日本経済新聞連載「モードは語る」。本日夕刊では、丹後の「民谷螺鈿」に取材した螺鈿織を見ながら考えたことについて。伝統を未来につなぐには何が必要かを、話を聞き、考えてみました。電子版は有料会員のみですが、こちら

写真はグオ・ペイによる螺鈿織を使った2019年春夏クチュールコレクションです。©Guo Pei.

6月末の天皇皇后両陛下の英国公式訪問で披露された写真や映像は、両国間の友情や信頼や愛にあふれていて、世界中の人々に美しい記憶を刻んだと思います。

勲章はじめジュエリーやファッションも各場面で素晴らしい働きをしていましたね。カミラ王妃のジュエリーやファッションに関してはいつものとおり、イギリスではすぐに詳細が報道されるのですが。精緻な刺繍や優美な生地の質感が画面越しからも伝わってきた皇后雅子様の衣裳ブランドや生地の産地に関しては、一切の報道がありませんでした。ティアラに関してのみ、少し伝えられたのみ。

日本のファッションや伝統産業を世界に宣伝するのにまたとない機会であったと思うのですが(実際、キャサリン皇太子妃は公務のたびに着用ブランドが報道され、イギリスファッション界に絶大な貢献をしています)、なぜ一切公表されないのでしょう??

素朴な疑問をもったので、宮内庁のHPから問い合わせてみました。半月ほど経って、以下のようなお返事をいただきました。支障のない内容だと思いますので、シェアいたします。

 

「お問い合わせの件については、契約相手方等を公表していませんので、回答を差し控えさせていただきます。
なお、参考ではございますが、ドレスコードの指定のあった行事は以下のとおりとなります。

・イブニング・ドレス
国王王妃両陛下主催晩餐会

・デイ・ドレス
歓迎式典
国王陛下主催午餐会
無名戦士の墓御供花
国王王妃両陛下とお別れの御挨拶
V&A子ども博物館
オックスフォード御訪問」

 

まずはご回答いただいたことに心から感謝したいと思います。ですが、やはり「契約相手を公表していないので回答を差し控える」というお答えです。

なぜでしょうね? 公表すると、競合からの売り込みが激しくなったり、そのブランドや産地が注目を浴びることで周囲からの嫉妬によるバッシング問題が起きたりする?? 契約相手本人が遠慮する??理由は推測するしかないのですが、あの精緻な刺繍で歴史に残る白いコートドレスを作ったデザイナーが、何らかの形で報われるとよいですね。

こういう機会はやはり、作った人にも脚光を当てて称賛することが、デザイナーにとっても国にとっても良い影響しかもたらさないように見えるのですが(他国の王室の例が顕著です)。日本の考え方は違うようです。

 

ちょっと文脈は違うのですが、いま、パリオリンピックでのモンゴルの衣裳が話題です。デザイナー、ミシェル&アマゾンカのインスタグラムで、細部の写真を見ることができます。

https://www.instagram.com/michelamazonka/

見れば見るほど、モンゴルの歴史やアイデンティティを刺繍や細部に精緻に織り込んだ、すばらしい作品であることがわかります。このブランドが世界的に飛躍する契機になったと同時に、モンゴルの洗練されたイメージが格段に上がりました。

日本はオリンピックや万博で着用されるユニフォームなど関しては公表されることもありますが、とりわけ最近は、肝心のデザインが「どうしてこうなるのだ?!」と疑問を抱かざるをえない結果になることも多々。美しさというのはブランドイメージに直結します。誰が見てもヒドイ、というデザインは国およびそのイベントの印象をだだ下げするばかりだと感じるのですが、この点に関してあまり真剣に考えられていないようです。

パリオリンピックはLVMHやジャックムス、ケリングなどがここぞとばかりあらゆるビジュアルにおいてイメージコントロール。やはりワクワクするほど素敵なのです。くやしいけど(笑)

 

 

 

 

 

きものやまと展示会で毎回、次は何が出てくるんだろうとワクワクさせてくれるのがKIMONO by NADESHIKO。

デザイナーの金子茉由さん(中央)とアシスタントデザイナーの長谷川杏莉さん(左)の独創的なきものスタイルもかわいい。右のマネキンは片貝木綿の着物の上にタオル糸で織った羽織を着ています。細部にもこだわりがつまっています。

パリを中心に活躍するアーティスト、ナタリー・レテさんとのコラボもあり、私もコラボの羽織を羽織ってみました。ふつうに洋服の上から羽織って違和感ありません(……よね?😅)
写真下の振袖もNADESHIKOです。シックでかわいい、個性的な振袖で、普段着としても着用可能。


若いデザインチームがノリノリで楽しんでいるのが素敵で、社長の矢嶋さんも「いやもうコントロール不能です」(笑)と優しく見守っていらっしゃいます。風通しのいい社風を感じます。

「きものテーラー」Y.&SONSにも自由でスタイリッシュなメンズ着物の新作が豊富。

もちろん王道の伝統美を表現する振袖も、さすが老舗の美しさでした。

きものやまと展示会でフィーチャーされていた、八重山諸島のミンサー織(の帯)。

柄にも意味がこめられ、五つの■が「いつの」を表し、四つの■が「世」を意味するそう。藍(=愛)を重ねるという意味合いも。

「いつの世までも、足しげく私の元に通ってください」というメッセージがこめられた、愛の織物。

すべて自然からとった染料なので、どんな色の組み合わせもしっくりなじむ。八重山諸島でミンサーを織る人たちの取材映像も鑑賞。「ものづくりのなかに生活がある」ということばが石垣島や西表島の風景になじんで、見れば見るほど、味わい深く感じます。

ドイツの皮膚科学者と福岡県糸島市のGST Japan 株式会社が共同開発したダーマトロジー スキンケアブランド、「ハウトシールド」発表会。「肌の盾」の意。

洗顔後、これ1本でOKというクリームは、ますます細分化が進むスキンケア市場では拍子抜けしそうですが、そもそも一般的なクリームとは構造そのものが違うとのこと。健康な肌を1枚重ねたような働きをして「楯」のように肌を育み、守ってくれるのがハウトシールドのクリームの考え方。

ファシリテーターにYukirin。代表のヤンケ清香さんのお話も興味深く、ビューティサイエンティスト岡部美代治さんの成分解説も勉強になりました。

ドイツの質実剛健と生真面目さが反映されているというイメージをうまくアピールした個性的なブランドですね。「キラキラ成分」は入ってないけれど、人類にとって普遍的に効果的な働きを精密に追求した、という姿勢が好感を持って受け入れられそう。

発酵エイジングケアFAS の10番目の新製品発表会。

Fas The Black Daily Sheet Mask.
丹後の黒米発酵エキス、山桜から生まれたポリフェノール成分
「精密発酵ナリンゲニン」、さらに屋久島産クチナシエキスなどを配合し、活性酸素を除去しながらエイジングケアをしてくれる5分間の「発酵漬け込みマスク」。

10月9日発売。

デビューしてもうすぐ一年になるFAS。開発チームの情熱もますます熱く、製品の原点に人がいる、ということを常に思いださせてくれる発表会。毎日のようにどこかで新製品が発表され、よい製品が過剰にあふれる時代だからこそ、携わる人間のぶれない意志と情熱が成否を決めるようなところもありますよね。PRの岡本さん、シロク専務の向山さん、ブランドマネージャーの井上さん、「Fermentation & Science Research Center」所長の伊達先生、そしてPRの田中さんはじめチームワークも絶妙です。

売り上げも好調でうめだ阪急でもカウンター常設とのこと。ますますの躍進を期待します。

ブルネロ クチネリが表参道店地下アートスペースで能登・輪島で作られた漆器の展示販売会を開催。

土曜日に開催されたイベントでは、輪島千舟堂の社長、岡垣祐吾さん、塗師の余門晴彦さん、蒔絵師の代田和哉さんのトークと実演。
クチネリジャパンの社長、宮川ダビデさんが「輪島のためになにかできないか」と考えていたところ、ある日曜の散歩中に偶然、千舟堂の東京展示販売会を見つけ、そこからの発展でこの日に至っているとのこと。これぞ引き寄せですね。輪島にも2回、訪れていらっしゃいます。職人とアートを大切にするクチネリならではの支援で、輪島塗の技法ばかりか、現状や現地の人たちの思いも学ぶことができた意義深い日になりました。この道40年以上という職人さんたちのたたずまいも言葉も仕草も、深い味わいがあって、作品と同様、美しいなあ…。
表参道店アートスペースでは、日常に使える食器からハイアートにいたるまで、輪島塗の作品が、鑑賞できるだけでなく、購入もできます! 8月31日まで。ぜひ訪れてみてください。

神戸ファッション美術館で「皇帝ナポレオンとその時代」展開催中。

マニアックな学芸員からの写真と見どころ(がんばったところ)紹介のメールが届きました。

・壁を当時の版画で埋め尽くした

・当時の靴に合わせ、一体ずつヒールの形を変えて靴を履かせた

・会場で1957年のワルターのシンフォニーNo.3「英雄」を流している  

ファッション史の学徒はぜひ訪れてみてくださいね。この時代のファッションを学んでおくと、「ブリジャトン家」を見るときにも理解が深まります。「ナポレオン」ものも「ジェーン・オースチン」原作ものもそうですね。

スターチャンネルで公開される『フュード/確執 カポーティ vs スワン』にコメントしました。

リアルサウンド映画部
https://realsound.jp/movie/2024/07/post-1716645.html

海外ドラマナビ
https://dramanavi.net/articles/257234

WEEKEND CINEMA
https://weekend-cinema.com/68284

 

伝説のBlack and White Ball が伝説どおりに再現されたのには興奮しました。代表的スワンにまつわるエピソードも、すべて名優たちが衣裳や演技に反映させています。アメリカファッション史の学徒はとりわけ見ておきたいドラマです。

〇スワンって誰?!っていうあなたのために、婦人画報で昔書いた解説のリンクをはっておきます。予習して臨むといくらかわかりやすくなるかも。

本物のセレブにして 最強のファッションリーダー。 アメリカで輝きを放った「スワン」とは?/前編 (fujingaho.jp)

 

本物のセレブにして 最強のファッションリーダー。 アメリカで輝きを放った「スワン」とは?/後編 (fujingaho.jp)

 

〇『スワンとカポーティ』映画パンフレットに寄稿したエッセイもご参考になれば幸いです。

 

 

 

モノづくりに携わる人たちの国際カンフェランス「Design Week Kyoto 2024」が8月末に開催されます。

私は8月31日のプログラムに登壇予定です。参加者同士によるディスカッションと交流がおこなわれる2日間。暑い京都ですが、同じ志をもつ仲間と交流できるまたとない機会です。

クラウドファンディングにも挑戦中。こちらに詳細も随時アップされています。

チケットはこちらから。

 

英コッツウォルズ本社からバンフォードのインターナショナル・セールスディレクター、トニー・スタック氏来日歓迎。コッツウォルズの雰囲気に似た軽井沢のハンナフラガーデンにて。バラをメインに500種の花が咲くプライベートガーデン。近くのビルゲイツ別荘からビル邸で不要とされた土をおすそ分けいただいたそうです(縁起よい土⁈)
バラから夏の花へ移行中といった感のあるガーデンでしたが、巨大なミツバチ、蝶、鳥が飛び交うワイルドな楽園のような場所でした。
The Barnのお料理、エスティームのおもてなしも素晴らしく、AMATAオーナー美香さん(右)、美容ジャーナリスト倉田真由美さん(左)はじめゲストの皆様も素敵で学ぶこと多々。倉田さん隣はトニー・スタックさん。コッツウォルズは30年ほど前に一泊、行ったきり。再訪したい思いが湧き上がっております。

今回の丹後取材で滞在したのは「かや山の家」。林間学校をリノベした、山の中にある素朴な、本当にシンプルな天空の宿です。ジビエや地元食材を使ったお料理もヘルシーでおいしい。何よりも朝起きて窓を開けたときの見晴らしは心のデトックス効果が高い。永遠に見ていられる佳景です。

 

今回、お世話になった方々とこの宿のレストランで夕食。

丹後織物工業組合の理事長(中央)はじめ今回お世話になったみなさま。

とりわけ北林功さんからは京都や丹後、亀岡まわりのさまざまな企業や地場産業にまつわるエピソードや歴史をふんだんにレクチャーしていただき、脳内アップデートを助けていただきました。時間の単位が1000年、100年なのが京都らしい。100年先を考える習慣、私も身につけたい…

ありがとうございました。

 

麻布台ヒルズのディオールの建築が隈研吾さんによるものと話題になってますが、そのキモとなる流れるような金属の織物素材(写真が紛らわしくて恐縮です。この建築のインテリアに使われています)を作ったのは丹後のレオナルド(ダ・ヴィンチ)こと豊島美喜也さんですよ。銀座ロレックスのファサードも、この方の作品が覆っています。

詳細記事後日。もっと職人にも正当な光を当てていきましょう! 海外ブランドが日本の伝統工芸の何かを使うとき、産地の名前は出るかもしれないけれど、職人の名前までは出ない。いや、出していこうよ。尊敬に値するクリエーターですよ。無名の職人が作ることが良いとされる民藝とはカテゴリーが違います。ご案内くださった北林功さん、豊島美喜也さんと。

丹後の螺鈿を手がける民谷共路さんを取材。きらきら光るものはやはりラグジュアリーの原点なのですよねえ。

そもそも丹後に来るきっかけになったのは、MIZENの展示会でした。螺鈿を使ったとんでもなく美しいアイテムたちを見てしまったことです。天然のきらきらの輝き。これがシルクと調和するとなんともいえない幻想的な作品になる。ぜひ一度、作るプロセスを見たいと思い、MIZENデザイナーの寺西さんにおつなぎいただいた次第です。

民谷さん取材中の光景。ご案内を引き受けてくださった北林功さん撮影。

ルイ・ヴィトン、ディオール、ハリー・ウィンストンはじめ高級ブランドが民谷さんの螺鈿や箔を使った生地で作品を発表しています。詳細記事は後日。しばしお待ちくださいませ。

北林さん、民谷さんと。ありがとうございました!

丹後に取材旅。職人さんにお話を伺う合間のプチ観光です。今回のご案内役をお引受けくださった「Design Week Kyoto」の代表理事、北林功さんにご案内いただきました。

まずは「立岩」。高さ約20mの一枚岩です。地下から上昇してきたマグマが固まり、その後の侵食により周囲の岩石が削り取られてこの岩が残されたといいます。

周りにお土産店など皆無というそっけなさがいい。いわゆる「観光地」はどこも資本主義のにおいがぷんぷんしすぎるのです…。

 

倭文(しどり)神社にもご案内いただきました。

織物の守護神とされる「天羽槌雄命(あめはつちおのみこと)」を祭神として、毎年春に、丹後ちりめんの繁栄を伝える三河内(みごち)曳山行事が開催されるとのこと。全国に倭文神社はいくつかありますが、そこはすべて絹織物との関連が高い地です。

それにしてもどうやったら「倭文」を「しどり」と読むことができるのか…(笑) 初見ではかなり難しいですよね。

私は名前に「織物」と「香水」の各一字が入っているためか、この領域に呼ばれることが多い気がします。謹んで参拝してまいりました。

 

 

「ゼロニイ」7月号に掲載された、スパイバー社関山和秀さんのインタビューがウェブでも公開されました。こちらからご覧ください。

ファッションのための繊維は当初の目的ではなかったのですが、まっさきに反応してくれたのがファッション業界であったと。社内ではむしろ「ファッションのような軽いことをしたくない」という反対が起きていたそうなのです。それでも関山さんは、理解してくれる業界があるなら、そこから一緒にやっていけばいいではないか、と。大きな目標を掲げたらその程度の批判は「誤差」でしかなくなる、というものの見方にもスケールを感じたなあ。

人類が奪い合いをする必要のない無限の資源、それを作り出すことで世界平和を目指すという関山さんの志の高さに感銘を受けています。

桃野泰徳さんの『なぜこんな人が上司なのか』。具体例がふんだんに詰め込んであって、エピソードとエピソードをつなぐのに「話は変わるが、」というお約束の話法。目の前で講演を聞いているような楽しさを覚えました。

リーダーシップ論なのですが次第に広がって人生論そのものになっていく展開もよいですね。以下は本書からの備忘録メモです。ちょっといい言葉。

・善い人が良い糸をつくり、信用される人が信用される糸をつくる。

・部下や子供たちの中に眠る無限の可能性を、毛の先ほども疑わずに信じる力。

・永遠に続く想いが利他的であれば、それは道になり、私たちの人生に意味や奥行きを与えてくれる。一方、永遠に続く想いが利己的であれば、それは餓鬼、修羅、畜生であって、地獄に変わる。

・意味があると信じ、考え、行動し続けることで、あらゆる出来事が意味に変わる。

散歩中に遭遇した、香箱座りのまま道の中央でびくとも動かないお方。何が来ても動じない肝の据わり方(?)、見習いたい。

「ポライト・ソサエティ」試写。これが今のロンドンを舞台にするイギリス映画ということにまずは衝撃を受ける。パキスタン系家族を中心に脇はアフリカ系が目立つ。給仕と校長はアングロサクソン。

かつてなら悪ガキ3人組大活躍という青春Bコメディが女の子に置換された現代感がある。豪華フォーマル衣裳でのカンフーは眼福でした。監督はニダ・マンズール。

8月23日(金)公開


2023年 英国インディペンデント映画賞 最優秀新人脚本家賞
2023年 フロリダ映画祭 観客賞
2023年 パームスプリングス国際映画祭 Directors to Watch
2023年 The Guardian’s Best Films