ケンブリッジ・アナリティカ問題をご記憶でしょうか。2016年のアメリカ大統領選挙において、トランプ陣営がデータ解析企業ケンブリッジ・アナリティカの協力を得て、Facebookのユーザー5000万人分の情報を不正利用していた問題。ユーザーのデータに基づいて、その人の投票行動に影響を与えるような個別の政治広告を配信していたとされます。

その告発を内部から行ったのが、クリストファー・ワイリー(当時28)でした。髪をカラフルに染めている、ゲイのカナダ人で、データオタク。ゲイは流行や時代の流れを敏感に読んで取り入れるアーリー・アダプター(新しもの好き)であることが多く、ワイリーもその点でケンブリッジ・アナリティカ創業者たちに好かれて仲間入りしたようです。

 

そのワイリーが、Business of Fashion のVoicesで、ケンブリッジ・アナリティカがユーザーのファッションブランドの好みをどのように彼らの投票行動に利用したかというおそろしい話を語っております。こちら。

ナイキ、アルマーニ、ルイ・ヴィトンを好む人は、開放的、良心的、外交的、愛想がよく神経症的で、そういう性質を利用し、ケンブリッジ・アナリティカは政治的メッセージを送っていた。

一方、アメリカのヘリテージブランド、たとえばラングラー、LLビーンなどを好む人は、開放度が少なくて保守的で、トランプを支持しようというメッセージにより反応(賛同)する傾向があったという。

醜悪なものであっても、データに基づくインターネット上の心理操作によって、それを好もしいと思えるように導くことは、可能なのですね。たとえばクロックス。あのビニールのサンダルです。どう見ても美しくはないものですが、サイオプス、すなわちサイコロジカル・オペレーション(心理操作)によっていくらでも好もしいものに変えることができるのだ、と。(実際、そうなりました)

大衆に、トランプ大統領やブレグジットを選ばせたものが、まさにこの類の操作だったと彼は告発するのです。醜悪なものがどんどんトレンドになる仕組みと、醜悪な政治リーダーが選ばれる仕組みの背後には、このような背後の力による心理操作があったとは……。

ミウッチャ・プラダは「醜さを掘り下げることは、ブルジョア的な美より興味深い」と語っています( T magazine)。醜悪さってたしかに新鮮でもあるんですよね。醜悪なファッションを時折楽しむ分にはいいですが、醜悪な政治を選んでしまうと、取り返しのつかないことになる。情報操作は、まさに大量破壊兵器になるんですね。

ワイリーに戻ります。

ファッションブランドの好みというユーザーのデータが、ブランドも知らないうちにこのような情報操作&行動を促すことに利用されていたことが分かった今、逆に、ファッションブランド自身が方向転換することによって、人々の行動をよいように導き、文化を守ることもできる、と彼は示唆します。

 

いやしかし、そうなればなったで、さらなる新しい情報戦争が仕掛けられるのだろうな。好きなものを自発的に選んでいるつもりが、実は背後の大きな力によって選ばされている、そんな時代に生きる空恐ろしさを感じます。

「ファッションは服を売るビジネスではない。ファッションはアイデンティティを売るビジネスである。人間の根源的な問題<私は誰なのか? 社会のどこに所属したらいいのか?>に答えるツールを提供するビジネスである」。

だからファッションの問題はおろそかにするわけにもいかないのです。

 

 

 

 

三陽商会に取材に伺いました。


新築のブルークロスビル。外から見ると、建物が経糸と横糸で織りあげられたブルーの布のようにも見える設計。坂道の途中の建物ということもあり、かなり工夫が凝らされています。



1階の展示スペースには四季折々の旬の製品が展示。

「コートのSANYO」のキャッチフレーズにふさわしく、100年コートはじめ、バラエティ豊かに各種コートが揃います。

 


ニットが恋しい季節ですね…。こんなきれいな色のニットは気持ちも明るく上げてくれそう。

2階は広々としたスペースで、カフェあり、打ち合わせスペースあり、展示会場となるスペースあり、お一人様用作業スペースあり、と多様な使い方ができるデザイン。

観葉植物やファッション関係の洋書も随所に置かれています。

仕切りがなくても意外と周囲の目が気にならないのですよね。

展示会はすでに終了しておりましたが、展示会の名残りも楽しませていただきました。上は三陽山長の靴。

個性的で上質な素材を使ったエポカ・ウオモ。

ほか20以上のブランドをもっている三陽商会。撥水機能がある白い服地で作ったシャツやセーター、ジャケットなども自社工場で作っているとのこと、実際にコーヒーをこぼして実験してみましたが、きれいにはじいてシミ一つ残らないのです。これいいな! 来春はレースバージョンも出るらしく、今から楽しみ。

アパレル苦戦と言われておりますが、老舗の大会社の貫禄は随所に感じました。現在の試み、今後の計画なども伺いました。内容は別の機会に。


この日のランチはこんな場所で。高くそびえるためには土台もしっかりしていなくてはね。などというベタな言葉が出てしまうほどの迫力。

各誌で「今年の男」のお祭りが花盛りですね。2018年を彩った男たち、僭越ながら私も選ばせていただきました。

中野香織が選ぶ Men of The Year 2018.  今年も多くの方が大活躍で、なかなか10名以下に選びきれなかったのですが、かろうじて3部門に各3名ずつ。基準はメンズスタイルへの影響力です。

実は紙幅の都合で、本文 は大幅に削らざるを得ませんでした。ブツブツと列挙してるだけみたいな味気ないテキストになってしまいましたので、以下、オリジナルの全文掲載します。

☆☆☆☆☆

「中野香織が選ぶ、今年を彩った男たち」

2018年も多彩な顔触れが活躍しました。多様な人々を包摂してよりよい社会を目指そうとするDiversity & Inclusionの運動を先導するモード界の代表格としては、ルイ・ヴィトン・メンズのアーティスティックディレクターとして就任したヴァージル・アブローがいます。ルイ・ヴィトン初の黒人ディレクターとしても話題を集めました。黒人ばかりが出演する初の黒人ヒーロー映画として大ヒットした「ブラック・パンサー」の主演俳優、チャドウィック・ボーズマンも今年を象徴する男性ですね。

モード界ではヴァージルもプレイヤーの一人として中心的な役割を果たしているストリート・ラグジュアリーが台頭しましたね。ヴィトン×Supremeの限定品には世界中で行列ができました。少し若い世代になると、ラグジュアリー・ストリートをさらに自分たち仕様に着崩した「スカンブロ(scumbro)」の流行が生まれました。スカム(scum)はクズ、ブロ(bro)はブラザーのこと。高価なストリートウエアをまるで中古ショップで拾い集めてきた服のようにあえて安っぽく着るのです。私の中のオヤジが発動して「好かん兄弟」と訳していることはご寛恕いただきたいとして、このトレンドを引っ張るのが、ジャスティン・ビーバーくん。オン/オフの区別はとくにせず、髪もくしゃくしゃでいつも悪びれず自然体、という満ち足りた自信が人気の秘密のようです。
ストリートの流行で、ナイキはビジネスを大躍進させました。ナイキがキャンペーンの顔として起用したのが、アメフト選手のコリン・キャパニック。彼は、最近のアメリカで起きている人種差別に反対して、国歌が歌われるときに片膝を立てて座ることで抗議を始めた選手です。キャパニックの強い信念に基づくこの行動は賛否両論を呼んでおり、彼がキャンペーンの顔となったことで一時、ナイキ製品を燃やしたりするバッシングが起き、売り上げも下がりました。しかし、ナイキは動じず、結果的にナイキの株価も上がった次第。信念を貫く男をサポートするナイキもまた、信念の企業である、とアピールすることに成功したわけですね。

さて、ストリート系の話が続きましたが、スーツ界に目を向けて見ましょう。強烈な印象を残すのが、グッチのスーツキャンペーンの顔に起用されたハリー・スタイルズです。彼はもとからピンクのスーツや花柄スーツを誰よりもクールに着こなす人でしたが、トラディショナルなスタイルのスーツも、いまどきの「タッキー」な気分を添えて着こなしてしまう。タッキーとは、一歩間違えると悪趣味でダサいのだけれどそこが素敵、というミレニアルズのファッション感覚です。

正統派の美しさで世界中の男女の魂をわしづかみにしたのは、アーミー・ハマー&ティモシー・シャラメの「カップル」。『君の名で僕を呼んで』の芸術的な衝撃の効果もありますが、映画の外でもこの二人は光っておりました。ハマーの非の打ちどころない美貌と繊細な演技力。唯一の欠点が、何を着ても美男過ぎること、でしょうか。そしてシャラメはキュートな子犬のような王子様感を味方に、ストリートスタイルからスーツスタイルまで、ひねりの効いた個性的な着こなしでセンスのよさを見せつけてくれました。

ビジネスパーソンでは、ケリング会長のフランソワ=アンリ・ピノー。9月にパリまでインタビューに行き、アートやサステナビリティをどのように経営に生かすべきかという話を聞いてきたのですが、17世紀の病院をリフォームして社屋として使うなど、口先だけではなく実行力も伴い、ケリングの売り上げは大幅に上昇しています。強い印象を残し過ぎないスーツの着こなしも、信頼されるビジネスマンの模範的スタイルでした。

一方、「らしくなかったで賞」を献上したいのが、テスラのイーロン・マスク。ツイッターでの暴言で自社株価を下げ、投資家に多大な迷惑をかけたりなど、問題行動が続き、迷走中。言葉が荒れるとともに、かつては凛としていた服装にも手抜きが見られます。

サセックス公爵となったヘンリー王子も、あいかわらずの無頓着ぶりでした。自身の結婚式にはユニフォームを着用しているのに髭もじゃ、披露宴のタキシードの着方もいい加減、というつっこみどころ満載の花婿姿を披露してくれました。いやこの「らしくない」スタイルこそ愛すべきヘンリーだからしょうがないし、幸せそうでなによりと世間が大甘で許しているのもご愛敬ですね。

そしてエディ・スリマン。Keringグループのサンローランから、LVMHグループのセリーヌへ。手がけるブランドはなんであれ、なにをやってもエディ印になってしまう。「セリーヌ」らしさをなくしてしまったと旧来のファンからは大バッシングを受けるも本人はいたってクールで淡々と稼いでいく、というのがニクいところですね。

☆☆☆☆☆

 

みなさんそれぞれの世界で光ったMen of the Yearはどなたでしょうか。

前項から続きます。Prince Hotels Tokyo City Area Christmas Presentations and Christmas Party.

各ホテルのクリスマスメニューも紹介されます。


各レストラン、全制覇したいくらい、それぞれに個性を出したメニュー構成。


シティエリアのパーティーには必ず置かれており、いつも感動する氷の彫刻ですが、この日はライブスカルプティングでした。アイス・スカルプター日本一に輝く彫師がものすごいスピードで彫っていきます。悩んでたら溶けますからね、それはもう早い早い。

完成したとたんに溶け始めるというのもちょっと切ない。その切なさがまた味わいを深めている、すばらしい芸術作品でした。


Hanah Spring によるライブも。このコンビは父娘の間柄なんですね。驚き。

幻想的なライトアップで貴賓館の美しさもいや増し。

ここでキヒンのないポーズをとる人も……。



曇も少ない美しい月夜に映える貴賓館。

カジノルームも用意されていました。賭け金ナシのプレイのみですが。武井統括支配人と記念写真。

締めの挨拶は、左の白いスーツを着た林佳代さんより。シティエリアマーケティング統括支配人です。各ホテルの広報担当者も林さんから紹介されました。優秀で気立てもよい女子ぞろいです。


シティエリアのコンセプトは、今後、このようになります。

なにか自分の子どもが羽ばたいていくみたいな感謝と感無量。

 

Prince Hotels Tokyo City Area Christmas Party and Christmas Presentations.

ホテルは12月になるとホリデーシーズンの繁忙期に入るため、メディア向けのクリスマス商品のプレゼンテーションを兼ねた、早目のクリスマスパーティー。高輪の貴賓館にて。

東京シティエリア統括総支配人の武井久昌さんによるご挨拶からスタート。


シティエリア各ホテルの支配人。左からザ・プリンスさくらタワー東京&グランドプリンス高輪&グランドプリンス新高輪の総支配人である山本誠さん、ザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町の総支配人である大森伸翁さん、東京シティエリア統括総支配人の武井久昌さん、ザ・プリンスパークタワー東京&東京プリンス総支配人である石川学さん、そして品川プリンス総支配人の橋本哲充さんです。支配人たちはタキシードに赤いボウタイとチーフで華やか。


7ホテルの各レストランから自慢のお料理の数々。


各レストランからのシェフたちがその場で切り分け、盛り付けてくれるという贅沢なおもてなし。

いつも驚愕するのはチョコレートの彫刻。上のピアノは小さな部品にいたるまですべてがチョコレートで作られているのです。

7ホテルから渾身の17種類のクリスマスケーキもお披露目。写真上、手前の帽子型ケーキはロイヤルウェディングにちなんだデザイン。


上の写真、手前の2段の白いケーキは見た目がシンプルですが、切ると華やかな中身が現れます。プリンスホテル女子社員によるプロジェクトです。ミレニアルズな発想ですね。

チョコで作られた宝石箱をあけると宝石のようなケーキが出てくる。

一点、一点にシェフの思いと工夫とストーリーがぎっしり詰まったクリスマスケーキ、ぜひ各ホテルのホームページで詳細をご覧ください。

To Be Continued……

9日に行いましたYomiuri Executive Salon の写真が届きました。


ラグジュアリーストリートからスカンブロへの流れを解説しているところ。

来年のメットガラで炸裂しそうな「キャンプ」を解説。

テーマが「日本のラグジュアリーとその未来」でもあったので、日本ブランドを身に着けていきました。Tae Ashidaのドレス(日本語でワンピースと呼ばれるものは、英語ではドレスと呼ぶ)、ミキモトのブローチ、グランドセイコーの時計、そしてAtsugiのストッキング「輝」。

 

その後にお会いした出席者のみなさまから続々とおほめの言葉をいただき、とても嬉しく、がんばってよかったと思いました。しかしまだまだ。

「点」としてのファッション現象を、さらに大きな社会的背景のなかでのストーリーとしてわかりやすく語ることができるように、日々の研究も怠りなく努めたいと思います。

 

 

〇ドルチェ&ガッバ―ナの上海ショーの中止事件は不幸なことでしたね……。最初の動画(中国人の女の子が箸でピザやパスタを食べる)はたしかに彼らとしては(無知であったとしても)差別意識は皆無であったのでしょう。それだけだったら撤回して、他意のなかったことをお断りして謝ればあれほど大きなダメージは防ぐことができたのでは。決定的な問題は、ステファノが個人的に書いたメッセージでした。相手を怒らせ、画面キャプチャをさらされてしまったのが最悪でした。ハッキングされたと言い訳しているのがますます火に油を注いでしまった(それが嘘であることは、Diet Pradaが証明)。パーソナルメッセージだからと安心して暴言を書くとたちまちさらされ、拡散してしまう透明性の高い時代だということを常に意識しておかねば。録音もどこでされているかわからないから、とにかく油断はできない。他山の石。

ドメニコもステファノも、人間的な欠点は(私たちの多くと同じように)多少はあるのかもしれないですが、才能とサービス精神にあふれるデザイナーです。彼らが日本でおこなった2回のコレクションは、日本文化へのオマージュにあふれたすばらしいものでした。今回の件を挽回すべく、謙虚にコレクションを作り続けてほしいと願っています。

本ブログでもご案内しておりました、ニューヨークのミシュラン☆☆シェフ、ガブリエル・クルーザーの招聘イベントは、連日、満席どころか大幅に増席するという大盛況のうちに終了したようです。

私は17日(土)に参加しました。品川プリンス最上階Table 9 Tokyo にて。


迎えてくれるカトラリーの数も多い。これからどれだけの料理が出てくるのでしょうか。
メニューです。8皿のコースです。メインとデザートが2種類からチョイスできる。

ペアリングワインも全6種。高級ワインがずらり。どれも料理とベストマッチというか、凝った料理の濃い特徴をいっそう強めるようなワインが選ばれており、ひとつひとつのペアリングを印象深いものにしていました。


とりわけ驚いたのが、セカンドグラス。料理はフォワグラのテリーヌとピスタチオのキャラメリゼ。これに合わせるワインがいきなりソーテルヌですよ。意外や意外、甘めのソーテルヌがフォワグラと合って新鮮な発見でした。

パンの代わりというか、パンも出てくるのですが、焼き立てクグロフがでてきました。甘くない、パンとして食せるクグロフ。新鮮でした。(料理のメニューとしては記されていないサプライズ)

 

一皿一皿、精巧な作り込みを特徴とする王道フレンチをニューヨークスタイルにアレンジしているといった印象。親しんだ素材でもこう来るか!という料理法で驚きの連続。

メインの前に、じらすかのように出てきたのは黒トリュフ、白いんげん豆、菊芋のエスプーマ。黒トリュフが厚切りになって入っているの。ただこのあたりにくるとだいぶお腹がいっぱいになっている……。日本人には(というか私が小食なだけ?)8皿は多すぎるかもしれない。

メインの牛テンダーロイン。ほんとうは一人前がもっと大きなポーションだったのですが、シェフにお願いして、小さめにしてもらいました。お腹がかなりきつくなっており、残すのもいやだったので、食べきりサイズにしてもらいました。極上のおいしさでした。


デザートは栗のプチベール。バニラと栗のムースリーヌとカシスのソルベ。品良い甘さでなんとか完食しました。

芸術的なお料理の数々、その良さをいっそう引き立てる6種のワイン、エピキュリアンな一夜でした。さすがにこの日は自分が小食なのを恨めしく思いましたが、クルーザー氏のおもてなし、たっぷり堪能いたしました。


テーブルにいらしていろいろ説明してくれるクルーザー氏。とても穏やかで笑顔を絶やさない、あたたかな人柄を感じさせるシェフです。あとからTable 9 のシェフに聞いたところ、厨房で働くスタッフたちも、非常に良い刺激を受けているとのことです。

おみやげにはガブリエル・クルーザーブランドのハンドメイドショコラ! こういう「小さな高級品」っていうのがお土産に嬉しいですよね。バッグにすんなり入るサイズ。しかもとても美味しい。甘さが残らず、上質な余韻がさわやかに広がるようなチョコレートです。これ好き。ニューヨークではクルーザーのチョコレートショップもあるらしいのですが、日本でも展開できないのでしょうか。


記念写真。左から、フードコンサルタントの藤本先生、Nikkei Styleの太田亜矢子さん、シェフ、中野です。

増席の熱気もあり、オープンキッチンも活気があり、Table 9 Tokyoが本来の威力を発揮した夜でもありました。いつもより大勢のスタッフが動員され、華やかなフロアでした。スタッフのみなさま、おつかれさまでした。あたたかなおもてなしをありがとうございました。

シンガポール投稿はこれで最後になりますよ。もうそろそろみなさんも飽きてきたころですね。

 

ナショナル・ギャラリーです。

2015年11月にオープンしたこのギャラリーは、旧市庁舎と旧最高裁判所を合体させてリノベーションした、東南アジア最大のモダンアート美術館。

2つの巨大な建物が合体して展示会場になっており、その数、延べ13階分以上になるそうです。

ひとつひとつの作品がとても興味深いのですが、とにかくはてしなく数が多く、見ても見ても終わらない。

旧日本軍の兵士が描かれている絵もあり、なかには胸が痛むような描写のものもありました…。

「人々の痛みや悲しみを描くものでなかったら、アートはいったい何のためにあるのだ?」


感情を揺さぶられつつ、2時間くらい見て回るものの、まだ3分の1も観終らないという状況。

あちこちで小学生とおぼしき集団が、アートの講義を受けています。

足が先に疲れて、ルーフトップガーデンで休む。


シンガポールの名所が一望できる。

見慣れるとやはり幕張。

残りは駆け足で、締めは、旅行中にインスタ経由で情報をくださったシンガポール在住の友人の勧めによりギャラリー2階にあるViolet Oonというカフェに行ってみました。

コロニアルプラナカンという風情の素敵なインテリア。スタッフもインド系、マレー系の美男が多く、目の保養をさせていただきました。

ただ、black coffeeを頼むと、砂糖入りミルクなしのブラックコーヒーが出てくるんですよね。without sugarと強調したのに、そういうレシピはないんですな。甘いコーヒーは大の苦手なのでとほほでした。他のテーブルの方々は、3段トレーに甘いモノどっさり載ったアフタヌーンティーをお楽しみでした。(無理だ……と思いながらちら見する) それ以外はほんとうに時間を忘れる素敵なお店。

インド系美男スタッフは最後まで親切で、タクシー乗り場が見えるところまで送ってくれました。

ぎっしり5日間、久々のシンガポールを満喫できました。以前より多くの場所に行くことができたので理由を考えてみますと、まあいろいろありますが、その1つは「買い物をしなくなったから」。今すっかり物欲がなくなり、モノより経験が面白い。モノならば日本でもいくらでもあふれているし、世界中のモノがいつでもECで買える。場に敬意を払える清潔で上質な服を2、3着、着まわしていれば何の問題もない。今回買い物したのはアラブ香油、小さな2瓶だけでした。ホテルでランドリーサービスも活用し、少ない枚数の服で過ごしたので行きも帰りも軽々。こういう旅の方が快適で、充実しますね。味をしめたので日常生活からも携行品を減らしていこうと決意。

ココ・シャネルが最後にもった服はベージュと黒のシャネルスーツ2着、という話がなかなか深く響く。

ともあれ。次回、シンガポールに来るときにはディープな「人」や「組織」の内部の取材をしてみたいです。

などと書いても書かなくてもよいような「締めの文句」を書いているあたりは19歳の頃に旅行ライターをしていた頃と変わらないな。

 

シンガポール関連記事はこれで終わります。おつきあいくださいまして、ありがとうございました。インスタ経由でオンタイムに情報をお寄せくださった方々にも心より感謝します。旅のきっかけをくださったグランドハイアットシンガポール、グランドハイアット東京、そして映画Crazy Rich Asians にも深く感謝申し上げます。

フラトンホテルの近辺は金融街シェントン・ウェイ。


今、世界でもっともお金が動いているスポットのひとつとも言われてますね。(金融にはまったく縁遠いわたくしです)

 

10年前にはまるで面影もなかったような、超近代的な高層ビル群が。

昼休み終了間近のビジネスマンのスタイル観察。ほぼ長袖シャツスタイル。タイレス。シャツには胸ポケット付き。トラウザーズポケットにも胸ポケットにもいろんなものがぱんぱんに詰め込んであるのは日本と変わらず。やはり年間を通して外気温ほぼ28度前後という環境においては、ドレスシャツそのものが「上着」になる。原理原則ではシャツの胸ポケットを廃止すべきなんだろうけど、現実問題として、本来ならば上着の内ポケットに入れておくべきものをどこかに収納せねばならない。となればシャツの胸ポケットは切実に必要なんだろうなと思う。

人は「原理原則にのっとった正しい服」のために生きているわけではなくて、服は人の仕事を助けるべきものである、という立場に立てば、亜熱帯~熱帯地方での胸ポケットはアリでいいんじゃないか。(すでに勝手に普及してますが……(^^;)) いずれにせよ、既成事実が今後の歴史を作っていく。

しつれいしました。お仕事おつかれさまでございます!

いろんな経済会議が開かれておりました。

 

建物の裏側?はリバー。リバーサイドには柵も何にもない。悠々と船が航行しています。

こんな活況を呈している国際的金融センターもあれば、アラブ街、インド街、チャイナタウン、ホーカーズに行けばさらになんでもありで、それぞれの世界のエネルギーに触れると、小さい一世界の価値観にふりまわされて落ち込んでいるのがくだらなく思えてきて、少しだけ救われるね。

名門フラトンホテル。


やはりコロニアル建築を見ると落ち着きます。どこから見ても壮麗です。

ホテルの入り口にはレッドカーペット。


そこはかとなくイギリスっぽいクリスマスの装飾。

この吹き抜け。同じ吹き抜けでも成金感はなく、次回はここに泊まってみたいな。

建物の中に鯉まで泳いでいます。


本格チャイナのJade でランチをいただきました。壁紙といい、インテリアといい、スタッフの制服といい、すべてJade (翡翠)色で揃えられていて、ロマンティック。


天井が高いところが、コロニアル建築の好きなところ。このあとすぐ満席となりましたが、付近のエグゼクティブビジネスマンとおぼしき方々、社交人士と思しき美女たちの立ち居振る舞いもなかなか美しかったです。

 

 

小籠包はじめ点心いくつかと、北京ダックをいただきました。すべて美味しいのですが、北京ダックのお肉はさすがに満腹で食べきれず……と困っていたら、なんときれいにタッパーに入れてテイクアウト用に包装してくださいました。さすがのサービス。カトラリー、食器、テーブルクロス、すべてが選び抜かれていて、目も舌も心も満足。ここは夜、お酒とともに数人で多種の料理を楽しみたいレストランですね。全力推薦。

リトル・インディア。 10年以上前のシンガポール旅行では必ず来ていたので懐かしさもあり。

前の週がお祭りだったとかで、その名残もあるセラグーン・ストリート。

礼拝には裸足になる必要があります。中は礼拝の人たちでひしめいていました。

ありとあらゆるものを売っている。香料、人の匂い、食物、布、雑貨のにおいが入り混じり、あまりの強烈さに倒れそうになりました……。

インド料理は好物ですが、体力が落ちているのか、雑多な生活臭が入り混じる匂いは受け付けなかった。結局、お目当てのインドデパート再訪も省略して、30分ほどで退散しました。次回訪れることがあるとしたら案内してくれる人が必要かな。素人うろうろでは難しい。


それにしても、インド人は美しい。

「世界で二番目に大きなルイ・ヴィトン」という建物に入ってみました。

一番目はどこですか?と聞いてみましたが、答えてもらえませんでした。私もわかりません。ご興味が湧いた方は、各自で調べてくださいませ。


店舗+美術館+ヨットを足して3で割ったようなイメージ。


階上にはルイ・ヴィトン関連の本やアートピースが展示されています。


外に出るとヨットのデッキのようなくつろぎどころ。

ルイ・ヴィトン、バルーンキャンペーン。意匠を凝らしたバルーンがあちこちに。



巨大スカーフも「壁紙」として贅沢に使われています。


そのままショッピングモールに続くのですが、建物の下に「川」が流れており、レジャーボートで行き来できるってちょっとけた外れのスケール。

クラブ55でのカクテルタイム。

ここのカクテルタイムをめあてに宿泊している方もいるそうで、たしかに、シンガポール全景を見おろすことのできる高層階でのシャンパンは伸びやかな気持ちにしてくれます。

お酒の種類も、お料理も、カクテルタイムにしては充実しています。フリーフローで、スタッフがどんどんついでくれることも手伝って、気が付けばかなりの量を飲んでいたのでは。

部屋からの夜景。このあと噴水ショーが見えるはずでしたが、疲れが重なっていたところにシャンパンが効いて、爆睡……。ショーを見逃しました…。

朝食は、インフィニティープールの隣にあるSpagoでのブッフェ。上質な素材が、多すぎることなく(←けっこう大事)揃い、美味しかったです。

早朝からインフィニティ―プールで自撮る人々。100mあるこのプールで「泳いで」いる方を一人も見なかったという不思議。

マリーナベイサンズホテルはスケール感と目新しさで1泊するにはよかったですが、それ以上はよいかなという感じでした。人の行き来も多すぎて、雑然としていて、寛げないのですね。よくもわるくも観光地ホテルというか。ホテルそのものが巨大レジャーランドとして作られているので、その目的は十分、果たしていますが。


部屋から見下ろす昼間の光景。幕張っぽい感じもありますが、左手に奇妙な形のV字型の建物が見えますね。これが「世界で二番目に大きなルイ・ヴィトン」です。次の記事ではこちらの内部の模様を。

11月7日付けの日経新聞×Hankyu Men’s の広告に登場しました。

恩師でもある大住憲生さんとギフトについて対談しています。

「相手のことを考えた(フリした)無難なモノ」よりも「これがいいと自分が思うモノ」のほうが、関係性の構築にはよい、という発見があった対談でした。

ほんとうは何だって嬉しいんですよね。時間をわざわざ使って、考えて贈ってくれたということじたいがありがたい。

 

そして「自分にごほうび」、これ、ほんと私やらないのです。恥ずかしすぎるというか、ごほうび受け取れるほど成果上げてないだろう、と自分では思ってしまう。自分で自分にプレゼントしてもなんだか虚しいし。人さまに喜んでもらう方が嬉しいので、時間もエネルギーもそのように投資する方が多いかなあ。予想外のギフトが還ってくることが多々あります。もちろん、投資した分が常に還ってくるとはかぎりませんが、投資しなければまったく返ってこないのは確実なんですよね。

3晩めはマリーナベイサンズ泊。


タワーが3つもあり、タワーの車寄せには信号まである。世界中からの観光客で大混雑。これはタワー1の入り口で迎えてくれるクリスマスツリー。すべてにおいて巨大。スケールがけた違い。

フロントロビーから見上げると。(おのぼりマックス)


入っているブランドも半端ではなくて、これは超高級フランス香水ブランド、アンリ・ジャック。アルコールを使わない、高級素材のみを使ったオート・フレグランスなのですが、香りも別格、価格も別世界。パリに本店がありますが、アジア第一号店がここだそうです。店員のシンガポール女性もコンパクトセクシーというか、小柄ながら洗練されていて自分のいいところを引き出す術を心得ている感じで、魅力的です。

ショッピングモールもけた違いの規模で、世界のめぼしいブランドがほぼ全部入っているのではないか。シンガポール全体に、コンビニよりもシャネルが多いという印象なのですが、ハイブランドの店舗が見飽きるほどある。カジノの出口に高級時計店がずらりと揃うさまは生々しかったな。ここで利益を時計に換えて本国へ持ち帰るという仕組み? (私は賭け事が苦手でカジノには入りませんでした)


さて。建物の外、下から見上げるとこのような構造になっていることからもおわかりのように、高層階は、窓が地面に対して90度ではなく、海側に傾いているんですよ。

41階の部屋の窓辺はこのような感じ。足がすくみます。高所恐怖症ぎみなのであまり窓辺には近寄らないことにします。幸い、お部屋も広い広い。



タオルアートのうさぎとマネージャーからのカード。いま、ホテル業界ではタオルアートが流行りなのでしょうか?


水回りもゴージャスで、バスタブとは別個にあるシャワールームも大理石で、広い。アメニティはアロマテラピーのもの。

ただ、スケールは大きく作りも贅沢なのですが、ちょっとした細部が行き届いてないのですな。ソープをおくケースがないとか、ドライヤーが別のところにあって持ってこなくてはいけないとか、このクラスの部屋なのにバスローブが薄くて安っぽいとか、クローゼットが狭すぎるとか。ほかにもホテルチェッカーの目になりいくつかチェック事項がありました。(スミマセン、職業病です)

クラブ55 (クラブラウンジ)のアクセスをつけました。朝食、アフタヌーンティー、カクテルタイムがフリードリンク、フリーフード。雑然としたところはなく、サービスは行き届いていて、スタッフが丁寧に飲み物のリクエストを聞いてもってきてくれます。


真下には前日に見たスーパーツリー群。どの方向にもユニークな景色が広がります。

とはいえ、見慣れると既視感……。横浜と幕張と銀座と表参道を足して4で割ったような印象もそこはかとなく、なきにしもあらず。

クラブラウンジのドリンクカウンター。フルーツはたくさんあってもどれも「甘くない」。野菜に近い味わい。日本のフルーツの甘さが特殊なんですね。マンダリンオレンジだけは美味しかった。


そして宿泊客限定の、インフィニティ―プール。

世界中からインスタ蠅(わたしもな)が集まる聖地のようになってますね。みなさん自撮りがお上手。というかビニールケースに入れてのプロ自撮り。私はスマホ落っことしたら怖いので持って入れませんでした。

はい、これを撮らずに帰れませんね。笑

 

プールの水は意外と冷たくて長い時間は無理でした。そのままスパであったまりましたが、スパはこのレベルのホテルにしては規模も小さいし、庶民的な感じです。「万葉の湯」みたいな。(おとしめているわけではなく、私は「万葉の湯」のゴールド会員です。念のため)

 

 

セントーサ島、S.E.A. アクアリウム。



いきなり頭上にサメのお迎え。

外はかなり激しい雷雨だったので屋内で楽しめるところは限られており、当初さほど大きな期待はしていなかったのですが。こんなカラフルな熱帯魚群。

予想以上に楽しめました。コメントほぼなしでインスタ映え(笑)写真のオンパレードね。


最初にこの方を食べようと思った人間の気がしれません。

クラゲがデジタルアートのよう。いやデジタルアートがクラゲを模倣しているのか。

このストライプの美しさ!

透明感がありすぎて骨が全部見えてる子たち。

ヒ☆ト☆デ☆

JK軍団のあとにフォトスポット。ばかじゃないの、と笑われつつ。撮ったもん勝ちね。

雄大すぎて神々しささえ感じる。

巨大な映画のスクリーンのような水槽。ただただ水中に魚たちが泳いでいる光景を見る。不思議なことに、何の人為的な演出もないのに、ぜんぜん見飽きないのね。魚がひたすら泳ぐ。ピュアに生きて泳ぐ。それを見ているだけで次第に癒されていくんですね。純粋に生きているだけで人に癒しと感動を与える。これは偉大なことですね。


巨大な混合施設の外には、フレッシュオレンジをスクイーズしてフレッシュオレンジジュースを売るという自動販売機。3ドル。美味しかった!

 

最初の2晩にお世話になったグランドハイアット・シンガポールについてもう少し。

今のシンガポールの近未来的な喧騒のなかで過ごしたあと、こういう品の良いゆったりした空間は癒しになります。どんどん新しいホテルが建っていくシンガポールのなかにあっては、もしかしたら「時代遅れ」なのかもしれませんが、そのくらいがちょうどいいと思える時もあるんですよね。


帰ってくると、タオルアートのうさぎとメッセージカードが迎えてくれます。嬉しくなります。


熱帯ならではの光景。スパに向かう途中もわくわくします。


プールもシックでクラシック。プールサイドのレストランもムードが素敵で、ぜひ行ってみたかったのですが、今回は時間がなく断念。

スパの施術室。トリートメントを受けなくても、サウナとジャクジーなどは使えます。ドライ、スチーム、2種類のサウナがあり、ジャクジーも広い。ただアメニティやドライヤーまわりなど、日本のホテルのスパと比べるとかなり不便です。日本のホテルは痒い所に手が届くというか、「ここにこういうのがあるといいな」と思うものがすべてそろっていたりしますが、そちらのほうがむしろ特殊なのかもしれませんね。


コロニアルな雰囲気のスパラウンジ。早朝から、フィットネス帰りのビジネスマンがここでパソコンに向かって仕事していたりします。実際、客層を観察するとエリートビジネスマンの一人旅という風情の方が圧倒的に多かった。



朝食はストレートキッチンでのブッフェ。通常のヨーロピアンスタイル、アメリカンスタイルのほか、インド、ムスリム、チャイナなど、各国料理が揃うのはさすが。朝からインド料理を食べてみましたが、本格的なカレーでナンも美味しく、リトルインディアまでいかなくていいレベル。



各国料理の様々なにおいが混じり合うのが快い、と感じるのはシンガポールならではでしょうか。

クラブラウンジでは好きなときにドリンクをいただけます。アルコールは夜からですが、お酒の種類も豊富で、気が付けば3杯とか。笑 お料理もそこそこ充実しているので、疲れているときにはここだけで十分。

チェックアウトも少しだけ時間を延ばしてくれました。いたるところでゲストの身になった寛大な対応をしていただき、学ぶところも多かった。マネージャーはじめスタッフのみなさま、ありがとうございました。

 

 

ナイトサファリに向かう途中で雷雨になり、動物園がクローズドになったとかで急遽、マリーナベイ周辺を夜散歩。

Crazy Rich Asiansでもひときわ存在感を放っていたスーパーツリー・グローブ。
(ガーデンズに着いたら雷雨もやんでいる。)

 

マリーナベイサンズホテルとの相性も抜群。

こういうものを作ろうと思う発想そのものがかっこいいし、またそれを実現できてしまうパワーにはただただ圧倒されます。あやかりたい。


下から見上げるツリーには近未来を感じます。

 

どうしたらこんな建築が可能になるのか。間近で見ると心底、感動します。うわー。(ボキャ貧)


National University of Singapore.  通称NUS。

アジアナンバーワンの大学。東大はNUSよりもはるか下のランキング。

とてもわかりやすく、おしゃな「標識」。

建物の中や外に、こんな風に偉人の言葉が書かれていたりする。


いやもう想像をはるかに超えるスケールでした……。

広大すぎるほどの構内は徒歩で回るなど当然無理。校内だけで無料バスが何ルートにも分かれてぐるぐる回っている。

文化施設、シアター、コンサートホールなども充実している。

どの建物もそれぞれの学問の特徴を生かした個性的な作りで、ロゴの文字やスローガンなどにいたるまで、いちいちセンスがよい。

飲食施設もいたるところに備えられており、手入れされた緑も悠々と広がる。こちらはセントラルライブラリーの中から眺める光景。「隣」の建物はあるのだけれど、見えない距離。


Mission: To educate, inspire and transform.

Vision: A leading global university shaping the future.

ミッションとビジョンがいたるところにこのように明確に掲げられている。そりゃあ学生も「なんのために大学に来ているのだろう?」などと余計な不安を抱くことなく、誇りをもって日々過ごすことができるだろうなあ。


構内にはレジデンスもある。大学関係者が住むのでしょうか。かなりお洒落な作りで、私もここに住みたいと、心底思った。


飲食施設もいたるところに豊富にある。ランチ難民などおそらくありえないほどに。こちらはホーカーズ風で各国料理をいろいろ好きなように食べられるようになっている。とても清潔で、もちろん外部からのゲストも利用可能で、普通のファミリーなんかも来ている。小籠包をいただきましたがかなりおいしかった。

あいかわらず「緑茶」がお砂糖入りで甘いのだけは困った。大学のせいではありませんが(^^;) この砂糖緑茶の延長に、抹茶ソフトとか、抹茶チョコとかの人気があるのね。

 

 

アラブストリート。

ベタですが、モスクを背景に。


目的の一つは、香油を買うこと。ジャマール・カズラ・アロマティクスさんで、いろいろ香油を試しつつ、2種、購入してきました。

同じ香料を使っていても、アルコールを使うものと、使わないものでは、まったく違う印象の香りになるのですね。中東の歌姫ナジワ・カラームにインタビューしたとき、別世界の人のようないい香りがしていたので聞いてみたら、アラブの香油と西洋のパフュームの重ね使いでした。以後、私もいつかチャレンジするぞと思っていたので、念願が叶いました。幸いなことに、フレデリック・マルと非常に相性が良いことを発見。

それにしても日本人のお客様が多いのですね、この店は……。

日本でいえば竹下通りのようなハジ・レーン。おしゃれなショップがひしめいております。


アートな店舗も。

これもかなり目をひきました。背景の高層ビル群とのコントラストがシンガポールらしさですね。午前中でしたので、飲食店はまだ開いてません。

高い湿度と暑さでじわじわ汗ばむ気候。鳥さんも水たまりの水を飲んでます。

 

Yomiuri Executive Salon 終了のあと、シンガポールへ向かいました。20年ほど前は一年に一度は訪れていたのですが、今回はほぼ10年ぶり。Crazy Rich Asiansを見たあと、なんだか呼ばれている気がすると思っていたら、諸々の幸運が重なり、縁あって出かけることになりました次第。

新しくシンガポールの象徴になっているアレもコレもまだ見ていない。というわけでJAL深夜便で羽田を発ち、早朝のチャンギに着きましたが、この空港もいっそうスケールアップしておりますね。

最初にお世話になるホテルがオーチャードのとても便利なところにあるグランド・ハイアット・シンガポール。早朝7時過ぎに到着したら、なんと、寛大なことにすぐにチェックインさせてくださいました。

(この花、全部ピンクの胡蝶蘭) お部屋はシックなインテリアで、リビングとベッドルームが分かれたスイートタイプ。

水回りもたっぷりとスペースをとってあり、快適です。

マネージャーからのウェルカムメッセージがフルーツやクッキーと共に届けられておりました。

こういう歓迎は心があたたくなりますね。

クラブラウンジを終日、使わせていただくことができ、飲み物やフルーツとともにリラックスして仕事もできます。

早朝からチェックインさせていただいたおかげで、深夜便の疲れがとれるまでゆったりリフレッシュでき、到着の一日をフルに使うことができました。ホテルのホスピタリティのおかげですね。

 

9日(金)、ペニンシュラホテルのきらきらルームにて、読売エグゼクティブサロンに登壇しました。

Yomiuri Brand Studioの高橋直彦様との対談という形で、「日本におけるラグジュアリーの潮流とメディア、その未来を語る」をテーマに話をさせていただきました。

ご参加くださいましたのは、外資系ラグジュアリーブランドビジネスに携わる、ほぼ160名の方々。

ここ1,2年ほど調べたり取材したり考えたりしてきたことのエッセンスを凝縮して全投入し、「点」の現象を社会背景とからめたストーリーとして構成してみました。

かなり準備にもエネルギーをかけた甲斐あって、終了後のパーティーでは多くの方々から「面白かった」「点が線になってつながった」「そういうことだったのか!と目からうろこが落ちてすっきりした」「謎の流行の背景がわかった」などなど、嬉しいお言葉を100枚を超えるお名刺とともに頂戴いたしました。こういうお言葉をいただくと、苦労も報われます。ありがとうございました。

夏頃からお話をいただき、Yomiuri Brand Studio の高橋さまほか、大勢のスタッフのみなさまと準備や打ち合わせを重ねてまいりました。ぎりぎりまで「もっともわかりやすい伝え方は」と考えていたので、パワポの最終バージョンが完成したのは当日朝6時((^^;))。こういう私のペースに寛大なお心でお付き合いいただき、お世話くださいましたみなさまに、あらためて心より感謝申し上げます。とりわけ、高橋さまには、やや先走り過ぎているかもしれない私のテーマのご提案を受けて、それぞれのワードを膨らますためのお話を考えていただき、対談を盛り上げてくださいました。重ねて、御礼申し上げます。

 

キーワードは、Diversion and Inclusion.  Street Luxury. Scumbro. Logomania. Nike. Virgil. Woke Models. Plus Size Models. Fair is Foul and Foul is Fair. Tacky.  Camp. Art&Sustainability. Creative Risk. Generous Capitalism. Tradition of Brand.  Recruit of Artisan. DNA of Brand. Japanese Brand. Global Standard of Fashion Journalism. Fashion as Liberal Arts. etc.

私がキャッチして新聞などに記事として書いてから、だいたい数年たってようやく広まるという現象がこれまで見られていることから(今さらノームコアとかゴープコアとか)、上のキーワードに関することも、日本で話題になるには数か月から数年かかりそうですが。日本での波が来ても来なくても、グローバルモードからキャッチできた波は引き続き、自分の解釈で媒体に応じた形で発信していきますので、どうぞ今後ともよろしくおつきあいいただければ幸いです。

 

 

日本経済新聞 土曜夕刊連載「モードは語る」。本日は、香水ビジネスのゲームチェンジャー、フレデリック・マルについて書いております。

よろしかったらご笑覧ください。

香水は「成分を並べられてもわからない」という意味で、「料理と似ている」というマル氏。素材だけを列挙されても、どんな料理が出てくるのかわからないのと同じということですね。料理が発達しているフランスで香水も発達したことにはしかるべき理由がある、と。

 



Men’s EX × Nikkei Style 主催のSuits of the Year 2018. 日比谷ミッドタウンにて。

今年は第一回目とのこと。大勢のメディアが押しかけ、一般のお客様も多く、熱気にあふれて盛り上がりを見せていました。

 

受賞者のみなさま。ビジネス部門はファミリーマート代表取締役社長の澤田貴司さん。フォリオ代表取締役CEOの甲斐真一郎さん。 イノベーション部門はAIの第一人者、松尾豊さん。スポーツ部門は競泳選手の荻野公介さん。そしてアート&カルチャー部門は俳優の田中圭さん。

 

それぞれ、スポンサーである各テイラーのお仕立てスーツを着用し、やはりスポンサーであるグランドセイコーの時計を着用。スタイリングは森岡弘さん。

それぞれまったく違う印象のスーツで、着る人の個性をうまく引き立てており、眼福でした。

ファミマ社長の澤田さんは、「このシャツはファミマと帝人がコラボして作る2700円(正確な数字忘れた)のシャツ」と公開してどよめきを生んでました。ストレッチが効いて着やすそうで、見栄えもいい。これから発売されるそうですよ。

競泳選手の荻野さんはフォトセッションのときかなり暑そうで、常にヘアメイクの方に汗をおさえてもらってました。代謝がよいうえ、水着が多いので、荻野さん的にはスーツはかなり厚着になるのでしょうね。笑

個人的には田中圭さんのビームスのスリーピース!


ネイビー系のタイとチーフがまた美しくとけこんでおり、本人のちょっとしたサービスのしぐさもあいまって、とりわけ素敵でした。上の写真左は、金森陽編集長。

インターミッションの会場にて。左は今回のアドバイザー、森岡弘さん、右はMen’s EX編集部の田上雅人さんです。私はこの授賞式の直前に展示会に伺っていたロッソネロのタキシードを着ていきました。大きなボウタイ(メンズ)はロッソネロのオーナーデザイナー、横山宗生さんのデザインです。

いやそれにしても、ここぞのときにきちんと着用されたスーツというのは男性をひときわ格上げして見せますね。(ひどい着方のスーツもまた逆方向の影響を及ぼします)。いまはタイレス、カジュアル、スニーカーがビジネスシーンでも主流になりつつありますが、もうこんなフルドレス見てしまうとね。スーツの威力をあらためて思い知らされたのでした。仕事で輝いている人はたたずまいも堂々としていて、やはり内実がともなってこそスーツは最大限にその人を引き立てるというのも目の当たりにした気分。来年はせめて候補に選ばれるようにがんばろっと(笑)。

 

〇Men’s EX のコート特集の記事は、Nikkei Style にも全文が転載されました。こちらです

お時間のゆるすときあれば、ご笑覧くださいませ。

いまは紙媒体の記事の多くは後日ウェブで読めるようになるし、そもそも発売時にもdマガジンでも読めたりしますよね。であれば紙の雑誌の存在意義はどうなるのか。考えさせられます。

〇LEON × Nikkei Style Magazinの記事もウェブレオンに転載されています。こちら。

なんかこれも写真が容赦なく「ど」リアリズムで怖いのですが(ほんと、お見苦しくて申し訳ない)、そこで勝負してないのでスルーして本文のコメントだけ見ていただければ幸いです。

 

〇さて。

ウェブ記事ついでに。長谷川彰良くんのインタビュー記事。若い人にとてもよい刺激になると思うので、もしよかったら読んでみてね。

なんと、マンハッタンのエグゼクティブさながらに颯爽と風を切って丸の内を歩いているよ。笑

あの半・分解展にかけた彼の情熱の量やご家族のサポートがどれほどのものだったのか。あらためて目頭が熱くなりますね……。「お兄ちゃん」もいい味出してる素敵な人なんですよ。

教え子や(押しかけであろうとなんだろうと)弟子のめざましい成長、活躍ほど嬉しいものはないです。私も逆に彼らのひたむきな仕事ぶりから教えられるし、刺激をいただきます。「広めるのではなく、深める」という姿勢は、正しいと思う。深めた先に、すべてに通じる鉱脈が流れているんですよ。来年は世界に羽ばたいてほしい!

“The job of the artist is always to deepen the mystery.”  (芸術家の仕事とは、常に神秘を深めていくことである)Francis Bacon

読者のみなさまもそれぞれに、深まる秋を楽しんでください。(ご近所の寺家町の風景)

“My Generation” 一足先に鑑賞する機会をいただきました。

マイケル・ケインのナレーションで、1960年代のロンドンカルチャーを再検証。

映画、音楽、ファッション、写真、セレブカルチャー、ドラッグ問題。当時の熱気が、スピード感ある編集でよみがえる。マリー・クワントやポール・マッカートニー、マリアンヌなど、今の声で当時を語っているのも興味深い。ワクワクしながら60年代を学べるとともに、まさに現在起きていることが当時とつながっていると実感することも多々あり、おそらく若い人も当事者意識をもって鑑賞できる。

 

当時の階級意識がどれほど濃いものであったかというエピソード、それをぶち壊すために行動した若い世代、(スマホもないので)実際に顔を突き合わせて議論することがクリエイティブを刺激するということ、女性は「Birds」「Richards」などと呼ばれていたという面白隠語、古い世代の価値観にとらわれず「やりたいことをやった!」人たちが変革をもたらしたということ、当時のアートスクールが果たした役割、女性の服には「注目される」「セクシーである」「気分が上がる」ことが必要であって「あたたかくしておく」ことなど不要であると言い切るマリー・クワント、「コマーシャル・フェイス(商売になる顔)」だと思われたというだけでスターになったマリアンヌ・フェイスフル、マイケル・ケインの「ケイン」はボガートの「ケイン号の叛乱」のケインだったというエピソード、などなど、いやもう目からうろこがはがれっぱなしでほんとうに楽しい映画だった。

マイケル・ケインがつぶやくセリフ、”Never Ever Dream Small.” (夢を小さくまとめるな)が余韻を残します。

イギリス文化ファン、ファッション史の学徒は必見よ。監督はデイヴィッド・パッティ。

2019年1月5日公開。東北新社配給です。

 

 

ファクトリエ創業者、山田敏夫さんの著書『ものがたりのあるものづくり』(日経BP)が発売されます。

読み始めたら、ぐいぐい引き込まれる、山田さんとファクトリエの冒険物語。大きな組織におさまって安寧の日々を送ることに価値は見いだせず、自分の力でどこまで情熱を燃やして成長が続けられるかという道に価値を感じるという感覚は、他人のものとはおもえない(^^;)

とはいえ、山田さんのほうが、けた違いの使命感をもっている。「生きることは、目的ではなく手段」とまで言い切る。何のために命を使うのか? 失敗や挫折を重ねていきながら軌道修正し、人を巻き込み、ポジティブな熱狂の渦を起こしつつ、目的をさらに明確にしていく軌跡は、「ヒーローズ・ジャーニー」そのもの。

工場に脚光を当て、ものを作る人を主役に押し上げたゲームチェンジャーでもある山田さんはアパレルの救世主であるだけでなく、衰退の一途をたどっていた日本のものづくり産業そのものの救世主である。多くの人が、最初にタブー破りを敢行した山田さんの考えと哲学に共鳴し、後に続いている。そうした模倣者が続くことで、世の中全体が変わるのだ。

まったくのゼロから何かを始めようとする人にも、背中を押してくれるエピソードが満載である。とりわけ、地方での営業の苦労エピソードには涙と笑いが一緒になって押し寄せてくる(映画化希望)。山田さんは、ひたすら行動の人だ。自分で決めたことをとにかく黙々と、めげずに、ひるまず、飽きず、続ける。その行動が次の扉を開いていく。

途中、なんども泣けた。とりわけ、周りの多くの人の優しさや変化に。その優しさや変化も、山田さんの真摯な情熱、高いビジョンのために行動し続ける熱意が引き寄せたものだ。嘘偽りも誇張も書かれていないことは、本人の人柄を知っていればわかる。

本書を若い人に(いや中年以降の方にもだが)お勧めするだけでなく、ファクトリエの製品もお勧めできます。色気はあまりないのですが(笑)、だからこそ逆に年齢や性別を超えて長く使い続けられる、質の高い製品を出している。私は次男とファクトリエの帆布×レザーのトートバックを共有しているよ。ちょっと痩せてから(いつだ)汚れがすぐ落ちるホワイトデニムにも挑戦したいし、「育てるカシミア」も気になっている。

今後の世界展開を心から楽しみにしつつ、応援します。

 

 

フレデリック・マル祭りが続きます。フレデリックを囲んで、小人数でのランチという贅沢きわまりない会。パレスホテル「クラウン」個室にて。

質問に対する回答を兼ねたお話ひとつひとつが、詩的で、時にユーモラス、時に皮肉まじり、時に論理的、時にあとからじわじわくる……とまるでフレデリック・マルの香水ラインナップのようでした。いつまでも話を聞いていたかったなー。ほんとに素敵な語り口だった。芸術家にしてビジネスマン。


時間が限られていたのが惜しかったですが、最後に、フレデリックから直々にシグネチャー・パフュームを選んでいただきました。


私の印象は、Lipstick Rose だそうです。とても華やかな、鮮やかな色彩を感じさせる香りです。光栄ではありましたが、自分が自分に抱いているイメージと、人が自分に抱く第一印象はほんとに違うんだなといつも思う…。私は素朴で地味な人間で、華やかさとはもっとも遠いんだけどね。華やかな場に出入りすることが仕事上、多く、場に敬意を払った服を着ていくと(←こういう行動そのものが愚直でしょ?笑)華やかな錯覚ないし誤解を与えるのですね、おそらく。

今回は時間がなかったので、フレデリックはそれぞれのゲストにほぼ第一印象だけで銘柄を選んでくれたのですが、パリでお客様にシグネチャー・パフュームを選ぶときには、じっくり時間をかけてお客様の話を聞いてから選ぶそうです。お客様は赤裸々に、時に人生のすべてを(罪までも)告白してしまうんだそうですよ。だからフレデリックはパリの顧客の私生活を全部知っている。笑 まるで神父さまですね。

要は、これまでの人生を作ってきた内面+こうなりたいという未来の理想の先に、ぴったりの香水がある、ということですね。なるほど、香水が人生と密接に関わっているフランスならではの考え方。

お話を聞いて得た収穫はあまりにもたくさんあるのですが、近日中に活字でまとめます。インスタグラムで反応があったスーツのことも詳しく聞きましたよ! 正統な紳士文化(スーツ文化)を継承している、グローバル・ジェントルマンでいらっしゃいます。

Uomo、Ginza、Figaro、Numero、Precious各誌のすてきな編集者のみなさま、ありがとうございました。エステー・ローダーさま、キャンドルウィックさまにも心より感謝します。(この日はフレデリック・マルに敬意を表して、マルカラーの赤×黒を着ていきました)

 

 

 

 

フレデリック・マルが日本に再上陸します。フランス大使公邸で発表会がおこなわれました。

フレデリック・マルの叔父は映画監督のルイ・マル。祖父はパルファン・クリスチャン・ディオールの創設者セルジュ・エフトレ=ルイシュ。母もその部門で長らく指揮をとっていたという、サラブレッドですね。

フレデリックはニューヨーク大学で美術史と経済学を修め、卒業後は広告代理店での経験を経てから、プレステージフレグランスのラボとして知られるルール・ベトラン・デュポンに入社。そこで多くの調香師たちと出会い、彼らと親交を深めながら膨大な香りの原料に対する知識や調合、構成などに対する造詣を深めていきます。

多くの香水会社が「ブランドイメージ」「キャンペーンモデル」「パッケージ」「ローンチパーティー」などに奔走するなか、フレデリックは主役である「香り」そのものに焦点を取り戻すことを考えます。

そして2000年、「エディション ドゥ パルファム」(香りの出版社)を掲げた自身のブランド、「フレデリック マル」を創設するのです。

フレデリック自身は、編集者として、調香師たちを「作家」「芸術家」として扱い、彼らに自由に芸術作品を創作させ、彼らのそれぞれの名前を冠した香水を世に出すのです。つまりフレデリックはブランドのCEOにして、作家の能力を引き出す編集者。このあり方じたいが本質的ながら斬新で、持続性もある。結果、本物を求める香水愛好者たちから絶大な支持を得ています。

私自身、フレデリック・マルのことは、10年以上前に伊勢丹メンズに入ってきたときから知っておりましたが(OPENERSでバイヤーと対談しました)、その後日本で見かけることが少なくなり寂しく思っていました。このたび、エスティ・ローダー社がグローバルに事業を展開します。なんと心強いことでしょうか。

発表会ではマル氏のスピーチのあと、作家の平野啓一郎さんとの対談がおこなわれました。平野さんは、マルのコレクションの香水のタイトルの日本語訳を作ったそうです。やはり、「文学者」の訳なのですね。「享楽之華」とか「口づけの薔薇色」とか「スヰートアカシア」とか……。やや気恥ずかしさもありますが……(^^;)

スピーチからも対談からもとても多くを学ばせていただきました。とりわけ印象に残った言葉をメモメモ。(重複した発言などは、私の印象としてまとめてあるので、そのままの言葉ではないことがあります)

・一流の調香師たちに大衆向けの香水を作らせるのは、F1ドライバーにタクシーの運転手をさせるようなもの。

(中野註:タクシーの運転手をおとしめているわけではもちろんありません。ジャンルが違う、という喩えです。)

・現代は10㎝ほどのスクリーン(スマホですね)のなかですべてが完結するようなところがある。でもほんとうの満足はそこにあるのか? 私たちはスマホにできないことがやりたい。インターネットで再現できないこと。それは香りであり、人が愛を交わすことではないか。「人が愛を交わすことがなくなったら私たち香水会社は倒産してしまう」。

・人間が人間であり続けるために香水がある。

・香水はセンシュアルな欲望を育て、インティメートな関係を深めるためのもの。人と人との関係を近づけるためのもの。(スマホは逆に人と人との距離を遠ざけている)

・今後、ロボット向けのフレグランスが出るかもしれないが、ルームフレグランスと人間用香水を差別化しているように、ロボット用香水と人間用香水は分けて考えるべき

・香水の名前の役割とは、方向性を失わないための道しるべ。

・フランスの作文教育では最初に2時間程コンセプトを考えさせる。その後、2時間かけて実際に書いていく。香水もまずはコンセプトを考えるところからスタートする。

・香りを表現するために作られた言葉はない。だから調香師たちとは、料理や化学に使われる言葉を使って、独自のコミュニケーションをとっている。

100人ほどのゲストがいらした中、本物の(!)香水の香りにひたりながらもちろん最前列で聞いていたので、細部もよく見えました。フレデリックはスーツの着こなしもすばらしいのですが、カフリンクスがポップな黄色だったのね。ちらっと、わかる人にしか見えない。そしてポケットチーフもペイズリーっぽいのが5ミリほどしか見えない。こういうの発見すると、うれしくなるわ~。お宝さがしみたい(コドモか……(^^;))

 

みなさまもシグニチャー・フレグランスを探してみてね。私は「ポートレート・オブ・ア・レディ」に脳天をやられました。メンズにおすすめは、「ムスク・ラバジュール」かな。ジョージ・クルーニーもこちらを愛用しているそうですが、まさにそういうイメージ。男女ともに使える香り。

とはいえ、全種類、それぞれにまったく個性が違うので、すべて、お勧めといえばお勧めなのですが。同じ香りでも、人によって違う印象になるので、いろいろ試してみるのも楽しそうですね。意外な自分の一面を発見できるかもしれません。