18日、大学の「ファッション文化史」の授業のゲスト講師として、ファッションレスキュー代表の政近準子さんをお招きしました。
通常は、現在の視点から見た20世紀社会を、10年ごとの単位で区切って教えている時間ですが、「ファッション」といっても、実に多様なアプローチがあるということは、読者のみなさまもご存じの通りです。この日は特別講義:実践編として、パーソナルスタイリストの仕事の実際と「装力」について、レクチャーをしていただきました。
「装力」については理論だけで知るのではなく、実際にその力を体感してもらいたいということで、ファッションレスキューのスタッフが、たくさんの小物や服を持参してきてくださいました。
実際に学生に壇上に上がってもらい、数人のレスキュースタッフが、その学生の個性を引き立てるような小物やジャケットを加えていく。まずは男子学生。ほんのひと手間加えるだけで、見違えるようにりりしくなります。
そしてイケメンに変身(!)した彼らが、自分のファッションに釣り合いそうな女子学生を会場から選び、今度はスタッフが彼女たちをほんのひと手間でドレスアップさせていく。
全とっかえしたわけではないのに、「その他大勢」のなかに「しめじ」のように紛れていた学生が、見違えるように個性的になりました。(学生の写真は、掲載の許可をいただいています。)
ただファッショナブルになるために装うのではなく、場や、相手のことをとことん考え抜いて装うこと。「相手のために、考え抜く」。そのことによって、別次元のコミュニケーションが生まれ、それが人生を切り開いていくきっかけにつながること。
これは、準子さんはじめレスキュースタッフと講演などのお仕事をご一緒するなかで、私自身も目の当たりにしてきたパワーなのですが、今回、100名ほどの学生たちも感動とともに知ることができたのではないかと思います。
高い服を買う必要はないし、数をたくさんそろえる必要もない。ただ、丁寧に相手や場をシミュレーションし、考え抜いて服を着る。きめ細やかに考えるというその思考習慣が、仕事や人間関係など、あらゆるところに及べば、生活や仕事の質が違ってくるのは当然ですね。「みんなと同じ、しめじの塊」でいることに疑問を抱かないという自分自身のメンタリティに対してまずは何か考えてみる、刺激的な機会になったのではないかと思います。
先日のシャネルの顧客イベントの記事で触れましたが、実はこの授業のあと、「ココ・キューバ」をドレスコードとするイベントに向かうことになっていました。それを準子さんに前日に(笑!)伝えたところ、「じゃあ、それもいい<教材>になるから、そのイベント用にヘアを作ってあげる」とおっしゃってくれたのです。ヘアスタイリストの臼倉さんが、「ココ・キューバ」のコレクション映像を見ながら一生懸命に考えてくださったのが、件のヘアスタイル。準子さんの講義中、壇上の端で刻々と「ココ・キューバ」風に変身させられていく私を学生は横目で目にしていたわけですね。
最後の仕上げは、準子さんによる「仕上げのひと手間」。シルクの感触が美しい薔薇のスカーフをあしらい、それをプレゼントしてくださいました。背景のスクリーンにはシャネルのキューバ・コレクションが流れ、愛と感動にあふれた(!)ドラマティックなエンディングとなりました。
その後、スカーフよりもネクタイのほうがよりシャネルらしいということで、最後のぎりぎりにネクタイをあしらってくださったのですが、そのように、とことん、相手の立場に立って考え抜き、ファッションを通してコミュニケーションの感動をもたらしてくれるのが、準子さんなのですよね。
準子さん、レスキュースタッフのみなさま、そしてサプライズゲストとして急遽、ご同行くださいました、福島の地域創生のためアクティブに活動している熊坂仁美さん、ほんとうにありがとうございました!
隅々まで考え抜かれた演出で、お祭りのようにわくわくした90分でしたが、学生も笑顔を輝かせて帰っていきました。自分自身のあり方を考え、変えていく思考習慣・生活習慣を作るためのきっかけになればこれほどうれしいことはありません。
プレゼントしていただいた、愛のこもったスカーフは、この日の記念として大切にします。