ECCIA(European Cultural and Creative Industries Alliance、欧州文化創造産業連合)という組織があります。イタリア、フランス、スペイン、スウェーデン、ポルトガル、ドイツ、そしてイギリスの7か国の欧州メンバーで構成され、ラグジュアリーセクターの共通の価値観をシェアし、協力しています。

英ラグジュアリー統括組織であるウォルポールが、各ECCIAメンバーのCEOを紹介し、それぞれの国のラグジュアリーセクターについて情報を発信しています。以下、翻訳していきます。原文はこちら、ウォルポールの公式HPをご参照ください。

シリーズの最初の回では、ニック・カーヴェルが、フランスのコルベール委員会のCEOであるベネディクト・エピネイさんにインタビューした記事を執筆しています。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ウォルポール:コルベール委員会について教えていただけますか? 組織には何人のメンバーがいて、会員資格の要件は何ですか?

ベネディクト・エピネイ:1954年にジャン=ジャック・ゲランによって設立されたコルベール委員会は、公益を目的とした非営利団体です。現在、93のフランスのラグジュアリーメゾン、17の文化機関、そして6つのヨーロッパのラグジュアリーメゾンが平等に参加しています。すべてのメンバーが共通のビジョンを共有しています。「フランスのサヴォアフェールと創造を情熱的に促進し、持続可能に発展させ、忍耐強く伝えることで新たな驚きの感覚(センス・オブ・ワンダー)をもたらす」という私たちの存在意義に表現されるビジョンです。この存在意義が私たちの日々の活動の基盤となっています。

コルベール委員会に応募するには、国際的に著名なフランスのラグジュアリーブランドである必要があります。その他の基準は機密事項です。各応募は2名のメンバーによって推薦される必要があり、「最上級のもの」が認められるよう、長期間の審査プロセスを経ます。

ウォルポール:フランスのラグジュアリーセクターの特徴と特質は何ですか?

エピネイ:フランス国内外でこの産業がリーダーシップを発揮し、CAC 40(パリ証券取引所の主要指数)の38%を占めるにいたったのは、数百年にわたる歴史の積み重ねの結果です(パンデミック前は28%でした)。14世紀には、美食とギヨーム・ティレル(タイルヴァンとして知られ、シャルル5世のシェフ)の世界初の料理本の出版に始まり、続いて16世紀にはフランソワ1世の治世下でクラウンジュエリーの確立と宝飾業界の神聖化がおこなわれました。

この歴史は、私たちの名前の由来であるルイ14世の財務大臣ジャン=バティスト・コルベールにより受け継がれます。ジャン=バティスト・コルベールは、王室の工房を創設しましたが、フランス各地に散在するこの工房がラグジュアリー産業の前身となり、今日の私たちの基盤を形成しています。私たちは文化機関と同様に、職人技とサヴォアフェール(匠の技、専門知識に基づく創造性)への情熱を共有しています。今日では、現代性と創造性を注入しながら、業界の長期的な将来に向けて伝統を維持することが必要になっています。

ウォルポール:現在、あなたの国のラグジュアリーセクターにおける主要な話題は何ですか?

エピネイ: 私たちは地政学的、技術的、人材的、環境的に、多くの課題に直面しています。私たちは、メンバー間で競争がない分野、すなわち全体的な利益・関心にのみ焦点を置くことに決めました。次世代の職人の採用、持続可能性、およびフランスや欧州の規制によって業界が脅かされたときの業界防衛に関心を注いでいます。私たちはラグジュアリー業界の未来について団結して考えており、文化と工芸を紹介するために海外でイベントを開催しています。

ウォルポール:フランスのラグジュアリー産業の成長にとって、最大の課題は何ですか?

エピネイ: 直面している主要な課題の一つは、次世代の職人の採用です。私たちの役割は、若い世代にこの職業の魅力をアピールすることです。2022年にStation F(ヨーロッパ最大のスタートアップキャンパス)で開催された若者向けイベント「Les De(ux)mains du Luxe」の成功を受け、2023年12月に第2回目を開催します。4日間、12歳から18歳の若者、その親、教師は、コルベール委員会所属メゾンのサヴォアフェールのデモンストレーションを見学し、さまざまな職業を体験し、学校が提供するトレーニングコースを発見できます。今年は、より多くの若者にリーチするために、TikTokで初のメティエダール(職人技の芸術)・チャレンジを開始します!

第二の課題はエコロジカル・トランジションです。ラグジュアリー産業は模範を示す義務があります。原材料の調達、包装、新技術と新素材の使用から修理やアップサイクルにいたるまで、つまり製品ライフサイクルのあらゆる段階に、私たちのメゾンは深く関与しています。証拠として、コルベール委員会はすでに2つのCSRレポートを発表しており、最新のものはビジネス日刊紙Les Echosと一緒に配布されました。昨年11月には、ユネスコと提携してEarth Universityで初めてこうしたトピックについて発表しました。メゾンの代表とRSEディレクターが行動と考えを共有し、世界中の聴衆に向けて発表しました。最近では、Salon 1,618と提携し、8つのメゾンと共にラグジュアリー製品のライフサイクルに関する円卓会議を主導しました。

ウォルポール:年間を通じて開催する行事のハイライトは何ですか?

エピネイ:コルベール委員会はいくつかの実働委員会から編成されており、それぞれ年に2回会議を開き、その年の主要な課題を話し合います。各委員会はメゾンの代表が率いています。その後、その年の主要課題を推進するプロジェクトグループを決定します。こうしたことは、メンバーの希望や機会に応じて毎年異なります。

主要プロジェクトに加えて、コルベール・ラボのような毎年恒例のテーマもあります。コルベール・ラボでは、毎年、若い才能が、与えられた課題について考察します。また、ENSAAMA(国立装飾芸術学校)と提携したシャイア・コルベールは、過去12年間、マスター2の学生に、各メゾンから提案されたデザイン課題に取り組む機会を提供しています。

最後に、年間を通して、HR、ESG、コミュニケーション、公共政策などの専門分野に基づいて、メゾンの従業員のネットワークを導いています。優れた実践例について話し合う機会を生むと同時に、共同イニシアティブや特別なイベントも生まれています。例えば、イヴ・サンローラン博物館やカルティエ・ジュエリー・インスティテュートへの訪問、ブシュロンやブレゲによって組織されたヴァンドーム広場の遺産に関する会議などです。

ウォルポール:CEOとしての任期中で最も誇りに思った瞬間は何ですか?

エピネイ: 誇りに思った瞬間は数多くあります。過去3年間には多くの「初」がありました。新しいウェブサイト、反省と見通しツールを兼ね備えた年次報告書、2つのCSRレポートの発表、そしてユネスコとのEarth Universityへの参加などです。最も感動的だったのは、2022年12月にStation Fで開催された「Les De(ux)mains du Luxe」イベントで、3日間で4,300人が来場しました。3人の大臣も参加し、次世代に熟練の職業を見て体験する機会を提供できた、感動的な機会でした。

ウォルポール: ECCIAのような組織が重要である理由は何ですか?

エピネイ: 規制の数が増加している中、ブリュッセルでロビー活動を行うことは重要です。こうした規制は、私たちのメンバーのビジネスモデルに影響を与える可能性があります。ヨーロッパ全体のラグジュアリーセクターの集団としての声を伝えることが重要です。こゥした活動によって、コルベール委員会が創設メンバーであるECCIAは重要な連合となります。

~~~~~~~~~~~~~~~~~
翻訳は以上です。ラグジュアリー業界になじみのない方のためにポイントだけお伝えしますと、以下の通り。

☆コルベール委員会とは?そのメンバーシップとは?

1954年に設立された非営利団体で、フランスのラグジュアリーブランドを中心に組織されている。メンバーシップは国際的に著名なフランスのラグジュアリーブランドに限られ、メンバーになるには厳格なプロセスを経る必要がある。

☆フランスのラグジュアリーセクターの特質とは?

数百年にわたる歴史があり、14世紀からのガストロノミーや宝飾品の発展に起源を持っている。ジャン=バティスト・コルベールが王室の工房を設立し、フランス全土に広がる職人技の基礎を築いたことが、現在のフランスのラグジュアリー産業の基盤となっている。

☆現在の主要な課題は?それに対して何をしている?

ラグジュアリー業界は、次世代の職人の採用や持続可能性、フランスおよび欧州の規制に対する業界の防衛など、多様な課題に直面している。それに対し、若者向けのイベントや職人技のプロモーション活動を通じて、次世代の育成にも力を入れている。

☆エコロジカル・トランジションに関しては?

ラグジュアリー業界はエコロジカル・トランジションの模範を示す義務があり、原材料の調達からアップサイクルまで持続可能な方法を追求している。

ECCIAの重要性とは?

ECCIAはヨーロッパ全体のラグジュアリー業界をブリュッセルで統合・代表する連合であり、規制の影響を受けるメンバーのビジネスモデルを守るために声を上げている。

(写真はPortrait of Jean=Baptiste Corbert 1666頃。Public Domain)

 

0 返信

返信を残す

Want to join the discussion?
Feel free to contribute!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です