Sherlock Season 4 Episode 1. “The Six Thatchers” DVDで。
ちょうど一年前の公開だったのですね。TVドラマというより、長さにおいても質においても「映画」に近くなっている。
シーズン4ではメアリーが娘を生み、幸せなワトソンファミリーの人生が再開……のはずが、メアリーの過去の落とし前をつけなければならない事件がやってきて、誰にとっても悲しみで胸が引き裂かれそうな悲劇で終わる。
そこにいたるまでの展開がまったく予想ができず、驚きの連続。
スピーディーな展開、時折はさまれるユーモア、キャラクターや人間関係の面白さは健在のまま、人間ドラマも味わい深いエピソードだった。シリーズ1,2で見られたようなエッジの効いた粋な疾走感が少なくなり、なんだかシリアスになってきているのはどうしたものかと戸惑ったのだが。
意外だったのは、ジョン・ワトソンがバスで「見そめられた」女の子の相手をしてしまうこと。メールの交換だけとはいえ、プチフラーティングを始めてしまうのだ。たいしたことはまったくないとはいえ、メアリーへのささやかな裏切りでもある軽はずみな行為を、メアリーに告解できないまま、ジョンの心にはささやかな罪悪感が残るわけですね。
ジョンのシャーロックへの怒りは、シャーロックが「君たち家族を守る」という誓いを破ったということだけでなく、自分自身の罪悪感の、ねじれた反映だったかもしれない。
それにしてもなぜこのような一見、要らないようなエピソードを入れたのか。完璧な夫にして父にして友人である善良なジョン・ワトソンも、実は常に地味なサポーター役に徹しなければならないことへの葛藤を抱えており、自分を認めてくれた女性からの誘惑につい乗ってしまうことでプライドを満たしたかった……ということを示唆するためか。
「地味な仕事に甘んじている人」の心の葛藤には注意せよ。それがこのエピソードのサブテーマではなかったか。
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