「ブリジャトン」ネタが続きおそれいります。シーズン3のヒロイン、ニコラ・コフランがなんといっても「現代的」なのです。ダイバーシティを謳うなら、これまでスパイス的な脇役にされてきた体型太目の女性がロマコメのヒロインを張っても全然問題ないわけですよね。

ポイントは、本人が心の底から自分にはその価値があると信じているところ。

ダブリンでのプレミアでのニコラのジャーナリスト対応がすばらしかったのです。

ジャーナリストは失礼なことにこんなことをいうのです。「あなたみたいな体型の女性がスクリーンで体をさらすなんて勇敢ですね」と。

それに対し、ニコラは傷つく様子も恥じる様子もなく、にこやかに答えます。「ええ、私のような体型にとっては大変でした……完璧なバストの持ち主にとってはね」。

会場から大喝采を受けるニコラ、最高です。こんなウィットとしなやかな自尊心は、体型コンプレックスを持つ(持たされる)多くの女性に勇気を与えてくれます。押しつけの価値観なんて気持ちよくスルーして、自分を尊ぶということ、こういう心のあり方こそが彼女の魅力だし、次の世の中をつくるアティテュードだとわかります。

ニコラはSNS発信でも決して卑下などはしない。体型に対する批判はたくさん来るそうなのですが、それに対し、「私はテレビに出ており、観る人がどう感じるかはその人の自由。ただその感想をわざわざ私に直接送ってくることは無意味」というメッセージを発しています。既存の価値観に則った他人の勝手な批判は受け取らない。ここまで来るのに葛藤も経たと想像するのですが、今のニコラは強くて輝いていらっしゃいます。自尊心は自分だけでなくほかならぬ他者をも照らすという好例ですね。

サンローランに映画制作部門が加わり、アンソニー・ヴァカレロがこの部門のディレクターも務める。で、昨年のカンヌで公開された作品の試写を拝見しました。「ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ」。西部劇×男同士の愛。「ブロークバック・マウンテン」トリビュートな30分の小編です。クリエイティブディレクターは服ばかりじゃなく映画も作る時代に突入しました。

© 2024 El Deseo D.A. S.L.U. All Rights Reserved.
7/12(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテほか全国公開

最近見た試写のなかでお勧めしたい映画のメモ。

◎まずは『密輸1970』。全く先が読めず、海女がこれだけ活躍するのも前例がないであろう海洋クライムアクション(コメディ、たぶん)。70年代こてこてファッション、韓国の小さな港町の光景、演歌っぽい音楽もよく、海女×密輸王×チンピラ×税関という四つどもえの騙し合いが壮絶でシリアス、サスペンスフルなのに、「陽」の空気に包まれている快作。見たあと笑顔になれて元気がわいてくるような不思議なテイストの映画です。これ好き。7月12日公開。

◎そしてやはり韓国映画ですが、『ソウルの春』。1979年の大統領暗殺後、新たな独裁者の座を狙いクーデターを決行する男と、その暴走を阻止しようとする高潔な軍人の対立を描く。暗い緊迫感がずっと続きます。内戦直前の緊迫とその後の暗黒社会が実話という衝撃。高潔な人間が救われない不条理、腐敗した人間が権力をもつおそろしさは今も身近にあるなあと人間不信になってくる。鑑賞後重たさをひきずりますが、決して目を背けてはない歴史の現実。8月23日公開。

両映画とも、70年代韓国の実話がベースになってるんですね。韓国ではともに大ヒットを記録しているそうです。

 

*トップ写真は町中を走っていたアフタヌーンティーバス。表参道付近で遭遇。

 

Netflixの映画「グレートスクープ」。性犯罪者エプスタインと交流があった英アンドリュー王子のインタビューを実現したBBCの舞台裏を描く。報道ドラマ。プロフェッショナルな女性たちが本当にかっこよく、アンドリュー王子に自由に語らせて「真実」を引き出すインタビューはかくあるべしというお手本にもなっている。王子は終始、「否認」しているのだけれど、事実の積み重ねにより視聴者の前に真実が浮かび上がる。結果、王子はこれを機に公務から身を引くことになる。しびれる。イギリス文化、英王室に関心のある向きにもおすすめ。

映画『プリシラ』にコメントさせていただきました。

GAGAホームページに掲載されています。

『フェラーリ』がザ・マチスモな映画だとすれば、 『プリシラ』はガーリーの極み。 1950年代後半から60年代を背景にするとこういう映画が作りやすいんですね。いまのジェンダーフリーもいいけど、こういう両極端の感覚にふりきった世界観の表現も好き(その時代に生きて楽しそうかどうかは別の問題)。

 

 

 

試写拝見しました。アダム・ドライバーが59歳のエンツオ・フェラーリを銀髪で演じて違和感なし。ペネロペ・クルスはお色気封印で好演。

ミッレミリアのすさまじい迫力もさることながら、1957年のメンズファッションが眼福です。アニエッリまでシャツの上に時計という伝説のスタイルでちらっと登場する。フェラーリは女性関係においてもイタリアン・マチスモ全開。ザッツ・映画という複雑な感慨が豊かに残ります。

「うまくいく場合、見た目も美しい」。

「関心領域」試写。映されているのは幸せな小市民の家庭の日々のみで、壁の向こうはポスターでは真っ黒に塗りつぶされています。音や煙や灰でそこで何が起きているのかを示唆する。アウシュヴィッツものの全く新しい「見せ方」で、映画でしか表現方法。収容所から出る灰が庭の花々の養分になり、花々が揺れるたびに涙が出てくる。現在の私たちそのものじゃないのかと問いを突き付けてくる必見の映画だと思います。

フィガロジャポン✖️ルイ・ロデレールのプレミア「ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人」、プレミア試写会の上映前にお話しさせていただきました。フィガロ編集部の森田さまが司会、エノテカの佐野さまがルイ・ロデレールの解説、私は当時のフランスの習俗について解説しました。


18世紀フランス宮廷が舞台の映画でコスプレ絶好の機会だったので、なんちゃってロココメンズ風で遊んでみました。「風」なので深いツッコミはなしでお願いします。

アビはアーチストのあきさんの作品です。左右で生地が異なります。プリント生地からオリジナルで制作していらっしゃいます。中に入れているベストはアジャスタブルコスチューム小高さんの作品、レギンスはユニクロです。すべて日本の作り手ですね。

スタッフのみなさま、ご参加くださいましたみなさま、ありがとうございました。あきさん、小高さんにもあらためて感謝&リスペクトします。

Bond映画60周年記念4Kレストア版「スカイフォール」上映前トークショーに登壇しました。9月と同じように、マダム・フィガロ編集部の金井洋介さんとのトークでした。

この日、着用しているのはイギリスブランド「フェイズエイト」のニットドレスです。ラメ糸を使っているのできらきらしますが、実はニットでラクチンに着用できる便利な一着です。数年前のデザインですが、そんなに何度も着る機会があったわけでもないので、大事に着まわしております。

ボンド映画60周年記念4Kレストア版「ロシアより愛をこめて」上映前トークショーに登壇しました。新宿ピカデリーにて。マダムフィガロ編集部の金井洋介さんとのトークでした。

トーク内容はマダムフィガロのオフィシャルサイトに掲載されております。

この日着ているのは、Yuima Nakazatoのドレスです。日本の川俣シルクを使い、エプソンのインクで染めている、軽いけれど重厚な一着です。衣装協力いただきました。ありがとうございました。

こちらは客席からお客様が撮ってくださってお送りくださったものですが、シルクのショールの透け感がいくばくかわかります。

ラインナップ的には、Yuima Nakazatoの展示会で圧巻だったこのドレスのいとこ的位置づけです。やはりエプソンのインクで染めてあります。羽生さんが着用してらっしゃいました。

11日の公開初日に「Barbie」鑑賞しました。

爆笑!最高!大爆笑!というシーンが続くその合間にシリアスな社会批評ががんがん投入され、最後は地に足のついた人間賛歌で終わりじわじわと余韻を残す快作でした。

現代社会への問題的は多々ありました。なかでも印象に残ったのが「自分はなにものにもなれていない、なにものかになりたい」症候群のこと。これは先日のやましたひでこさんとの対談でも提起された話題でした。今の50代、60代の女性のなかには「なにものにもなれなかった、これからどうすればよいか」と悩んでいる方が多いということでした。

バービーは「女の子はなんにでもなれる」という理想を謳い、大統領にも宇宙飛行士にも医者にも清掃員にもなれたわけですが、逆に、「なにものかにならなければ」というプレッシャーを女性に(男性にも)暗黙裡に与えてきた、という指摘が映画の中でなされていました。「なにものでもない」「なにものにもなれていない」というプレッシャーは国境や年齢を超え多くの人が感じている悩みであるようです。

なにものにかなりたい欲などかけらもなく、「なにものでもない」私がこんなことを言うのもまったく説得力がないのですが、

「レンタルなにもしない人」のビジネスがなぜあれほど盛況なのか。なぜお金を払ってまでなにもせずそこにいてほしいのか。なぜ敬意をもって崇められるのか。ここにも一つのヒントがあるように思えます。なにもできない自分を卑下もせずありのままに生きながら人に寄り添うこと、これが究極に難しくて、おそらく人間のあるべき理想形でもあるからではないのか。

映画ではケンがこの境地にいきつくわけですが、そこまでのプロセスがほんとにたいへん! (笑)

BUNKAMURAで公開中のドキュメンタリー映画「アンドレ・レオン・タリ― 美学の追求者」。彼の功績について、約4000字、3ページにわたり書いています。鑑賞の予習・復習のおともにぜひどうぞ。

アンドレは現代ファッションシーンを語るときに欠かせない、モード界のレジェンドです。

3月6日 「2020年代の『ファッショントレンド』を見直す」という解説をしました。

 

3月14日 アカデミー賞にちなんだ特集「あなたの仕事に影響を与えた映像作品は?」のなかでコメントしました。

取材を受けた過去記事は、本サイト内「Various Works」⇒「Interview」に収蔵してあります。Various Works の第一部に「Copywriting」があり、そのまま下方へ移っていただくと、第二部「Interview」の一覧が出てきます。

3月17日公開のドキュメンタリー映画。アンドレ・レオン・タリ―はファッション界のレジェンドです。

過去の短い映画コメントや、企業・人・作品応援のための短い原稿などは、本サイト「Various Works」第一部の「Copywriting」に収蔵しています。

Bunkamuraル・シネマで行われた貸し切り試写会「マリー・クワント スウィンギング・ロンドンの伝説」。レイチェル・チャンさんとトークショーに出演しました。主催は東急ロイヤルクラブです。

 

過去の講演・トークショー登壇に関しては本サイトWorks カテゴリーの「Lecture / Seminar」にまとめてあります。

「スペンサー ダイアナの決意」公開中です。

コメントを寄稿しました。シャネルが衣裳協力をしています。カントリーでのロイヤルファミリーの衣裳に学びどころが多い映画でもあります。

 

過去の映画コメントをはじめとした企業・人・作品への応援コメントなどは、本サイトWorksカテゴリーの「Various Works」第一部「Copywriting」に収蔵しています。

ダイアナ妃のドキュメンタリー映画『プリンセス・ダイアナ』が30日に公開されます。

コメントを寄稿しました。

 

これはひいき目抜きによくできたドキュメンタリーです。「注目される」ことで、人はよくもわるくも「化けて」いく。多くのことを考えさせられます。おすすめ。

サディ・フロスト監督のドキュメンタリー英語「マリー・クワント スウィンギング・ロンドンの伝説」パンフレットに寄稿しました。

イギリス文化、60年代、ファッション、ヘアメイク、社会改革、アパレル産業、スタートアップ、夫婦で起業、アートスクール、といったキーワードにピンとくる方々は必見の、中身の濃いドキュメンタリーです。

11月26日、bunkamura ル・シネマでロードショー。

 

「ココ・シャネルは私を嫌った。理由もよくわかる」、とマリーは言います。シャネルは膝は醜いもの、と考えて決して膝を出すようなデザインはしませんでしたからね。そうした思い込みに反旗を翻したのがマリーでした。

KAAT神奈川芸術劇場でミュージカル「夜の女たち」が上演されます。9月3日~19日。

パンフレットに寄稿するために、オリジナルの溝口健二監督の映画「夜の女たち」(1948)を観ました。

衝撃でした。1948年……戦後間もない日本の「同時代のリアル」を描いたものと想像されます。凄まじい世界。衝撃の最大の理由は、弱者をとりまく状況が、現在、何も変わっていないことです。

何もかも奪われて、追い詰められて、絶望して、忍耐の限界にきて、ついに最後のエネルギーをふりしぼって人間全体への反逆に出た弱者による「犯罪」がいまも絶えないのではないか。「責任」をすべて本人になすりつけるのはあまりにも過酷な状況がある。転落せざるをえなかった背景も知らないで高みからキレイゴトを並べて批判する「教育婦人」も登場する。「どんな理由があろうと暴力はいけません」とか言いがちなあの種の人間にだけはなりたくない、と心底思わされた。溝口健二、すごい。

この物語を現代、ミュージカルとして上演するという意味がまさにここにあるのだろう。

パンフレットではさらに戦後ファッションの話とからめて書きます。

 

9月30日(金)から公開の『プリンセス・ダイアナ』ドキュメンタリー、試写拝見しました。アーカイブ映像のみを使って悲劇のドラマを創り上げていくエド・パーキンズの斬新な手法。普遍的な問いをいくつも投げかける傑作になっています。

配給: STAR CHANNEL MOVIES

今年の秋には、さらに、クリスティン・スチュワート版のダイアナ映画もきます。前半はエリザベス女王でしたが、後半はダイアナ妃ブームですね。

同じ6月誕生日の友人と、小さなお祝いの会。

セルリアン最上階のベロビスト。早目の時間は空いてて良い席に座れます。暗くなる前に解散。このくらいがちょうどいい感じ。

さて、くどいですがハリー・パーマー。コメントをこんな素敵な写真に重ねてくれました。ルーシー・ボイントンの堂々たる浮きっぷり。あやかりたい。スターチャンネルで全6話として配信されております。

 

女王の多面的な魅力が満載のドキュメンタリー、本日公開です。

パンフレットに寄稿しています。


年表や家系図、主要な登場人物のリストもあり、充実した内容になっています。劇場でチェックしてみてくださいね。

日本経済新聞16日夕刊に広告も掲載されました。配給会社、イベントも多々行っており、とても力を入れています。

 

ABCのトークイベント(ご視聴ありがとうございました!)、ウェブメディアからのインタビュー、とZOOMでの話が続きました。ともに黒レースのインナーの上に音遊さんの赤い備後木綿の着物を着ておりました。視聴者のおひとりがTwitterで好意的に書いてくださいましたが、気分はジャポニスム時代のヨーロッパ人が着た室内着kimonoです。(本当のところ、ただ着付けが下手なので、いっそそっちを演出してみたというだけなのですが。)

 

 

「ハリー・パーマー 国際諜報局」(イプクレス・ファイル)全6話がスターチャンネルで公開されました。


推薦コメント寄稿しました。公式HPに予告編ほか詳細があります。

アンチ007として設定されたハリーがじわじわくるんです。最初の2,3話はペースについていく忍耐が必要かもですが、後半、独特の感覚に乗ってくると俄然、面白くなっていきます。

ルーシー・ボイントンが着る60年代ファッションも眼福です。

ブリティッシュカルチュア、1960年代ファッション、英国スパイ映画の系譜、に関心がある方はまず見ておきたいドラマです。

Kingsman のハリーのモデルになったのがハリー・パーマーで、60年代当時はマイケル・ケインが演じていました。メンズスタイルも丁寧に再現されています。

©Altitude Film Entertainment Limited 2021 All Right Reserved Licensed by ITV Studios Ltd.

「ザ・ロストシティ」試写。小さな試写室ではなく、日比谷TOHOシネマズでの劇場試写だったのがラッキーでした。

サンドラ・ブロックとチャニング・テイタム主演、ブラッド・ピットがパンチの効いたチョイ役でいい味だして出てきます。

「インディ・ジョーンズ」と「ハーレー・クイン」系ドラマと「スピード」と「世界遺産」系ツーリズム映像をごたまぜにしたような、少なくとも見ている間は現実を忘れて楽しめる映画でした。この手のお気楽映画のヒロインが<若くない>女性だというのもハリウッドでは画期的なのかも。サンドラ・ブロックあっぱれ。

チャニング・テイタムは次のジェームズ・ボンド役でもいいのではと思えたほど。抜群に美しい逆三角形ボディでダンスシーンではことにセクシーです。ブラッド・ピットが戦闘シーンでキレキレのアクションを見せてくれて、これもまた眼福でした。

とはいえ「トップガン・マーヴェリック」の余韻がある後ではどうにも映画として「あれにはかなわない」感が残ります。いや、「トップガン」は別格でしたね。

 

 

プラチナジュビリーまでのカウントダウンが始まりましたね。

開業70周年を迎える椿山荘東京が、即位70周年を祝うドキュメンタリー映画「エリザベス 女王陛下の微笑み」とコラボしたアフタヌーンティーを6月11日より提供するとのこと、発表会に伺いました。

トップ写真のエリザベス女王バービー人形は、スタッフが執念で競り落とした貴重なものだそうです。

アフタヌーンティーは、一品一品に女王陛下にまつわるエピソードがあります。

こちらは、椿山荘が駐日英国大使館主催のケーキコンテストに応募したケーキ。

ホテル3階ヒストリーラウンジでは、エリザベス女王の写真展も開催されます。無料ですのでぜひこの機会にどうぞ。

全くおススメしないけれど、ありうる未来への警告だ、と衝撃を受けたディストピア映画。

メキシコのミシェル・フランコ監督による「ニューオーダー」。格差拡大するとこうなるしかない、という警告がリアリティありすぎ。フランス革命的なもの、今、リアルに迫っているのかもしれないとさえ思わせる。

くどいですが、一時的に映画でハッピーになりたい人には全く勧めない。ほんわか志向な方、見ないでね。でも、持続可能性のために格差拡大をなんとかしたいと真剣に考える方は、覚悟して見る価値あり。リアリティの凄さに眠れなくなる。こわいもん、見てしまった…?

ヴェネツィアで審査員大賞受賞の問題作。

6月4日公開です。
配給クロックワークス

Netflix 「ホワイトホット アバクロンビー&フィッチの盛衰」。

1990年代に排他的な戦略(白人・美・マッチョ以外は排除)がウケてカルチャーを席巻したブランドが、その価値を貫いたゆえに2000年代に失速,凋落。その過程に2000年代、2010年代にうねりを見せた多様性と包摂の動き、#metoo 運動など社会の価値観大変動がありました。関係者の証言で生々しく描かれる内部の様子が非常に興味深い。

それにしても、言葉遣いにいたるまできめ細かく設定された「エリート主義+セクシー+エクスクルーシブ(+伝統)」なアバクロのブランド戦略=排他的文化の構築に驚愕。

アバクロのモデルは服を着ないで服を売った。ファッションビジネスは、服を売るんじゃなくて文化を売る、ということがよくわかる例にもなってます。ふつうに良いものがあふれる今は、ますます文化に細心の注意を払う必要がでてきます。

とりわけラグジュアリー領域にその兆候が現れやすい。新ラグジュアリーが文化盗用や人権、包摂性やローカリティー、倫理観に対して敏感になり、新しい文化を創るのとセットになっているというのは、そういう文脈に則っています。ラグジュアリーが特権的で神秘的で選ばれた人のための贅沢品という思い込みのままなのは、1990年代で止まっているのと同じ。あらゆる文化間に「上」「下」関係を作るのがダサくなっている今、ラグジュアリーの概念も大変動を起こしています。価値観をアップデートしましょう。

 

?ファッションジャーナリストの宮田理江さんが『新・ラグジュアリー』のレビューをアパレルウェブに書いてくださいました。

?amazonでは連休中、その他の地域経済関連書籍部門でプーチンをおさえて一位。8日の現時点でまだベストセラーマークがついてます。ありがとうございます。

本日公開のオードリー・ヘプバーンのドキュメンタリー映画。

天真爛漫な愛くるしさで永遠のスタイルアイコンとして人気ではありますが、映画では、あまり知られていない幼少時の悲惨な戦争体験や二度の結婚生活の不幸も描かれます。ユニセフの親善大使になったのも凄絶な戦争体験からの必然的な流れだったと見えてきます。

戦争をやめない人間への彼女の訴求力は今なお強い。というか今だからこそ各国の指導者に見てほしい……。

©️PictureLux / The Hollywood Archive / Alamy Stock Photo

 

 

昨日見た試写は、アレックス・トンプソン監督のアメリカ映画、「セイント・フランシス」。34歳独身、仕事も中途半端、人生がまったくぱっとしない、見た目も平凡な女性が主人公。レズビアンの両親に育てられる女の子フランシスのナニーをしながら強さに目覚めていくストーリー。女性の生理や中絶などのなまなましすぎる「本音のリアリティ描写」に戸惑うくらいでした。中絶後の「細胞のかたまり」まで見せるのが今なのかと衝撃を受けました。男性とのやりとりも、「ど」のつくリアリティ。「そこまで描くか」というショックはありながらも、繊細な人間的な感情の変わらなさも同時に感じたのですが。

オードリーの時代は、映画の世界はいわば「きれいごと」でした。だから神秘的で夢のような「スター」も存在しえた。そんな時代はもうすっかり遠いものになったような気がしています。(どちらがいい悪いの問題ではなく、大きく変化した、という感慨)

ゴールデンウィークといっても混雑が何よりも苦手なので日中は引きこもって仕事とファミリーの世話と家の手入れ、すべてノルマを終えたあとは試写です。ラグジュアリーな感覚とは遠いけれどユニークな2作、まとめてご紹介。

まずは、夏が近づいてくることを知らせる風物詩、サメものです。
ひたすら生々しい恐怖を味わえる今年の佳作はこちらでしょうか。
「海上48hours」。

教訓1: 友達が一緒だからって調子に乗るな
教訓2:調子に乗りやすい友達とつるむな
教訓3:調子に乗りやすい友達はだいだい裏切る

恐怖とスリルとアドレナリンで時間を忘れる没我の85分。
暑くて人生投げ出したくなるようなことあればそのタイミングでご鑑賞ください。この状況に比べればマシな人生にもどりたくなると思われます。納涼B級シネマ。

7月22日公開です。
監督ジェームズ・ナン、出演ホリー・アール、ジャック・トウールマンほか
配給GAGA 。

もう一作は、タイトルからして挑戦的な、”The Worst Person in the World.” 「わたしは最悪。」

オスロを舞台に、ひとりのアラサー女性の日常が淡々と描かれます。本人はいつも正直にその時々でこれしかないという選択をするのですが、引いて見ると、最悪のやらかしばかりにも見えてきます。でもことさら騒ぎもなく日常は続いていき、静かにチャンスを逸しながら人生は下降線、おそらくヒロインは一生、こんな最悪の人生の選択をしていくのであろうか…。ズキッとします。自分に正直に行動せよ、というスローガンが正義みたいになってますが、ほんとにそれがよい結果をもたらすのでしょうか? そもそも「よい結果」ってなんでしたっけ? ちょっと考え直してみようよ、と問いを投げかけられます(受け止め方は人によってずいぶん異なると想像します)。

どこかにきっと特別な自分がいる、と選択を否定し続けて次へ次へと行くヒロインに対し、いかにも私のことです、とおそらく多くの観客が共感し、カンヌで女優賞受賞。

本音のリアリティが静かに描かれるからいっそう、痛烈でぎょっとするほどアナーキーです。痛みと苦味とともに深い学びがちりばめられる映画です。語り口がちょっとこれまでになかったような感覚で、観客を退屈させるフリしてなかなか新鮮でした。北欧映画って人間の暗いところをぐいぐいえぐってきますね。

7月1日公開。
監督ヨアキム・トリアー 出演レナーテ・レインスヴェ
配給GAGA

リュ・スンワン監督「モガディシュ」試写。

ソマリア内戦下、命か国家か究極の選択をせまられた「北」と「南」の外交官たちの、人間としてのぎりぎりの選択がスリリングです。

いまの時代だからこそひしひし迫り来る強い映画。衝撃の実話の映画化。ソマリア内戦のシーンに緊迫したリアリティがあります。小さな子供まで銃をかついで人に向け、しかも笑っているという……。

こんな小さな地球で隣人どうしの憎みあいとか殺し合いとか、もうほんとに全く意味ないからやめようよ。映画をみながら地球の現実を重ねて泣けてくる、そんな映画でもあります。

7月1日公開です。
配給 ツイン

秋に公開されるマリー・クワント映画の試写。

90分の中に、60年代ロンドンの生々しい躍動感がぎゅっと詰まってる。戦争、ファッション、音楽、政治、ビジネス、ジャーナリズム、性革命、ヘアメイク、ストリートカルチャー、アメリカ、日本、家族。濃厚で自由。クオリティ高いドキュメンタリー。現代にも通じるメッセージも多々。

この秋は、映画、展覧会、書籍で連動してマリークワントがきます。

「アパレル全史」にも書いてますが、私はクワントにひっぱられて道を外したところがあるので、あれから40年ほど経ったこの時期にクワントの総まとめが襲来することが、再び彼女に導かれているようで、複雑で感慨深いです。(展覧会、映画、書籍、すべてにおいて関わることになりました。)

なにはともあれ60年代祭りがきます。60年代クワント風ファッションでみんなで盛り上がりたいところですが、どなたか作りませんか?

 

V&Aのマリー・クワント展とともにイギリスで発売された書籍がこちら。

エリザベス女王96歳のお誕生日を心よりお祝い申し上げます。

故ロジャー・ミッチェルがコロナ禍の期間に作り上げたドキュメンタリー映画『女王陛下の微笑み』が、プラチナジュビリーにあわせて公開されます。

これまで公開されてこなかったプライベートな映像も使われており、「初めて見るエリザベス」がぎっしり。女王ファンには涙涙涙の90分です。この70年間の英国史のエッセンスも凝縮されています。

映画公開にあわせ、椿山荘ではアフタヌーンティーなど特別コラボプランが企画されているようですよ。

©Elizabeth Productions Limited 2021

6月17日、TOHO シネマズシャンテ、Bunkamura ル・シネマほか全国公開

Star Channel でこれから公開されるドラマの試写を拝見。『ハリー・パーマー 国際諜報局』全6話、一周まわってレトロでアナーキーなおもしろさがあります。

1960年代にアンチ・ジェームズ・ボンドとして設定された元祖黒縁眼鏡のスパイが、いやあ、反007だからこそ今っぽいというか。もっさりしたスピード感といい、ゆるい音楽設定といい、その中で際立つヒロインの60年代ファッション。やみつきになってます。

詳しくは媒体などで書きますのでこれ以上はここでは控えておきますが、英国スパイもの好きな方はネタ元を知っておくためにも必見でしょう。

それにしても今年は1960年代ものの仕事が多い…。秋は60年代ブリティッシュカルチャー、全開ですよ!

 

©Altitude Film Entertainment Limited 2021 All Rights Reserved. Licensed by ITV Studios Ltd

<作品情報>
『ハリー・パーマー 国際諜報局』
【脚本・製作総指揮】ジョン・ホッジ(『トレインスポッティング』)
【製作総指揮】ウィル・クラーク(『ホイットニー ~オールウェイズ・ラヴ・ユー~』)
【監督・製作総指揮】ジェームズ・ワトキンス(『ブラック・ミラー』)
【出演】ジョー・コール、ルーシー・ボイントン、トム・ホランダー、アシュリー・トーマス、
ジョシュア・ジェームズ、デヴィッド・デンシック ほか

オードリーヘプバーン、初のドキュメンタリー映画が公開されます。

世界中から愛された大スターですが、両親は離婚、父には冷たく見放され、自身も二度離婚。心の傷を、愛することに変えることができた人でした。

華奢なのは戦争中にひどい栄養失調になっていたため…。晩年、ユニセフ親善大使として世界を訪問し、飢えて痩せ細った子供たちを抱きしめるとき、幼少期の思いも重ねていたのですね。

世界が憎しみや暴力で傷ついている今だからこそ、オードリーの言葉と行動が強く響きます。

5月6日公開です。
配給 東北新社

ロジャー・ミッチェルがコロナ禍の最中につくりあげたドキュメンタリー映画「エリザベス」試写。

女王が走る、笑う、なんだかファニーなことを言っている。これまであまり表に出てこなかったプライベートな一面もさしはさまれながら、女王の生涯をポップにコラージュした映画。ファンにはたまらないニッチな深掘りをしておりますが、おそらくイギリスや王室に関心の薄い方には「?」かもですね。女王ファンには全力推薦したい。

プラチナジュビリーに向けて、詳細は後日!

「帰らない日曜日」(Mothering Sunday)試写拝見しました。


原作はグレアム・スウィフト「マザリングサンデー」、監督はエヴァ・ユッソン。

1920年代のカントリーハウスを舞台に繰り広げられる天涯孤独のメイドと名家の跡取り息子の秘めた官能的愛。とくればカズオイシグオ的世界のなかにダウントン風人間模様。

淡く物悲しいストーリー展開にとって大切な役割を果たしているのが、眼福を与えてくれるインテリアや衣裳。

衣裳はサンディ・パウェル。「女王陛下のお気に入り」を手掛けた方です。20年代コスチュームにエッジを効かせて見せてくれます。絵画のように上品で「自然な」(ここ、強調しときますね)ラブシーンにはちょっと驚きますが。

5.27(金)全国公開

2021年/イギリス/104分
配給;松竹
© CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION, THE BRITISH FILM INSTITUTE AND NUMBER 9 FILMS
SUNDAY LIMITED 2021

北日本新聞「まんまる」4月号発行です。連載「ファッション歳時記」第127回は、「ナイトメア・アリ―」のコスチュームについて。

ギレルモ・デル・トロの世界が好きな方には全力おすすめの映画です。

 

©2021 20th Century Studios. All right reserved.

この映画のケイト・ブランシェットのクラシックな髪型にしてみようかと思ってしまうほど磁力が強い。

配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
3月25日より全国公開

kotoba 春号 ゴッドファーザー50周年記念特集。本日発売です。

このような目次です。これは永久保存版でしょう。

 

拙稿「マフィアとスーツ」では、バー「ル・パラン」の本多啓彰さん、「アジャスタブルコスチューム」の小高一樹さん、「スローンレンジャートウキョウ」の大西慎哉さんに取材のご協力をを賜りました。ありがとうございました。

ご覧のように、小高さんは「パートII」でのヴィトー・コルレオーネのスタイルを再現した装いで取材に応じてくださいました。マニアックを極めた観察力で多くのご指摘をいただきました。

『ナイトメア・アリー』試写拝見しました。

濃厚な、極限の最悪な悪夢を見ているような時間が2時間半。世界の見え方が変わる寓話。強欲な資本主義への警告にも見える。あなたは獣か人間か。

見終わるとぐったりしてしばらく立ち上がれませんでした。ギレルモデルトロのダークなイマジネーション炸裂の最高傑作、更新。

1939年、40年あたりのコスチュームも美しいし、インテリアそのものもスペクタクルになっている。カーニバルはトッド・ブラウニングの「フリークス」を連想させるし、おどろおどろしさと不穏な世界観はギレルモ節全開。

 

配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン

3月25日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開

©2021 20th Century Studios. All rights reserved.

映画『ゴヤの名画と優しい泥棒(The Duke)』。


あの不朽の傑作『ノッティングヒルの恋人』の監督、ロジャー・ミッシェルの遺作となった長編です。ザ・プレイハウス(青山店)でのプライベートシアターで鑑賞させていただきました。

映画は、1950年代にイギリスで起きた実話をもとにしています。〈ロンドン・ナショナル・ギャラリー〉で起きた、フランシスコ・デ・ゴヤの名画「ウェリントン公爵」盗難事件。

当時の労働者階級のリアリティ、家族の絆、イギリス社会の不平等とそれに対して果敢に闘う人に向けられるさりげない共感が、ミッシェルらしい優しい目線で描かれます。現代社会へのメッセージとしても響くようなセリフも多々あり、最後は心がほっこりとあたたかさに包まれます。

このプライベートシアターには、英国王室御用達のオーディオブランド「LINN(リン)」が、ザ・プレイハウスのために特別設計した5.1chサウンドシステムとして搭載されています。

ゴヤの「ウェリントン公爵」は、映画『007 / ドクター・ノオ』にも登場するんですよね。「007」グッズだらけのこの部屋でなぜこの映画なのか? 最後には違和感がなくなる。

2月25日(金)からTOHOシネマズ シャンテ他で公開されます。

日本経済新聞「モードは語る」。22日付では、「ハウス・オブ・グッチ」を撮ったリドリー・スコットへのリスペクトを込めて書いてます。

 

電子版はこちら

 

photo ©2021 Metro-Goldwyn Mayer Pictures Inc. All Right Reserved.
配給 東宝東和

 

ゴッドファーザー」生誕50周年記念の原稿8000字近く脱稿しました。書き上がるまでかなり苦悩して長い「旅」になりました……。

20世紀の実在のマフィアのボスのスーツスタイルを調べつくしてやたらこの分野に詳しくなりました。

だからってまったく何の役にも立ちませんが、そんな無駄なことが意味もなく楽しいから困ります。(ちょっとは役に立つ人間になりたい)

その仕事の意味は? 意味ある仕事と感じられる時は幸せでしょう。一方、「意味ない」と感じられることもあります。「意味のなさ」にも二種類あって、虚しすぎて意味ないと感じ、疲労ばかりが増していく「ブルシットジョブ」もあれば、社会的な意味なんかまったくないんだけど没頭しているだけで脳がフル回転して元気になっていくという「意味のなさ」もありますね。私はどちらかというと後者の無意味にひたっているのが得意(?)で、無意味を極めるための苦労は苦しいんだけど苦しくない。そういうことを何の疑問も抱かずやっている変人を見つけたらお仲間としていたく共感を覚えがちです。

 

取材にご協力くださいました方々、ありがとうございました。

「アジャスタブル・コスチューム」の小高一樹さん、ヴィトー・コルレオーネ スタイルでの熱いお話ありがとうございました。


「スローンレンジャー・トウキョウ」の大西慎哉さん(右)、スーツの細部に関するマニアックなお話ありがとうございました。

そしてルパランの本多啓彰さん、ありがとうございました。


同、上村卓さん。ありがとうございました。

紙幅の関係で豊穣なお話のごく一部しか引用できなかったのが残念極まりないのですが。3月に活字になります。

 

雲一つない空の暗闇、目の前には2022年最初の満月。

House of Gucci. 14日から公開になりましたね。

ファッション史に興味があってもなくても飽きさせず、2時間半、目が釘付け。

 

ノリノリの70年代末~80年代ミュージックと感情揺さぶるイタリアンオペラがいい感じで「意味まみれ」。衣裳は眼福、俳優は驚愕。

ジャレットレトを探せ。史実を知っていたらなお面白くなる。(「アパレル全史」参照。笑) ちょうどゴッドファーザーの原稿を書いていて、アルパチーノの演技に歴史を重ね見てじわり泣きました… とにかく必見です。

 

写真はすべて、© 2021 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved.

 

House of Gucciで印象に残った人間観察のひとつに、「人と違う個性や才能をアピールすることは、実は凡庸さの頂点である」というのがあります。本当に革新的なやり手は、最も静かで平凡に見えたアノ人だった!という事実に基づくオチが渋い。画期的な変化を起こす人はいちいち人と違うアピールなんてしない。静かな意志を、平凡に着実に淡々と貫き、その暁に結果を出す。そんなもんです。

 

 

 あわせて読むとよりいっそう面白さが増す原作本。

 下巻末の解説も理解を深めてくれます。

 映画の中に出てくるトム・フォード、ドメニコ・デ・ソーレ、アナ・ウィンター、カール・ラガーフェルドがどんな位置づけの人なのか? 占い師役のサルマ・ハエックの現実世界での夫がどんな人なのか(グッチを傘下におさめるケリングの会長)? 今のグッチをもりあげるアレッサンドロ・ミケーレはどんな仕事をしていて画期的なのか? いつからファッションのメインプレイヤーが資本家になったのか? などなどご参考になる点いろいろあるかと思います。電子書籍版もあり。

とてつもないものを観た。

ウェス・アンダーソンの10作目にあたる「ザ・フレンチ・ディスパッチ」。

想像の限界をあっさり超えてくる贅沢すぎる映画でした。クリエイティブに関わる人は自信なくすか発奮するか。敵わない。というか比較するのも無理な圧倒的な別次元で濃厚に豊潤にオタク世界がきらめきわたる。108分の中にカラフルないくつもの映画的エピソードが花開く。ウェスアンダーソンの才能と、愛があふれすぎるマニアックなこだわりに斬新な刺激をうけます。

映画好きは必見です。

1月28日ロードショー。
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン

オペレーション・ミンスミート」試写拝見しました。

1943年のリアリティある軍服&ファッション、耳に心地よいイギリス英語、世界の命運をかけたナチス相手のギリギリの(難しすぎる)頭脳戦と妻帯者コリンファースの淡い淡い曖昧なロマンスにしびれます。暗号解読に活躍したのは女性たちだったことも描かれる。イアン・フレミングも登場してイギリス・スパイものファンにはワクワクものです。実話に基づく緊迫感あるストーリー

監督:ジョン・マッデン
出演:コリン・ファース、マシュー・マクファディン、ケリー・マクドナルド

2月18日公開。

「オートクチュール」試写。ディオールのメゾンの舞台裏で働く一人一人の職人に焦点を当てる、滋味深いヒューマンドラマです。職人の世界を通して今のフランス社会に焦点を当てる目線そのものがこれからのラグジュアリーの方向を示しているように思います。

監督・脚本:シルヴィー・オハヨン
出演:ナタリー・バイ、リナ・クードリ

3月25日全国公開

©2019-LES FILMS DU 24 – LES PRODUCTIONS DU RENARD – LES PRODUCTIONS JOUROR

 

 

Netflix のDon’t Look Up. 地球規模の破滅が迫っているのに茶番と分断と投資と巨大企業による国家支配が進んでいく救いようのない現代のリアルな衆愚をアダムマッケイがコメディのフリして痛烈にあぶり出し。爆笑しつつ笑えない傑作。今更ながらディカプリオいい俳優になったと思う。超お勧めの傑作。

1966年制作の映画「Hotel」鑑賞会。

ホテルの総支配人の理想的なあり方が描かれています。

一方、資本家と総支配人の関係、老舗ホテルと新興ホテルとの確執など、シブいテーマも。グランドホテル形式で描かれる数々のドラマが最後に一気に収束する。原作はアーサーヘイリー。

女性が総支配人を誘惑する大胆にしてさりげなすぎるやり方にも倒れます。笑。ジャクリーヌケネディの影響力がファッションはじめ、いたるところに及んでいます。


鑑賞会に先立ち、新横浜プリンス最上階のTop of Yokohama で食事会でした。こちらは、正直なところ、それほど期待していなかっただけに予想以上のハイレベルのお料理で満足感高し、です。周囲に高いビルがないので、見晴らしよき絶景も360°楽しめます。総料理長の石田敏晴さんとアシスタントマネージャー北原和則さんはじめスタッフの今後のいっそうの躍進に期待します。ほんと、ここ穴場。高層階からの眺めに囲まれ、ほっとくつろぎながら美味しいお料理を楽しめるよいレストランです。

総支配人が専門家にして総合職として育てられることが少ない日本のホテルカルチャー。あらゆる教養と貫禄を備えた人間味のあるホテルマネージャーが今こそもっと大勢必要だと感じます。あるいはそんな存在は時代遅れなのか? いや。新時代のホテルにふさわしい総支配人という存在、あったほうが絶対楽しい。

ブリティッシュ&クリスマスの装飾がいたるところに。

ドーム型天井の上は、吹き抜けになっています。

 

『コーダ あいのうた』試写。

不意打ちな感動作でした。コーダとは「終わり(そして続く)」を象徴する音楽記号であるとともにChildren of Deaf Adults (耳の聞こえない親を持つ聞こえる子供)のこと。

笑って泣いて鑑賞中はずっと聴覚や嗅覚に対する意識が研ぎ澄まされている。

サブストーリーとして初々しい青春ストーリーもあり、洗われるようなさわやかさが残ります。

写真はすべて、© 2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS

 

■2022年1月21日(金) TOHOシネマズ 日比谷他、全国ロードショー

■配給:ギャガGAGA

■PG12

■スタッフ・キャスト
監督・脚本:シアン・ヘダー
出演:エミリア・ジョーンズ「ロック&キー」、フェルディア・ウォルシュ=ピーロ『シング・ストリート 未來へのうた』、マーリー・マトリン『愛は静けさの中に』

「ダ・ヴィンチは誰に微笑む」、公式ウェブサイトにコメントが掲載されています。

 

アートの価格がどのように決まるのか? 人間くさいスリリングなドキュメンタリーです。

もっとも痛烈だったのは、同じレオナルドですが、俳優の涙。誰かの感動の保証もまた価値に貢献します。アートであれものであれ、周囲の反応や行動も価値、ひいては価格を押し上げる。示唆に富むお話です。

ヴァルカナイズロンドン&ザ・プレイハウスが内も外もボンド一色になっております。10月1日公開まであと一週間となりました。

妄想炸裂なボンドイベント打ち合わせでした。怖いような愛しいようなボンドファンをいかに抱擁(概念として)するのか? 悩ましきところです。

 

イベントについては近々告知できると思います。

 

Worth the Wait. というのは解説も野暮ですが、ダニエル・クレイグがハイネケンCMでつぶやいた一言です。この3語から成る一言で2億円のギャラらしい(笑)。ボンド映画も3度の延期でようやく公開ですが、Worth the  Wait. な映画となってるかどうか?

 

☆現実を生きるダニエル・クレイグが、演じる虚構のジェームズ・ボンドと同じ海軍の名誉中佐に任命されたとのこと。ジェームズ・ボンドってほんと、イギリス社会の虚実皮膜の中に生きながら、イギリス文化の広報大使になっている。ロンドンオリンピック開会式でダニエル・クレイグが女王陛下をエスコートしてヘリコプターから降りてきたときも「あ、ボンドがエスコートか」という感じで何の違和感もなかった(笑)。

ここまでのキャラクターを育てられるってあっぱれ。

ノエル・カワードの古典的戯曲『ブライズ・スピリット』をアップデートした映画が10日より公開されます。

JBpress autograph の連載「モードと社会」第17回で見どころを解説しました。よろしかったらご覧ください。

1930年代の「ハリウッド志向のイングリッシュネス」を表現したアールデコ建築、ファッション、インテリアは眼福です。

こちらからご覧くださいませ。

 

「皮膚を売った男」試写。

不条理に引き裂かれた恋人に会うため、自身がアート作品になって世界を旅できるようになろうとした男の物語。

シリア、難民の現実をさらっと見せながらアートとは何か? アートと人権との関係は? という問題まで考えさせる。語り口そのものがアート的でユニークな秀作です。第93回アカデミー賞国際長編映画賞ノミネート。

11月12日 Bunkamura ル・シネマ他で全国

監督・脚本:カウテール・ベン・ハニア
配給:クロックワークス

1971年、まだ無名に近かったデイヴィッド・ボウイのアメリカツアーを追う「ほぼ実話」の伝記映画。遺族は公認していないそう。(そりゃ怒るだろう、という描写)

メンズドレス、ハイヒール、メイクが心の病と結びつけられていた1971年。彼が異星人ジギースターダストにならざるを得なかったプロセスが痛くて衝撃で、ボウイ像が変わって見えた。より深く理解に近づけた、かもしれない。

当時のファッション、音楽シーンの舞台裏は興味深いものの、地味な映画です。

願わくば俳優たちにもうすこし華がほしかったかな。

10月8日全国公開です。

 

監督:ガブリエル・レンジ
出演:ジョニー・フリン、ジェナ・マローン
配給:リージェンツ

1990年代前半のUK音楽シーンの舞台裏が生々しい。ヒロインの心情の変化に伴う外見の変化が圧巻。ていうかヒロイン16歳でここまでやるのか(実話に基づく映画)。

時にイタいヒロインの絶対的自信を支えるテキトーで自然体な深い家族愛が染み入ります。

世界を信じられるということの強さ、これがあるということは最高の幸運なのかも。ちょっとヒロインがうらやましかった。

 

©MONUMENTAL PICTURES, TANGO PRODUCTIONS, LLC,CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION

配給・ポニー・キャニオン
10月22日全国ロードショー

公式HPはこちら

カワードの不滅の傑作コメディ、「ブライズ・スピリット」が2020年に何度目かの映画化。試写拝見しました。

監督は「ダウントン」を撮ったエドワード・ホール。やはりダウントン組のダン・スティーヴンスが主演。ほかにレスリー・マン、アイラ・フィッシャー、そしてジュディ・デンチが楽しそうに古典を演じている。

1937年のファッションと建築、インテリアは眼福もの。

メンズ、レディス共にたっぷり見ごたえあります。詳しくは別の媒体で書きますが、これはイギリス文化×ファッション史×映画史が好きな人にはたまらないと思います。カワードのワクワク洒脱なストーリーとともにお楽しみください。

©BLITHE SPIRIT PRODUCTIONS LTD 2020

配給:ショウゲート
9月10日 TOHO シネマズシャンテほか全国ロードショー

 

「マルジェラが語る“マルタン・マルジェラ”」試写拝見しました。

インタビュー嫌い、顔出しNGのマルジェラが語る語る!

7歳からの夢を叶えた革命家の生活と一貫した姿勢とは。日本との深いつながりにも驚きます。ゴルティエの弟子だったことも発見でした。ファッション史の学徒は必見です。

監督はドリス・ヴァン・ノッテンのドキュメンタリーを撮ったライナー・ホルツェマーです。

9月17日ホワイトシネクイント全国順次公開
配給:アップリンク
© 2019 Reiner Holzemer Film – RTBF – Animata Productions

「ココ・シャネル 時代と闘った女」のパンフレットにコメントを寄稿しました。

 

 

7月23日公開です。実証のみに基づくドキュメンタリー。20世紀絵巻になってます。おすすめ。

「テーラー 人生の仕立て屋」試写で拝見しました。

アテネ一のテーラーが主人公のギリシア映画。。スリーピース&ポケチとおそろいのネクタイ、のクラシックスーツを着る人がもういないという現実を示唆するシーンから始まる詩的な映像。セリフ少な目の豊かな語り口そのものがクラシック映画的で、いまや貴重になっていることに改めて気づかされました。いちいち心情がセリフで説明されてしまう某大ヒット映画の対極にある佳作です。

9月3日より公開です。配給は松竹。

日経連載「モードは語る」

5日付夕刊では、「グリード ファストファッション帝国の真実」→現実のファストファッション界を振り返る、という流れで書いてみました。

 

「グリード ファストファッション帝国の真実」、6月18日より公開です。

コメントしました。

©2019 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. AND CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION

 

映画には多少誇張もあるものの、2000年代のファストファッションの愚行がなにをもたらしたのかは、知っておきたい。

公式ホームページでは11人のコメントが紹介されています。

 

JBpress autograph 連載「モードと社会」第12回。

ガイ・リッチー監督「ジェントルメン」の紹介です。「英国紳士のジェントリフィケーション」。

キャラクターの着るコスチュームの話から、ジェントリフィケーションの解釈まで。こちらからどうぞ。

 

〇竹宮恵子「エルメスの道」新版。

 

右のオレンジが旧版。左が新版です。新版には銀座のメゾンエルメス建設にまつわるエピソードも描かれ、さらに読み応えある一冊になっています。ここまでやるのか!という驚きの連続。ブランディングとはなにか、ラグジュアリーの真髄はなにか、考えさせられるヒントが満載です。

こういうのを見ると、感動を通り越して、エルメスにはかなわないなあ……と絶望に近い気持ちさえ生まれてきますね。(いや、超えよう。笑)

 

 

 

 (Click to amazon)

 

 

〇婦人画報.jp 「フォーマルウェアの基礎知識」連載Vol. 17  「ブリジャートン家」のコスチュームを解説しました。この時代はブランメル時代どまんなか、超得意分野でもあるうえ、目の保養になるメンズコスチュームが次から次へと登場するのでノリノリで書いております。ドラマ鑑賞にお役立ていただければ幸いです。

 

「グリード ファストファッション帝国の真実」。


ブラックな笑い満載のエンタメですが、労働力を搾取して栄えたファストファッション王国の構造描写がリアル。「ファッション誌編集者」として登場する女性がおそろしくふつうで地味、というのもリアリティあり。モデルは昨年破産したTOPSHOP創業者のフィリップ・グリーン卿。こんな映画を作れてしまうのがイギリスだなあ。監督はマイケル ウインターボトム。

セレブライフのおバカさかげんに笑いながらも、さしはさまれる格差の描写に、否応なく現代を考えさせられます。白すぎる歯がコワいね。

ファッション史の学徒はとりあえず必見です。

6月よりTOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー

Ⓒ2019 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. AND CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION

ひさびさにNewsPicksコメントを転載してみます。ムラがあって恐縮です。全コメントをご覧になりたい方はNewsPicks でご覧いただければ幸いです。(転載にあたり若干の修正をしています)

〇まずは、WWDのビンテージショップ「オー・ユー・エー・テー」が伊勢丹メンズにポップアップを出して人気という記事につき。

 

「若い人がファッションに興味を持たないと言われて久しいけれど、若い人でファッション好きな方は『新しい」服を買わないのであって、むしろビンテージに熱狂している。

人気店の売り方も参考になる。『商品を売るよりも、投げかける。ウンチク語りはせず、<文脈を考える>余地を残す』

お仕着せ・押しつけをきらい、自分で考え、自分だけのストーリーを作りながらファッションを楽しみたいという消費者の思いが伝わってきます」

 

〇同じくWWDより。水道工事会社発のオアシスによるワークスーツがさらなる進化という記事。

「多様化複雑化するスーツ状況にまたニュース。

水道工事会社オアシスが手がける作業着スーツは、『WWS』とブランドを刷新し、アパレル界のアップルを目指すという記事。

『スーツであり、作業着であり、普段着という、ニューノーマル時代の唯一無二の“ボーダレスウエア”。5年後をめどに上場も視野に入れながらまずは時価総額1000億円、いずれは1兆円を目指したい』と強気。ユナイテッドアローズの重松会長がバックについているので、夢物語ではないリアリティも感じられます」

 

〇これに先立って、作業着のワークマンがリバーシブルスーツを発売したという記事がありました。

「作業着系スーツの複雑化多様化が止まらない。パジャマスーツにワークスーツ、水道会社に紳士服チェーンに作業着会社が入り乱れ、もうなにがなんだか、の混戦状態になってきました」

対抗する量販スーツの老舗AOKIは、今月あたまに一着4800円のアクティブワークスーツを発売、昨年12月にはパジャマスーツを発売しています。こんなカオスは日本ならではの現象かと思います。

むしろこういうスーツを海外に輸出すると受けるのか?

いや、少なくともヨーロッパでは、「スーツを着る職業&クラスの人」はきちんとしたスーツを着るし、それ以外の人はそれぞれの立場にふさわしいウェアを着る。日本はなんだかんだと誰もがスーツを着る。人口におけるスーツ着用率は世界一。だからこうしたハイブリッドなスーツに需要が生まれるのだろうと思います。

動きやすいのももちろんがんがん利用していいと思いますが、上質な仕立てのいいウールのスーツが心に与える満足感も時々思い出してね~。

 

 

Amazon Prime に入っていた「記憶にございません!」鑑賞。評判通り、よく練られた脚本に基づいたとてもセンスのいいコメディ。三谷幸喜さま監督脚本。魅力的な俳優陣もいい。とくに小池栄子には惚れ直した。ディーンフジオカは動いても動かなくても完璧でずるい。笑

懸案の8000字を書き終わり、Netflix に入っていたCUBE を鑑賞。1997年のカナダ映画。話題になっていたけどコワそうで避けていた。今は現実の方がコワいことが起きるので、ホラームービーが現実の反映みたいに見えてくることがある。これもそうでした。

目覚めると立方体の中に知らない男女と閉じ込められている。脱出しようとするとところどころ罠があり、凄惨な死が待っている。男女はそれぞれの力を合わせて協力しながら安全ルートを探して脱出しようとするのだが……。誰がなんのためにそのようなシステムに放り込んだのかもわからない。ただ知恵を絞ってシステムの外へ脱出しようとあがく。途中の敵は、システムそのものというよりもむしろ、同行する人間。同じ穴のムジナである人間に殺される。生き残るのはイノセントな人。

まさしく人間社会への風刺そのものになっていたのが秀逸でした。

観終って知ったのですが、日本でもリメイクが公開されるのですね。良いタイミングで観たかも。

ワースとレヴンの終盤の会話がシブい。

Worth: I have nothing to live for out there.(外の世界に行っても生きている意味がない)
Leaven: What is out there? (外に何があるの?)
Worth: Boundless human stupidity. (愚かな人間だらけ)
Leaven: I can live with that. (私は共存できる)

絶望しているのになぜ生きる努力をしなくてはいけないのか? こういう問いが97年の製作時よりも今のほうが増えている気がする。それで「闇の自己啓発」のような本に脚光が当たるのかもしれない。

 

 

 

 

 今日はポジティブめの本をおすすめ。すでにベストセラーなので読まれた方も多いでしょう。「独学大全」。匿名の方が著者ですが、丁寧な思索と的確な引用にあふれていて、知的な活動を続けられてきたことがしのばれます。

 

「意志の強さとは、決して揺るがない心に宿るのではなく、弱い心を持ちながら、そのことに抗い続ける者として自己を紡ぎ出し、織り上げようという繰り返しの中に生まれるのだ」。(本文より)

自分のなかにあるBoundless Human Stupidity への抵抗のために、何であれ「学び続ける」のは一つの方法。

Netflixの「ブリジャートン家」。いやーおもしろかった……。

1813年のロンドンの社交シーズンが舞台。社交シーズンの目的は、マッチング。結婚によって階級も社会的ステイタスも変わるので、各「家」も妙齢の男女も、根回しや駆け引きや準備その他に必死になるわけですね。

完全にジェーン・オースティンの世界なんですが、描かれ方が21世紀です。Rake!そのもののヘイスティング公爵はアフリカ系のレゲ=ジャン・ペイジだし、(現実でも)錯乱したジョージ3世の妃、シャーロット王妃は多人種の血をひくゴルダ・ロシュウェルで、それが原因ではないけどまったく高貴に見えない。笑 現実のシャーロット王妃も複数の人種の血を引く方でした。さらに社交界に出入りする貴族にアフリカ系、アジア系が大勢いて、とりたてて人種の話題は出てこない。新しい。

まったく見慣れない19世紀イギリスのコスチュームドラマに、「ゴシップガール」風の仕掛けが加わり、ハーレークイン風のベタなかけひきが満載で、若草物語風味も入れながら週刊誌中綴じ風のなまなましく過激なベッドシーンがあり、最後はロマンチックな愛の賛歌となる。古典的な話なのに斬新。19世紀ロンドンの話なのにクラシック感ゼロ。そのチープで下世話な感じの面白さに引っ張られて一気に8話見させられる。

コスチュームの基本は時代を正しくおさえており、男性はアダム型シルエットのカラフル燕尾服、女性は胸元切り替えのエンパイアスタイルのドレス。宮廷関係者は前時代のロココスタイル。ただアレンジが21世紀好みになってます。

とりわけ男性ファッションの美しさに刮目せよ、です。襟回り~胸元にかけてのシルエットといい、重厚な生地といい、リッチな色彩といい、男性をこれほどセクシーに見せる服はないのではないか。

ベッドシーンが過激すぎで15歳未満は鑑賞できません。

ブリジャートン家の当主、アンソニーを演じるジョナサン・ヘイリー(上の写真左)はじめ、個性的な美男ぞろいであるのも眼福。とりわけヘイスティング公爵役のレゲ=ジャン・ペイジは出色のダイヤモンドでしょうか。次回のボンド役の候補にもなっているという噂にも納得しました。この人のボンドはぜひ見てみたいです。

「単に多くの人に見られるだけでなく、文化のツァイトガイスト(時代を特徴づける思想)を形づくるヒットを生み出す」と宣言するネットフリックス。多様性社会にフィットする大胆なキャスティングでそれを証明してくれたという印象です。

「MISS ミス・ふらんすになりたい!」試写。

少年のころに抱いた夢、「ミス・フランスになる!」を叶えるべく闘いながら自分と周囲の殻を破っていく主人公を、ジェンダー自由自在モデルとしても活躍するアレクサンドル・ヴェテールが好演。

ミスコンの裏舞台、現在のフランス社会のリアルも描かれる、エモーショナルで楽しい作品。詳細はあらためて別媒体で書きますね。

 

写真ともに©2020 ZAZI FILMS – CHAPKA FILMS – FRANCE 2 CINEMA – MARVELOUS PRODUCTIONS

 

2021年2月下旬、シネスイッチ銀座 他全国公開

配給:彩プロ

今朝の日経The STYLE のコネリー追悼記事に関し、気を取り直して、謝辞と若干の補足の解説を。

James Bond と007は、使い分けが必要なのです。漠然としたファンにとっては同じようなものなのですが、James Bond はフレミングの原作に登場するキャラクターとして、たとえばプリンスホテル東京シティエリアで展開しているボンドメニューやボンドカクテルなどにも使用可能です。

一方、007となると、版権が映画製作のイオンプロにあります。したがって勝手にロゴを使ったりすることが見つかると、イオンプロから訴えられるおそれがあります。実はこれを知らずに007企画を進めて、直前でストップがかかり、ひやっとしたことがありました。以後、注意深く使い分けをしています。今回の原稿でも、そのあたり最も神経を使いました。

007と提携しているブランドも、映画ごとに変わっていますし、提携といってもいくつかの種類がある。このあたりのことについて、最新情報を反映し、原稿でミスがないよう、プリンスホテル東京シティエリアのボンドメニューでも監修いただいているBLBG CEOの田窪さんにご助言いただきました。

お話によればアストンマーチン、オメガ、ボランジェ、グローブトロッターはオフィシャルパートナー。ファミリーと呼ばれる組織のようなボンド組だそうです。お金を積んでも入れない、固い結束の世界。そのほかのブランド(スワロ、デュポンなど)は、作品ごとに出入りするとのこと。また、構成員にしてもなにか問題を起こしたりするとすぐにクビになるらしく、ターンブル&アッサーは「カジノロワイヤル」で問題を起こし、以後、ボンド組を外れているのだそうです。第一作のDr. Noから歴代のボンドシャツを作ってきたターンブル&アッサーですが、いまは007との提携はないのですね。驚きです。

しかし、ターンブル&アッサーは「ジェームズ・ボンド・コレクション」は展開している。この名は原作のキャラクターとみなしているからOKということですね。「007」は使えない。本国のターンブルのサイトには007のマークまで掲載してあって紛らわしいのですが、昔のよしみのような形で黙認されているか、イオンに見つかるとNGとなるかもしれないらしい。

そのような事情を知ったうえで、原稿からはターンブル&アッサーと007との関連を外しました。ボンドファンは本当に細部にうるさいということは、昨年の「ボンドの朝食」でいやというほど知らされたので、ひとつひとつ、あやふやな点をつぶしていきました。田窪さんのご助言にあらためて感謝申し上げます。

それほど神経をすり減らしても、基本的な場所でうっかりミスが出てしまう……。完璧とはなんと難しいことでしょうか。2020年のトリを飾るはずの仕事が、なんだかもう、情けない限り。これを戒めとして、さらに一つ一つの仕事をとことん丁寧に謙虚にやっていくことを来年の目標とします。

本日付の日本経済新聞The STYLE

コネリーのオビチュアリーとして「英国のブランド ショーン・コネリー」を書いています。

1か月以上前から原稿を送っていた渾身の記事で、校正ゲラを、おそらく20回くらいやりとりして、絶対にミスのないよう、ぎりぎりまで神経を使いました。The STYLEの今年の最後を飾り、コネリーへ捧げる完成度の高いページとなるはずでした。

 

なのに、一点、とんでもなく基本的な誤植が。

なぜこんなことに。日曜朝の一点の曇りもない快晴が落ち込みをさらに加速させます。調子に乗っていると天罰が下る、というような、冷や水を浴びたような朝。

 

 

(気を取り直し)。

「フォーマルウェア」となるべきところが「フォーマルウエアア」となっています。途中の校正では大丈夫のはずでしたが、改行などで最後、レイアウトを整える時になにか間違いが起きてしまったものと思われます。出てしまったものは戻しようがない……。

読者の皆様にも、お見苦しいものを見せてしまい、心よりお詫び申し上げます。ショーン・コネリーにもお詫びしてもしきれない。

 

今日は一日、追悼を兼ねて喪服を着て過ごします……。

 

 

 

「パリの調香師」、パンフレットにコメントが掲載されております。

1月15日、Bunkamura ほかで公開です。

Bunkamura上映作に立て続けて3本、コメントしたことになります(カポーティ、ヘルムートニュートン、調香師)。なんだか今年後半は(小さいものばかりとはいえ)、おそろしくたくさん仕事をしているなあ……。ほんとうにありがたいかぎりです。ひとつひとつを確実に、を心がけてさらに精進します。

Netflix のオリジナルシリーズ、「Emily in Paris (エミリー、パリへ行く)」が面白い。

シカゴのマーケター、エミリーがパリで仕事をする羽目に。パリのイジワルな同僚や上司、いかにもフランス的なオフィスカルチャーと恋愛事情、フランス語ができないエミリーに対して必ずしも優しいとは限らない住人、でも素敵すぎるパリの街並み。フランス文化とアメリカ文化の衝突が、きわめて現代的でリアルな視点のなかに描かれていて、笑いながら考えさせられることが多い。天真爛漫なヒロインを演じるリリー・コリンズがなんともかわいくて、デビューしたころのアン・ハサウェイを彷彿とさせる。


まだシーズン1の5話くらいまで見ただけですが、ブランド、香水、コスメのマーケティングに携わる人にとっても、有益な勉強になるドラマだと思う。パリの街並みやレストラン、各キャラクターのファッションもユニークで眼福です。

 

 

Netflix オリジナルで面白かったドラマ。Queen’s Gambit.

 

1950年代のアメリカが舞台。孤児院で用務員からチェスを学んだベス・ハーモンの8歳から22歳までの数奇な人生。

アニヤ・テイラー=ジョイ演じる天才チェスプレイヤー、ベスがクールでかっこいい。チェスの駒を動かす手の動き、視線がなんとも優雅でスリリング。50年代ファッション、インテリアも眼福です。ベッドカバーから壁紙まですべてお揃いのインテリアとか、クラシックなダサさのあるなんともかわいい50年代のヘアメイクにファッションとか、チェスの緊張感を引き立てる画面の質感が素敵。とはいえヒロインは薬物中毒だったり義母がアル中だったり、ヒロインがいちいち女性蔑視の扱いを受けたり、それを断罪するわけではない淡々とした描き方にリアリティがあって、たんなるおしゃれドラマには終わってないのがさすがネットフリックス。

チェスのルールをそれほど知らなくてもプレイの緊張感は楽しめます。アニヤ・テイラー=ジョイは遠からずブレークしそう。笑わぬ強い表情でミステリアスに魅了する、いい女優です。

2017年の映画、「チューリップ・フィーヴァー」。

チューリップへの投機に熱病のようにおかされていた17世紀アムステルダムが舞台。ラフ(首回りのひだ襟)が特徴的な、レンブラントの「夜警」風のコスチュームも眼福ですが、熱病のような一時的アフェアに人生を狂わされた人々の物語がしみじみ味わい深い。

鮮やかなブルーのドレスが重要な役割を果たしますが、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」のブルーターバンに使われたブルーと同じ貴重な顔料で描かれます(映画の中で)。17世紀ファッションの世界に浸りたいときにお勧めの映画。

 

Van DyckによるHenrietta Maria の肖像。1633年。なで肩のシルエット、大きなレースの襟、ふんわりふくらんだスカートの形が特徴的。Photo from Wikimedia Commons.

 

 

公開が11日(金)に迫りました。「ヘルムート・ニュートンと12人の女たち」。

 

PRリーフレットにもコメントを寄せています。先週末の読売新聞夕刊にも同じコメントが掲載されました。

#Me Too運動のあとだからこそ考えさせられます。もちろん人が傷つくようなことは論外ですが、あまりにもアーティストたちが委縮しすぎて、芸術の世界がつまらなくなっているのではないか? ニュートンと仕事をした12人の女性たちは何を考えていたのか? 直接、語られる言葉そのものが知的な刺激に満ちています。

「トルーマン・カポーティ 真実のテープ」本日よりBunkamuraル・シネマでロードショーです。

パンフレットにも寄稿しています。

(写真は「トルーマン・カポーティ 真実のテープ」オフィシャルツイッターより)

川本三郎さん(評論家)、山本容子さん(銅版画家)、森直人さん(映画評論家)も寄稿していらっしゃいます。登場人物の解説もあり、監督とカポーティの養女ケイト・ハリントンさんインタビューも収録し、税込800円は安すぎるくらい。

ウェブでは得られない情報満載の充実したパンフレットだと思う。私も何度も参照しています。よろしかったら劇場でお求めください。

「鬼滅の刃 無限列車編」。週末のみなとみらいの映画館は満席。


まったく前情報なしに見たのですが(アニメ版を少しだけ見ていた)、クライマックスが二度あって、キャラクターの作り方が絶妙にうまいなあと感心。

満席の観客は、エンドロールが終わってもしばらく誰も立ち上がりませんでした。こんな反応を起こさせる映画って。

ただ冷静になってみると、やはりお子様ターゲットでもあるので、心情を描かずにすべて言葉で説明しつくすなど、演出が白けたところもあり。でも、それをさしひいても、時間を忘れさせるダイナミックな映画でした。

Yokohama for all season.  ほんと、どの季節も美しい。


 

映画の余韻さめやらず、ロイヤルパーク最上階のバーでシャンパン2杯ほど飲んで帰るの巻。

 

 

 英語版は、英語の勉強にもなるよ。

 RBGことルース・ベイダー・ギンズバーグの原稿を書くために、ドキュメンタリー映画と伝記映画、2本立て続けに鑑賞。

彼女が切り開いてきた20世紀後半のジェンダ―平等への道を知ることの衝撃に近い感動。

 こちらはRBGが初めて裁判でジェンダー平等への一歩を切り開いた史実を描く伝記映画。アーミー・ハマーが夫役で出ているのもうれしい。

両作品、傑作でした。

詳しくは原稿で。

Ruth Bader Ginsburg. Official Photo from Wikimedia Commons.

Les Parfums 「パリの調香師 しあわせの香りを探して」。

エマニュエル・ドゥボスが調香師として主演する、じわじわ素敵な大人のバディムービーです。

香水好きな方にも、人生に行き詰った方にも、フランス映画好きな方にも、オススメ。

パンフレットに寄稿しました。

来年1月公開です。どうぞお楽しみに。

「ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒」。スタジオライカ最新アニメ。

舞台設定は19世紀後半(女性がバッスルスカートをはいているので)。ヒュー・ジャックマン演じるサー・ライオネルが「貴族クラブ」に認められるべく、人類の祖先「ビッグフット」が存在するという証明をするために冒険の旅に出る。

行く手を阻む敵は、女性の進出や進化論や電気を嫌う、ジェントルメンズクラブの老害。金のために動くその手下。どこの社会にも必ずいそうだ。笑

貴族クラブの紳士たちがテイルコートなのに対し、サー・ライオネルは黄色とブルーの千鳥格子のスリーピーススーツ、首元はアスコットタイ。これがとてもおしゃれなのです。

クラブで賭けをして出かけるあたりは「80日間世界一周」も連想させ、伝説の生物を求めてロンドン、NY、スイス、ヒマラヤをめぐる大冒険になっていくあたり、探検精神に富んでいた19世紀後半のイギリスのジェントルメンズ・カルチュアがよい感じに漂っていて、楽しい映画になっている

女性の扱いも、よくもわるくも英国紳士的。ゾーイ・サルダナ演じる「未亡人」が実はけっこうたくましく冒険心に富んでいたりして、最後のひねりも今っぽくて痛快です。

“You are a great man, but I deserve greater.”

 

Missing Link
監督・脚本:クリス・バトラー
配給:GAGA
11月13日 全国順次ロードショー

トルーマン・カポーティのドキュメンタリー映画を拝見しました。「トルーマン・カポーティ 真実のテープ」(The Capote Tapes)。

「ティファニーで朝食を」「冷血」で世界的に有名な作家カポーティ―の、きめこまかい人間描写にぐいぐい引き込まれる。

背が低い。ゲイ。声が女性っぽい。母は社交界に憧れて願い叶えられず自殺。孤独。愛されない。そんな生い立ちや背景を知ることで、数々の名作が立体的にエモーショナルに立ち上がってくる。

カポーティは作家であると同時にセレブリティだった。社交界の「道化」の役のような立ち回り。なぜそんな振る舞いをしたのか。人々が自分を「フリーク」として見る。そのぎょっとした視線を感じる。だから、カポーティはわめき、騒ぐ。そうすることで人々を気まずさから救ってやるために。「砂糖漬けのタランチュラ」「指折りの人たらし」「一度は会いたいけど二度は会いたくない有名人」「掛け値なしの奇人」などなど、彼を表現する悪態すれすれの呼称から、どんな印象を周囲に与えていたのかうすうす察することができる。

20世紀最大のパーティー、「白と黒の舞踏会」は、世界中から500人の著名人を選び抜き、招いた。ベトナム戦争のさなかに開催された、虚飾の極みのザ・パーティー。これについては25ansにも記事を書いておりますが、カポーティの生い立ちや立ち位置を知ることで、壮大なリベンジであることが感じられた。叶えられなかった母の祈りを、こうして叶えたのだろか。

スワンと呼ばれた社交界の華、当時のニューヨークのリッチ層の描写が豊富できめこまかく、文化史としての発見が多々ある。「白と黒の舞踏会」のセレブリティのファッションも、言葉を交わし合う当時の著名人たちの立ち居振る舞いも圧巻。

1977年のカポーティ。Photo by Arnold Newman Properties

セレブの秘密大暴露本でもある「叶えられた祈り」の発表がもたらした余波とバッシングのくだりも興味深い。いまにつながるゴシップ込みのセレブカルチュアは、この人から始まっていたのですね。文化史、文学史を学ぶ上でぜひ見るべき生々しいドキュメンタリーであると同時に、「特別な生き方」を貫こうとした一人の天才の栄光と転落、孤独と喧騒、愛と冷酷にも迫る見ごたえある映画になっています。

 

監督・製作 イーブズ・バーノー
配給 ミモザフィルム
11月6日よりロードショー

この問題作も読みたくなったのでポチリ↓

「透明人間」(The Invisible Man)。「マッドメン」のエリザベス・モス(出演作としては「侍女の物語」のほうが有名だそうですが、私にとってはそんなイメージ)が主演のサイコスリラー。

まったく予備知識なしで見たので、2時間、先の読めない展開に緊張感持続のまま引っ張られました。死んだはずの男が透明人間となってストーカーに。周囲は誰も信じてくれず狂人扱いされていく。コワ面白かったー。

観終って落ち着いてからラストシーンを思い返した時に、ああ、あれは「ミッドサマー」と同じ物語だったのだと気づきました。ヒロインの笑顔が語ることは同じことだったのでは。

” There are forms of oppression and domination which become invisible – the new normal. “(By Michel Foucault)

 

イクスピアリの映画館で、日曜の昼間、観客は5人だけ。映画館は換気がよいし、密にならないよう座席は空けて販売しています。観客も検温マスク消毒必須。にしても他の映画もガラガラ。映画に救われてきた身としては、映画産業が存続できるよう応援したい気持ちが大きいけれど、力がなさすぎてたいした貢献もできないのが虚しい。

EMA『エマ、愛の罠』。オンライン試写で鑑賞。

              ©Fabula, Santiago de Chile, 2019 


舞台はチリ。不能の夫。放火。養子。消防士。その妻の弁護士。レゲトンダンス。どのように収束していく話なのかまったく予想がつかなかったのですが、最後にああ、そういうことだったのかとブラックなユーモアにニヤリとさせられます。

全編をレゲトンの音楽、ダンスが彩ります。レゲトン(Reggaeton)とは、80年代~90年代にアメリカのヒップホップの影響を受けたプエルトリコ人によって生み出された音楽。Reggae +ton (スペイン語で「大きい」の意味)。

新感覚のレゲトン系ファムファタール・ミュージカルと呼べるでしょうか。

予告編です↓

 

 

” There is no such thing as a moral or an immoral book. Books are well written, or badly written. ” 「道徳的な本というのも不道徳な本というものも存在しない。傑作または駄作があるだけだ」(By Oscar Wilde)

 

★10/2 (金) 新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷、ヒューマントラストシネマ有楽町、kino cinéma立川髙島屋S.C.館ほか 全国公開

★監督:パブロ・ラライン
★出演:マリアーナ・ディ・ジローラモ  ガエル・ガルシア・ベルナル  パオラ・ジャンニーニ  サンティアゴ・カブレラ  クリスティアン・スアレス
★フィルムデータ:2019年/チリ/スペイン語/107分/カラー/シネスコ/5.1ch
★レイティング:R-15+  ★配給:シンカ  ★公式サイト:http://synca.jp/ema

 

〇デジタル版となったパリコレクションとミラノコレクション。

全部観られるのはよいけれど、結局は動画にどれだけお金をかけられるかの問題?とも。ブランドの世界観を表そうとして「夢」(悪夢含む)のような映像になったり、アニメだったり、ドラマのオープニング風だったり、香水のコマーシャル風だったり。アトリエの裏を見せるなどドキュメンタリー風味もあったり、玉石混交だったのはやはり第一回だから当然といえば当然ですね。気になったのは日本ブランドの多さで、数えて見たら11もパリコレメンズに進出していた。

フミトガンリュウ
イッセイミヤケ
ヨウジヤマモト
オーラリー
カラー
ミハラヤスヒロ
ファセッタズム
ヨシオクボ
ダブレット
サルバム
ホワイトマウンテニアリング

デジタル版となって進出しやすくなったため? 以前から日本の参加は増えていたという話は聞くけれど、いつのまに。中国、韓国のブランドも進出しており、たしかにかつての敷居の高いヨーロッパのコレクションというイメージはなくなっている。

時代の変化の渦中だからこそチャンスでもある。日本のクリエイターのますますの活躍を楽しみにしています。

 

〇2年ほど前に大ヒットした「カメラを止めるな!」。Netflixに入っていたのでようやく鑑賞。後半、爆笑のち感動。悲劇でもロングショットで見ると喜劇になる、ということばを思い出した。

“Life is a tragedy when seen in close-up, but a comedy in long-shot.” (By Charlie Chaplin)


「mid90sミッドナインティーズ」試写。

製作はA24、あの「ミッドサマー」を製作した会社です。監督・脚本はジョナ・ヒル。

90年代半ばのロサンゼルスが舞台。シングルマザーの母と兄と暮らす13歳の少年が、スケボーを通して仲間と出会い、青春時代に経験するあれやこれやを経て成長していく過程を描く、ある意味では普遍的な青春映画。

90年代の音楽、ファッション、スケボー文化が甘酸っぱく広がる。派手な演出は一切ないのですが、あとからシーンの断片がフラッシュバックしてじわじわきます。

多少、きわどくても、ある程度、冒険的な経験の数々を若者に許した方がいいのでは、と思う。今の日本は幼いころからあまりにも逸脱不可になっていて、それが若者の生きづらさ、息苦しさを増やす原因になっているのではないかと思う。みんな、もっと若い人に鷹揚になろうよ。ツーブロックぐらい、冒険にすらならないのに、なんですかこの国の窮屈すぎる理不尽な厳しさは。

 

なーんてことまで考えさせられる映画でした。スケボーシーンは見ているだけで快感です。

 

「mid90s ミッドナインティーズ」
9月4日(金) 新宿ピカデリー、渋谷ホワイトシネクイントほか全国ロードショー

© 2018 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.

Netflix で「グエムル 漢江の怪物」。監督はポン・ジュノ、2006年の作品。

英語のタイトルは、The Host.  ウィルスの宿主という意味も含ませている。パニック怪物映画のふりして、想像以上に面白いヒューマンドラマ、社会派ドラマだった。2020年の今に通じるところもある。終わり方も渋い。うまい。いやすごい。これぞ映画。圧倒されました。

Netflixに登場していた「タクシー運転手」。2017年の映画。1980年に実際に起きた光州事件をもとにした社会派の映画。当時から名作の誉れ高く、公開時に見逃していたので視聴しました。

こんなに重たくてあたたかい号泣ものの映画だったとは。目覚めていくタクシードライバーを演じるソン・ガンホがすばらしいし、クライマックスのタクシー運転手たちの援護シーンには鳥肌が立った。大ヒットも当然の傑作。

ヒューマンストーリーとして名作ながら、同時に、今の香港に思わず重ねて見ていた。すでにじわじわと情報統制が行われ、腐敗や不公平が露骨に目に余り始めている社会に生きていれば、自分に無縁な他人事として見るわけにはいかなくなってくる。

 

 

韓国で130万部突破のベストセラーとなった「82年生まれ、キム・ジヨン」が同タイトルで映画化されました。試写を拝見しました。

誕生から学生時代、仕事、結婚、出産、再就職への挑戦……。ごく普通の女性、ジヨンがその過程で遭遇する差別や偏見、障壁の数々。向けてくる相手は往々にして無意識で、何も考えていない。でも一つ一つの「ささいな」経験を我慢してきたことが、知らず知らずのうちにジヨンの精神を壊していた。

淡々と静かな描写が続き、とりたてて「大事件」は起きない。しかし、日常に起きる一つ一つの小さなエピソードがいちいち胸をえぐる。そうだ私もそういう経験をしてきたのだ。でも「そんなものだ」と思って心に蓋をしてきた。と思っていた。でもそうではなかった。

韓国だけでなく、日本の女性も「これは私の物語」であると共感するだろう。ひとり一人が、自分のケースにあてはめて共感したり違和感を覚えたり、つまり考え始める、そんな映画。

 

 

配給:クロックワークス
10月9日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開
(c) 2020 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.


原作は韓国でも日本でもベストセラー。

「最強のふたり」の監督、エリック・トレダノとオリヴィエ・ナカシュが、またしても人間愛にあふれる(という表現ではとても足りない)映画を作りました。「スペシャルズ!」、試写を拝見しました。

原題は、Hors Normes . 規格外、というようなニュアンスでしょうか。社会、病院、学校からも疎外された重度の自閉症の子供たち、ドロップアウトした若者たちの面倒を見る二人の気骨ある男性を、ヴァンサン・カッセルとレダ・カデブがごくナチュラルに演じます。

実話に基づくストーリーで、監督は25年前にモデルとなった男性たちに会い、映画にすると決めていたそうです。その想いの厚みが感じられる、本物の感情が伝わってくる映画です。

登場する自閉症の子供たちも、本人(本物の自閉症)であったり、自閉症患者の兄だったり、まさに当事者で、当事者しか使わないことば、当事者しかわからない行動や反応が、生々しく描かれます。それを受け止めて、決して見放さず「なんとかする」ヴァンサン・カッセルとレダ・カデブ。

決して重たくすることなく、押し付けることもなく、誇張することもなく、彼らを聖人視することもなく、むしろ軽やかにリアルに、時にユーモラスに描く監督の視線もあたたかい。

弱者が弱者に向き合うことで互いが救われていくプロセスも心に残ります。制度からはみ出してしまう弱者を薄情に切り離していく日本社会への警告に見えたところも。少なくとも、他人ごととは思えませんでした。多くの方に見てほしい。

配給:ギャガ

公開表記:9月11日(金)TOHOシネマズ シャンテ他全国順次ロードショー

© 2019 ADNP – TEN CINÉMA – GAUMONT – TF1 FILMS PRODUCTION – BELGA PRODUCTIONS – QUAD+TEN

〇熊本、鹿児島の豪雨の被害に遭われた方々にお見舞い申し上げます。逃げられなくなるまで水嵩が増すのはほんとうにあっという間なのですね……。犠牲になられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。鹿児島ではなお危険が迫っておりますが、どうかくれぐれもお気をつけください。

 

 

〇東京都知事選の結果次第では今の腐敗しきっている政治になんらかの風穴を開けられるのではと期待していた神奈川県民ですが、結果を見て、閉塞感がひときわ重たく押し寄せてきています。

 

 

〇オンライン試写でジョン・トラボルタ主演の「ファナティック」鑑賞しました。熱狂的なファンが、サインを拒まれたことを機にじわじわと恐ろしいストーカーと化していき、ついには凄絶な光景が。ジョン・トラボルタが次第にエスカレートしていく「虐げられたファン」を怪演。ファンも怖いがアーチスト側も対応に気をつけようと警告されつつ、なんとも不気味な映画。

 

重たく重なる雲から雨がたたきつけてくる月曜日です。災害や疫病に警戒しながら慎んで愚直に務めを果たそうと気を引き締めるにはうってつけの日。

 

“Life is far too important a thing ever to talk seriously about.” (by Oscar Wilde)

ピエール・カルダンのドキュメンタリー映画「ライフ・イズ・カラフル!」(原題 House of Cardin) 。一足早く拝見いたしました。

 

現在98歳でまだお元気なカルダンの、カラフルな仕事と人生について、情報ぎっしり&ポップに仕上げられた楽しい映画でした。

 

新しい発見の連続。

 

自分をばかにしたレストランへの痛快なリベンジのエピソードはじめ、ファッションに関心が薄い人にも響く要素が満載。

お勧め。

10月2日よりロードショー公開です。

©House of Cardin – The Ebersole Hughes Company

  いま進めているプロジェクトで「マニフェスト」を出す必要があるかもしれないと知り、まったく不意打ち&泥縄だがマニフェストの短期集中研究。

研究対象のなかで際立っていたのが、ケイト・ブランシェットがひとり13役をする映画「マニフェスト」。過去のアートマニフェストの文言をセリフに散りばめ、ケイトがさまざまな「市井の人」になり切り、マニフェストの文言を多彩な形でじわじわと味わわせてくれる。監督はジュリアン・ローゼフェルト。2015年のドイツ映画(言語は英語)。

この映画じたいがひとつの実験的なアートのようであり、アートマニフェストになっている。ことばの力、強い。それを13人の人格に演じ分けて発するケイトはさらに強い。


映画のラストシーンに近いシーンなのだが、これ、今のズーム会議を予見していないか?

 

韓国版「花より男子」(Boys over Flowers)観了。これで日本版の原作、ドラマ、ドラマ続編、映画版、中国版、韓国版、すべて制覇したことになる。ああなってこうなるという物語はわかっているのに、花男ワールドは何度でも訪れたくなるなあ。中国版「流星花園」のF4も最強の4人をそろえたなと思ったが、韓国版のF4も強豪だった。ク・ジュンピョ(道明寺司)役のイ・ミンホはとにかく見飽きることがない。ユン・ジフ(花沢類)役のキム・ヒュンジョンは韓国版では原作よりもかなり重要な役柄になっており、かっこよすぎる出番が多い。ジフを選んでおけば幸せになるのに、みたいに思わせるところが何度も出てきて、ジャンディ(牧野つくし)がうらやましすぎる。イ・ソンジュ役のキム・ボムもクールな表情に隠した傷つきやすさがたまらないし、ウビン役のキム・ジュンもいい味出している。4人揃うと、男の子のいいところが完璧にそろったぞという無敵な感じがファンをつかんで離さないのだろう。メンズファッションも、これでもかというくらい華やか。とくにマカオ編あたりからイ・ミンホが着こなすビジネスウェア。財閥の後継者は膝丈フロックコートというクラシックなウェアもこのようにモダンに着るのだ、という演出にほれぼれしました。10年前のファッションというタイムラグ感はあるものの、とにかく見て楽しい。韓国版に関してはストーリー展開にところどころ、無理があり、強引過ぎると感じられる部分もありますが、それを補ってあまりある魅力全開でした。というわけで次は「キング」かな。

これを観終るまでの10日間、なんと断酒できましたよ。シャンパン飲むよりもはるかに快く酔えました。イ・ミンホ強い。

〇JB press autograph で「モードと社会」という新連載が始まります。最初の3編はコロナ禍にあるモードの話で、特別バージョン。あとは月1回くらいの予定です。公開までしばしお待ちくださいませ。

現在の連載媒体は、「日本経済新聞」「読売新聞」「北日本新聞」「婦人画報.jp」「LEON」「kotoba」です。これにJB press autographが加わり7媒体になりました。どれも手薄にならないよう、気持ちをこめて取り組みます。

 

 

〇国の状況がすさまじすぎてどこからどう怒っていいのかわからない。驚愕のできごとが日々起きている。14世と16世の区別もつかない(おそらく学んだこともない)教養もモラルも良心も責任感も指導力もまったく示すことができないトップの支持率がまだ三分の一くらいあるってどういうこと。未来を担う若い人たちへの影響ははかりしれない。いつも白い服を着てアイメイクぱっちりのお人形さんみたいな大臣の言葉も表情もだんだん本物のお人形さんに近づいている。怖いな、大丈夫かな。

 

 

〇Netflixの「青い海の伝説(Legend of the Blue Sea)」観了。人魚と詐欺師の愛、と聞いてあまり期待しないで見始めたのだが、数百年前の宿縁がからみ、家族のおそろしい陰謀が明らかになるにつれて、中盤以降から一瞬も目が離せない面白さになってくる。ありとあらゆる感情をゆさぶられた。観終ってしばらく感情が疲れて寝込んでしまった。脚本はもとより、ファッションも音楽も俳優もインテリアもロケ地もすばらしい。イ・ミンホほどの美しい男性はいまどきのハリウッドにもいないのではないか。「愛の不時着」のヒョンビンもそうだったが、恋人にはこうあってほしい、という男性像をドラマの中で期待以上に見せてくれる。だからみんなハマるんですね。笑 2016年のドラマ、全20話。韓国の文化力をまた見せつけられた。

 

再起動を始めたところが増えてきましたね。

 

薔薇が最高にきれいな季節です。Have a nice weekend.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

婦人画報.jp フォーマルウェア連載第7回

今年は、アメリカ文学史に燦然とその名を刻むF・スコット・フィッツジェラルド(1896~1940年)の没後80年に相当します。また、ジャズエイジの輝きと退廃を描き出した彼の代表作『グレート・ギャツビー』(1925年)が出版されてから95年という節目の年でもあります。

このアニバーサリーを祝い、映画化された『華麗なるギャツビー』1974年版、2013年版、それぞれの映画で表現される“喧騒のジャズエイジ”のフォーマルスタイルを読み解いてみました。こちらです。


コロナ禍でフォーマルイベントがなくなっても、フォーマルウェアの連載を続けなくてはならないという試練。とても鍛えられます。

散歩ルート途中にある近所の公園も、初夏の新緑が映えるようになりました。


池の中央の岩がなにやらうごいているように見えました。


亀が甲羅干しをしているところでした。

“Take a walk with a turtle. And behold the world in pause.” (By Bruce Feiler)

一時停止中のプロジェクトも、こんな感じです……。

 


すっかり人間慣れしているハトは、至近距離に行ってもまったく動じません。

 

 

〇コロナ禍のもとの自粛要請の結果、人にリアルで会わない日が続くと、意味をなさなくなってきたものがあります。

ジェルネイル(ペディキュア含む)
まつげエクステ
エステ
ハイヒール
イブニングドレス

とはいえ、人間にとって完全に不要かといえばまったくそういうわけではありません。WWII終結2年後にディオールがニュールックを大ヒットさせたように、終息後しばらくしたらまた復活する要素だとは思います。

 

 

〇Netflixで「母なる証明」。ポン・ジュノ監督。人間の底知れなさを描く重たいミステリーで見ごたえがあった。まさかのどんでん返し。のあとに現れるとんでもない真実。しばらくあとを引きそうな奥深さ。

 

 

Men’s EX 6月号7月号合併号発売です。

避暑地特集にて、エッセイ「古今東西に通ずる避暑文化とは」を寄稿しました。


避暑どころではない現状ではありますが、脳内に少しでも避暑地の風を感じていただければ幸いです。早乙女道春さんのさわやかでダイナミックなイラストとともにお楽しみください。

 

 

Netflixの「梨泰院クラス」観了。ストーリー、音楽、ファッション、キャラクター造型、俳優の魅力、どれをとってもすばらしく、一週間ワクワクさせていただきました。多様性社会、復讐物語、青春群像物語、ラブストーリー、と多くの見方ができますが、とりわけラブストーリーとして見ると、従来の定型を破るZ世代的な新パターンなのでは。まさかの、でも当然の大逆転の展開には、感動ひとしおでした。パク・セロイの強さにも勇気づけられますが、賢く愛を貫くチョ・イソのかっこよさったらない。”No matter who my opponent was, I eventually won.  So, I’m not giving up.”

Day 4のテーマは、「映画」。

1980年代の終わりから1990年代にかけては映画コラムの連載をいくつかもっていたこともあり、1年に300本以上映画を観ていた時期があります。

まだCGがなかった時代、映画の文法を蓮実重彦さんや山田宏一さんの本から学びました。ヒッチコックの「サイコ」のシャワーシーンでは、実際にはナイフが肌に一切触れていないにも関わらず、編集だけでいかにも惨殺されたように見せるテクニックが使われていたと知ってスローモーションにして確認したり。ヒマだったのか。「映画術」は相当読み込んだ本です。

映画コラムは滝本誠さんのデイヴィッド・リンチを語るにぴったりないかがわしく危なっかしい文体に魅了されて滝本推しの映画は全部観ていました。
CG時代になってから映画をとりまく世界も一変しましたが、2010年代の状況は、宇野維正さんと田中宗一郎さんの対談でおおよその流れがわかります。

 

このコロナ禍で映画業界も大きな打撃を受けていますね。「今週の映画ランキング」欄が延々と空白という事態がほんとうに悲しい。映画のお仕事に携わるみなさま、お辛さはいかほどかと拝察します。どうかがんばってください。

#BookCoverChallenge
#Day4
#FourBooksforFourBatons

みなさま、どうぞお健やかにお過ごしください。

婦人画報.jp ウォーマルウェア連載 第6回更新しました。

「ひまわり」公開50周年を記念して、ソフィア・ローレンの持続的な魅力の本質を、彼女のフォーマルドレススタイルを通して解説しました。80歳を超えても30歳代と変わらずフォーマルドレスを楽しんで人生を謳歌している稀有な女優のマインドセットを探りました。こちら

 


コロナ禍でフォーマルシーンは壊滅です。冠婚葬祭もほぼゼロ。そんな状況ですが、ハードな現実をうるおす束の間の眼福として、しばし、お楽しみいただけたら幸いです。

 

〇ニューヨークのクオモ知事が語る「Build Back Better  (BBB)」(以前よりよい復興、創造的復興)ってよいスローガンですね。本日の読売新聞夕刊連載「スタイルアイコン」は、そのアンドリュー・クオモ知事について書きました。読んでみてくださいね。

 

 

〇おすすめです。シャネル公式の「ガブリエルシャネルと映画」。 シャネルと映画の関係が短い動画のなかに凝縮されて収められております。こちら

 

〇映画メモ続きです。

No. 7   The Man Who Knew Too Much (1956)  120min.

監督:アルフレッド・ヒッチコック  出演:ジェームズ・スチュアート、ドリス・デイ、ラルフ・トルーマン

「うますぎる。心拍数が上がってしまった。『ケセラセラ』の歌の使い方、アルバート・ホールに漂う緊迫感(楽譜、シンバル奏者の席、ゆれるカーテン)、大使館のドアからドアへのショット。それでいて、すっとぼけたラストシーン。もう、にくい、最高だ。ヒッチコックの頭がほしい。」(1992.11.5)

No. 8  The Graduate (1967)

監督:マイク・ニコルズ 出演:ダスティン・ホフマン、アン・バンクロフト、キャサリン・ロス

「ダスティン・ホフマンが出てくると聞いただけで貧乏くさいニューシネマを想像していたら、とんでもなく新鮮だった。ハードボイルドにニューシネマをアレンジしてくれた。ラストの数秒間のしらけた感じこそニューシネマ」(1992. 11.12)

No. 9  An Affair to Remember (1957)  106min.

監督:レオ・マッケリー  出演:ケーリー・グラント、デボラ・カー、キャサリン・ネスビット

「最後のシーン、うますぎる。涙腺ボロボロ。ケーリー・グラントがあんなにうまいなんて。セリフの展開、絵の使い方、前半の陳腐な船上シーンも美しくて許せる。それにしてもあのシーン。『その人は貧乏で、お金がなくて、そのうえ、そのうえ……(ここでケーリー・グラント、デボラ・カーがその人ではないのかと初めて気づく。そのまま次の間へ戻り、戸を開ける。鏡に映る、かの絵。ケーリー・グラント、一瞬、瞳を閉じる)』。これをメロドラマティックに音楽が盛り上げる。ケーリー・グラント、さすが。大根と思わせてあのうまさ!」(1992.11.14)

 

 

〇高校生、大学生、専門学校生でファッション史を学んでみたい方、10名さまに『「イノベーター」で読むアパレル全史』をサイン入りでプレゼントします。ご自宅にこもらざるをえないこの期間に、お役立ていただければ幸いです。ご希望の方は、コメント欄に学校名と送付先を書いてお送りください。コメント欄は承認制につき表に反映(公開)されることはありません。発送後、個人情報は私の責任においてすべてすみやかに削除いたします。先着10名様で締め切らせていただきます。書籍はもちろん新品ですが、サイン後、当方でオゾンによる殺菌処理をおこなって発送いたします。

↑ (追記)締め切らせていただきました。↑

 

“Coach said. “the quality of a man’s life is in direct proportion to his commitment to excellence, regardless of his chosen field of endeavor”.”   (By Sherman Alexie )

 

週明けから原稿4本、一つは7000字近いものだったのでぐったり消耗していたところへ、思わぬギフトが届いてエネルギーが戻ってきました。

Go Tailored でご協力いただいているテイラー廣川さんからの、高級手縫いマスク!

そして顧問先からも医療に使われる本格マスク!

この時期のあたたかいお気持ちが本当に嬉しい。ありがとうございました。

 

 

さて。約30年前の映画メモの続きです。

No. 4  Stalag 17 (1953)  119min.

監督:ビリー・ワイルダー 出演:ウィリアム・ホールデン、ドン・テイラー、オットー・プレミンジャー

「捕虜ものがこんなに面白くなるとは! 女優が全く出てこないというのに。目からうろこ。スパイ容疑がかけられたセットンがどう本物のスパイを料理するのか。あれこれ予想をたてながら見たが、ダンバー中尉を逃がす「筋」とセットンが脱走するのと、本物スパイをうまく処分するのとをみごとに収束させた手腕にはただうなる。うまい。ルビッチもそうだが、いくつかのプロットをうまく関係させながら一気に収束させドラマを盛り上げる手腕は名ディレクターの必要条件。ベティ・グレイブルのピンナップの使い方も絶妙で笑ってしまった。みごとな一作。」(1992.10.24)

 

No. 5 Foregin Correspondent (1940)  119min.

監督:アルフレッド・ヒッチコック 出演:ジョエル・マクリー、ラレイン・デイ、ハーバート・マーシャル

「見せ場が次々とこれでもかこれでもかと続く。アクション、アクション、アクション、の大戦直前ヨーロッパを舞台にした傑作。ヒコーキが墜落するシーンはコックピットにカメラをそなえつけ! 本社にニュースを伝えにいくときの巧みな芝居! 例のごとくラブ関係はとってつけたようだったが、これもご愛敬。最後はアメリカへのメッセージ。」(1992.10.26)


No. 6 Under Capricorn (1949) 117min.

監督:アルフレッド・ヒッチコック 出演:イングリッド・バーグマン、ジョセフ・コットン、マイケル・ワイルディング

「1830年頃のオーストラリア(元囚人ばかり!)を舞台にしたコスチューム・メロドラマ。みんな「いい人」ばかりで、悪役のはずのメイドのミリーも半端な悪役だから甘すぎる。ジェントルマン階級vs.下層階級の価値観というか美意識の違いをよく表すルビーのネックレスシーンはうまい。ジョセフ・コットンが貴婦人に立ち直った妻にプレゼントしようと後ろ手にかまえた手にネックレスがうつる。聞こえてくる会話は妻とマイケル・ワイルディングの『こんなところにルビーなんておかしい』という声。デコルテに首飾りは要らないのだ。ルビーのネックレスをにぎりつぶすようにして隠すジョセフ・コットン。映画に使われているコスチュームを扱ったテーマで何かできるはずだ。考えよう」(1992.11.3)

 

 

Netflix は「李泰院クラス」を見始めました。やはり韓国ドラマ、感情の揺さぶり方がすさまじい。続きを見るのがこわい。

 

 

Stay Safe. Stay Healthy.  食料品店やドラッグストアはどこも混んでいますね。必需品の買い物をするのもドキドキですが、そこで働く方はさらに不安でいらっしゃるでしょう。本当にありがとうございます。

 

“Maybe we need to shelter ourselves so we see the beautiful.” (By Joanna Coles)

 

1990年代は映画評論の連載をしていました。80年代の終わりごろからひょんな偶然ではじまった仕事でしたが、まったく映画のことは知らなかった。引き受けてから勉強し始める、という今も変わらぬ泥縄パタンで、一日一本、必ずビデオか映画館か試写で映画を観る、という修業を自分に課していました。ときに1日3本くらい観ることもあったので、一年に400本、映画を観るという生活を何年か続けていたのでした。

すっかり存在を忘れていましたが、そのころの映画メモが出てきたので、もしかしたら読者のみなさまの巣ごもり中の映画鑑賞のガイドにもなるのではないかと思い、いくつか転載していきます。誰にも見せない予定のメモだったので、辛口の感想もそのままです。日本語のタイトルは不明です。調べてみてください。順不同。

No. 1    The 39 Steps  (1935 英)81min.

監督:アルフレッド・ヒッチコック 出演:ロバート・ドーナット、ルーシー・マンハイム

「ワンシーンたりともムダがない。巻き込まれ型サスペンスだが、とぼけたユーモアもあって、冒頭の『記憶力のよい男 Mr. メモリー』がこんな風に生きてくるなんて……のあっと驚く結末。うまいなあ。『バルカン超特急』もイギリス時代の作品だけど、ともにどことなくのんびりした空気が感じられて、似ている」(1992. 10. 18)

No. 2     Meet John Doe (1941) 123min.

監督:フランク・キャプラ 出演:ゲーリー・クーパー、バーバラ・スタンウィック、ウォルター・ブレナン

「『Mr. Smith… 』も『Mr. Deeds…』も同じパタン。純真なアメリカの青年が、傷つきながらも孤独に社会に対して闘っていく。その陰には必ずやり手の女性がいて、彼女は改心して彼を見守っていく、というお決まりの図式。群衆が手のひらを返したようにクーパーにものを投げつけるあたりの『これでもか』シーンはさすが」(1992. 10. 18)

 

No. 3     To Be or Not To Be (1942)  98min.

監督:エルンスト・ルビッチ  出演:キャロル・ロンバート、ジャック・ペニー、ロバート・スタッフ

「”To be or not to be”のシェイクスピアのセリフがナチに絡んでくるという芸! 劇団員を活かしたナチス・ドイツへの皮肉。自分がドイツ人のくせして……笑  蓮実(重彦)先生が、『シェイクスピアをとるか、ルビッチをとるか』と言っていた意味がよくわかった。シェイクスピアをあきらめねばならない」(1992. 10.21)


当時は蓮実先生の影響で、ルビッチマニアでした。ヒッチコック、キャプラも全作見たと思う。

1942年って第二次世界大戦の真っ最中なんですよね。(少なくともアメリカでは)文化までは死ななかった。プロパガンダ映画が大量に作られました。その意味では、映画製作もままならない今のコロナ禍のほうが悲惨かもしれません。

 

 

 

今週もどうかみなさま安全にお過ごしください。体調を崩された方のご回復をお祈り申し上げます。医療に携わる方々のご尽力に感謝します。

調べ物の勢いで見た「GOAL!」(2005)がなかなか面白かった。Amazon Prime です。


サッカーの才能を天から授けられたサンティエゴ・ムネスのストーリーを通して、イギリスのサッカー文化を見せる。メキシコからロスに渡った不法移民の子供サンティエゴが、イングランドのスカウトに目をつけられ、ニューカッスルのチームで格闘して、その間ファミリーにも友人にもいろいろなことがあり、ドキドキの連続の最後に爽快なゴールを決めてくれる。

イングランドで「サッカー」と言っても通じなくて「フットボール」で通じること。ニューカッスルのアクセント。パブでサッカーを観戦する文化。フットボールは「宗教」であること。選手のアフター。興味深い。ジダンやラウールがゲスト出演、おそらくベッカムも(本人ではないと思うがベッカム風)。

「人間には二種類いる。豪邸に住む人間と、豪邸の芝生を刈る人間だ。夢は見るな。地道に生きろ」という父との葛藤を乗り越えたサンティエゴの姿に泣く。ダメ出しをし続けるけどどこか「父」のような監督もいい味出している。「凡人は自分の能力の限界内にとどまるが、天才はリスクを冒す。冒険する」という監督のことばが刺さる。

サッカー文化は深い。調べ始めたらずぶずぶで原稿の完成が延びてしまった。編集者さまごめんなさい。週末に仕上げますm(__)m

 

プレイヤーの方々はこの時期、さぞかしお辛い思いを抱えてお過ごしのことでしょう。才能をフルに発揮できないことほど苦しいことはないと思います。一日も早いコロナ終息をお祈りいたします。

 

“Genius is patience.” (By Isaac Newton)

 

Stay safe.  Stay healthy.

Netflix 「愛の不時着」(Crash Landing on You) 全16話観了。後半は「南」が舞台、そしてラストがスイスで美しすぎるエンディング。

「冬ソナ」や「星から来たあなた」にはまった人はぜったいズブズブになってますよね。脚本は、「星から~」と同じ作家パク・ジウンのようです。ユン・セリの涙につられ、最後はペットボトル3本分くらい(←おおげさ)涙を搾り取られました。脇を固める「北」のおばさんたち、4人の若い兵士たち、もうひとつのラブストーリーを構成するソ・ダンとク・スンジョンもそれぞれによい味を出していて、ご都合主義は多少ありながらも愛とあたたかさで包まれるような最高の盛り上がりでした。韓国ドラマは、やはり期待を外さない。

笑った言葉。「顔天才」=イケメン。「母胎ソロ」=恋愛経験のない男。

 

“A person often meets his destiny on the road he took to avoid it.” (By Jean de La Fountaine)

北日本新聞別冊「まんまる」5月号が発行されました。

連載「ファッション歳時記」第104回は「パンデミック ファッション業界の反応」です。
この原稿を書いたのは3週間ほど前です。この事態からさらに加速度的に状況が変わっています。他国の状況を見るにつけ、来月号が出るころにはさらに現状が著しく変化していることが予想されます。しかし、刻々と変わるその時々のことを書き留めておくことで、ずっとあとから振り返った時に、なんらかの参考になることがあるかもしれない。

 

 

 

〇Netflix「愛の不時着」はやはり期待を裏切らず怒涛の展開となり、涙をしぼりとられつつ第9話まで。いかん、寝不足だ。はやく結末を見たい半面、観終ってこの世界から離れるのがつらい。「怒ったファンはアンチよりこわい」など名セリフも。

ソン・イエジンとヒョンビン。

家の近くのハナミズキが咲き始めました。例年より早い。青い空と白い花のコントラストが鮮やか。

 

 

〇The English Game (Netflix) 観了。

ダウントンアビーの縮小ボーイズ版といった印象でした。イギリス史が好きな方、19世紀末メンズファッション&レディスファッションが好きな方、サッカー史に関心のある方には楽しめると思います。ジェントルマンシップの一端もわかります。万人受けは難しい、マニア好みの作品。

“Look around you!  You’ve given these people something to believe in!  Something to feed the soul when nothing else does it in their life!”

北部の工場労働者にとってサッカーの優勝はそれほどの意味をもった。イートニアンにとっては”a healthy way for little boys to get fit “.

その他いろいろ思うところは活字原稿で。

 

〇今、見始めてはまりそうで危険なのが、「愛の不時着」(Netflix)。

北朝鮮に不時着してしまった韓国のわがままなセレブ女性と、北朝鮮の不器用な将校のラブストーリー(になるはず)。北と南の文化の違いがデフォルメされて描かれ、笑いに昇華されている。ちょっともっさりした昭和的な展開なのも、逆に新鮮。

 

 

 

 

 

Men’s EX 5月号発売です。特集「スタイルある名作映画に学ぶお洒落メソッド」。巻頭言を書きました。

 

各国のスーツスタイルばかりでなく、カジュアル、ドレスダウン、小物使いなどなど、多岐にわたるチェックポイントから映画が選ばれており、それをどのようにスタイルに落とし込むかという実践まで考えられています。そんなこと知らなかった!! そもそもそこまでの細部に気づくのか! というか知ってどうする! という超オタクな小ネタたちにも驚かされます。イラストも秀逸。特集の最後は、綿谷画伯がバタクの中寺さん制作によるフレッド・アステアにインスパイアされたスーツを着るという締め。こんな映画特集、なかなかありません。映画愛、ファッション愛にあふれた編集部渾身の一冊。保存版です。

ステイホームで少し生まれた時間は、名作映画をファッションという視点から鑑賞する過ごし方はいかがでしょうか。

 

映画はセリフも練られているので、ボキャブラリーが増えるのもよいですね。コロナ終息後には、マニアックな方々と映画談義を楽しみたいものです。

 

 (Click to Amazon)

 

英ジョンソン首相も入院しました。エリザベス女王は歴史に残る激励スピーチを。ラストの”We will meet again.” に泣けました。世界中が協力しあって闘うべきときですね。感染して苦しんでいらっしゃる方々の全快をお祈り申し上げます。こんな状況でも休みなく働いていらっしゃる病院関係者、スーパー・薬局のみなさま、公共交通機関で働く方々はじめインフラを整備してくださっている方々にあらためて感謝します。病院関係者が命の危険をおかしてあれだけ休みなく仕事をしていらっしゃるのだと思えば、家にこもって休みなく原稿書くぐらい、どうってことない。

 

 

好きな映画のセリフのひとつ↓

“To infinity and beyond!” (Toy Story, 1995)

 

〇ご案内しておりました、4月25日の朝日カルチャーセンターの講座は、感染症拡大防止のため、延期となりました。予定されていた4月のイベント、講演、研修など人が集まるタイプの仕事はすべて新型コロナ終息後に延期です。書く仕事に集中できるタイミング、と受け止めて、粛々と目の前にある仕事をします。

 

〇Netflix のThe English Game.  集英社kotobaのスポーツ連載のネタとして見始めたのですが、これがおもしろい。1879年のイングランドが舞台です。サッカーがいかにして上流階級のスポーツからワーキングクラス的なスポーツへ変貌していったのかというプロセスを社会ドラマとして描いています。

1879年から始まる、全部で6回のミニシリーズ。いまのところ第2回目まで観終りました。制作はジュリアン・フェローズ、あの「ダウントンアビー」を手がけた方です。オールドイートニアンの文化、北部の繊維工場労働者の文化、あまりにも大きな階級格差の描き方もリアル。俳優たちが、ほんとうにその時代から飛び出してきたようなヘアメイク、衣装、身のこなし。ヒストリカルコスチューム好きも必見。女性はバッスルスカートの時代です。鹿鳴館スタイルのあれですね。ドラマとしてのレベル高い。続きが楽しみ。

 

 


車で5分の寺家町の桜。車窓から望遠で撮影。来年は花見が楽しめるのか。日本政府のあまりにも絶望的な対応を見ていたら、来年は日本という国が独立して存在しうるのだろうかとすら思い始めてきた。有能な人はビジネス界にも大勢いる。リーダー層を総とっかえするか、政権中枢周辺にそういう方々を置くか、なんとか有効な手を早急に打てるトップ集団に指揮をとってもらいたい。他国のリーダーの対応との落差が大きすぎて、恐ろしくなる。

 

 

 

 

〇The Nikkei Magazine Style 3月29日号。

「『007』のジェームズ・ボンドに垣間見る英国紳士の伝統と前衛」。インタビューを受けた記事が掲載されました。

インタビューを受けたのは3月中旬。今から比べればはるかに「のどか」でした…。対面で一時間話すことができたのですから。

この記事もボンド映画公開(4月予定だった)を想定して作られましたが、校了のころに、公開延期が決定。ボンドイベントに合わせた私のボンドウーマンドレス(心斎橋リフォームの内本さん制作)も着るあてなく宙ぶらりん。はたして11月に本当に公開できるのかどうか、それすらも危うくなってきました。

 

 

〇Netflix で The Intouchables 「最強のふたり」。実話に基づく話だそうですが、表面的なとりつくろいを超えてストレート&本音で人に接することの力を繊細に描き出した佳作。じわ~っと心があたたかくなります。

 

 

“The music, for me, doesn’t come on a schedule. I don’t know when it’s going to come, and when it does, I want it out.” (By Prince)

Netflix で配信されているソダバーグ監督のContagion 。2011年の作品ですが、まさに現在、世界で進行中のことが生々しく描かれている。そして遠くない未来。おそらくこのままいけばこの映画のようにワクチンをめぐる闘争も起きるのだろう。

描き方もソダバーグらしく、淡々淡々と起きていることを映していくことで生々しく感覚を刺激する。ラストに持ってきた「起点らしきもの」の描き方もあながちSFとは思えず。


予言のような映画。Social Distancing の様子など、当時から9年後を見ていたかのような。

非常事態と日常は地続きで、境界線などないのだということもよくわかる。

“Somewhere in the world, the wrong pig met up with the wrong bat.”

 

 

<追記>

志村けんさんがお亡くなりになったとの報道がありました。なんと悲しく、怖ろしいことでしょうか。SF映画が刻々と現実になっていく空恐ろしさがあります。志村けんさんのご冥福をお祈り申し上げます。現在、闘病中の方々も、少しでも早く回復されますように。

春分の日に公開されたBirds of Prey (「ハーレー・クインの華麗なる覚醒」).

動員が見込まれる大作が続々延期となり、映画館はあまりメジャーな動員を期待できない?作品や、過去の作品のリバイバル。過去作品のなかには見逃していた傑作も多いのでチャンスと言えばチャンスですが、今の時期に新たに公開されるのは……やはりおそれた通り……。

マーゴット・ロビーの魅力だけでなんとかもったという印象。異なる立場にある女性たちが連携して男たちをやっつけるというのは最近の流行なのかもしれないが。アクションシーンはかっこいいし痛快だけど、そこにいたるストーリーがいまひとつもたつき、落とし前が完全についていないのでくすぶりが残りました。ギャグも笑えない。ややもったいない。

六本木ミッドタウンの桜。三分咲きというところ? 本格的な見ごろは来週初めから半ばくらいでしょうか?

 

ミッドタウンのリッツカールトン45階のバーからのサンセット。


天井も高く、水が流れ、人工的ですが暖炉の火もあり、ワインも美味しい。

本格的に、春が始まりますね。



「新聞記者」日本アカデミー賞おめでとうございます。凱旋追加上映でようやく拝見することができました。

まさに日本で今起きている疑惑の数々を生々しく、畳みかけるように見せられる。新聞の輪転機が回っていくシーンは心臓が強く早く打つほどの緊張感で、主演の若い二人の表情にはぐいぐい引き込まれる。ラスト、これほどの「ホラー」はないのではと足がすくむ。

日本の女優がおじけづいて?出演できず、韓国のシム・ウンギョンが主演ということでしたが、ほぼノーメイクですばらしい演技。主演女優賞おめでとうございます。

受賞に関しては、やはり忖度され、報道しないメディアもありましたね。映画のセリフにあったように、いったい「誰を守っているのでしょうか?」

現在、国会で起きていることは、この映画が作られた昨年よりも事態が急速に進んでいることを示唆しているように思えてなりません。

 

爽快で楽しい映画だった。引退してなおエネルギーにあふれているおじいさん、いい加減消えてくださいという暗黙のメッセージもよかった。

いまどきの女性たちのアクションもボンド映画かというくらいキレよく、ムダな衣裳替えも楽しく、もう最高。クリスティン・スチュワート。エラ・バリンスカ。ナオミ・スコット。エリザベス・バンクス。Love. 続編待望。

Midsommar.

奇祭の儀式を「体験」させるまったりしたスピード感、明るい陽射し、美しい花々、リアルすぎる音、親切で優しすぎる人々の屈託ない笑顔が怖すぎる。共同体のために個を捧げ、個の自由意思がない。でも幸せという不気味。

こんな不穏な緊張を強いられた映画は久々。この状況で映画館満席。エンディングが透けて見える娯楽映画よりも、予測できない「体験」のほうがウケるのでしょうか。トラウマになる人がいそうなので決して万人にはお勧めしない。

ホドロフスキーはなんというか、神の視点があって、おどろおどろしいシーンもそれなりにOKだったのだが、これはカルトで気持ち悪すぎた……。見た経験はしばらく尾をひきそう。

?AI Amok 。


AI が不可欠となる近未来の、よい面も恐ろしい面も示唆してくれました。映画としてはなんというか、ハラハラドキドキも想定内で、とんでもないほどの展開はなく、日本テレビ的優等生ドラマという印象が残りましたが、楽しめました。

(「パラサイト」後は、とんでもない展開を見たいと思っている自分がいる。観客の期待値はどんどん上がっていくから、創り手はそうとういかれた発想をしないとね。自戒)

本筋に関係のない衝撃もありました。あの三浦友和が年を重ねてこうなったのか……。いえ、よい年の重ね方をされていると思います。

 

?ラ・コゼット・パフメ主催の地引由美さんが、あらためてブログで『「イノベーター」で読むアパレル全史』をご紹介くださいました。ありがとうございます。

 

 


緻密に作られた傑作でした。最後の最後まで油断ならないゲームが進行。あー面白かった。推理ものなのでいろいろ書くとネタバレになるのでやめときます。

ダニエル・クレイグとアナ・デ・アルマスはそのままNo Time To Die で共演とな。4月の007への期待も盛り上げてくれました(製作側は意図してないと思いますが)。

 

隙間時間の鑑賞だったのでおそろしく時間がかかってしまいましたが、Outlander Season 4 コンプリート。

ジェイミーとクレアの娘、ブリアナが両親を追ってタイムトラベルして18世紀へ。彼女を追ってロジャーが18世紀へ。18世紀のアメリカが舞台になるロジャーとブリアナの未熟だけれど壮絶な愛の物語、彼らを助ける両親、そしてイアンの自己犠牲。インディアン、混乱を極める北部、旧態依然の南部、すべてのエピソードがリアリティありありで号泣&号泣&号泣。ますますどっぷりと18世紀に食い込む物語、これからどこへ向かうのか。

Season 5はすでに始まっているが、Netflixで観られるのはまだ少し先でしょうか。

 

 Season 1

  Season 2

  Season 3

 

感情をはげしくゆさぶるこのドラマを見たあとは現実があまりにもこの無味乾燥なので、ついタイムトラベルさせてくれるストーンサークルを探してしまいます…。

*「フォード&フェラーリ」でカトリーナ・バルフの魅力を「発見」した方も多いようですが、まずはこのドラマのシーズン1をご覧になってみてください。

「フォード vs  フェラーリ」

 

エンツォ・フェラーリがフィアットのジャンニ・アニェーリの傘下に下った背景には、アメリカのフォードの買収の申し出があったのか!とか、ビートニクはフォードのブランディングにはNGだったのか!とか発見も多い。

イタリア人はこの映画見てどう思うのか、気になります
(Twitter: kaorimode1)

“Iacocca: James Bond does not drive a Ford, sir.(ジェームズ・ボンドはフォードに乗りません)
Henry Ford II: That’s because he’s a degenerate.(堕落したやつだからな)”

マット・デイモンとクリスチャン・ベイルのブロマンス共演は眼福でした。ケン・マイルズの妻役のカトリーナ・バルフは、「アウトランダー」と演技がほぼ同じ。持ち味ともいえますが。

 

<実話とはいえ、以下、ネタバレになる可能性もあるので、未見の方は読まないでくださいね>

実話なんですね。企業論理のために個人のパフォーマンスを抑制しなくてはいけなかったケンの心情はいかばかりだったか。その後、リベンジの機会も奪われたという経緯に、不完全燃焼感と悔しさがくすぶりました。

私としては、組織としてのフォード的なあり方と真逆な、ケンやビートニクやジェームズ・ボンド派。ジェームズ・ボンドがドライバーだったらぜったいに組織の命令を無視して走り切っていましたよね。

組織としての勝利が個人の栄光よりも上、というニュアンスを残した終わり方に不満は残った映画。

*映画やイベント直後の生な感想、気になった海外ニュースへの一言コメントは、Twitter: kaorimode1でおこなっています。今日のようにブログに転載することもありますし、まったく転載しないこともあります。Follow me ?

 

オーストラリアではブッシュの大火事が広がり収まる気配をみせず、アメリカとイランの間で戦争の兆しありで多くの国が無関係ではいられない事態。年頭からテロを起こすような、あの分別を欠いた大統領が核兵器を使わないという保証はどこにもなく、地球レベルで危機が切迫していることを感じます。

ファッションをテーマに語るなんて平和な時代でしかできないこと。地球に平和が訪れるよう、祈ることぐらいしかできないのがもどかしい。自衛隊が激しい紛争の可能性ある地区に派遣されたら日本の平和も完全に保証されるわけではないでしょう。現実は刻々とシビアな方向に向かっているように見えますが、それでも、希望のある2020年となるよう祈願したい。

 

Web LEONでのダンディズムの記事が、Nikkei Style に転載され、本日より公開されています。こちら

こういう時代に念のため振り返っておきたい先人の「ダンディ」として、白洲次郎(拙著では靴下ゆえに非ダンディ認定をしましたが)がいる。白洲次郎は最後まで時代の空気に逆らって参戦に反対して、ぎりぎりまで日英両国の関係者を説得し続けた。結局、それが無理とわかると食糧難を見越して疎開し農業を始めた。召集令状を拒否して兵役につかなかったことで卑怯者呼ばわりもされたが、自分を世のために活かす道は戦後の復興にありと見定め、多大な貢献をする。生前も没後も賛否両論がつきまとう人だが、自分ができることとできないことを見極める分別と、俊敏な行動力は備えていた。

全ダンディ志願者のみなさん。「時代の空気」に鋭敏でありつつ決して空気に流されないよう、歴史の大きな流れを知ってあらためて自戒を。

 何度も推薦しているかと思いますが、白洲次郎の生涯を知るにはおすすめのドラマ。伊勢谷友介さん、「マチネの終わり」にでは英語がイヤミになるちゃらい男の役でしたが、こちらは骨太な英語力を駆使してかっこよすぎるくらい。

「ガーンジー島の読書会の秘密」(The Guernsey Literary & Potato Peel Pie Society) のご紹介です。

1946年、第二次世界大戦後のロンドン、そしてガーンジー島を舞台に展開する、しみじみあたたかく美しい、そして少し苦みもあるヒューマンドラマです。監督は鉄板のマイク・ニューウェル、出演はリリー・ジェームズを筆頭に、「ダウントンアビー」でおなじみのあの人もこの人も。嬉しくなります。

ストーリーも話法も余韻があとあとまで残る味わい深いもので、ここで詳しく触れると興ざめになるのでぜひ劇場で体験いただきたいと思いますが、1940年代のファッションも見どころの一つであると強調しておきます。

作家=キャリアウーマンとしての、戦後のロンドンスタイルがオンからオフまでワンシーンワンシーン、とにかく素敵です。こんな帽子のあしらい方には目が釘付けに。

洗練されたデートファッションも、メンズ、レディスともにため息もの。バストからウエストへのラインを強調する黄色いドレスは、当時人気のあったメインボッチャー風? (ウォリス・シンプソンがウィンザー公との結婚式に着たドレスがメインボッチャー。ウエストラインのデザインが似てますね)

編集者との打ち合わせや著者トークショーなどの「作家のお仕事スタイル」が今見ても古くなっていないのです。

一方、舞台がガーンジー島にうつるとがらりと雰囲気が変わります。ここではダイヤの婚約指輪など浮きまくってしまう。素朴なプリントブラウスやセーター、カーディガンスタイルが島の人々の生活にしっくりとなじみます。子供服にも手作りの味わいがある。衣裳デザインはシャーロット・ウォルター。当時の服を再現するため、地元のウィメンズ・インスティテュートの協力を得たそうです。1940年代の型紙を渡し、手編みのニット衣装を彼女たちに作成してもらったとのこと。

ガーンジー島は、大戦時、ドイツの占領下にあった唯一のイギリス領。1941年から終戦まで、どれだけ悲惨で苛酷な目に遭ってきたのか、同じイギリスとはいえ、ロンドンとの違いが強調されることで、ガーンジー島の特殊な位置づけが浮かび上がってきます。

服飾史においては、ガーンジー・セーターはとても有名です。ガーンジーのセーターは海で働く男たちのために編まれたもので、実用性が重視されています。前後の区別が無いシンプルなデザインは、暗い海でも短時間に着ることができるようにするため。首・肩・腕には、海上での作業の動きを楽にする工夫があしらわれています。なによりも、常に命の危険を伴う仕事をする夫や息子を思い、女性たちはそれぞれの家に伝わるエンブレムを編み模様で表現しました。模様は、万一の場合はすぐに身元が識別できる目印でもあったのです。上の写真、ミキール・ハースマンが着ている紺のぼろぼろのセーターがそれに近いでしょうか。

ちなみに、となりの Jersey Island(ジャージー島)もセーターで有名です。日本語のジャージの由来になっており、フランスではセーターのことを Jerseyと呼びます。

そんなこんなのファッションにも目を凝らしつつ、雄大な自然を背景に展開するヒューマンドラマをご堪能くださいませ。

「ガーンジー島の読書会の秘密」 8月30日(金)よりTOHO シネマズシャンテほか全国ロードショー
©2018 STUDIOCANAL SAS

メンズプレシャスのウェブサイトで、ライターの堀けいこさんより新刊をご紹介いただきました。力強いご推薦をいただきありがとうございます。こちらです。

?超超超おそまきながら移動中のお楽しみとして「ジョジョ」をNetflixのアニメ版で見始めたのですが、いやなぜもっと早く見ておかなかったのかと。

チューダー朝に、エリザベス1世に裏切られた怨念をかかえて死んだという黒騎士タルカスとブラフォードの話は、ほんとなのかと思わず調べてしまった(笑)

気弱になって落ち込むことがありましたが、ディオの「貧弱貧弱ゥ」のセリフに脳天をやられました。ほんと、時には人間超えの強さを持つくらいの気迫でいかないとやり終えられないこともありますね。

「トールキン 旅の始まり」。


ジェントルマン文化に関しての語りどころ満載で血が騒ぎます。


20世紀初頭~第一次世界大戦後までのメンズファッションが(軍服含め)見もの。戦争シーンはかなり血みどろ泥泥ですが、それも含めての紳士文化。イギリス好きには全力推薦。

(From L-R): Anthony Boyle, Tom Glynn-Carney, Patrick Gibson and Nicholas Hoult in the film TOLKIEN.

ファブフォー・トールキン版は美しすぎて気絶しそうでした。

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詳しくは別媒体で。ジェントルマンはこうして作られる、という教材にしたいくらいの映画でした。

8月30日TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開

Photo Courtesy of Fox Searchlight Pictures.
© 2019 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved

ニューヨークの伝説的なホテル「ザ・カーライル ア ローズウッドホテル」を描いたドキュメンタリー映画、『カーライル ニューヨークが恋したホテル  (Always at The Carlyle) 』。一足早く拝見する機会をいただきました。


©2018 DOCFILM4 THECARLYLE LLC.

英王室からハリウッドセレブリティまで。多くの人々に愛される文化的なレジェンドにもなっているホテルの秘密はどこにあるのか。従業員はゲストの秘密を決して明かさないのに、ホテルの本質というか底力が次第にあぶり出されていきます。アート、ファッション、パーティー、スキャンダル、人情の機微……。そうした要素が織りなすニューヨークの歴史が詰め込まれたホテルといってもいい。華やかさと楽しさにうっとりしながら流れるような90分。音楽も最高です。最後はちょっとビターな余韻が残ります。

ホテルの名前はなんとあの「衣服哲学」を書いたカーライルに由来するそうですよ。ほかにも「えー?!」というネタ、語りどころが満載です。

©2018 DOCFILM4 THECARLYLE LLC.

8月9日(金)よりBunkamura ル・シネマほか全国順次公開

配給:アンプラグド

映画版の「キングダム」にあまりにも魅了されてNetflixでアニメ版シーズン1を観了。キングダム世界に入り過ぎてなんども具合が悪くなるほど面白かった。

とりわけ将軍王騎の描き方には完全に脳内を持っていかれた。この原作者は天才か。生きている間にこの作品に出会えたことは幸運だった。エネルギーをもっていかれたのか与えられたのかよくわからないほどの疲労が残る。

出先でちょうど時間がぽっかりと空いて、タイミングがよいからというだけで入ってみた映画。『キングダム』。

これが! ちょっと血がわくくらいはまりました。原作は有名なマンガだったんですね。そんなことも知らずごめんなさい。原作もストーリー展開もまったく知らないまっさら状態で見たのですが、息子によれば「小・中学生が熱狂しそうな、わかりやすすぎる映画」なのだそうですが、脳内中学生の私もばっちり楽しませていただきました。

アクションシーンはさすがに中国のカンフー映画のレベルから見れば甘いかもしれない。セリフ回しもやすっぽいところはあったかもしれない。それは差し引いても、山崎賢人、吉沢亮、長澤まさみといった若い美男美女にエネルギーと情熱があり、彼らのフレッシュな魅力でずっと見ていられる。

実はこの映画を見てから3日間ちょっと、高熱を出しました。何年ぶりかくらいの発熱(頑丈なだけが取り柄)。一応病院に行ったけどインフルでもなく他に異常はなく原因不明。なにかに火をつけられたのか。単に映画館で風邪のウィルスに感染しただけなのか。

ゴールデンウィークシーズンのお約束映画「名探偵コナン 紺碧の拳」。

今回はシンガポール、マリーナベイサンズを舞台に、怪盗キッド、平井アーサー、京極真が大活躍。昨年泊まったばかりの場所だったのでひときわ嬉しかったな。インフィニティプールのシーンもばっちりありましたね。

京極真、強い。かっこいい。一途。いろんなものを背負って闘う、ロマンティックな最強男子。

最後のマリーナベイサンズでのアクションシーンもタイタニックを思わせ、最高でした。これを破壊し、新しい街に……という構想は、案外、シンガポールの一部の人が心の中で思っていることなのかもしれないと憶測したりもして。

一年に一本、凝縮した作品を届け続けるって偉大だな。毎年この時期に夢中になれる映画が来るというのもありがたきこと。ラブ&リスペクト。

映画「芳華」にコメントを寄せました。

先日も書きましたが、心が洗われるような映画です。いまの中国映画の底力を見る思いがしました。「流星花園」(←いまだ余韻続く)とはまた趣きの異なる王道の青春もの。ダンスのレベルも高く、驚かされます。

映画版「翔んで埼玉」。

爆笑の連続。リフトアップ効果を実感するほど笑わせていただきました。

原作の漫画は1982年に描かれていたそうですが、これほどの怪作、知らなくて申し訳ありませんでした。映画版の監督はあの「テルマエロマエ」シリーズの武内英樹さんなのですね。納得。最後の最後まで笑わせたいというサービス精神全開で、いやもう参りました。リスペクト。

ひな祭りの日は終日雨で寒い一日になりましたね。

雨の中、六本木ヒルズのJ-wave across the skyの生放送に出演しました。

聴いてくださった方、ありがとうございました。いつもながらなんですが、10分の番組内では、(音楽が入るので実質5,6分?)用意してきたことの10分の1も話せないですね……。聞いている方としては、関心の薄いテーマであれば、「話し方」とか「声が醸し出す雰囲気」しか受け取っていなかったりしますので、まあみっちり話す必要はなく、ぎりぎりポイントを絞っていくというのがミッションなのですが。

課題は今後に活かすとして。ヒョンリさん、スタッフのみなさま、ありがとうございました。

番組のなかでも触れていましたが、いま、六本木シネマズでは「女王陛下のお気に入り」において実際に使われたコスチュームが展示されています。ご覧のようにモノトーン。この映画では国をコントロールする女性がモノトーンをきりりと着ておりナチュラルメイク、男性が軽薄な遊びに興じてフルメイクで華やかなファッション。衣裳デザイナー、サンディ・パウエルのインタビューを読むと、彼女が意図的におこなったことであることがわかります。

キッチンのメイドはデニムを着るし、ビニールを使ったドレスもあり、レザーの馬具もかっこよくて、ケガを隠すアイパッチもクール。サンディ・パウエルの仕事はやはりドラマやキャラクターに多大な影響力を及ぼしながらも、楽しさにあふれています。

それから、しばらく前にも下のミニムービーをご紹介しましたが、「権力をもつ宮廷人の衣裳は一人で着ることができなかった」旨の番組での発言と関連付けて再掲します。映画のなかのアン女王の衣裳ですら、これだけの手間暇をかけて完成します。脱ぐときは逆のプロセス。毎回、これを繰り返すわけですね。

18世紀、ロココ全盛の衣裳の着付けに関しては、スティーブン・フリアーズ監督の「危険な関係」のオープニングシーンをご覧ください。服地をボディスに密着させるために、毎朝、メイドが縫っていた様子が描かれています。

ヒストリカルコスチュームの話をし始めたら止まらなくなるのでこの辺で。

雨の月曜日となりましたが、心のなかは晴れやかな、一週間のスタートとなりますように。

絶賛コメントに参加しました。「ふたりの女王 メアリーとエリザベス」(Mary of Scots)。上の写真はマーゴット・ロビーですよ。白塗りメイクでここまでやる。あっぱれ。

その他の方々のコメントはこちらにも。


英国女王映画シリーズについては、3月3日(日)、J-Wave across the sky で10分ほど玄理さんと語ります。11:30~11:40。タイミング合えば聴いてくださいね。

「ヴィクトリア女王 最期の秘密」。ヒューマントラストシネマにて鑑賞。

Queen Victoria: Everyone I love has died and I just go on and on. What is the point?

Abdul Karim: Service, Your Majesty. We are here for a greater purpose.

ジュディ・デンチが「ジョン・ブラウン」の映画に続き、ヴィクトリア女王を演じてはまり役。身体にガタがきて、退屈し、孤独を抱えながら延々と長生きしているだけ(という演出)の女王に、再び生気を与えたのが、インドから来た一人の召使。女王が長身のイケメン好きというのは10代のころからかわっていないのだな。笑

当時のインドの様子、宮廷のばかばかしいくらいの序列やしきたりなどが生々しく、でも壮麗に、どこか滑稽に描かれていて、まったく飽きさせず、すばらしい。女王をとりまく周囲の人々の反応やセリフもおもしろく、眼福を与えながら終始笑わせ泣かせてくれる。最後はじわじわあたたかさが心に広がる。

観終って劇場を出たら、なんとおそろしくタイムリーなことに、続々封切される「女王映画」について語るお仕事の依頼が舞い込みましたよ。放送時間など近日中にお知らせします。

春分の日はとてもあたたかな大安でしたね。私も原稿を2本、仕上げたほか、新しいチャンスをいくつかいただいた、春のスタートにふさわしい日になりました。機会を活かすも殺すも自分次第なので、万全の備えで臨みたいと思います。

さて、先日、ザ・プリンスパークタワー東京のご協力のもとに撮影が無事終了したNHK World Kawaii International 記念すべき第100回、ロリータスペシャルの回の放映が以下のように決まりました。

<放送タイトルと日時>

放送回:#100『Forever Young ~A Love Letter to Lolita~』 本放送:2月8日(金)9:30,15:30,22:30,27:30 (28分番組) 再放送:2月22日(金)9:30,15:30,22:30,27:30 ※世界各国の時差対応で1日に4回放送されます ※上記の時間は全て日本時間です

<放送の視聴について>

NHK World(※海外向けのNHKチャンネル、全編英語放送)における ライブストリーミング放送で日本でも視聴が可能です。 NHK Worldホームページ・・・http://www3.nhk.or.jp/nhkworld/index.html 国内ではオンラインでのストリーミング視聴が可能となっておりますので、 放送時間に上記URLにアクセス頂き、サイト右上の「Live」という部分を クリックして頂ければご視聴頂けます。 Live配信ページ・・・https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/en/live/ 上記のURL先からですと直接Live配信ページに行くことが可能です。

自分でなかなか見る気もしませんが、万一、お気づきの点あれば、今後のためにご教示いただけますと幸いでございます。

 週末に原稿ネタとして読んだ本。ヴァレリー・スティール編集の”Pink: The History of Punk, Pretty, Powerful Color”. ピンクという色について徹底的に考察したビジュアル本。いやもう見ているだけで気分が春になりました。日本におけるピンクの扱いもまるまる一章あって、楽しい本でした。どこにどのように書こうか、思案中です。

続々公開されるファッションデザイナー映画について、コメントしました。読売新聞1月25日夕刊です。

一昨年あたりから、この波は続いていますね。私がいちばん見たいと思うドキュメンタリーは、LVMHトップのベルナール・アルノー氏の映画。まあ、撮らせないでしょうけれど……。

女王映画続々、という特集もやってほしいな。

試写拝見しました。日本語のタイトルは「ふたりの女王 メアリーとエリザベス」。原題はMary Queen of Scots.

この二人の女王をめぐる史実は、どんなドラマよりもドラマティック。それゆえ何度も何度も映画化、ドラマ化されてきた。今回の映画は、女性のトップを支える男性社会という視点もちらりとさしはさみながら、新しい解釈による濃密なストーリーテリングで編みあげられている。

ふたりの女王が面会するシーンの緊迫感たるや。それぞれの背景を負い、それぞれの決断をしてきた女王の孤独や悲しみが迫ってきて、涙なしには見られなかった。演じる2人の女優がまたすばらしいのです。とりわけエリザベスを演じたマーゴット・ロビー。なぜあの白塗りなのか?かつらなのか?理由も明かされるのだが、ヘアメイク、衣裳の力も手伝って、刻々と変わりゆく女王の一生を演じきってあっぱれ。

女王ふたりのライバルとしての争い、という視点は男社会のもの。おうおうにして、男性社会は策謀の網をはりめぐらし、女同士で争わせるように仕向け、自分たちがまんまとおいしいところを手にしていくことがある。比べるレベルではないが、私もかつて(大昔のことだが)そういう策謀にひっかかりそうになったことがあるので、このあたりのことは痛いほど迫ってくる。表面だけちやほやする男たちの策謀に乗せられてしまうと、とんでもない罠が待っているのだ。

Mary Stuart: Do not play into their hands. Our hatred is precisely what they hope for. (メアリー・スチュアート:男たちの策略の手に落ちてはいけません。私たち女王ふたりが憎み合うこと、それこそ彼らの思うツボなのです)

美しくて勇敢である、ということが必ずしも女性リーダーにとっては有利に働かず、かえって女性にとっての大きな罠になることがある、という戒めを見せてくれるのがメアリー・スチュアート。彼女の美しさがあだになり、敵を作り、血まみれの惨事を招いたばかりか、最後には国を追われる羽目になった。

Elizabeth: Your beauty, your bravery, now I see there’s no cause for envy. Your gifts will be your downfall!  (エリザベス:あなたの美しさ、あなたの勇敢さをかつて私はうらやんだ。でももううらやましくはない。あなたのその美質があなたを転落させたのですから)

最後には「男」としてふるまうことを決断し、そのように行動したエリザベス。それぞれに背負ってきた歴史があってこうせざるをえなかったので、誰が悪いとか誰が正しいということは言えない。

メアリーは処刑され、時間は流れる。メアリー・スチュアートが生んだただ一人の息子が、子供を生まなかったエリザベスの跡を継いで、イングランドとスコットランドがはじめて合併する。両国の平和を願っていた2人の女王の意志は、このような形で時間が解決した。

こういう史実を見るにつけ、やはり「神の意志」というのがどこかで働いているように思えてならない。何度たどっても感慨深い物語。

アン女王、ヴィクトリア女王、エリザベスにメアリー、と女王映画も続きますね。嬉しい悲鳴です。「ふたりの女王」では俳優の人種も多様。アジア系のジェマ・チャンもエリザベスの侍女役として出ていてまったく違和感なく、この史実の現代的な解釈を促していて、嬉しくなりました。

「ふたりの女王 メアリーとエリザベス」 Mary Queen of Scots
監督:ジョージ・ルーク 出演:シアーシャ・ローナン、マーゴット・ロビー、ジャック・ロウデン、ジョー・アルウィン、ジェマ・チャン、マーティン・コムストン、ガイ・ピアース、イアン・ハート
配給:ビターズ・エンド 3月15日 TOHOシネマズ全国ロードショー

「女王陛下のお気に入り」(The Favourite) リーフレットにコメントしました。以前、試写直後に本ブログでも紹介しましたが、18世紀初頭の男女宮廷衣裳も見どころです。バロックからロココの過渡期のスタイルですが、現代の観客も魅了するようにアレンジが加えられていて、斬新な印象。狩猟服、乗馬用馬具などは、着たい、と思わせる。デザイナーはアカデミー賞3度受賞の大御所、サンディ・パウエルです。ヒストリカルなファッションが好きな方には超おすすめよ。あまりパブリシティには出てないのですが、メンズの宮廷スタイルもなかなか面白いのです。男性もかつらにメイク、フリルにハイヒールの時代ですから。

ストーリーは激辛ブラックユーモア。あとからじわじわくる感じ。

なんとケンジントン宮殿では、この映画のコスチューム展が開催中。こちら。

いいなあ、この展覧会。取材に行きたい。スポンサー(掲載先)大募集!!

アン女王スタイル着付けの様子は、Historic Royal Palaces がYou Tubeで公開しています。↓ とてもひとりでは着られない当時の宮廷衣裳の内部構造がわかります。

<追記>
この日、アカデミー賞ノミネートの発表がありました。この映画は最多10部門にノミネートされました。


・作品賞
・監督賞(ヨルゴス・ランティモス)
・主演女優賞(オリヴィア・コールマン)
・助演女優賞(レイチェル・ワイズ、エマ・ストーン)
・脚本賞(デボラ・デイヴィス、トニー・マクナマラ)
・編集賞(ヨルゴス・モヴロブサリディス)
・衣裳デザイン賞(サンディ・パウエル)
・美術賞(フィオナ・クロムビー)
・撮影賞(ロビー・ライアン)

女優三人はトリプルノミネート。助演をこの2人が争わなきゃいけないところに不条理を感じます。どちらもそれぞれにキレ方がすばらしいので……。2月25日に発表されます。もうノミネートだけで十分偉業、おめでとうございます。

ロンドンファッションウィークメンズ開催中。デイヴィッド・ベッカムが一部所有するケント&カーウェンは、戦前ドラマ「ピーキー・ブラインダーズ」とコラボしたコレクションを発表しました。詳細は「ガーディアン」のこちらをご参照ください。


Special Thanks to Photograph: Jamie Baker for the Guardian

極太ストライプの上着、固結び調のネックウエア、なかなかかわいい。

Peaky Blindersはいま話題にのぼることが多いBBCドラマです。1919年のバーミンガムに生息したギャングのストーリー。この時代のコスチュームって凝っていて、美しいんですよね。

BBCのHPより。Peaky Blinders

写真を見ているだけでテンションが上がります。多くのデザイナーがそう感じたようで、インスパイアされるブランドが多々。

マーガレット・ハウエル、ドルガバ、アレキサンダー・マックイーンなどがこの時代にインスパイアされたコレクションを発表しているという記事はこちらをどうぞ。

イギリスのコスチュームドラマは脚本も衣裳も俳優もセットもレベルが高くて、影響力が大きいですね。ダウントン・アビーの映画版ももうすぐ公開になるし、1920年代(前後)ブームは今年、しばらく続きそうですよ。

Vivienne Westwood 映画についてのコメントが、朝日新聞12月20日夕刊に掲載されました。

さらに、ラジオ(J-wave)でも語ります。

☆12月23日(日) 11:30~11:40 「DIANA Shoes New Look」生放送 玄理さんナビゲート

☆12月25日(火) 13:45~13:55 「Good Neighbors  森ビル東京パスポート」(収録済み) クリス智子さんナビゲート

ほとんど「ヴィヴィアン映画のアンバサダー」と化しておりますが? こうして多方面からお声をかけていただけるのは光栄です。

打ち合わせに立ち寄ったTable 9 Tokyo 冬仕様。夜はこの上なくセクシーな空間ですが、昼間も美しい

来年4月公開ですが、スミマセン、一足早く拝見しました。

40歳で自殺したイギリスのデザイナー、アレキサンダー・マックイーンのドキュメンタリー映画です。

伝説として語り継がれるショーのハイライトも網羅。闇や死や醜と向き合い、そこから美を引き出した彼の功績と、恩人に対しても冷酷な一面、1990年代の激動のファッションシステムのなかでの幸運や裏切り。40歳の人生の春夏秋冬がエモーショナルに描かれます。

複雑な余韻がぐるぐる続く傑作です。詳しくはまたさまざまな媒体で書きます。

それにしても、クイーン⇒ヴィヴィアン・ウエストウッド⇒マリー・クワント(「ロンドンをぶっとばせ」)⇒アレキサンダー・マックイーン、と大好きなイギリスのカルチュアアイコンの映画が続きます。もう嬉しすぎて。

監督:イアン・ボノート
音楽:マイケル・ナイマン
配給:キノフィルムズ
2019年4月全国ロードショー *写真は配給会社より

「ヴィヴィアン・ウエストウッド 最強のエレガンス」のパンフレットにコメントを寄せました。

2パターン提案しました。王道の、本質をすくいとって称揚するコメント。私が得意とするいつものパターンですね。

もうひとつは、他の方々が絶賛ぞろいだろうから、ちょっと外したパターン。

結局、外しパターンのコメントが採用されているという次第です。やはり他の大御所のみなさまは絶賛コメ。

ヴィヴィアンのこの映画に関しては、GQに書き、プレスシートに書き、来月出るEnglish Journal に書き、コメントも寄せ、さらにはラジオでも語ります。王道的な解説は、本HPのetc.欄にプレスシート解説のpdfを添付しておりますので、そちらをご覧くださいね。

ラジオはJ-Wave、23日(日)11:30~11:40 「Diana Shoes New Look」のコーナーで生出演で語ります。日曜の朝ですが、タイミングが合うようでしたら、聞いてみてね。

The Favourite 「女王陛下のお気に入り」試写。

Emma Stone stars in Fox Searchlight Pictures’ “THE FAVOURITE.”

18世紀初頭、アン女王時代のイギリスの宮廷が舞台。豪華絢爛な衣裳に身を包んだ女性3人のバトルの行方が、当時のイギリスの歴史を背景に描かれる。いやもう濃厚で過激。野心羨望嫉妬駆け引き憎悪淫猥愛情怨恨野蛮滑稽孤独哀愁陰謀下劣凄絶といった印象でしょうか。もう単語と単語の間に「・」もつけられないみたいなね。

終始、カメラワークも音響も不安をかきたてる。女優3人の演技もすさまじい。18世紀初頭の宮廷衣裳、メイクもすばらしい。衣装デザインはサンディ・パウエル。

Rachel Weisz, left, and Olivia Colman star in Fox Searchlight Pictures’ “THE FAVOURITE.”


アン女王のこのヘアスタイルね、17世紀の「フォンタンジェ」の名残りです。スカートは18世紀のパニエ。まだそれほど拡張していない。時代の変わり目のスタイルまで忠実に再現しています。

男性もこてこてくるくるの長髪かつらに白塗り、チーク、リップ、パッチの化粧。トーリー党とホイッグ党ではかつらの色まで違う、というところまで再現。

決してやすやすと「感動」できたり「すっきり」できたりする映画ではありません。むしろ2時間が不安感や不快感すれすれとの闘いで、なんだか凄絶なものを見た……という複雑な余韻が残ります。しばらく時間が経ってから思い出したのですが、この感じ、ピーター・グリーナウェイの映画を観たあとの感覚と似ている。「英国式庭園殺人事件」とか「コックと泥棒、その妻と愛人」とか、あのあたりの。グリーナウェイほど難しくはないですが。

監督はギリシアのヨルゴス・ランティモス。18世紀イギリス貴族の野蛮さや滑稽さもブラックユーモアでちらりちらりと表現しているのがたまりません。

紳士ネタで笑った会話が、侍女アビゲイル(エマ・ストーン)と、彼女に一目ぼれしたマシャム(ジョー・アルウィン)との会話。
アビゲイル「誘惑しにきたの? それともレイプしにきたの?」
マシャム「ぼくはジェントルマンだ」
アビゲイル「じゃあ、レイプね」

ふたりのフラーティングもかなり野蛮すれすれで面白いのね。これは見ていただくしかないとして、こういう行動をすれば男性は夢中になるということを、アビゲイルは勇敢に見せてくれる。いやこれは農耕民族にはムリだろう……という感じで見てました。笑

というわけで、心の体力ががっつりあるときに見てね。重たかったのですが、ゴールデングローブ作品賞はミュージカル・コメディ部門にノミネートよ。重たくて不快もスパイスになる、新種のコメディ。

こんな滑稽な一部の人たちの思惑で国の重大事項が決まり、国民の命運が決まっていくなんて……という不条理は、現代も同じね。



2月15日(金)より全国ロードショー。写真は配給会社よりご提供いただきました。©2018 Twentieth Century Fox