「関心領域」試写。映されているのは幸せな小市民の家庭の日々のみで、壁の向こうはポスターでは真っ黒に塗りつぶされています。音や煙や灰でそこで何が起きているのかを示唆する。アウシュヴィッツものの全く新しい「見せ方」で、映画でしか表現方法。収容所から出る灰が庭の花々の養分になり、花々が揺れるたびに涙が出てくる。現在の私たちそのものじゃないのかと問いを突き付けてくる必見の映画だと思います。

北日本新聞「ゼロニイ」連載「ラグジュアリーの羅針盤」Vol. 17。きもの「やまと」のパリ進出について、社長の矢嶋孝行さんにインタビューした記事です。

伝統文化に高い価格をつけて売る、という最近の風潮に矢嶋さんは抵抗します。「文化を楯にしたくはありません。私たちは伝統文化を着るために生きているのではありません。着たいと思ったものが文化になっていく」という言葉にはっとさせられます。

ほぼ一週間後、ウェブ版にも掲載されます。同時にnoteで英語版を掲載します。

 

シスレーの新製品「シスレイヤ インテグラル フレッシュ ジェル クリーム」の発表会、小笠原伯爵邸にて。
初代「シスレイヤ」が発売されたのが1999年。開発に10年以上かけられた、50以上の成分が溶け込んだ究極のエイジングケアクリームとして話題になりました。ブランド名+「ヤ」の「ヤ」は感嘆詞。それから段階的にアップグレードして今回は第三世代のジェルクリームとして4月1日に発売されます。


20世紀初頭に建てられた洋館、小笠原伯爵邸は、時を超えた美しさを保っているインテリアや庭園を誇り、シスレーのコンセプトとぴったり。

ピンクの花が咲いている木は桜ではなくアーモンドだそうです。

ご一緒したフレグランスエキスパートの地引由美さん、(株)ウエスト社長の西村京実さんとシガールームで撮影してみました。

シスレージャパン社長ジェローム・ドヴィレさんはじめマーケティング、コミュニケーションの皆様、素晴らしい発表会をありがとうございました。

高知へ日帰り出張。ちょうど合間の快晴に恵まれました。行きはJALのいつもの「K」の席。ここからは富士山がきれいに撮影できるのです。見飽きない麗しさですね。

日経新聞夕刊連載「モードは語る」、本日は、アリッサ・ハーディが念願だったキャリアと引き換えに業界の暗部を暴いた渾身のルポ『ブランド幻想』について書いています。

紙版、電子版、ともに掲載されています。電子版はこちら(会員限定公開)。

インフルエンサーに対しても、ご自分の影響力がどのように行使されるべきなのか、もっと責任を自覚すべきと促しています。

ファッションのキラキラした面はすてきですが、それを支える労働者がどのような扱いを受けているのか。知ってしまったら、商品を見る目も変わらざるをえないところがあります。

第10章は、私が遭遇したのと似たような経験が書かれていて、同情の涙なしには読めませんでした。社会正義の側に立とうとすれば、保守勢力から痛い目に遭うのは、どの領域でも変わらないですね。でも新しい味方がもっと増えているはず。アリッサの勇気を讃え、応援します。

「スコットランド・ファッションの再定義」続きです。

今回、メインに飾られていたブランドが、Walker Slater. 高品質なスーツ、ジャケットを得意とするツイードウェアのブランドです。

女性ジャケットもツイードの堅さを和らげるヴィクトリアン風味のシルエット。全体的にスコッツらしい堅実で武骨な雰囲気が醸し出されていますが、洗練されすぎないこの感じがいいのだ、というファンも多いだろうと推測します。

このブランドに関連し、スコティッシュツイードについて、スコットランド国際開発庁のフィオナ・マクラクランさんにレクチャーを受けましたので、その概要を日本語訳して以下にメモします。やや雑な日本語のままのところもありますが、ご寛恕ください。関連サイトに飛べるようにしてありますので、各自、関心に応じて深めていただければ幸いです。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

Q: スコットランドツイードがイングリッシュツイードと異なるのはどのような点か?

A: 違いの多くは歴史的なものです。ツイード生地はウールから作られ、有益な天然の性質を持っています。通気性があり、完全に生分解可能であり、雨を吸収しますが、雨天ではそれが暖かさになり、そのためアウターウェアに理想的です。

Q: ツイード という言葉の起源は?

A: 議論の的であり、意見が分かれています。一部の人々は、スコットランドの国境地帯にあるトゥィード川から来たと言います。そこは羊が豊富で、紡績や織物にとっての羊毛の供給源でした。他の人々は、「ツイル(生地の構造)」を意味する”Tweel”というスコットランドの言葉から来ていると信じています。19世紀のあるとき、丈夫な外套にTweelと書くべきところをTweedと間違って書かれていたことからこのように広まった、と。

HawickのLovat Millは、初めてのTweed 生地の記録を持っていると主張しています。どちらが正しいかは確認できません!

Q: ハリスツイード®とはどのようなツイード?

A: 世界で唯一、議会法によって保護されている唯一の生地であり、ウールは100%ブリテン島で供給され、等級付けされ、クリーニングされ、その後再び島の工場に送られて繊維染色され、次に紡績され、梁に巻き取られます。その梁は、足ペダルで駆動される、電気を使わない手織り機に送られます。織られた布は、繕い、洗い、仕上げるために工場に返されます。ハリスツイード委員会は、各仕上げロールの生地を検査し、品質と起源のシンボルとして布に宝珠(Orb)の刻印を押します 。宝珠はイギリスで最も古い認証マークです。この認証は、世界中で模倣から生地を保護します。詳細はこちらをご覧ください。

Q: エステートツイード とは?

A: 各地の労働者が着用していた布のデザインであり、それぞれが彼らが働いている土地に特有の柄でした。色はカントリー向きに設計され、鹿猟や射撃時に地形に溶け込むようになっていました。ジョンストンズ・オブ・エルガンのジェームズ・サグデンは、その起源とデザインについての本を書いています。

Q: タータンとは?

A: スコットランドでは、タータンは氏族のために作られ、忠誠心と姓によって結び付けられた家族が着用するためのものでした(たとえば、私はマクラクランタータンを着用できます!)。タータンは、もともと地元の染料とセット(デザイン)を使用して作られたチェック柄であり、縦糸と横糸の両方で同じ色と模様を使用し、それぞれの特徴が独特でした。時間が経つにつれて、より明るい色が利用可能になり、連隊用の軍用タータンが作られ、それらを識別するために使用されました。ブラックウォッチは、見えないように意図的に暗いのです! スコットランド国立登録所(The Tartan Register)は、タータンが登録され、保護および記録される機関です。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

フィオナさんの丁寧な解説に感謝します。ちなみに、日本でも純日本産のツイード、J. Shepherdsが生産されています。尾張一宮の国島が、毎年異なる柄のツイードを展開しています。このツイードを使ってアジャスタブル・コスチュームがノーフォークジャケットを作ったプロジェクトに関わったことがあります。詳細の背景はこちらの記事をご覧くださいませ。

 

19日に英国大使館で開催されたスコットランドファッションの展示会<ScotStyle : Redefining Scottish Fashion>に伺いました。スコットランド国際開発庁主催。

2010年創業のISLANDER。ハリスツイードをモチーフにしたフットウェアやアクセサリー。プライスも抑えめで「かわいい」と感じさせるたたずまい。古くからのハリスツイードのイメージを覆し、現代性を打ち出そうとしている努力を讃えたい(上から目線でスミマセン)。
スコットランド香水業界のパイオニア、ユアン・マッコールが率いる2019年設立のフレグランスブランド、Jorum Studio。赤いボトルのRose Highlandは潮風に運ばれ海岸線に吹きつけられるバラを着想源にした辛口ローズ🌹

つやつやのバッグの素材はアカシアの木。ハンドメイドで、オブジェのようですが、意外とものがたくさん入り、バッグとしての機能は十分満たせます。ブランド名はROCIO(ロシオ)。デザイナーはHamish Menziesで、2006年創業。コーディネートの主役になる迫力があります。

オーディオシステムをグラスゴーで展開するLINN。1973年創設で、優れた音質で知られます。上はストールなどではなく、下の縦長スピーカーのように、ハリスツイードのファブリックをスピーカーにカバーとしてまとわせて独自の音を楽しむシステム。

みんな大好きスコットランドと言えば、のJohnstons of Elgin.

トップの記念写真はバグパイパーのティム・二ーリー氏と大英帝国勲章MBE受勲者のDJ、ガイ・ぺリマン氏です。

ストラスベリーのバッグ他、多くのファッションブランドが出展していたのですが、すべて紹介しきれず、ご寛恕ください。

スコットランド国際開発庁のアンジェラ・コルソープさんはじめスタッフのみなさま、お招きありがとうございました。ツイードに関しては、次の記事Vol. 2で詳細を書きます。

「エルメス」が、「バーキンが買えない」とアメリカの消費者に提訴されたというブルームバーグの報道について、NewsPicksにコメントしました。会員でない方のために、以下にも掲載しておきます。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

そんな訴訟を起こされたらますますバーキンの価格が上がりますね(笑)
そこまでして欲しがられるというコンテクストを作ったブランディングはさすがエルメス、あっぱれです。

バーキンはもはや「バッグ」というカテゴリーを超えた神秘の偶像のようになっていますね。それはそれでブランディングの成功なので、良いことだと思います。自身のブランディングを主体的に、戦略的に貫くエルメスはリスペクトします。

ただ、これを買うために、「購買実績」を積み上げて、ようやく「購入させていただく資格をいただける」「購買を許可していただける」ことをありがたがる従属的な消費者って、天の視点から見ると、どう見えるのか。中古で高く売れる資産にもなるからなりふりかまわなくなるのか。偶像崇拝のあやうさと滑稽さを見る思いがします。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

自分の欲望の正体を今一度、頭を冷やして見つめてみたいものです。稀少性を高める、偶像化する、階級を与える、というのはラグジュアリー・マーケティングの定番的戦略であり、これはこれで成功させるのが難しいので、成功させたブランドはリスペクト、です。消費者がそこに従属的に盲目的に巻き込まれるのか、戦略を理解してその物語に参加するのかでは大きな違いがあります。主体性を貫いてそこには参画せず、自分が勝てる別のコンテクストを創り上げる、というのが最もかっこいいあり方だ、とは常々思っています。

宝島社より22日に発売されるムック「Legend Star Graffiti オードリー・ヘプバーン『永遠の妖精』の素顔」。生涯と映画を豊富な写真でコンパクトに紹介しています。レトロな雰囲気。第2章「オードリー・ヘプバーンとファッション」を書きました。

パリ・オートクチュールデザイナー、中里唯馬がケニアで見たものは。「燃えるドレスを紡いで」のレビュー書きました。ファッション産業が利益追求に走りすぎた結果、アフリカに「衣服の墓場」が形成されている。「もう服を作らないで」というケニアの叫び。その状況を受け止めて一歩前進しようとする唯馬さん。

支えるのはセイコーエプソンとスパイバーという日本の最先端技術、ということも頼もしい。

16日公開です。ぜひ、ご覧ください。

英語版はこちらに書いておきました。

エストネーションから、仕事服に関するインタビューを受けました。こちらで公開されております。お時間ゆるすときがありましたらご笑覧ください。

エストネーションの飯島亜沙子さん、水谷優芽さん、竹山賢さん、ヘアメイクの久保田カオリさん、ライターの湯澤実和子さんはじめ、スタイリストさん、カメラマンさん(お名刺いただくタイミング外し)にたいへんお世話になりました。ありがとうございました。

「婦人画報」4月号に寄稿した最旬の靴とジャケットに関するエッセイがウェブ版に転載されました。「靴から始まる『ジャケットのおしゃれ』 王道スタイルと自由な組み合わせ」

靴とジャケットの方向性を合わせることが20世紀の王道スタイルでそれもよいのですが、いまはあえて不協和音を自由に楽しむことができる時代になっています。

富山中部高校同窓会、神通会の会報No.62 に寄稿しました。昨年お招きいただいた講演に関する話題です。お世話になりましたみなさま、あらためましてありがとうございました。

婦人画報4月号、ジャケット特集&シューズで監修・寄稿しています。ジャケットから見る20世紀初頭から現在までのファッション史に関し、2ページにわたり、年代ごとの特徴をできるだけコンパクトにまとめています。ジャケットに合わせるシューズのページではエッセイを寄稿しております。ファッション史のおさらいと最新トレンドのアップデート、楽しんでいただければ幸いです。

GQ 4月号発売です。ジェントルマン特集。

W. David Marx氏と対談した記事が掲載されています。「What Is A Gentleman ジェントルマンよ、復活せよ」。

オールドマネーとニューマネー、クリエイティブクラス、イギリスメンズファッションデザイナーの最近の潮流、ステイタスとジェントルマン、日本の山の手の粋、紳士協定とアメリカ式起業、19世紀ダンディ、新しい日本のラグジュアリーにいたるまで話題は多岐に広がります。ぜひご覧くださいませ。