさんだあと、いよいよ「シャフハウゼン会議」。フォーブス副編集長の谷本有香さんの司会のもと、今回、シャフハウゼンであらゆる角度から時計文化に接した4人が、「時」「プロフェッショナリズム」「美」「これからの時代に求められる価値」などをテーマに議論を交わします。詳細はフォーブス7月号に掲載されますのでここでは書けませんが、それぞれの分野を極めた結果、越境して仕事をすることになった4人の見方は各自においては一貫しているものの、互いにまったく違うもので、非常にエキサイティングでした。
まだまだ語り足りない状態でしたが、時間がきてしまい、続きは後に、移動の車の中や食事の時などに交わされることになります(笑)。実際、今回のメンバーがとてもユニークだなと思ったのは、表層的な世間話がまったくなかったことと、女子会的な同意のノリ(「そうよね~」「わかるわかる」)が皆無だったこと。いきなり「本題」的な話が始まり、「いやそれは違う」から次の議論へ続きます。それぞれの人格と貴重な時間を尊重するからこそ、そうなるんですよね。意見に違いがあるからこそ、面白い。相手の人格を尊重し、信頼するからこそ、「違う」と言える。唯一の人格から出てきた、かけがえのない他人の「違う意見」と、同じように唯一の人格から生まれた「自分の意見」を、どのように掛け合わせ、昇華させていくか。その醍醐味を知るからこその深い会話が、なんとも楽しかったのです。
(自由時間はほとんどないに等しかったのですが、熱い会議のあと、少しだけ町に出てビールを一杯、のセルフィ―)
レストランやカフェは道路までテーブルを出し、こんな光景がちらほらと。平和で穏やかな時間が流れていることの、ありがたき幸せを実感します。