アカデミー賞セレモニーを横目に、気になっていた「ブラックパンサー」。

これはアフリカ系アメリカ人が泣いて喜ぶわけですね。終始圧倒的にかっこいい。ワカンダのフューチャリスティック・トライバルとも呼べる衣裳や儀式、これに音楽が加わるともうそれだけでハートをもっていかれます。物語も力強い。部族内反乱者ともみえたエムバクが最後の最後で強力な助っ人になるあたりも、古今の物語のなかで繰り返し伝えられてきた要素。鎖につながれるよりはと海に飛び込んだ祖先への思い、欧米による植民地支配のやり方への批判、「いとこ」の憎しみを生んだ原因が実は「父」にあったという因果応報、真のヒーローは一度死んで蘇る法則などなど、教訓的なお話も多々散りばめれている。

アクションはスタイリッシュでユーモアもあり、「将軍」オコエの動きが華麗。黒い肌にまとう赤いドレスを翻し、槍を駆使して闘うアクションのなんと美しいこと。「ワンダーウーマン」でも将軍は女性で全く違和感がなかった。

髪型も西洋の美の基準を文字通り投げ捨て(そんなシーンが出てくる)、丸刈りまたはシュリンクヘア。それがかっこよくて美しいというメッセージも伝わってくる。(髪に悩むアフリカ系の女の子を強く励ますと思う)

監督がアフリカ系ライアン・クーグラー。主要キャストが多様なアフリカ系。そのなかに白人マーティン・フリーマンが味方として活躍する。「シャーロック」のジョン・ワトソンくんですね! カンバッチくんもマーヴェルのヒーローになったことだしね。二人仲良くマーベルでも活躍は、ファンには嬉しい反面、あまりアメリカ色に染まるのもどうなのかという複雑さもあり。

国王の妹シュリのサイエンスラボは、007の「Q」を思わせて笑った。

コスチュームはルース・E・カーター。「マルカムX」のコスチュームなども担当してきたベテランです。ナキアやオカエが着ていたドレスのいくつか、一般向けにプロデュースしてほしい。ビジュアルの力が加わり、強い影響力をもつ映画。影響力の最大の源はといえば、ワカンダの国の人々の顔つきでしょうか。出演者の顔つきが凛々しいのです。こうありたい、と憧れを誘うのは、表面的な造作ではなく、自信と誇りに満ちた顔つき。

 

ナキアのセリフ “It is my duty to fight for who I… for the things I love. “ (愛するもののために闘うのは当然の義務。)新鮮なビジュアルと古い物語で訴えかける、佳い映画。Respect.

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