高知へ二泊三日の出張。行きJALは可能な限り「K」席をとって富士山を眺めるのが好きなのですが、毎回、表情が違う。今回の富士山は水墨画のようでした。
〇異動の合間に山口周さんの『クリティカル・ビジネス・パラダイム』読了。新しい言葉で現実を明快に分析し、これからのビジネス、ひいては社会のあり方を提示してくれる本でした。
社会運動・社会批判としてのクリティカル・ビジネス。新・ラグジュアリーも歴史上のアパレル・イノベーターもすべてクリティカル・ビジネスというカテゴリーにくくられることになるんだなと共感。従来のありかたを批判し、新しいパラダイムを提示する、という意味で。
・品質や機能ではなく、哲学
・ビジョンに顧客や市場が含まれない
・マーケティング理論では説明不可
・市場に存在しない問題を生成する
センスの悪い顧客のウォンツに答え続けている限り、水準の低い世界が広がるばかり(アファーマティブ・ビジネス)。クリティカル・ビジネスは新しい理想を掲げ、むしろ顧客を批判・啓蒙し、その結果、社会を変え、市場を新しく作ることになる。社会課題解決型のソーシャル・ビジネスとの違いは、ソーシャル・ビジネスがすでにコンセンサスがとれていることに取り組むのに対し(SDGs的なこと)、クリティカル・ビジネスはアジェンダを最初に掲げる。
「問題とは、『あるべき姿と現状のギャップ』として定義されます。ですから『それまで問題でなかったものが問題になる』というのは、現状を『そのようなものだろう』とこれまで受け入れてきた人が、ある日、目の前の現状とは異なる『あるべき姿』をイメージするようになったとき、初めて生まれる」。ここに新しいビジネスが立ち上がるわけですね。なのでその過程には必ず世界観・価値観の転換が起きる、と。
「次世代の人にぜひとも譲り渡していきたい」ものを本当に作っているのか、環境負荷の大きい物品を作り続ける現代に批判的に問う姿勢こそが今求められること、という主張は新・ラグジュアリーの考え方とも通底するものがあり、確かな言葉で視界を開いていただいた思いがします。