今回の旅の目的はスパイバー社ラボ見学&CEO関山和秀さんインタビューでした。

次世代の環境にやさしいブリュード・プロテイン・ファイバーという観点ばかりで見ていたのですが、関山さんの構想は全くスケールが大きく、見え方が一変しました。バイオにより本質的に人類の未来を考えていらっしゃいます。これだけの世界観を言葉で伝えきることができるのかどうか、不安も生じるくらいですが、じっくりお話を聞くことができて本当によかった。詳細は後日に。

たまたま、スパイバー海外部門の社員の方が「英和ファッション用語辞典」(研究社)を読み込んでくださっており、仕事にとても役立っている、とお伝えくださり、求められて辞典にサインさせていただきました。はるか昔に苦労していた仕事ですが、報われました!

今年1月の京都でのZETサミットがご縁になり、訪問が叶いました。広報の浅井茜さんには大変お世話になりました。ありがとうございました。

庄内ではSUIDEN TERRASSE泊。田んぼの中に浮かび、周囲の田園風景に溶け込むホテルです。ちょうど田んぼが水鏡になる季節で、時間が素朴にゆっくり流れている「レス・イズ・モア」系のホテルです。坂茂さん設計。
いろいろ足りないものもあるのですが、それをどう補うか?そもそも「不足」なのか?を考える機会にもなりました。周辺はオーバーツーリズムの弊害もなく穏やか。

隣接するのはスパイバー社と慶応の研究所。実はこれらの施設はすべてつながっているのです。スパイバーCEOの関山さんは慶応の出身で、長く鶴岡でも研究してきた方。SUIDEN TERRASSEの仕掛け人は元スパイバー社員。関山さんが「君は地方創生の活動が向いている」と背中を押したのだそうです。

まったく偶然に、東京のファッション関係者の方々とホテルの朝食シーンでばったり。おしゃれ感度(?)の高い方もプライベートで訪れているようです。LVMH系豪華絢爛ホテルの対極にある「ど」のつく簡素さなのですが、それが逆に「人間の必要最低限」を考えさせるのでしょうか。アメニティもないに等しいのでゴミもでません(笑) 

遊佐町の十六羅漢岩。

十六羅漢とは、お釈迦様が遺言を託した16人のお弟子さんのこと。

ここには日本海の荒波に磨かれた22体の磨崖仏さまが。ラシュモア山の大統領の彫刻を連想しました。

吹浦海禅寺21代寛海和尚が、漁師諸霊の供養と海上安全を願って造り始めたもので、1864年に自ら托鉢をしながら地元の石工たちを指揮、5年の年月をかけて完工したそうです。

これだけの規模で岩礁に刻まれているのは日本海側ではここだけとのこと、水産庁選定の歴史文化財産になっています。夕陽スポットとしても有名だそうですよ!

山形・庄内へ出張。初めての方向から見る富士山。ミーティングまで時間があったので近くの山居倉庫まで。1893年に建てられた米保管倉庫です。国指定の史跡。プチ観光地になっています。こういうところはもちろんビジュアルが美しく、そこにあるだけで価値があります。ただ、ツーリストにとっては「来た・見た・撮った」になりがちで(……私だけですか?)、倉庫の中に入れるとか、なにか「人」から学べるとか、行かなければ体験できない一工夫が欲しいところですね。

明治神宮ミュージアム、明治のドレス修復展覧会第二弾は霞会館創立150周年記念企画。旧宮家の北白川家から寄贈されたドレスなどを修復のプロ、後藤姉妹が2年かけて蘇らせました。マネキンも各ドレスに合わせて作られています。展示もプロフェッショナルな技術の結晶という感がありますが、図録もまた情熱を注がれた傑作。メインの中礼服の写真は見開きで全方向からの写真が! 細部のアップも美しく、服飾史の学徒にはお宝です。国際神道文化研究所の今泉さん、霞会館学芸員の金原さん、解説ありがとうございました。とりわけ今泉さんには神道文化研究所での多様な仕事もご紹介いただき、新たな視点をいただきました。超ドメスティックは結果としてインターナショナルに通じる、ということがよくわかる成果があちこちに。

芭蕉布の作家、大城あやさんにお話を伺いました。

仕事の8割は糸を育て作ること、ほぼ農業です、という言葉が印象的でした。芭蕉布は、つややかで涼しげな感覚と、素朴であたたかさのある印象が両立するユニークな織物です。次回、あやさんとお目にかかるときは沖縄の工房「うるく」で!

北日本新聞「ゼロニイ」連載、「ラグジュアリーの羅針盤」Vol. 19では、桂由美さんの追悼記事を書きました。

「ウェディングドレス」というただ一つのコンセプトで60年もフレッシュで王道であり続けるのは並大抵のことではありません。あらためて感謝と最大限の敬意を表します。

日経新聞夕刊連載「モードは語る」。25日付では、今年のメットガラのドレスコード「時間の庭」に潜む皮肉について書いてみました。電子版(有料会員限定)はこちらからお読みいただけます。

元ネタになった小説を読んでいる暇がないという方には、Xでもご紹介した動画をご覧ください。小説のエッセンスを濃縮した、とてもよくできた動画です。美の砦がやがて暴徒に蹂躙されるSFディストピア。その物語を知っているかどうかで、メットガラの見え方が違ってくるはず。

高知へ二泊三日の出張。行きJALは可能な限り「K」席をとって富士山を眺めるのが好きなのですが、毎回、表情が違う。今回の富士山は水墨画のようでした。

〇異動の合間に山口周さんの『クリティカル・ビジネス・パラダイム』読了。新しい言葉で現実を明快に分析し、これからのビジネス、ひいては社会のあり方を提示してくれる本でした。

社会運動・社会批判としてのクリティカル・ビジネス。新・ラグジュアリーも歴史上のアパレル・イノベーターもすべてクリティカル・ビジネスというカテゴリーにくくられることになるんだなと共感。従来のありかたを批判し、新しいパラダイムを提示する、という意味で。

・品質や機能ではなく、哲学
・ビジョンに顧客や市場が含まれない
・マーケティング理論では説明不可
・市場に存在しない問題を生成する

センスの悪い顧客のウォンツに答え続けている限り、水準の低い世界が広がるばかり(アファーマティブ・ビジネス)。クリティカル・ビジネスは新しい理想を掲げ、むしろ顧客を批判・啓蒙し、その結果、社会を変え、市場を新しく作ることになる。社会課題解決型のソーシャル・ビジネスとの違いは、ソーシャル・ビジネスがすでにコンセンサスがとれていることに取り組むのに対し(SDGs的なこと)、クリティカル・ビジネスはアジェンダを最初に掲げる。

「問題とは、『あるべき姿と現状のギャップ』として定義されます。ですから『それまで問題でなかったものが問題になる』というのは、現状を『そのようなものだろう』とこれまで受け入れてきた人が、ある日、目の前の現状とは異なる『あるべき姿』をイメージするようになったとき、初めて生まれる」。ここに新しいビジネスが立ち上がるわけですね。なのでその過程には必ず世界観・価値観の転換が起きる、と。

「次世代の人にぜひとも譲り渡していきたい」ものを本当に作っているのか、環境負荷の大きい物品を作り続ける現代に批判的に問う姿勢こそが今求められること、という主張は新・ラグジュアリーの考え方とも通底するものがあり、確かな言葉で視界を開いていただいた思いがします。

若い女性兵士も多い横田基地。写真をご一緒していただいたケイシーさんはランチ食べる暇もなくプロテインバーでしのいで大サービス。

「トップガン」風航空ショーもあり、空中からのパラシュートショーもありで、自衛隊と米軍のPRイベントの側面が多大にありましたが、軍人や隊員の方々のヒューマンなお話を少しですが直接伺えました。能天気な写真を撮っておりますが、胸中ぐっと複雑です。あのオスプレイの展示もありましたし…。

それぞれが個性的な人間としての姿を見せてくれた兵士や隊員に接することができたのは貴重でした。世界では戦争や紛争が起きており、いつ何時大きな戦争に巻き込まれるかわからない時代です。彼ら彼女らが安全に無事で過ごせますように。

近隣は、メインストリートを離れると、清らかな水と緑が広がる光景も楽しめる、閑静な住宅地。あまりにも快適な空気で、気がついたら6時間近く日光を浴びていて日焼けしました。これはまずい…。

日本からただ一人、パリ・オートクチュール・ウィークに参加している中里唯馬さん。日本人としては森英恵さんに次いで2人目です。

オートクチュールとプレタポルテでは大きな違いがあります。オートクチュールの世界には厳しい条件や審査があります。その実態を、中里さんと、オートクチュールの組織をよく知るベルギーのブラッドリーさんにオンラインでインタビューしました。

それぞれに美を追求する二人の真摯な姿勢に衝撃を受けるとともに、心が洗われました。思わず姿勢を正して聞いていました。

中里さんは、社会課題にも向き合い、後進も育成し、パリコレに参加して実験的な美を世に問い続ける。ひとりの人間としても優しくて思いやりがあり、ファッションの世界をリードするほんとうにすばらしいデザイナーだと思います。

詳しくは今年中には発売予定の『「イノベーター」で読むアパレル全史』増補改訂版に収録の予定です。

『青藍工房展 Paris の予感』プレス発表会に参加しました。銀座かねまつホールにて。

青藍工房は徳島のろうけつ染めの工房です。1931年生まれの橋本陽子さん(下の写真・中央)が1971年に始めました。橋本さんは戦後、伝統的な藍染ではなく、自由なデザインを藍の濃淡で表現し、藍で芸術を創るという意志をもって作家活動を始めました。

現在の代表は娘さんの清川初子さん(上写真・左)が務めています。もう一人の娘さん、橋本清子さんも工房のプロデューサーとしてかかわり、清川初子さんの夫君もMetamoji代表として工房のさまざまな活動に関わっていらっしゃります。まさにファミリービジネス。

パリの「ル・サロン」でも2022年、2023年に連続入選、展示もおこなわれています。ドレスも美しく、透け感とハリ感のあるシルクを染めた深い藍に吸い込まれそうで、ぜひ一度着てみたい!

トップ写真は5メートルの布をドレスにアレンジした作品で、スタイリストは徳島でオートクチュールサロンを開く坂東美千代さん。坂東さんのこの日の着用ドレスも麗しく、徳島に青藍工房の取材+坂東さんのサロンでのドレス依頼の旅に行く、というのを脳内のTo Do Listに刻みました。

展覧会は19日までと短いですが、どうぞ銀座かねまつホールにお立ちよりください。

 

この季節に恒例になった山下公園周辺の満開の薔薇ですが、今年は傘も壊れる雨風のなかの鑑賞となりました。

それはそれで誰一人おらず、人が写りこむことに気兼ねする必要なく撮影できました。

雨に濡れる薔薇も、快晴の下の薔薇とはまた別の美しさがありますね。

気分が沈みがちな雨の日こそ快適に楽しめるよう、心身のコントロールを極めたいものです。

おわら風の盆で有名な八尾の取材。9月は動けないほどの密集地になりますが、シーズンオフの今は静かでおだやかな空気が流れています。

石畳の通りも風情があります。清らかな水が側溝に流れ続けているのも、他県の方から見たら驚異らしい。雪解け水ですね。

こんな渋い味噌・醤油のお店があると思えば、

銀行が大正モダン風だったりして、いちいち楽しい街並みです。

こんな駄菓子屋さんも健在。お店の名前も「こどもや」。

あるお土産屋さんでは、「特別の人じゃないとなかなか見ることができない」という2階をご案内いただきました。この2階の窓に座り風の盆を見るのですね。風の盆のさなかに再訪したいものです! 下の写真は観光会館の中に展示されている曳山です。

 

 

母の日を祝うため富山にとんぼ返りの帰省。

今日はずいぶん低空飛行していたように感じられました。眼下に雲がなく、絶景の連続です。高知出張時とは異なる角度から見る富士山。

実家の芍薬も満開。おかげさまで両親は健康で元気、なによりもありがたいことです。

 

サンローランに映画制作部門が加わり、アンソニー・ヴァカレロがこの部門のディレクターも務める。で、昨年のカンヌで公開された作品の試写を拝見しました。「ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ」。西部劇×男同士の愛。「ブロークバック・マウンテン」トリビュートな30分の小編です。クリエイティブディレクターは服ばかりじゃなく映画も作る時代に突入しました。

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7/12(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテほか全国公開

「ラグジュアリーの羅針盤」、Tagiru.の回、ウェブ版で公開されました。

心は満たすものでも火をつけるものでもなく、本来の自分に戻ればおのずと「たぎる」もの。

最近見た試写のなかでお勧めしたい映画のメモ。

◎まずは『密輸1970』。全く先が読めず、海女がこれだけ活躍するのも前例がないであろう海洋クライムアクション(コメディ、たぶん)。70年代こてこてファッション、韓国の小さな港町の光景、演歌っぽい音楽もよく、海女×密輸王×チンピラ×税関という四つどもえの騙し合いが壮絶でシリアス、サスペンスフルなのに、「陽」の空気に包まれている快作。見たあと笑顔になれて元気がわいてくるような不思議なテイストの映画です。これ好き。7月12日公開。

◎そしてやはり韓国映画ですが、『ソウルの春』。1979年の大統領暗殺後、新たな独裁者の座を狙いクーデターを決行する男と、その暴走を阻止しようとする高潔な軍人の対立を描く。暗い緊迫感がずっと続きます。内戦直前の緊迫とその後の暗黒社会が実話という衝撃。高潔な人間が救われない不条理、腐敗した人間が権力をもつおそろしさは今も身近にあるなあと人間不信になってくる。鑑賞後重たさをひきずりますが、決して目を背けてはない歴史の現実。8月23日公開。

両映画とも、70年代韓国の実話がベースになってるんですね。韓国ではともに大ヒットを記録しているそうです。

 

*トップ写真は町中を走っていたアフタヌーンティーバス。表参道付近で遭遇。

 

高島屋会報誌「ハミングタイム」5・6月号 特集「心はずむ雨の日に。」のなかで傘についてのインタビューを受けた記事が掲載されています。「高島屋友の会」のみなさま、ご笑覧ください。

最近はシェア傘も増えましたね。システムとして構築されているのも見かけますが、最近、見かけて面白いなーと思っているのは、トイレなどに「あえて忘れ傘のように置いてある」ビニール傘。「必要な人、必要なところまで使ってまた次の人のために<忘れて>いってください」という趣旨なんですね。安価なビニール傘だからこそ可能な、やさしい世界。

一方、ハミングタイムに紹介されているのはまったくカテゴリーが異なるもの。バッグのようなファッションアイテムに分類される傘です。店頭の傘立てに置いて「シェア」されると困るような傘は、クロークに預けるなど丁寧に扱うことが求められますね。出かける場所に応じて、持つ傘も変えるべきなのでしょう。