英デザイナー、アレクサンダー・マックイーンの訃報にショックを受ける。11日朝10時に、グリーンストリートのフラットで首を吊った姿で発見されたとのこと。母の葬式の前日だった。まだ40歳だ。

3月のパリコレの準備も進んでいたという。「アンファン・テリブル」と呼ばれた天才の心の奥底まではうかがいようもないが、マックイーンの庇護者でもあり恩師的な存在でもあったイザベラ・ブロウも3年前に自殺している。ブロウを失い、母までも失った悲しみに耐えられなかったのだろうか・・・。真実は永遠にわからないが、なんとも悲しくやるせない。

英各紙には多くの著名人のショックと悲しみのコメントが掲載されていた。

そのなかでひときわ異色ながら強く印象に残ったのが、「タイムズ」に掲載されたカール・ラガーフェルドのことば。

「マックイーンは作品のなかで、常に死とたわむれていた。どういうわけかわからないが、成功して、才能に恵まれていても、それだけでは、幸せになるためには十分ではないということだね。私はいつも彼の作品のなかに、少し人間性がそぎとられたような一面を見ていた。世界や現実から、距離を置こうとするような一面を。ファッションとはそのようなものだ・・・・・・・丈夫な胃袋をもっているわけではないのに、プレッシャーをかけられたら、不安やそのような一面にさらされるのだ」

サヴィル・ロウにお仕立てスーツを作りにくるミュージシャンの話、英「フィナンシャルタイムズ」1月30日付け。いつか役立ちそうな話だったので、備忘録まで。

始まりは1960年代から70年代初期。サヴィル・ロウのテイラー、エドワード・セクストンがビジネスパートナーのトミー・ナッターとともに、ミック・ジャガーはじめ当時のロッカーたちのスーツを作り始めたこと。他のテイラーたちは、幅広のラペルや変わったタイを見てとても不愉快だったらしい。「ミックはトラウザーズを極端に細くし、ハイウエストにするのを好んだ」そう。

セクストンとナッターは、ビートルズの「アビーロード」のアルバムジャケット用のスーツも作る。セクストンはまた、ポールの娘、ステラ・マカートニーの師ともなる。現在のセクストンの顧客のなかには、ピート・ドハティやデイヴィッド・グレイも。ちなみにスーツの価格は3000ポンドより。

90年代にはアルマーニやヒューゴ・ボスの既成服スーツに走っていたスターも、現在はサヴィル・ロウに来ているらしい。ラップのブリンブリン(金ぴか誇示)に対する反動もある、と。

また、テイラーのリチャード・アンダーソンは、顧客にジョージ・マイケルやブライアン・フェリーがいるが、歌手には特殊なアレンジをするという。演奏した時にちょうどよい長さに見えるよう、腕を長めにつくるとか、汗を吸収するために脇下に小さなパッドをつけるとか。

ロールスロイス、カントリーでの邸宅と並んで、サヴィル・ロウのスーツがロッカーにとってのサクセスの象徴になっているというシメ。

ロックってそういうコンサバな価値への抵抗からスタートしたんじゃなかったのか?と読後ふと疑問がよぎったのであったが。