The Crown seasen 2 episode 10 (final).  “Mystery man”.

シーズン2のファイナルはなんとプロフューモ事件を扱っています。読者の皆様はとっくにご存じのことと思いますが、プロフューモ事件とは1962年に起きた、英政界をゆるがした一大スキャンダルです。映画化もされてます(「スキャンダル」1989年)。

当時のマクミラン政権の陸相だったジョン・プロヒューモが、ソ連側のスパイとも関係のあったコールガールに国家機密を漏らしたと疑われた事件。結果としてマクミラン首相は辞任し、政権が崩壊。

ロンドンのコールガール、クリスティン・キーラーは、整骨師スティーヴン・ウォードの斡旋で、駐英ソ連大使館付きの武官、イワノフ大佐と性的な関係をもっていた。その後、キーラーはマクミラン内閣のスターでもあったプロヒューモ陸相とも性的関係をもつ。

噂が広がり、労働党議員が「国家の安全のために」真相究明を要求。プロフューモは「その女性は知っているが、不適切な関係はない」と潔白を主張。
(”There was no impropriety whatsoever in my acquaintanceship with Miss Keeler.”)

さらにその後、キーラーのイワノフ大佐との関係が露見、軍事機密漏洩事件にまで発展。世界的なスキャンダルになる。

ここにいたってプロフューモは、マクミラン首相あての手紙の中で、議会での発言には嘘があったことを認めたが、軍事機密の情報漏洩については潔白を主張し、謝罪して辞任。

議会は混乱し、マクミランの責任問題にまで発展し、マクミランは内閣不信任案は切り抜けたものの、11月には健康上の理由で辞意を表明、1964年の総選挙では同党は労働党に敗北した。

キーラーは偽証罪で投獄され、仲介者のスティーヴン・ウォードは自殺。

一連の結果を見ると、ソ連情報部のしかけたハニートラップ作戦の成功だったのではとも見らているスキャンダル。

(興味深いのは、その後、プロフューモは名誉を回復していること。これについてはまたどこかで。)

 

このスキャンダルに「謎の男」としてフィリップ殿下もまた関わっていたことを示唆するのが、このエピソードなのである。「写真に映る謎の男の、後ろ姿の肩のあたりが似ている」というだけで確証もない話なのに、ここまで描いてよいものかと、見ているこちらがひやひやする。

合間に第三子、第四子も誕生。あれやこれやの夫婦間の疑惑や亀裂を乗り越える、フィリップ殿下がエリザベスに語りかけたセリフが究極だ。 ”You are my job”.  かくして二人はこの危機を乗り越えていく……。これでシーズンが終わる。

いやもう、ここまでリスクをとって描き切るから面白いのですね、このドラマは。マクミランがエリザベスに辞意を表明しにいったときの彼女のセリフがいい。「Too old, too sick, too weak. 誰も職務を全うしない!」 チャーチル、イーデン、マクミラン、ね。しぶすぎて笑う。どんなときでもエリザベスは職務を淡々とまっとうするしか道がないというのにね。

 

 

 

こんな本も訳していますよ。14年も前のことだけどね。古くなってない社会史の名著です。(どさくさにまぎれて宣伝でした)

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