19世紀の興行師PTバーナムの伝記ミュージカル。六本木ヒルズのスクリーン7(+200円の大きなスクリーン)がほぼ満席で、終了後、熱のこもった拍手が起きていた。映画館で、しかも試写じゃない一般劇場で、さらに公開からずいぶん時間がたった映画で、終了後に拍手を聞いたのはおそろしく久しぶり。(というかほぼ記憶がない)
ふだんは退屈そうにしている次男も「これは面白かった」と夢中になって観ていた。スクリーンからパッションと幸福感があふれ出しているような、力強いエネルギーにあふれたミュージカル。
生涯、世の中を楽しませ、騒がせながら、波乱の人生を送ったバーナムのエピソードをもれなく詰め込みながら、「ヒーローズジャーニー」にも通じるストーリーとしてまとめあげ、誰が見ても楽しめるエンターテイメントに仕上げた制作者がすばらしい。出演者もそれぞれに見せ場があって、それぞれに魅了される。チャリティ役のミシェル・ウィリアムズの善良さと賢さ、見習いたい。チャリティのお父さんも、ひどいことを言うのだけどなんだかんだと娘と娘婿を信じているような行動をとっているのがいい。新聞記者が”Celebration of Humanity”と表現していたが、まさにそんな感じで、「多様化」へのうねりがある時代だからいっそう支持されるのだろう。
“Hyperbole isn’t the worst crime. men suffer more from imagining too little than too much.”(誇張は罪ではない。人は、想像しすぎることよりも、想像しなさすぎることによって苦しむ)
何が起ころうと自信家で楽観的なバーナムは、ヒュー・ジャックマンによってかなり美化されてはいると思うけれど。
元ネタになっているバーナムさんは、こちらのお方。Phineas Taylor Barnum. 1810-1891.
バーナムのことは、10年ほど前に調べてエッセイを書いたことがあった。占いにおける「バーナム効果」や、成功本(自己啓発本)の元祖であるということについて。バーナムについて書いたことだけ覚えていて、何を書いたかは忘れていたので、あらためて読み返してみる。
「バーナムは『万人に通用する共通の法則がある』という信念のもと、人間動物園のはしりのような展示をしてみたり、サーカスと動物園とフリークスショウをいっしょくたにした『地上最大のショウ』を巡業させたり、アフリカ象『ジャンボ』を呼び物にしたり……と人間の好奇心を巧みに刺激して稼ぎに稼いだ人である。
『ぺてん王子』とも呼ばれたが、人々は見たことがないモノを見るためならば喜んでお金を払った。『お金を稼ぐ黄金の法則』『苦闘と成功』という彼の著書も売れた。
『想像の中のリッチで成功した自分の姿』というのも大衆にとっては『お金を払っても見てみたい、見たことのないモノ』の一つ……とバーナムならば考えていたと思われる」(中野香織『愛されるモード』、中央公論新社)
『お金を稼ぐ黄金の法則』の原題は、”Art of Money” 、1880年の本である。
“The best kind of charity is to help those who are willing to help themselves. ” (最良の慈善は、自分自身を助けようとしている人を助けることである)なんていう、今に語り継がれる名言もある。
実在のバーナムさんはテイラーの息子ではないが、映画ではテイラーも、テイラーの息子もtrash扱い。当時はそういう職業だったのね。いまどこかにある偏見だって、ずっと後の時代になったら「なんて狭量な」と一蹴されて終わるはず。
この日は満月。東京タワーと満月と満開の桜。
桜満開の季節ですが、六本木ヒルズはすでに季節を先取り。チューリップを植えていた。このセンスがさすがね。
夕食は東京プリンスで。3階テラスから望む満開の桜と東京タワー。こちらも安定の絶景。
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