日経の記事として扱わせていただいた「ザ・リュクスプレナー」の著者、エリザベス・ソラルにインタビューした記事の全文をnote に公開いたしました。3パートに分けています。

In Conversation with the Author of Luxpreneur. Part 1 – The Emerging Future of Luxury | 記事編集 | note

 

In Conversation with the Author of Luxpreneur. Part 2 – Misconceptions About the Luxury Business and |KAORI NAKANO / 中野香織

 

In Conversation with the author of The Luxpreneur. Part III – Unveiling Japan’s Hidden Potential in L|KAORI NAKANO / 中野香織

 

とりわけPart IIIは、日本の企業あるいは起業家に対する助言として伺っています。お役に立てば幸いです。

次回の日経コラムでも引き続き、海外のラグジュアリーセクターで働く方にインタビューした記事を掲載いたします。どうぞお楽しみに。

11日付の日本経済新聞夕刊連載で、『ザ・リュクスプレナー』の著者、エリザべス・ソラルさんにインタビューした記事を書きました。電子版はこちら

「ラグジュアリーは、哲学である」と言い切り、この分野で起業するための心得と方法をサクサク説き行動でも示すソラルさんには共感し、多くのインスピレーションをいただいた。

アントレプレナーは社会課題解決をめざすが、
リュクスプレナーは人生を変えるほどの体験といった価値を提供する。

あなたの価値は、あなたが叶える願望とあなたがもたらす夢によって決まる。

これからは「見せるラグジュアリー」から「知るラグジュアリー」へ移行する、という予言は彼女だけではなく、スペインのラグジュアリーセクターの方からも聞いた。

人生を格上げするだけでなく文化を格上げするラグジュアリー、 日本に大きなチャンスがあります。

 

記事の英語版はこちらです。

ラグジュアリーの研究が楽しい理由のひとつは、 この業界に関わる人々のコミュニケーションの作法である。

ヨーロッパのラグジュアリービジネスに関わる方々の多くは、うっとりするくらいに美しく、情緒に訴える知的な英語を使う。

心の底からあなたとのかかわりを光栄に思っているという言葉の使い方に長けている(本心はどうあれ)。

コミュニケーションがきめ細やかで愛情を感じさせ、また連絡を取りたいと思わせる。そんなコミュニケーションが幸せなので、お付き合いが続く。

ちなみに私は顧客でもなんでもない、一研究者である。

ラグジュアリーマネージメントにおいて必須とされる 「(顧客)エンゲージメント」というのは、まさにこのことなのだ。 あなたのことを深く気にかけている、と相手に感じさせるコミュニケーションの魔法。

その体験が実は世の中にはそれほど多くはないために、価値も高くなる。

日本には別のエンゲージメントの作法もあると思う。プロダクトやサービスを磨くとともに、ここを意識的に鍛えると 必ずよい結果がついてくる。

日本には「控えめ」であることを美徳とする文化があり、海外に倣おうとしてここをはずすと無理が生じることがある。

「予測的な配慮」、つまり相手の気持ちの動きや行動を先読みして察し、それに備える、というのはおそらく日本人(とりわけホスピタリティ業界のプロフェッショナル)が傑出して持つ特技ではないかと推測する。「言葉で言わねばわからない」文化との違いというか。それをあたたかさをもって行うことが、日本的な顧客エンゲージメントにつながるようにも思う。

 

One of the joys of studying luxury is observing the art of communication practiced by those involved in the industry.

Many individuals in the European luxury business communicate in English that is not only intellectually refined but also emotionally evocative—so exquisite it feels almost enchanting.

They excel at conveying a profound sense of honor in engaging with you (sometimes regardless of their true feelings).

Their communication is meticulous, warm, and heartfelt, leaving you with a desire to connect with them again. This attention to detail and genuine tone creates a sense of happiness, fostering enduring relationships.

For the record, I am neither a client nor anyone of importance—just a humble researcher.

The concept of “engagement,” a cornerstone of luxury management, is precisely this: the magical ability to make others feel genuinely cared for.

This kind of experience is rare, which is why it holds such extraordinary value.

Japan, I believe, has its own unique approach to engagement. By consciously honing this skill alongside refining products and services, it is certain to lead to remarkable results.

Japan has a culture that values being “reserved” as a virtue, and disregarding this in an attempt to imitate foreign practices can sometimes lead to unnatural outcomes.

“Anticipatory care”—the ability to intuit and prepare for the emotional movements or actions of others—is likely an exceptional skill possessed by Japanese people, particularly professionals in the hospitality industry. This contrasts with cultures where “things must be explicitly stated to be understood.” Conducting such anticipatory care with warmth, I believe, leads to a uniquely Japanese form of customer engagement.

<ラグジュアリー文脈のなかで日本の卓越を支援する>サロンの第一回のご案内です。

続く災害で大打撃を受けながら何度も立ち上がり、世界で共感の輪を広げている輪島塗がテーマです。ブルネロ クチネリ ジャパンに賛同いただき、表参道店B2アートスペースが会場になります。輪島塗の最高峰の作品に囲まれながら、輪島塗の千舟堂・岡垣祐吾社長のお話を伺います。

もっとも嬉しい支援は「買っていただくこと」という職人さんたちの声を輪島で聞いていたので、会費にはすでに輪島塗のお土産代が含まれております(ランチ代も含まれます)。

岡垣社長とクチネリ ジャパンの宮川ダビデ社長にはどこか似た雰囲気を感じます。守るべきもののために献身する優しい覚悟を感じるところも通じているかなあ。クチネリ ジャパンさんのご厚意で、最後に表参道店のツアーもありますので、輪島塗の世界とブルネロクチネリの哲学をともに体感できるまたとない機会になります。

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Salon Explore #001 会食&トークセッション

輪島塗の物語 災害を乗り越え、共感の輪を未来へつなぐ
ゲスト:岡垣祐吾 千舟堂/岡垣漆器店 代表取締役
聞き手:中野香織 著作家/服飾史家

日程 2025年2月22日(土)12時~16時(11時30分から受付開始)
会場 表参道のレストラン&ブルネロ クチネリ 表参道店B2Fアートスペース

詳細、お申し込みは、こちらからお願いいたします。

謹賀新年。 本年もどうぞよろしくお願いいたします。

海外でビジネスを展開することの重要性が説かれており、条件がかなえば良いと思います。

一方、現在は国内にとどまり力を蓄え磁石のように惹きつけるというやり方も強いと感じています。わたくしごとで恐縮ですが、

昨年は日本の産地や職人の取材が増えて、海外には一歩も出なかったのです、しかし、

ふりかえると、海外のラグジュアリー関係者が私の方に来ていた。

英ラグジュアリー統括団体ウォルポール関係者の来日時に講演する機会もあったし、スペインのラグジュアリー領域で働く方にも日本旅行中の面会を申し込まれた。

フランスのラグジュアリー起業家の来日時の取材も請け負ったし、イギリスの若きラグジュアリー起業家の本を紹介する機会にも恵まれた。

フランスの大手コングロマリット日本支社、 その傘下のイタリアの宝飾ブランド日本支社での講演をする機会まであった。

こちらから売り込まずとも、関心をもっていただければ来てくれる。

モノは輸出できても、文化や思想は押し売りできない。

来る方はすでに価値を感じているので価格競争にも強い。

エネルギーを、磁石としての力を磨くことに集中するのもありです。

もちろん、機会があれば海外にも積極的に行動を広げるのは楽しいし、知見を広めるためにもどんどん行ったらいい。ただ、円が安い今の時代は国内にとどまり強みを発揮する可能性を広げるチャンスかもしれませんよ!

どなたにとりましても、可能性を最大限に発揮できる良い年となりますよう、お祈りいたします。

 

 

昨日のお知らせに続きまして、さっそく第一回のサロンのご案内です。

Salon Explore #001 会食&トークセッション

輪島塗の物語 災害を乗り越え、共感の輪を未来へつなぐ

ゲスト:岡垣祐吾 千舟堂/岡垣漆器店 代表取締役
聞き手:中野香織 著作家/服飾史家

日程 2025年2月22日(土)12時~16時(11時30分から受付開始)
会場 表参道のレストラン&ブルネロ クチネリ 表参道店B2Fアートスペース

輪島塗の支援のために最も大切なのは、「買って支援」。そのように考えて、参加費にすでに含む形で、輪島塗のお箸をおみやげとしてつけました。ご購入(参加)の方には、希望に応じて千舟堂が名前をいれてくださいます。ランチも含まれているのは、よりカジュアルな形で岡垣さんのお話を聞くためであるとともに、支援のご縁を長く続ける絆を確かにするためでもあります。実際に輪島で取材した私が言うので間違いないですが、岡垣さんは人をひきつける魅力をもつストーリーテラーでもあります。

こちらは、ブルネロ クチネリ、アートスペースのクリスマスインテリアのデコレーション。棚には輪島塗の逸品。洋のインテリアにもなじみ、空間の格を上げる力をもつのが輪島塗。

ブルネロ クチネリの「ジェントル・ラグジュアリー」という人間主義に基づく経営哲学もご紹介するとともに、表参道旗艦店の店舗ツアーもおこないます。店舗でじっくりクチネリの商品をご覧いただけるまたとないチャンスでもあります。

定員になり次第締め切らせていただきます。お申し込みは、こちらからお願いいたします。

2025年からJ-Luxe Salonが始動します。アドバイザーを拝命しました。感謝しつつ、まずは半年、謹んで務めさせていただきます。

ゼロ回の講演として、1月11日(土)大安の日に、「次世代ラグジュアリーと日本の伝統、卓越技能の未来」をテーマに話をします。お申込み、詳細はこちら

既存ラグジュアリーの制度疲労と意味の変化、次世代型ラグジュアリービジネスの考え方(フランス、イギリスの例)、ウェルビーイングと日本の伝統、ラグジュアリー統括組織と教育の必要性まで、未来を創るために押さえておきたい文脈を大きな見取り図として提供します。

日本の卓越技芸や伝統を未来へつなぐ方法をともに考えていきましょう。

写真は会場となる国際文化会館です。

 

これに続く第一回のサロンもすでに決まっております。2月22日(土)、ブルネロクチネリ表参道店B2階アートスペースにて、輪島塗を支援することをミッションに、千舟堂岡垣社長をお迎えしてトークセッションをおこないます。「輪島塗の物語 災害を乗り越え、共感の輪を未来へつなぐ」。詳細、お申込みなど追ってお知らせします。

第二回以降も、各分野から多彩なゲストをお迎えしてラグジュアリー文脈における伝統工芸や卓越技能を考えていきます。どうぞお気軽にご参加ください。

北日本新聞ゼロニイ連載。牛首紬の西山博之さんに取材した記事が出ました。

代々伝わる「家」でないところが伝統を継承するというのは大いにあり。その模範的な実例を見せてくれるのが西山さん。

日経新聞連載「モードは語る」。14日付夕刊ではスマートラグジュアリーを掲げるジェミオの創業者、ポリーヌ・レニョ―氏にインタビューした記事を書きました。電子版はこちらです。

英語版はnoteにアップしています。

超高価格になり「稀少性を大量に」販売するラグジュアリービジネスに反旗を翻し、フランスからも新しい価値を提示してラグジュアリースタートアップを成功させている例が出ているのは興味深いことですね。

記事には書きませんでしたが、レニョ―氏は、「フランスの古くからの権威ある宝飾店で買い物をしようとするフランス人は私たちだけだった・・・」と。あとはアジア圏やアラブ圏の方々が多く、店員もフランス語を話さない、という店もあるそうです。

自国の職人を尊重し100%自国生産。適正価格。デジタル活用。各顧客に最適にカスタマイズされたサービス。在庫を出さない受注生産。セレブを使う宣伝をせず顧客の口コミ。虚栄や地位の誇示とは無縁の本物の幸福感。次世代のための「賢い」ラグジュアリーの方向性、内面が成熟すればそっちに行くのは自然に思えます。

ラグジュアリーの価格は本当に不条理だ。というのも、ラグジュアリーの価格を最終的にどうでもよくしてしまうのが、感情だからだ。昨今、一部ではとくにアート市場と同じような感覚で価格がつけられている。バッグが数百万円。それでも買う資格を得るために課金行列まで生まれる。マーケティングの勝利である。

本気でその市場のプレイヤーになろうとすれば 人間のありとあらゆる感情の動きをとことん研究すべきだと思う。価格なんて忘れるほど、価格以上の価値があると感じさせるほど、人間の欲望を突き動かすような感情。

人と違いたい。「上」あるいは「特別な人間」に見られたい。ステイタスを誇りたい。美しいと感じたものと一緒にいたい。投資という名目のもと「損したくない」。ちやほやされる顧客体験にひたりたい。すごい、いいね、と言われて気分よくなりたい。夢見た自分になりたい。最高のものに囲まれていたい。新しい自分にワクワクしたい。いろんな感情がうごめいている。プレイヤーはそれを巧みに購買につなげていく。

人間の感情なのでそこに善悪や倫理をもちこむつもりはない。ただ、万一、翻弄されてるなあと感じるようなことがあれば、自分の感情をありのままに徹底的に分析するのも悪くないと思います (困ってなければ放置していいと思いますが)。

ラグジュアリー領域に関わるには人文学が重要とかねてから書いていますが、歴史や文化の素養だけでなく、ますます文学や心理学の要素が求められていく。

Precious 1月号 「新時代の最愛名品リスト28」に協力させていただきました。

サンローランのピーコート、マメクロゴウチのワンピースについてコメントしています。

また、今月号には別冊「ウォッチ・アワード・ブック」がついてきます。めくるめく超高級時計がリッチ感あふれる写真で掲載されています。

ピアジェのライムライトガラ、ルイヴィトンのエスカル、グランドセイコー、ブルガリのセルペンティトゥボガス、ショパール他についてコメントいたしました。

すでにPreciousのサイトにも各時計ごとに拡大写真とともに掲載されています。が、まとまった冊子でじっくり見比べるのも味わい深い。

おびただしい数の超個性的な時計を見比べてみて感じたのは、なんの遠慮も衒いもなく堂々とそのブランドらしさを誇ることはなんとすがすがしいことなのか、ということ。人もそういう風にあればいいのだ。

ウェブサイト掲載済みの各時計についてのコメント:

・ピアジェのダイヤモンドウォッチ
https://precious.jp/articles/-/51534

・ルイヴィトンのエスカル
https://precious.jp/articles/-/51545

・日本の誇り グランドセイコー
https://precious.jp/articles/-/51540

・ブルガリのセルペンティ トゥボガス
https://precious.jp/articles/-/51532

「ラグジュアリーの羅針盤」Vol. 25 公開されました。

「マイルドヤンキービジネス」とNewsPicksが呼んだ日本の大衆ビジネスの大ヒット。作り手が「他人の目を意識して演じる」ことではなく、「ありのままの姿を見せる」ことを選んでいる点が、大きな共感を呼んでいる。

「本物であること」とは、自分自身に対して正直であること。他者の期待に応えるために変えるのではなく、自分の信念や文化をしっかりと軸に据えて、誠実に表現し続けること。その先に希望があるのだろう。

 

I find myself grappling with complex emotions as I revisit content I wrote for this series two years ago—specifically, in Vol. 3, titled “Before the Luxury Liner Runs Aground.”

In that article, I likened the current state of the luxury business to the Titanic, poised before an iceberg. Unfortunately, that prediction seems to have come true. According to Bloomberg, more than 38 trillion yen in market capitalization has evaporated from European luxury brands since March 2024. While Hermès and Prada have shown resilience, LVMH has reported a significant decline in sales, and Kering, which owns Gucci, has faced even steeper double-digit losses.

The contraction in demand can be attributed to the shrinking Chinese market, upon which the industry had become overly reliant. Adding to this is the phenomenon being termed “luxury fatigue.” As noted by an executive from Chanel in an interview with the Swiss daily Le Temps, “A sense is spreading among consumers that they are beginning to question the very purpose of this industry.”

The overwhelming flood of information surrounding luxury products today seems to strip away their allure of rarity and exclusivity. Many might find themselves fatigued by the relentless marketing excesses involving celebrities. It’s a sentiment that likely resonates with a growing number of people.

Another point that strikes me is a phrase I wrote myself:

“While we speak of luxury as a single concept, the path to pursue is not that of the European luxury industry. Rather, we should re-evaluate the essence of true richness, rooted in the unique philosophies and inherent characteristics of our own land. Or has this now taken root in the form of ubiquitous discount retailers?”

“Ubiquitous discount retailers,” of all things. And yet, that’s precisely what has happened. Japanese businesses offering low-cost, high-experience value—such as Kura Sushi, the amusement chain Round1, and the secondhand clothing store Second Street—are achieving remarkable success in the United States.

Unlike brands that chase status and prestige or proclaim lofty missions such as “making the world a better place” or “promoting Japanese beauty to the world,” these businesses target a customer base that seeks simple, accessible pleasures. Without significantly adapting to local customs, they are embraced abroad exactly as they are, following the Japanese way. The impact of inbound tourism appears to play a significant role in this phenomenon.

This approach—eschewing high-concept branding and embracing a relaxed, unembellished authenticity—ironically aligns with the principle most prized by luxury: authenticity.

Being “authentic,” rooted in the unique culture of a particular place, emerges as a powerful magnet in an era that celebrates cultural diversity. This authenticity, whether in the realm of luxury or mainstream business, captivates people and serves as a bridge connecting like-minded individuals across the globe. This realization feels like a glimpse into a new wave of globalization.

Now that we can observe this trend with clarity, I hope it heralds the rise of Japanese luxury with its unique allure, ready to be confidently shared with the world, distinct from its European counterparts.

ありがたいことに、本当に多くのクリエーターや経営者に取材させていただいたが、 長い時間をかけて成功していったブランドないし企業は 「物語」として価値を伝える力がずば抜けている。

起業ストーリーを俯瞰して、試練やアップダウン、運命的な出会い、どん底からの復活と再生、すべてのできごとの背後にある人間的な感情や思想、さらに社会背景までをリアルに伝えることができる人は、おそらく「ブランドを築く」という仕事の能力も高いのだ。

一方、表面的なビジョンやミッションのきれいごとを どんなに美辞麗句で並べられても、上滑りして忘れてしまう ストーリーが実態に比べて盛りすぎである場合もすぐにバレる (心に響かないと、支持したいという気持ちが起きてこない)。

「天」の視点から一つ一のできごとを意味づける 。

「点」としてのできごとをあとづけでいいから人間の論理としてつなげていく。

「転」となる出会いに気づくことができる。

こうした能力は意識的に磨くことができて、 それは個人のブランド構築においても絶大な力を発揮するだろう。

一方、職人さんのなかにはずば抜けたクリエイティブの能力をお持ちでありながら話し下手という方も少なくない。

そんな時には辛抱強く言葉を聞き出して、代弁者にになるつもりでストーリーを創り記事を書く。

そういう質実剛健な職人さんには、ブランド云々を超えた深い親愛感を覚えます。

 

Over the course of interviewing numerous creators and executives, one consistent insight stands out: brands and companies that achieve enduring success possess an extraordinary ability to convey their value as a compelling “story.”

By taking a broad view of their entrepreneurial journey—encompassing trials and tribulations, ups and downs, serendipitous encounters, comebacks from adversity, and rebirth—they masterfully communicate the human emotions, philosophies, and social contexts behind these events. Those capable of authentically sharing these narratives often demonstrate a superior ability to “build a brand.”

On the other hand, superficial visions or missions, no matter how eloquently phrased, fail to resonate and are quickly forgotten. Similarly, overinflating a story beyond the reality of the brand is easily exposed—if it doesn’t touch the heart, it won’t inspire genuine support.

The ability to assign meaning to each event from a higher perspective, to retrospectively connect individual “dots” through human logic, and to recognize transformative “turning points” is a skill that can be consciously developed. This talent is invaluable not only in crafting corporate brands but also in establishing a personal brand with profound impact.

On the other hand, there are many artisans who possess extraordinary creative abilities but are not particularly skilled at expressing themselves.

In such cases, I patiently draw out their words, intending to become their voice, crafting a story to share through my writing.

For these earnest and dedicated artisans, I feel a profound sense of affection that transcends any discussion of brands.

カマラハリスの功績は、テーラードスーツの威力を普及させたことにあるだろう(ほかにもあるのだろうが、ここではファッションの側面に限り話をさせていただきます)。

最初にテーラードスーツを作ることになったとき、ああ、男性は「おしゃれに関心ありません」という風を装いながら、こんな極上の世界で楽しんでいたのかと 目からうろこが落ちる思いをした。

身体を適度に抽象的に覆いながら上品に包み込む。

生地は暑さ寒さ湿気から程よく身を守る最高級の天然繊維。

インナーや小物でアレンジが効く。

身体に合わせた縫製は動きやすく、全く疲れない 。

重役室、レセプション、どこへ行っても品格を保てて一目おかれる 。

タキシードにいたっては一度作ればOK 。パーティーのたびに服で頭を悩ませる必要もない 。

トレンドがほぼないので10年前のスーツも古びない 。

「祖父のスーツをサイズ調整して着ている」紳士もざらにいる。 究極のサステナブルな服でもある。

テーラーで最適に仕立てたスーツは 自由と快適とリスペクトを与えてくれる服なのだ 。

記憶に残るブランドは、着ている本人。

スーツと言っても千差万別で、量産型リクルートスーツとは まったく異なるカテゴリーのものだが、 「一般的に、地味な制服と思われているスーツ」を隠れ蓑にした 別格にラグジュアリーな世界を男性に独占させておくわけにはいかないだろう。

(写真は元グッチCEOのマルコ・ビッザーリ氏にインタビューしたときのもの。廣川輝雄さん製作のスーツは、ビッザーリも称賛してくれました。どんなブランドの方に会ってもOKなのがテーラードスーツの良さでもある。どうでもいい話ですが私の身長は165㎝で、5センチヒールを履くと170㎝になります。ビッザーリ氏がいかに長身か)

#全国のテーラーのみなさん、がんばれ

 

When I first took on the task of creating a tailored suit, I was struck by a revelation: men, while pretending to be indifferent to fashion, had been quietly indulging in this extraordinary world all along.

Here was a garment that gracefully envelops the body, offering just the right amount of abstraction while exuding sophistication. Made of the finest natural fibers, the fabric provided unparalleled comfort—shielding the wearer from heat, cold, and humidity. It was a masterpiece of functionality and elegance.

The possibilities for styling with innerwear and accessories were endless. Tailored stitching ensured a perfect fit, making movement effortless and eliminating fatigue. Whether in the boardroom or at a reception, a well-made suit exuded class, commanding respect and admiration.

A tuxedo, once custom-made, eliminated the stress of choosing outfits for every formal occasion. With virtually no trends to follow, even a suit from a decade ago remained timeless. It wasn’t uncommon to see gentlemen wearing suits that had belonged to their grandfathers, adjusted to fit them perfectly. The tailored suit, I realized, is the ultimate in sustainable fashion.

A suit expertly crafted by a tailor offers freedom, comfort, and respect. It’s a garment where the brand that leaves a lasting impression is the wearer themselves. Of course, not all suits are created equal; the realm of bespoke tailoring is a world apart from mass-produced business suits.

Yet, within the guise of the “ordinary, understated uniform” most people associate with suits lies an exceptional, luxurious universe. And surely, we can’t let men keep this unparalleled world of elegance all to themselves.

(The photo was taken during my interview with Marco Bizzarri, the former CEO of Gucci. The suit, crafted by Teruo Hirokawa, received high praise from Bizzarri himself. One of the great advantages of a tailored suit is that it’s always appropriate, no matter which brand representatives you meet. Just as a side note, I’m 165 cm tall, and with 5 cm heels, I stand at 170 cm. It goes to show just how tall Bizzarri truly is.)

北日本新聞「ゼロニイ」12月号が発行されました。「ラグジュアリーの羅針盤」Vol. 12にて「欧州ラグジュアリーと日本発大衆向けサービスの共通点」について書いています。

リアルであること、本物であること、がこれまで以上に価値を帯びるようになっています。

記事内で言及している「ラグジュアリー疲れ」についてはこちらの記事をご参照ください。

価格と価値の問題は、ラグジュアリー領域の話題では避けて通れない。

バナナを粘着テープで壁にはった「作品」が9億超で売れたというニュースには脱力した。作者はアート界のジョーカーことマウリッツイオ・カテラン、購入者は中国の暗号資産関連の起業家。しかも購入者は数日以内にバナナを食べてしまう。

同じ脱力を、内容が薄っぺらく粗雑な作りでも「ベストセラー」になってしまう本にも感じていた。

サービスや商品に対して支払われる金額が、製作費用や時間、作り手の技術の熟練度とは関係のないところで決まる。そんな不条理な現実を突き付けられる虚しさ、というか。日々、技術を磨き思考の訓練をしているクリエイターには共感いただけるだろう。

価格が価値に見合うかどうかは、購入者が決める。それによって得られる地位、満足感、将来の資産価値などが考慮される。寄付行為においても、自身に語るストーリーや世間へのインパクトが寄付額以上と考えればおこなわれる。

技術を駆使し思いをこめた傑作を作るだけでは、商業的な成功は保証されない。

顧客が必要とし、欲しがり、夢見るもの、満足するものを想像して共感を呼び起こすための仕事も重要になる。

それはわかるが、かんじんの人間の欲望が永遠にわからない(笑)。一本のバナナとテープに9億超を支払って満足する欲望は、謎だ・・・

 

The issue of price and value is unavoidable when discussing the realm of luxury.

I was utterly dumbfounded by the news of a “work” involving a banana taped to a wall selling for over 900 million yen. The artist, Maurizio Cattelan, known as the “Joker” of the art world, sold it to a Chinese entrepreneur involved in cryptocurrency. To top it off, the buyer ate the banana within a few days.

I ’ve felt the same sense of dismay toward books that, despite being shallow and poorly crafted, somehow become “bestsellers.”

The price paid for a service or product is determined independently of production costs, time invested, or the creator’s level of expertise. It’s a sobering and absurd reality that can feel disheartening. I imagine many creators who dedicate themselves to honing their craft and cultivating their ideas can relate.

Creating a masterpiece with great skill and heartfelt effort does not guarantee commercial success. Part of the work lies in imagining what customers need, want, dream of, and find satisfying—and evoking empathy to resonate with them.

I understand this, but human desires remain an enigma to me. The desire to spend over 900 million yen on a banana and some tape… that’s a mystery I can’t unravel.

Photo: Public Domain

石川県の牛首紬展、日本橋高島屋で開催されております。白山工房の西山博之さんに牛首紬復活のユニークなストーリーを取材しました。

牛首紬展は12月3日まで。西山さんもアテンドしていらっしゃいます。ぜひこの機会に!

お話の最後の方で、「業界」なるものについて考えさせられました。西山さんがこんなことを話されました。「着物業界とファッション業界の間には長年、大きな溝があって、まったく違うシステムで動いていた。でもMIZENの寺西俊輔さんが入ってきたことで、両者の溝がなくなり、協力しあうことで可能性が無限に広がりつつある。ワクワクしている」と。

これを聞いて、はっとしました。メンズファッション業界(とりわけスーツ業界)とモード系のファッション業界も相いれない業界で、それぞれ別のシステムで動いていると見られている節があります。が、もしかしたらそれも「人」次第で、溝を取り払うことで新たな可能性が開けてくることもあるかもしれないなあ……

「業界」なるものは、つまるところ、「人」が作っています。

次世代ジュエリーブランド、Gemmyo創業者ポリーヌ・レニョー氏にインタビューする機会をいただきました。彼女が掲げる「スマートラグジュアリー」がカプフェレ教授(ラグジュアリー論の権威)と一緒に練り上げたコンセプトと聞いて、意外で驚きました。フランスでも確実にラグジュアリー観が変化しているのだと知り、次世代のラグジュアリーについて議論する充実した時間になりました。詳細は後日、記事にいたします。

I had the privilege of interviewing Pauline Laigneau, the founder of the next-generation jewelry brand Gemmyo. I was surprised to learn that her concept of “Smart Luxury” was developed in collaboration with Professor Kapferer, a leading authority on luxury studies. It’s clear that the perception of luxury is evolving, even in France.

エルメスというブランドを心から尊敬しているし、文字通り「時を超える」高品質や時代を先駆けるイノベーションも最高級ブランドの名にふさわしいと思う。

ただ、その製品、とりわけ一部のバッグをめぐるあり方というか構造には疑問を抱く。

・一部の顧客が本命バッグを「買わせていただく」ために他の製品に課金しなくてはならないらしいこと

 ⇒顧客が従属的でブランド様に仕えている構造

・購入したことで特別な社会的ステイタスが得られるという幻想が根強いこと

 ⇒確たる階級なき時代にブランドの威光で「上」に立てるという幻想がある構造

問題はブランド側にあるというよりむしろ、稀少性や名声、階級(の幻想)をありがたがる顧客が勝手に創り上げていった上下構造にある。

ラグジュアリーはモノやサービスを提供する側だけでは作れない。とりまく市場や顧客のあり方まで含めて世界観が築かれる。

顧客もやがて成熟してくると、ブランドに従属すること、上下格差の幻想の中で生きることの古さ、ないし幼稚さから卒業していくのだろう。その暁に、ようやくフェアにモノやサービスと向き合える世界が待っている(と思いたい)。

 

 


I hold profound respect for the brand Hermès. Its unparalleled quality, which literally “transcends time,” and its groundbreaking innovations are truly befitting of a top-tier luxury brand.

However, I find myself questioning certain aspects of how its products—particularly some of its bags—are positioned and the structures that surround them:

  • The necessity for some customers to spend on other products in order to “earn the privilege” of purchasing a flagship bag
    → This creates a dynamic where customers appear subordinate, serving the “almighty brand.”
  • The persistent illusion that owning such items grants exclusive social status
    → In an era without rigid social hierarchies, this structure fosters the fantasy that a brand’s prestige can elevate one’s standing.

The issue lies not so much with the brand itself but with the hierarchical constructs that some customers have built around the notions of rarity, prestige, and social class (or its illusion).

Luxury is not created solely by the providers of goods or services. It is a worldview shaped by the ecosystem of the market and its customers as well.

As customers mature, they may gradually move beyond subordination to brands and the outdated or even immature notions of living within hierarchical illusions. When this evolution takes place, I hope a world awaits where customers can engage with goods and services on fairer and more equal terms.

スマートラグジュアリーを掲げるフランスのジュエリーブランド、Gemmyo が日本上陸、お披露目会。

ショップの建築は佐野文彦さんで、日本とフランスのよき折衷をめざしたという。フランスの丸い柱、大理石の天井。日本の細尾の装飾帯など。

創業者には来週インタビューする予定です。ショップのオープンを心よりお祝い申し上げます。

LVMH傘下のベルモンド(ラグジュアリートラベルのブランド)が、イングランドとウェールズで初となるラグジュアリー寝台列車「ブリタニック・エクスプローラー」を発表

2025年7月、「ブリタニック・エクスプローラー」はロンドンを出発し、コーンウォール、湖水地方、ウェールズといった壮大な自然景観を巡る3つの魅力的な旅程を選べる3泊の旅を提供する (あ~乗りたい!!)

スローな旅の新しい幕開けですね。古き良き鉄道遺産を称えると同時に、現代の英国の食、文化、スタイルを融合させ、スローな時間のなかで一流のサービスや風景を顧客に堪能させる。「移動」を手段ではなく目的そのものにしてしまう。

「特別な体験」「時間の贅沢」にいっそう価値が置かれていく時代になりそう。

もちろんこれまでも豪華列車や豪華客船、キャラバンなど移動中の時間を楽しむための旅はあったが、一応目的地はあり、主に顧客に食やサービスの満足を提供するものだった。ベルモンドはそれに加え、移動中の自然景観が重要な要素になっており、コーンウォール、湖水地方、ウェールズといったイギリスの象徴的な自然や文化をテーマにした旅程が用意されている。停車地の地域経済にも貢献するような設計がされているのが次世代的という印象を受けます。

Photo from Creative Commons: Wooden restaurant car from the Orient Express displayed in the Railway Museum in Utrecht. CIWL WR 2287 from 1911.

資生堂オープン イノベーション プログラムfibonaと、ポーラのマルチプル インテリジェンス リサーチセンターmirc の共同研究に、先月に引き続き外部講師としてお招きいただきました。

未来のウェルネスとウェルビーング(両者は違う)をさらに明確に考えるためのユニークな機会でした。
今年の春にできたばかりのピッカピカの青山ポーラビルにて。

左から資生堂fibonaリーダーの中西裕子さん、大阪大学の佐久間洋司先生、ポーラmircリーダーの近藤千尋さん。

自分のミッションとして、当たり前のように使っていた多くのコンセプトをオリジンから徹底的に洗いなおして現代的に考える、という作業をさせていただきました。良い機会を与えていただきありがとうございました。

 

I am honored to have been invited back as an external lecturer to contribute to the collaborative research initiative between Shiseido’s open innovation program, fibona, and POLA’s Multiple Intelligence Research Center (MIRC), building upon our productive session from last month.

This unique opportunity allowed us to further clarify our thinking on the future of wellness and well-being (which are distinct concepts).

The event took place at the brand new POLA Building in Aoyama, which opened just this spring.

Pictured from left: Yuko Nakanishi (fibona Leader, Shiseido), Project Researcher Yoji Sakuma (Osaka University), and Chihiro Kondo (MIRC Leader, POLA)

In preparation for my participation, I set myself the mission of thoroughly re-examining many concepts we use routinely, tracing them back to their origins and reconsidering them in a modern context. I’m grateful for this valuable opportunity.

スペインのラグジュアリーセクターでビジネスをする方が来日、お声がけいただいてお話を伺いました。

初来日にもかかわらず、3週間でディープで広範な日本を体験していらして、私よりもはるかに日本の最先端をご存じで驚愕でした(私が知らなすぎ、ということもありますが)

「調査力」の秘密は何かと聞こうと思ったのですが、話しているうちに、「調査力」なるものは人間力とコミュニケーション力に尽きるのだろうと実感(人と会い、雑談しながら良好な関係のなかでごく自然に情報を得る)。

「松葉茶寮」も旅行者であるはずの彼女の指定。日本人の私は知らなくて、初めて足を踏み入れてどきどきしてしまいましたよ(笑)

もっとも重要で必要な情報は、たぶん、どこにも「書いて」ない。生身の人間からしから伝わらない。

1666年10月のチャールズ2世による衣服改革宣言は、スーツのシステムを生んだという意味でも画期的でしたが同時に、ラグジュアリーの意味を変えたという意味でも注目に値します。

それ以前、宮廷は誇示的消費を宮廷の特権とすることで権威を保っていました。エリザベス1世時代には中産階級以下に「奢侈禁止令」を制定してまでラグジュアリーを独占しようとしていました。その「伝統」が続いていました。

しかし、「貴族に倹約を教える服」の導入により、王侯貴族が反・贅沢に向かうことによって文化的権威となろうとしたのです。これがいかに斬新なことであったか。

さらに1688年の名誉革命はイングランドにおける最初の民権条例を制定させましたが、これにより、貴族はいっそう贅沢から離れ、慎ましさへ向かうのです。

啓蒙思想がこの傾向を後押しします。啓蒙思想は民主主義と人権を大切にするという理念を育てていきます。

旧時代の貴族が耽溺していた誇示的装飾をやめたイングランド人は、地味で簡素なスーツを、このような政治的理念や社会思想と結びつけます。

旧貴族的贅沢の誇示を頑なに残していたフランスでは流血革命が起き、反・贅沢のドレスコードの力でうまく移行に成功したイングランドは、18世紀末までには、世界のメンズスタイルのリーダーとなっていきます。簡素なフロックコートは、個人の自由と立憲政府を支持する人間のドレスコードとなるのです。

とはいえ、フランス側でそんな立場をとる者は、仲の悪いイングランドではなくアメリカに倣った、という風を装います。ベンジャミン・フランクリンにちなみ、フランクリン風ファッションと呼ばれて採用されていきます。

ともあれ、その流れを作った発端が、チャールズ2世の衣服改革宣言にあったということ、これはもっと重視されてよいのではと思います。

それで、ラグジュアリーはイングランドから姿を消したのか?といえばそうではなく、質素・簡素の徹底の中にラグジュアリーを見出す「新しいラグジュアリー」として、ボー・ブランメルのダンディズムが開花させるのです。紳士型ラグジュアリーの誕生であり、今日も隆盛する紳士ブランドはこの時代のヘリテージを利用してラグジュアリービジネスをおこなっています。

 

 

 

 

大阪・うめだ阪急で開催されたブルネロ クチネリ顧客様イベントでラグジュアリーに関するサロンレクチャーを2回、行いました。テーマ「1920年代の文学サロン」に似つかわしいようVIPルームも装飾され、スタッフのみなさま、顧客のみなさまとともに豊かな時間を過ごさせていただきました。ありがとうございました。

1階のポップアップではイタリアからオペラニットの職人が来日、デモンストレーションをおこなっています。ひとりですべて手作業でおこない、20時間から、40時間くらいかかることもあるそうです。お近くの方、またとない機会ですので間近でご覧ください。

I had the pleasure of speaking about luxury at a special client event for Brunello Cucinelli at Hankyu Umeda. The salon was beautifully decorated with books, creating an atmosphere reminiscent of the literary salons of the 1920s, which perfectly matched the theme. Thank you very much.

ココ・シャネルがコスチュームジュエリーによって金融資産とエレガンスを切り離してしまい、1920年代にふさわしいエレガンスを示したことで結果的に女性解放をもたらしたように、 金融資産とラグジュアリーを紐づけず、新しいラグジュアリーのあり方を示すことが次の時代を作るだろう。

ブルネロ・クチネリのエッセイのなかに哲学者カントのラグジュアリー観が紹介されていた。

「ラグジュアリーはセンスに恵まれた人間のなかに見出され、その多様性により私たちの判断能力を満足させ、社会生活全体を活気づけながら多くの雇用をもたらす」。このことばのなかにも、ヒントがある。

 

金融資産と切り離す、というのは発想においてそのようにするのがいい、ということである。金融資産のある人の世界に媚びない。むしろ視点の転換をもたらす。

これを実際に現在おこなっているのが、MIZENの寺西俊輔さんで、日本の農民発の知恵と工夫、技巧を「ラグジュアリー」製品に組み込んで発信している。B級とされた繭から生まれた紬。寒さをしのぐために工夫されたこぎん刺し。

結果として富裕層しか買えない価格になるというジレンマは、19世紀のウィリアム・モリスの時代からあった。アーツ・アンド・クラフツ運動を先導したウィリアム・モリスは、低品質の大量生産品に抵抗して、職人が喜びを感じて作ることができる、芸術的な日用品を生産することを目指した。でも実際にそういったものを作ったら、金持ちばかりが買っていく。そこにジレンマを感じて、次第にモリスは社会主義運動に傾倒していく。

このジレンマを解決するひとつの考え方として、クチネリは「利益の再分配」をソロメオでおこなっている。職人の賃金を平均より20%上乗せする。村を修復し、美化する。劇場や図書館を作る。人間を幸福にするための経営だ。

 

つまり言いたかったことは、ラグジュアリービジネスを日本から創ろうとする際に、「富裕層の好きそうなもの」の世界に媚びるな、ということ。むしろ日本土着の発想からサービスや製品を磨き上げ、顧客の価値観をひっくり返すようなものを作ったほうがいい。オリジンに忠実という意味でオーセンティックだし、そもそも人は、価値観がガラッと変化するようなものにお金を喜んで払う。

それが結果的に金融資産のある人しか買えない価格になるとしても、その利益を、別の形で再分配していけばいい。職人への還元、地域の環境の美化、教育、福祉などできることは多い。国があてにならなくなった時代には、そんなラグジュアリービジネスが頼もしい存在になる。かつてないほど、経営者に倫理が求められる。

「きれいごと」でビッグピクチャーを描いているのは百も承知。が、クチネリ、寺西さん、suzusan村瀬さんはじめ、実際にその理想に向けて奮闘している人もいる。であればその努力を応援したい。

H&Mグループが2025年までにヴァージンダウンの使用を廃止するなど、ファッション業界全体がファーのみならずダウンも使用を控える方向へとますます進んでいることを受けて。NewsPicks comment をこちらにも転載します:

人類が最初に着た衣類が毛皮。毛皮は土に還るので地球環境との共存という意味では、実はポリエステル製のエコファーよりも、自然の摂理にかなっている。

同じように自然に生え変わる鳥の羽根を使って保温に使ったヴァージンダウンならば地球環境をなんにも損なっていない。

人間の需要(欲望)にこたえて量産しなくてはならない時代になり、動物を痛めつけても毛皮や羽根を強制的にとるという事態が横行したので、ならば使わないことが正義、みたいに極端な方向にいってしまった。

そもそも使いません宣言は、今の時代なら(動物を虐待してまで金儲けするビジネスの横行に対して)効力があり、善いことをしている企業として消費者にアピールするのかもしれない。

しかし、毛皮やヴァージンダウンを着ることそのものは、本来、悪ではない、ということはおさえておきたいところです。

Photo: NASA blue marble (Public Domain)

12日付日経コラムのこぼれ話です。

そんなわけで輪島・千舟堂の岡垣社長は、ブルネロ クチネリの表参道店で展示販売会をすることになった。

輪島塗の作品をクチネリの店舗に搬入するにあたり、岡垣社長は「お礼に服を買おう」と思い、価格を見て衝撃を受けた。なんでこんなに高いんだろう?と心底驚いた。

その後、クチネリのスタッフが輪島塗の作品を並べながら、「輪島塗ってなんでこんなに高いの?」と驚きながら話しているところを漏れ聞いた。

「ああ、同じなんだ」と岡垣社長は理解する。

輪島塗は塗師屋(ぬしや)と呼ばれるディレクター(岡垣社長もそのひとり)の指揮のもと、数人の専門職人の分業制で作られる。それぞれの工程を担当する職人さんに正当な賃金を払い、彼らが働けるシステムを整えていけば、それだけの価格になる。

クチネリの服が高価であるのも同じ理由であることを岡垣さんは悟る。職人に平均賃金より20%高い賃金を払い、彼らが創造性を発揮できるよう環境を整えると、それなりの価格になるだろう、と。

それまでアパレルにまったく興味のなかった岡垣さんは、以後、服にも興味をもち、生産背景まで考えるようになったという。

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繰り返し書いていますが、職人も尊重され、技術にふさわしい賃金を支払われると、責任を感じ、創造力を発揮して唯一無二の手仕事の成果を発揮する。それがラグジュアリー製品として高価で売られる。(そこに価値を感じて買う人がいる。)利益は、地域全体の環境を整える形で再分配される。ソロメオ村の文化的な価値も向上する。これがクチネリ型のラグジュアリービジネス。

これまでの高度資本主義時代のラグジュアリービジネスでは、その利益が一部の資本家のみに独占され、ますます格差が広がるという状況が生まれていましたが、これではもう社会がもたないのではないか。それに代わるあり方として、クチネリが実践するような、すべての人をフェアに尊重するやり方に向かうべきなのではないか、ということです。

そもそもそんな高価なものは不要、という考え方もあるでしょう。もちろん、そういう合理的な考え方もそれはそれでありだと思います。

ただ、時に熟練能力を過剰なくらいに発揮してすごいもの、すばらしいものを創りたいという職人の欲求(アルチザン魂)は自然に生まれてくるものだし、夢のように圧倒的に美しい世界に感動したい、という願望も人間にはある。だからこそ、無駄で余剰かもしれない「ラグジュアリー」は人類に寄り添い続けてきたし、これからも新しい形のラグジュアリーは存続していくでしょう。となったときにどういう方向に向かうべきか?

 

 

日本経済新聞連載「モードは語る」。12日付夕刊では、ブルネロ クチネリ・ジャパンと輪島千舟堂の交流「秘話」を書いています。

この内容は、私が自主的に輪島に取材に行ってはじめて判明したことでした。紙幅の関係で書ききれなかったのですが、クチネリは複数回、輪島に行き支援を続けています。紙面に書いた内容と同様、この事実は、一切、PRされていません。

国や宗教をもはや信じられなくなった時代に、「真・善・美」を示すのがラグジュアリーブランドになった、というのはフランソワ=アンリ・ピノー(ケリングCEO)のことばですが、それを先鋭的に実践しているのがクチネリだと認識しました。

これからのラグジュアリーは、職人に自由に創造力を発揮してもらう環境と待遇を与え、そこから生まれた高価格製品の利益は地域全体の環境の向上のために再分配する。それによって、特権階級の排他的幸福ではない、「包摂」=全体の幸福を目指す必要がある。クチネリ・ジャパンはそれを淡々と実践していました。

富裕層のみのことを考えるラグジュアリーは古い、というのはそういう意味でもあります。

 

GQ誌上で斎藤幸平さんと対談した記事が、ウェブ版に公開されました。

ラグジュアリー/クラフツマンシップ/サステナビリティ、が主なテーマです。

編集部・高杉さん、ライターの松本さんにもお世話になりました。ありがとうございました。

英語翻訳版(自家製)はこちらです。

職人さんにもいろんなタイプがいる。指示されたことを忠実になぞるのが得意なタイプと、自分のオリジナリティをついついどこかに発揮したくなるタイプ。

ただし、その2タイプも厳密に分かれるわけではない。指示されたことを忠実におこなっているうちに、熟練し、次第にオリジナリティを発揮したくなってうずうずしてくる、というパタンもある。

「日頃は指示された仕事を忠実にこなし、その仕事で貯めたお金を資金として、年1~2回、個人の名前を出して展覧会をおこなっていくのが、経済的にも、精神的にも、最もバランスがいい」、と輪島の職人さんを統括する「塗師屋(ぬしや)」(=親方)さんである千舟堂・岡垣社長は語っていた。

伝統工芸の職人でなくとも、各業界の仕事人にも、もしかしたら同じようなことが言えるかもしれない。指示されたことをきちんと行う、という仕事をベースにしながら、年1回ほど、独自の創造性を発揮するクリエーションを披露できる機会をもつ、というような。

写真は、輪島取材時に、岡垣社長が蒔絵職人からピックアップしてきたばかりの名刺入れ(許可を得てアップしています)。自由に何でも作っていいよ、というと、テーマを決めたときよりも誰もが2割増しですばらしいものを作ってくる、と岡垣社長は話す。

職人に責任と創造性の自由を与えるととんでもなく素晴らしいものを作り、ラグジュアリー製品として売れる、というブルネロクチネリの話を思い出す。

Artisans exhibit diverse dispositions. Some excel at meticulously following instructions, while others possess an innate drive to express their originality.

However, these archetypes are not mutually exclusive. A common trajectory involves artisans who initially adhere strictly to instructions, gradually developing expertise and subsequently experiencing a growing urge to infuse their work with personal creativity.

Mr. Okagaki, CEO of Senshudo and a master artisan (“nushiya”) overseeing Wajima craftsmen, told me:

“The optimal balance, both economically and psychologically, is achieved when artisans faithfully execute assigned tasks daily, utilizing the accrued funds to host one or two personal exhibitions annually under their own name.”

This principle may extend beyond traditional craftsmanship to various professional domains. A potential model emerges: maintaining a foundation of diligent execution of assigned tasks while reserving opportunities, perhaps annually, to showcase individual creativity and innovation.

Unleashing Creativity

During a visit to Wajima, Mr. Okagaki presented recently completed business card holders crafted by maki-e artisans (photo shared with permission).

He noted that when given creative freedom, artisans consistently produce work of superior quality—approximately 20% better—compared to projects with predetermined themes.

This phenomenon resonates with the Brunello Cucinelli approach, where entrusting artisans with responsibility and creative liberty results in the production of exceptional, luxury-grade items.

トッド・スナイダー氏へのインタビュー記事がウェブ版GQで公開されました。こちらです。

あのウールリッチが今シーズンからステージを変えます。伝統モチーフはそのままに、ちくちくしない、イタリアのカシミア100パーセントの新しいアメリカンカジュアルへ。発想のヒントはいつも日本から。

多くのコラボに貫かれるトッドのビジネススタイル、”True and Honest”な姿勢にも魅了されます。

Rugged Luxury (上質剛健)なウールリッチへの変貌、期待しましょう.


(写真はウールリッチの提供です)

GQ has released an interview with Todd Snyder, the newly appointed Creative Director of Woolrich.

Woolrich is set to enter a new era this season. While preserving its traditional motifs, the brand is evolving towards a new American casual style, featuring 100% Italian cashmere that’s not itchy. Interestingly, Japan continues to be a source of inspiration for his innovative ideas.

Todd’s business approach, consistently evident across his numerous collaborations, is characterized by a “True and Honest” attitude that’s truly captivating.

Let’s look forward to Woolrich’s transformation into a brand of “Rugged Luxury”.

フェリス女学院大学 緑園都市キャンパスで「ラグジュアリーの変遷と時代を創るファッション」というテーマで講義をさせていただきました。150名の学生さんたちの丁寧なコメントシートも拝読し、一層のやりがいと使命感を感じております。お招きありがとうございました。

資生堂のオープン・イノベーション・プログラムfibonaと、ポーラのマルチプル・インテリジェンス・リサーチセンターmircがタッグを組んで、次世代のウェルビーイングの価値を創造する前衛的な研究がおこなわれております。

資生堂とポーラが共に研究をする。これだけでも驚きですが、光栄なことに大阪大学の佐久間洋司先生と共に外部講師としてお招きいただきました。

資生堂とポーラ、総勢20名ほどの精鋭研究員の方々とともに刺激的な議論の時間を過ごさせていただきました。

同業種の競合を超えて人類の未来のためにともに研究するというプロジェクト。こんな若い世代が活躍する日本は頼もしい。

トップの写真はfibonaのリーダー、中西裕子さん、大阪大学の佐久間洋司さん、そしてポーラmircのリーダー、近藤千尋さん。ありがとうございました。


Shiseido and Pola, two industry giants, have joined forces in a groundbreaking research collaboration.

Even more remarkably, I’ve had the privilege of being invited as an external lecturer alongside Dr. Hiroshi Sakuma from Osaka University.

I spent an invigorating session engaging in thought-provoking discussions with an elite group of approximately 20 researchers from both Shiseido and Pola.

This project, which transcends industry competition to pursue research for the future of humanity, is a testament to the promising young generation driving Japan forward.

Pictured are Yuko Nakanishi, leader of fibona; Dr. Hiroshi Sakuma from Osaka University; and Chihiro Kondo, leader of Pola mirc. My sincere gratitude to all involved.

トッド・スナイダー氏のインタビューに関し、メインの記事はGQでの公開までお待ちいただくとして、こぼれ話。

雑誌の表紙に書かれた「アルチザン(職人)」という言葉に、トッドは「ああ、これこれ」という表情で強く反応した。

その理由を確認したら、ものを作る人間として今、一番大事にしている言葉だから、と。

トッドが言う意味とは少しずれるかもしれないが、「アルチザン」に反応する男子が増えた。服好き男子によれば、職人技が過剰なまでに発揮された変態ファッションのカテゴリーをさすと。「ストリート」「スポーツ」などと並ぶカテゴリーとしての「アルチザン」。ブランドにはカルペディエム、キャロルクリスチャンポエルなど。以前からあった領域なのだが、「知る人ぞ知る」だったものがメジャーに語られるようになってきた。

「アルチザン」とは、無駄で過剰な職人技が駆使されているゆえに、稀少価値が生まれ、マニアックな熱狂も生む、それゆえ高付加価値がつくファッションカテゴリー。

AI時代に人間の手仕事の価値は上がり、稀少性を重んじるラグジュアリーにとって職人の手仕事は不可欠になっていく。

その兆候が、先駆的な領域における、極端な職人技尊重の「アルチザン」スタイルである、と位置付けたい。トッドがそのワードに敏感になるのも、これからますます重要になっていく要素だからであろう。ファッションは常に時代を予兆する。

(トッド・スナイダー氏の写真はウールリッチに提供いただきました)

MIKIMOTOが今年6月にパリで発表したハイジュエリーのコレクション”The Bows”が銀座ミキモト本店7階でお披露目、プレス発表会に伺いました。一般公開は9月28日~10月14日。ただ、このボディジュエリーはもうお嫁に行ってしまうとのこと。最後に至近距離で拝見できて眼福でした。

そのほかにもリボンモチーフの迫力ジュエリーがずらりと揃い、ドキドキが止まりません。というかこれだけのピュアな真珠(と巨大宝石)の輝きを浴びていると、魂まで清められるような感覚を覚えます。

真珠で二重のフリルを作っています。信じがたいような技巧が発揮されています。
Yuima Nakazatoのドレスとのコラボレーションも絶妙で、ああこれが日本の最先端の美意識と技巧が融合したマスターピースというものか(語彙混乱)としばしたたずんで見惚れておりました。ユイマさんは前衛テクノロジー系が注目を浴びがちでしたが、こんな「着られる」ドレスもエレガントで新鮮ですね!

みなさん、一般公開の機会はお見逃しないようにね。入場無料です。

北日本新聞別冊「ゼロニイ」10月号発行されました。「ラグジュアリーの羅針盤」Vol.23 「ゲストに迎合するのではなく、啓蒙せよ」。

ラグジュアリーに関する講演をするたびに受ける、「富裕層に気に入られるにはどうしたらいいですか?」という質問について考えていました。なんかこれって、「女性にモテるにはどうしたらいいですか?」という質問と似ているなあ、と。

女性っていっても女性の数だけいて一人一人全く違うし、ましてや「富裕層」なんてひとくくりにできるものではない。新興のインフルエンサー系の富裕層と先祖代々の資産を守っている富裕層では考え方も趣味も全く異なるし、保守層の中でも個性がそれぞれ違う。マクドナルドのハンバーガーを好むウォーレンバフェットのような人もいる。

そもそも、「こういうの、お好きでしょう?」「マーケターによれば富裕層はこういうものをお好みらしい」みたいにブランディングされ、提供されたものが面白いのだろうか? マーケティングの結果の予想をはるかに超えてくるもの、圏外から新しい発見をもたらしてくれるようなものに、人は価値を見出すのではないだろうか?

ジェンダー問わず本当にモテる人は、媚びたりせず、自分を曲げても相手の好みに合わせたりはせず、主体性をもち、新しい発見をもたらしてくれる。だからこそ、会いたくなる。

それと同じで、結果的に富裕層にモテるサービスは、志や理念をもち、ゲストに迎合しすぎず、むしろゲストに新しい視点を提供して啓蒙してしまうようなところがある。だからリピートされる。

マーケティングリサーチ以前に大切な前提があるように思います。

 

 

現代の日本には真面目な人が多い。ただ、自己啓発が好きすぎて、自己啓発病、みたいになっているのじゃないかと見えることもある。他人が勧める方法論をぐるぐるなぞるばかりでますます均一・横並びになっている。インスタグラムでアピールされるメイクも同じ。美容医療の成果なのか顔のパーツの形まで同じになっている。難のない、大量生産型を目指すと安心を得られるのだろうか。

思い出すのは、シャネル社元社長、リシャール・コラスさんの講義である。2011年から3年連続でおこなわれており、2013年にも聞く機会に恵まれた。

最後の質問タイム 「コラスさんが考える女性の美しさとは?」 コラスさんの答えは、シンプルだった。

「自分であること」。

イメージとしてコラスさんの脳裏にあったのは、ブランドの始祖ココ・シャネルであろう。自分であることを貫き、自分が勝てるコンテクスを創り上げていったシャネルは、社会変革までもたらした。

世間が決めるスペックをよりどころにしない。「世間並み」のアリさんレースを突き抜けて、「比較級のない」ラグジュアリーな海に泳ぎ出るには、自分を知り、一貫した行動を、限界突破しながら一定期間継続するのが基本中の基本、と当時、メモしていた。

人生に疲れも入ってきた今だったら、「そうか、猫を見習おう」と思うのだが。

突き抜けるにせよ猫になるにせよ、ラグジュアリー・クエストの旅は、どれだけ本来の自分を活かせるか、という挑戦と不可分になる。

日本のラグジュアリーに関してもそうで、どれだけ日本が本来もっている有形無形の文化資産に気づき、活かせるか、という挑戦につながってくる。

話が大きくなって恐縮だが、つまり、よそで成功した方法論の模倣を続けている限り、永久に「比較級」の劣等版から逃れられないということ。

オーセンティック(真正にその人であること)を追求するほうが、はるかに本物の安心に近くなる。

(写真は、能登空港へ向かうANAの機内から見えた富士山)

 

 

HOSOO Couture 第二章発表会、ブルガリホテルにて11日に開催されました。3種類のゴージャスな西陣織の生地を主役とする10型のコレクションはタイムレスで高級感にあふれています。
「ブリンク」というまつげのような糸を織り込んだ生地のワンピースを着こなすのは細尾代表の奥様でもある細尾多英子さん。
バスルームにはHOSOO のシルク成分配合のソルトやボディクリームが。ベッドスローやクッションもHOSOO。ブルガリの世界観にしっくり調和しています。

世界展開も着々と進み、本格的総合ラグジュアリーブランドとしての進展が目覚ましい。

さて、HOSOOさんはすでに着々と世界展開へ駒を進めているわけですが、続く多くの日本ブランドが世界でラグジュアリーとして受容されるために、私たちができることを考えてみました。ブランドとその国の人の魅力は無関係ではないのです。

各国のラグジュアリー製品の魅力を支えている要素のなかに、その国の人やライフスタイルへの憧れがあります。『新ラグジュアリー』の共著者である安西さんに「イタリア人は自分たちのライフスタイルに自信があるから、高い価格を堂々とつけられる」と指摘されて、そういえばそう、と気がついたことなのですが。

イギリスブランドは、英国王室や英国紳士のライフスタイルへの憧れを高価格の根拠にします。
フランスブランドの背後には、パリマダムや紳士、ライフスタイルが控えており、
イタリアブランドの背景には、ミラノメンズやマダムの立ち居振る舞いがあります。

たとえすでに過去の遺産になっていたとしてもその幻影(ヘリテージ)が高価格を支えています。

日本からラグジュアリーブランドを世界へという話になったときに、高品質で美しいものはそろっているが、はて、世界の人が「すてき」と夢見る日本のライフスタイルや人は?となって戸惑うところがあります。

100年先を見据えて、自国の文化に立脚した魅力のある日本人になっていきたい(育てたい)。

隣国の量産加工型男女の真似をしたり、海外ブランドで武装してマウント合戦したりもいいけれど、そこにはついぞ本物の魅力は宿りません。

すべての日本人が、借り物ではない、内側からの、地に足のついた優しさを伴う美しさとその美を引き立てる環境づくりを目指すことは、未来の日本への社会貢献となるはずだと思いませんか? 個々人が成長していくことで、企業も世界へ展開しやすくなり、ひいてはその利益が私たちに還元される。そういう循環を生み出せることを願っています。

 

 

日経連載「モードは語る」。昨夕は、ラグジュアリーの持続にとって不可欠な職人の地位向上の提言を書きました。有料会員限定ですが記事はオンラインでも公開されています。こちらでお読みいただけます。

掲載した写真は、丹後のデザイン橡・豊島美喜也さんの作品です。金属織物を使った茶室のパーテーションで、青海波の柄がデザインされています。ロンドンで展示されたもので、豊島さんにお写真を提供いただきました。

英語版はこちらです。(海外の方からのお問い合わせがあった時用に勝手に作っています)

この記事、および最近の取材に関して「ラグジュアリー論のあとに職人の話というのは180度違う路線ですね」と言われて驚きました。

これからのラグジュアリーを考えるにあたり、重要になるのは手仕事の稀少性です。だからこそ職人をもっと重んじ、その地位を上げていくべきだと提言しています。ラグジュアリーの持続と職人の地位向上は、不可分な問題です。

ただ、多くの日本人にとっては、ラグジュアリー=富裕層ビジネス、でとどまっています。ゆえに、富裕層な好きなものマーケティングみたいなのがラグジュアリー研究だと勘違いされている節があります。

ブルネロ クチネリが持続的に輪島の支援をおこなっていることも顕著な一例ですが、ラグジュアリービジネスを長期的におこなう立場にある者には、ノーブレスオブリージュ的行動が大前提として求められます。

表面的なきらきら、一時的な大金の動き(の幻想)、虚飾に惑わされていると、ラグジュアリーの本質を見失うことになります。

午前中は銀座で宝飾業界の方々にラグジュアリーについての講演。午後は新宿・京王プラザでホテル業界のトップセミナーで、ラグジュアリーをテーマにした講演でした(もちろん、ご参加者に応じて内容を変えています)。

(京王プラザ43階の講師控室からの風景)

午前、午後、トータルで200分ほど、久々にヒールで立ったままのレクチャーでしたが、楽しかったな。お招きいただきありがとうございました。

以下、雑記。

 

「ジェントルマンの定義をすべて満たす男はジェントルマンではない」という”定義”がありますが、実際に会うとこの人はジェントルマンか否かかは感覚で「わかる」。いわく言い難い「ジェントルマンらしさ」というのが確実にあります。表情や言葉の端々、立ち居振る舞いからそれが漂うのです。逆にそれっぽくしていてもニセモノはすぐ「わかる」。

ラグジュアリーにも似たところがあります。ラグジュアリーの言葉による定義には曖昧さが常に残るのだが、実際にサービスを受けるとラグジュアリーであるかないのかが体感で「わかる」。あたたかみのある透明で崇高な清らかさに包まれる感覚というか、現世の価値基準を無にしてしまうような新鮮な感覚というか。(だからおそらくお金の価値基準もなくなるのでしょう)。逆にニセモノもニセモノのオーラをちゃんと出しています。贅沢っぽくしつらえればそれでOKという世界ではない。

ジェントルマンにしてもラグジュアリーにしても言葉による定義に曖昧な部分を残しているからこそ時代に応じて変わり続けることができ、人が追求してやまないという一面があります。言葉を使って考えていくためにはある程度の定義枠も必要ですが、やたらと「定義、定義」と固執しすぎないことも大切なときがあります。

Design Week Kyoto 2024 「ものづくり対話」、終了しました。新幹線が一部終日運休になったため、私はオンラインに切り替わりました。

パネリストの方々はじめ、ご参加のみなさまの問題意識をたくさんうかがえたことは大きな収穫になりました。ヨーロッパで長く仕事をしてきた寺西俊輔さんの「デザイナーと職人の階級の違い」の話は強烈でした。

ヨーロッパではデザイナーの仕事は貴族の仕事、職人の仕事は手を汚すから労働者の仕事、というような歴然とした階級がある。デザイナーはピラミッドの頂点にいて、その世界観は絶対。職人はその世界観に奉仕するために存在する。この世界観を崩さないために、職人は名前を出さないのだ…という話。その階級制がいまも強い、とのこと。

なるほど。職人はデザイナーの世界観に奉仕する労働者…。だからヨーロッパでは職人が「下」に見られがちなのか。一方、日本にはその壁がない。デザイナーはデザインしながら物も作る。職人もデザインする。だからこそ、寺西さんは、デザイナーが頂点にこない、「職人」の技術を活かすブランドを日本で作ったのだ。

丹後の民谷(螺鈿)さんを取材したときに、数多くのブランドとのコラボ作品を見せていただいた。ディオールオムのように名前を公表してくれるブランドもあれば、「守秘契約」を結ばされ、コラボの事実があったことを言ってはいけない契約を結ばされるブランドもある。半々ぐらいで、まだ過渡期なのだなと実感する。ヨーロッパにおける職人とデザイナーのこの上下構造、大工さんと建築家の関係と似た構造なのだろうか?

現場での寺西さん(左)と主催者の北林さん。プログラムの内容がイラスト化されている!

 

東洋流の文学芸術の理想は、新しい美を独創するのではなく、古えの詩聖や歌聖が到りえた境地へ、自分も到達すること……という谷崎潤一郎の指摘。日本の産地の職人さんが「無名でいたい」という背景の一部にはこうした美学があるかもしれない。

こうした背景も考慮しつつ、日本の職人さんの地位向上のため、現代にあった無理のない形でフィーチャーしていきたいと思います。

さて、本日は台風10号の影響で新幹線が名古屋~三島間で終日、運休になるため、Kyoto Design Week の本日の登壇はオンラインになりました。私は「そもそもラグジュアリーとは何か?日本の持続的なものづくりとの関連は?」について話す予定です。MIZENデザイナー寺西俊輔さん、伝統産業リデザインのMUJUN小林新也さんとご一緒です。

GQ 10月号 アルチザン特集。 クラフツマンシップとサステナビリティをテーマに斎藤幸平さんと対談しました。本誌をご覧いただけたら幸いです。

栗野宏文さんとsuzusan村瀬弘行さんのトークイベントがニッコースタイル名古屋にておこなわれました。
テーマはエモーション。

面倒なことを時間かけてやることの価値とか、
時を忘れて子供のようにひたすら遊ぶことの価値とか、
訓練されないことの価値とか、トークのあとは音楽好きなお二人によるDJタイム。

日本の伝統工芸を次世代に継承したい!という行政・メディア・経営者・ファンの方々のピュアな熱気が感じられた夜でした(実際、名古屋は暑かった…)。

 

LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン・ジャパン合同会社主催のハイポテンシャル セールス エキスパートの研修で、“What is Luxury? Past, Present and Future” をテーマに講演させていただました。

翌日はレジェンドと呼ばれるトップ・オブ・トップのディスカッションを拝聴しました。

トップ層に行けば行くほど、方法論ではなく人間力を磨く話になってくる。売る人も一流であるからこそ顧客にとってのラグジュアリー体験を作れるのですね。新しい視点を提供していただいた思いがします。

I had the privilege of delivering a lecture on “What is Luxury? Past, Present and Future” at the High Potential Sales Expert training organized by LVMH Moët Hennessy Louis Vuitton Japan.

The following day, I attended a discussion featuring top-tier professionals often referred to as “legends” in the industry.

It’s fascinating how, at the highest levels, the focus shifts from methodologies to personal growth and character development. It’s clear that only first-class professionals can create truly luxurious experiences for their clients. This event provided me with fresh perspectives on the luxury industry.

I would like to extend my heartfelt thanks to Ms. Aya Yamanouchi and the entire team for their tremendous support. Thank you very much!

有川一三さんが「これを読んで人生が変わった」と推薦していた、鈴木鎮一さん著『愛に生きる』を読む。バイオリンの「スズキメソード」の鈴木先生の本。人間が「才能をのばす」ために必要なシンプルな真理が豊富な具体例と共に紹介されていて、心が浄化されていくような読後感がある。盲目のこどもがバイオリンが弾けるようになるまでのプロセスには心がゆさぶられた。

鈴木先生の理想のイメージのなかには、アインシュタインとその知友のグループと共に過ごした体験がある。

人間の理解に基づいた深い思いやりに包まれ、「あの人びとの高い感覚、謙虚な姿、人間への深い愛情を持った人間に育てたい」という夢の実現に、鈴木先生はすべてをかけることになる。

こういう理想を共有しながら才能を育てあう、という社会が実現できたらすばらしいですね。次世代教育においても、企業研修においても、はたまた自身を育てることにおいても、このシンプルな真理を徹底・実践することで才能は自らのびていく。身近な愛に包まれることが、世界平和への最短の道でもある。

この考えに影響を受け世界一のジュエリーコレクターとなった有川さんの例を見ても、グローバル型ではない日本のラグジュアリーを「育てる」(という表現はおこがましいですが)上において鈴木先生の思想は大きなよりどころになる。

『愛に生きる』(講談社現代新書)は1966年発行で現在99刷。

中里唯馬さんが主催するFashion Frontier Program 、セミファイナリストの方々を対象に「新しい時代のラグジュアリー」というテーマでオンライン講演をいたしました。昨年に続き、二度目ですが、内容はこの一年の取材体験をまじえ、アップデートしました。

日本各地から、世界から、ファッションで社会を変えるという勇気と志をもったデザイナーのみなさまが熱心に聴いてくださいましたこと、心より感謝します。質問タイムでも逆に質問者の背景や志を知ることができて、最近の潮流もうっすらとですがわかり、充実した時間でした。こんな若い方々と接すると未来に希望を感じます。

このような教育活動を続けている唯馬さんも尊敬します。ブランドの社会貢献としてのCSRとしても、Yuima Nakazatoの価値観の延長にある活動なので、この上ない効果を発揮しています。パリに向けたコレクションを考えるだけでもたいへんなのに、これだけの労力をかけるなんて立派すぎる。親会社のSpiberも取材していますが、人類を救うという高い志を持って創業したCEOはじめ、すばらしい企業です。Yuima NakazatoもSpiberも目指す方向が北極星のように不動で光輝いているゆえに、応援していて誇らしい気持ちになるし、安心感があります。

 

 

☆西洋型ラグジュアリーの語源から導かれるイメージには

「色欲」(lust) 「繁茂」(luxus) 「光」(lux) がある、と『新ラグジュアリー』の中でも書いているのですが、

日本の取材を重ねて実感するのは、日本型ラグジュアリー(この言葉がふさわしいかどうかはともかく)にはむしろ

「観音菩薩の慈愛」

「空」(くう)

「闇の奥のほの暗い光」

がイメージとして似つかわしいこと。

まだまだ研究途上なので、この領域に強い方にご教授いただきたいです。

 

☆アルビオンアートの歴史的なジュエリーの威力はすさまじく、思考の根底から叩き直されている。

本物のジュエリーは、祈りの結晶だった。コストなんて一切関係なし。純粋な志が結晶して時を超えるジュエリーとして後代まで光り輝く。照らすのは魂、というスピリチュアルな言葉まででてきてしまうほど、光が心のすみずみにまで届く。結果、邪念に気づかされ、浄化される。

上記の「日本のラグジュアリー」の要素に気づかされたのも、有川さんのお話から。「今日から観音菩薩になれ」という一言。感謝することと、他人のために生きるということが幸福の鍵という話から。こういう人は磁場を作るので逆に多くのことを引き寄せるのですよね。源にあるイメージが、観音菩薩だったことに気づかされたのです。

アルビオンアート有川一三さんの講演を聞く機会があった。

世界一のジュエリーコレクターである。何点か持ってきていただいたジュエリーを間近に見たときのまばゆさというか「なんだこれは?!」という衝撃もすさまじかったのですが、それに負けず鮮烈だったのが、有川さんのお話。

心の闇の恐ろしさに向き合うことの大切さを説かれた。そこを突き詰めていくと見えてくる光。それが魂の充足。「ラグジュアリー」の構成要素の光というのは、表層のきらきらなんかではなく、闇を経た後に現れる、魂の充足としての光なんだなということを理解する。

全ての物質は安定の方向に向かい、波動が安定し固く透明になり結晶化が進む。そうして宝石に向かう。想念もそういう方向に向かう、という喩えにも考え方の根底を覆されたような思いがしている。

ほかにも魂に響くというか心を震わせるというか、なんだかとてつもなく崇高な経験をしたような思いを抱かせる言葉が満載だった。偉大なる達成の鍵は志にあり、その志は天の神々が天上にて感嘆絶賛するものでなくてはならぬという教えの尊さときたら。

 

「ハイブランド」がテーマのラジオ番組にお招きいただきおしゃべりしてきました。

笑いの絶えない楽しい時間になりましたが、あらためて実感したのは「普通の人はディオールの創業者のことを知らないし、どのコングロマリットの傘下なのかも知らない」。

ここに寄り添うことを徹底してはじめて「広がり」が生まれるのだな、と。

渋谷にあるスタジオの最寄り駅から3分ほど歩くだけで汗が噴き出す信じられない暑さでした…。(せっかくの記念写真が悲惨な状態に)

 

 

 

*写真は富山の呉羽丘陵フットパスの上からの眺め。歩いてから自分が高所恐怖症気味だったことを思い出す、という冷や汗体験でした。高さは約28mです。

 

 

DESIGN WEEK KYOTO 2024 が8月最後の週に開催されます。

8月31日の「モノづくり対話」第3部で、MUJUNの小林新也さん、MIZENの寺西俊輔さんとともに話をする機会をいただきました。コーディネーターは北林功さんです。テーマは、「モノづくりの持続性:循環の時代に価値を共有し、利益を創出する」。

https://designweek-kyoto.com/dwk2024/

京都にお出かけのタイミングが合いましたら是非お立ち寄りくださいね。

suzusanの2025年春夏展示会。テーマは「プレイ」。ディレクターの村瀬弘行氏が、子供のころの遊びの記憶をもとに有松絞を使って多様な「プレイ」柄をデザインしたコレクションです。

村瀬さんはこんな風に書きます。「ただひたすらに目の前のものに没頭して、何かを学ぼうとか誰かのためにとか、そういう考えから切り離して遊ぶ人間で在り続けたい。遊びは瞑想に通じるものもあるのか、そんな風にさえ思う。一生懸命に自分に素直に生きることは、一生懸命に毎日を遊ぶことのように思えてきた」。

こちらは涼し気なコットンワンピースを着こなすスタッフ、井上彩花さん(左)と杉戸友里さん。

井上さんとは、彼女が経産省のファッション未来研究会のご担当だった22年に知り合いました。研究会の成果を質量ともにすばらしいレポートにまとめられ、優秀な才能にほれぼれしていたものですが、なんと彼女の方も「ラグジュアリー」という概念に触発されてパリへ留学、ラグジュアリーマネージメントを学び始めたのです。行動力にびっくり。帰国して経産省に戻ったのですが、配属部署がファッション関係ではなかったこともあり、日本のラグジュアリーの研究を続けたい、と経産省をやめてsuzusanにジョインしたのです。大胆な決断力にさらにびっくり。

「フランスのラグジュアリーマネージメントは、中野さんが話していたこと(旧型)そのまんまでした…」と語る井上さんの言葉に、強力な味方が生まれた思いがしたりして(笑)。suzusanのモデルとしても完璧です。

右の杉戸さんもユナイテッド・アローズに20年ほどいらしたあと、suzusanにジョインされていらっしゃいます。優秀なスタッフぞろい。

suzusanディレクター、村瀬さんがどのように海外ビジネスを展開するようになったのかについては、こちらの記事にもまとめています。

ゼロニイ8月号掲載の記事がウェブ版に公開されました。こちらでご覧ください。

これまで下請け扱いされてきた地場産業の職人さんにもどしどし脚光を当てていきましょう。すばらしく美しいものを創る彼らが海外ブランドとも同格に扱われ、フェアで敬意のある扱いを社会から受けること。「日本発のラグジュアリー」を考えるには、まずはそこからです。

 

 

 

北日本新聞「ゼロニイ」8月号が発行されました。「ラグジュアリーの羅針盤」Vol. 21は丹後の豊島美喜也さんに取材した記事です。

麻布台ディオール内装のメタリック装飾(トップ写真)はこの方の作品。

ロンドンTOTO。

銀座ロレックスタワーのファサード。

ほか福岡リッツカールトンはじめホテルのアートなど。「丹後のレオナルド・ダ・ヴィンチ」こと美喜也さんは名のあるクリエーターとして扱われるべきなのです。ブランドとの守秘契約などもありません。っていうかなんだよ守秘契約って。

どこであれ産地の職人が海外ブランドとも対等の立場で共働できること。新しいラグジュアリーはそこからだ。

日本経済新聞連載「モードは語る」。本日夕刊では、丹後の「民谷螺鈿」に取材した螺鈿織を見ながら考えたことについて。伝統を未来につなぐには何が必要かを、話を聞き、考えてみました。電子版は有料会員のみですが、こちら

写真はグオ・ペイによる螺鈿織を使った2019年春夏クチュールコレクションです。©Guo Pei.

ブルネロ クチネリが表参道店地下アートスペースで能登・輪島で作られた漆器の展示販売会を開催。

土曜日に開催されたイベントでは、輪島千舟堂の社長、岡垣祐吾さん、塗師の余門晴彦さん、蒔絵師の代田和哉さんのトークと実演。
クチネリジャパンの社長、宮川ダビデさんが「輪島のためになにかできないか」と考えていたところ、ある日曜の散歩中に偶然、千舟堂の東京展示販売会を見つけ、そこからの発展でこの日に至っているとのこと。これぞ引き寄せですね。輪島にも2回、訪れていらっしゃいます。職人とアートを大切にするクチネリならではの支援で、輪島塗の技法ばかりか、現状や現地の人たちの思いも学ぶことができた意義深い日になりました。この道40年以上という職人さんたちのたたずまいも言葉も仕草も、深い味わいがあって、作品と同様、美しいなあ…。
表参道店アートスペースでは、日常に使える食器からハイアートにいたるまで、輪島塗の作品が、鑑賞できるだけでなく、購入もできます! 8月31日まで。ぜひ訪れてみてください。

今回の丹後取材で滞在したのは「かや山の家」。林間学校をリノベした、山の中にある素朴な、本当にシンプルな天空の宿です。ジビエや地元食材を使ったお料理もヘルシーでおいしい。何よりも朝起きて窓を開けたときの見晴らしは心のデトックス効果が高い。永遠に見ていられる佳景です。

 

今回、お世話になった方々とこの宿のレストランで夕食。

丹後織物工業組合の理事長(中央)はじめ今回お世話になったみなさま。

とりわけ北林功さんからは京都や丹後、亀岡まわりのさまざまな企業や地場産業にまつわるエピソードや歴史をふんだんにレクチャーしていただき、脳内アップデートを助けていただきました。時間の単位が1000年、100年なのが京都らしい。100年先を考える習慣、私も身につけたい…

ありがとうございました。

 

麻布台ヒルズのディオールの建築が隈研吾さんによるものと話題になってますが、そのキモとなる流れるような金属の織物素材(写真が紛らわしくて恐縮です。この建築のインテリアに使われています)を作ったのは丹後のレオナルド(ダ・ヴィンチ)こと豊島美喜也さんですよ。銀座ロレックスのファサードも、この方の作品が覆っています。

詳細記事後日。もっと職人にも正当な光を当てていきましょう! 海外ブランドが日本の伝統工芸の何かを使うとき、産地の名前は出るかもしれないけれど、職人の名前までは出ない。いや、出していこうよ。尊敬に値するクリエーターですよ。無名の職人が作ることが良いとされる民藝とはカテゴリーが違います。ご案内くださった北林功さん、豊島美喜也さんと。

丹後の螺鈿を手がける民谷共路さんを取材。きらきら光るものはやはりラグジュアリーの原点なのですよねえ。

そもそも丹後に来るきっかけになったのは、MIZENの展示会でした。螺鈿を使ったとんでもなく美しいアイテムたちを見てしまったことです。天然のきらきらの輝き。これがシルクと調和するとなんともいえない幻想的な作品になる。ぜひ一度、作るプロセスを見たいと思い、MIZENデザイナーの寺西さんにおつなぎいただいた次第です。

民谷さん取材中の光景。ご案内を引き受けてくださった北林功さん撮影。

ルイ・ヴィトン、ディオール、ハリー・ウィンストンはじめ高級ブランドが民谷さんの螺鈿や箔を使った生地で作品を発表しています。詳細記事は後日。しばしお待ちくださいませ。

北林さん、民谷さんと。ありがとうございました!

「ゼロニイ」7月号に掲載された、スパイバー社関山和秀さんのインタビューがウェブでも公開されました。こちらからご覧ください。

ファッションのための繊維は当初の目的ではなかったのですが、まっさきに反応してくれたのがファッション業界であったと。社内ではむしろ「ファッションのような軽いことをしたくない」という反対が起きていたそうなのです。それでも関山さんは、理解してくれる業界があるなら、そこから一緒にやっていけばいいではないか、と。大きな目標を掲げたらその程度の批判は「誤差」でしかなくなる、というものの見方にもスケールを感じたなあ。

人類が奪い合いをする必要のない無限の資源、それを作り出すことで世界平和を目指すという関山さんの志の高さに感銘を受けています。

北日本新聞ゼロニイ 7月号が発行されました。鶴岡市のスパイバー本社に伺い、CEOの関山和秀さんに取材した記事を書きました。

 

関山さんは最高にかっこいい方です。人類にとっての普遍的価値を紡ぎ出す、と決めているのですから。

 

なお、スパイバー社は、日本から唯一オートクチュールウィークに参加するYuima Nakazatoの親会社でもあります。

MIKIMOTOがパリ・オートクチュールコレクション期間にハイジュエリーのコレクション”The Bow”を発表しました。

中央はトルマリン。前後どちらでもつけられるというのもいいですね。後ろにつけたときの、この絶妙なVライン。

伝統のリボンモチーフです。とはいえこの現代性と芸術性とドラマ性はなにごとでしょうか。トップ写真のボディジュエリーのドラマティックな洗練ときたら。

ドラマティックといえば、このジュエリーを引き立てているドレス。オートクチュールデザイナー、Yuima Nakazatoの高度な技術が駆使された一着です。Mikimoto とYuimaのコラボレーション!

こんなふうに分けてブローチとしてもつけられるというのも。モデルが男性というのもいまどきです。2019年前後に、MIKIMOTOとギャルソンのコラボから仕掛けられたメンズパール。ジェンダーフリーの勢いにうまく乗り、いまではすっかり定着しましたね。

写真はすべてMIKMOTO広報部からのご提供です。

 

<よろしかったら、ご参考に>

*MIKIMOTO 2020カタログに寄稿したジェンダーニュートラルのパールの歴史に関する記事はこちら。同記事の英語版もあります。

*Men’sEXに寄稿したメンズジュエリーに関する記事はこちら。(2019年1月)

*Switchに寄稿した男性と真珠に関する記事はこちら。(2020年4月)

*婦人画報に寄稿した、歴史的瞬間を彩ったパールに関する記事はこちら。(2021年6月)

*『「イノベーター」で読むアパレル全史』(日本実業出版社)には創業者である御木本幸吉の生涯に関する項目を書いています。御木本幸吉は私が最も敬愛する実業家のひとりであり、御木本幸吉とMIKIMOTOブランドに関する講演もおこなっています。

SPUR 8 月号発売です。

SPUR初開催のベストフレグランスアワード2024 ss (上半期)。上半期に発売された100種類くらいの香水を試香し、そのなかから部門ごとに選びいくつかについてコメントしました。

それにしても日本でもこんなに多くの香水が発売されるようになっていたのか。たったの半年間ですよ? クリスマスを控える下半期はさらに増えそうですね。

選者それぞれに基準や好みがあるので多様な製品が選ばれているのが興味深いです。

私はエルメスの「H24 エルブ ヴィーヴ」を選んだのですが、基準は「ラグジュアリー(ブランド)のあり方を示している」という点です。これは世界初の最先端テクノロジーを自然と癒合させた新時代のフレグランスでした。「シャネルNO.5」もそうでしたけど、まだだれも使っていないテクノロジーや素材や考え方をいち早くとりいれて伝統に新しい視点をもたらすという姿勢、これがラグジュアリーを謳える最低必要条件になってくると思います(十分条件ではないですが)。

長いコメントが掲載される誌面の余白がなかったので、補足しました。

 

ラグジュアリー論はさておき、やはり個人的な好みの多くはバラ系に行きつきます。現在のヘビロテは先日ご紹介したセルジュルタンスの「鉄塔の娘」。バラのインパクトを強化すべく、飲むバラ水の飲用も始めました(笑)。

ECCIA(European Cultural and Creative Industries Alliance、欧州文化創造産業連合)という組織があります。イタリア、フランス、スペイン、スウェーデン、ポルトガル、ドイツ、そしてイギリスの7か国の欧州メンバーで構成され、ラグジュアリーセクターの共通の価値観をシェアし、協力しています。

英ラグジュアリー統括組織であるウォルポールが、各ECCIAメンバーのCEOを紹介し、それぞれの国のラグジュアリーセクターについて情報を発信しています。以下、翻訳していきます。原文はこちら、ウォルポールの公式HPをご参照ください。

シリーズの最初の回では、ニック・カーヴェルが、フランスのコルベール委員会のCEOであるベネディクト・エピネイさんにインタビューした記事を執筆しています。

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ウォルポール:コルベール委員会について教えていただけますか? 組織には何人のメンバーがいて、会員資格の要件は何ですか?

ベネディクト・エピネイ:1954年にジャン=ジャック・ゲランによって設立されたコルベール委員会は、公益を目的とした非営利団体です。現在、93のフランスのラグジュアリーメゾン、17の文化機関、そして6つのヨーロッパのラグジュアリーメゾンが平等に参加しています。すべてのメンバーが共通のビジョンを共有しています。「フランスのサヴォアフェールと創造を情熱的に促進し、持続可能に発展させ、忍耐強く伝えることで新たな驚きの感覚(センス・オブ・ワンダー)をもたらす」という私たちの存在意義に表現されるビジョンです。この存在意義が私たちの日々の活動の基盤となっています。

コルベール委員会に応募するには、国際的に著名なフランスのラグジュアリーブランドである必要があります。その他の基準は機密事項です。各応募は2名のメンバーによって推薦される必要があり、「最上級のもの」が認められるよう、長期間の審査プロセスを経ます。

ウォルポール:フランスのラグジュアリーセクターの特徴と特質は何ですか?

エピネイ:フランス国内外でこの産業がリーダーシップを発揮し、CAC 40(パリ証券取引所の主要指数)の38%を占めるにいたったのは、数百年にわたる歴史の積み重ねの結果です(パンデミック前は28%でした)。14世紀には、美食とギヨーム・ティレル(タイルヴァンとして知られ、シャルル5世のシェフ)の世界初の料理本の出版に始まり、続いて16世紀にはフランソワ1世の治世下でクラウンジュエリーの確立と宝飾業界の神聖化がおこなわれました。

この歴史は、私たちの名前の由来であるルイ14世の財務大臣ジャン=バティスト・コルベールにより受け継がれます。ジャン=バティスト・コルベールは、王室の工房を創設しましたが、フランス各地に散在するこの工房がラグジュアリー産業の前身となり、今日の私たちの基盤を形成しています。私たちは文化機関と同様に、職人技とサヴォアフェール(匠の技、専門知識に基づく創造性)への情熱を共有しています。今日では、現代性と創造性を注入しながら、業界の長期的な将来に向けて伝統を維持することが必要になっています。

ウォルポール:現在、あなたの国のラグジュアリーセクターにおける主要な話題は何ですか?

エピネイ: 私たちは地政学的、技術的、人材的、環境的に、多くの課題に直面しています。私たちは、メンバー間で競争がない分野、すなわち全体的な利益・関心にのみ焦点を置くことに決めました。次世代の職人の採用、持続可能性、およびフランスや欧州の規制によって業界が脅かされたときの業界防衛に関心を注いでいます。私たちはラグジュアリー業界の未来について団結して考えており、文化と工芸を紹介するために海外でイベントを開催しています。

ウォルポール:フランスのラグジュアリー産業の成長にとって、最大の課題は何ですか?

エピネイ: 直面している主要な課題の一つは、次世代の職人の採用です。私たちの役割は、若い世代にこの職業の魅力をアピールすることです。2022年にStation F(ヨーロッパ最大のスタートアップキャンパス)で開催された若者向けイベント「Les De(ux)mains du Luxe」の成功を受け、2023年12月に第2回目を開催します。4日間、12歳から18歳の若者、その親、教師は、コルベール委員会所属メゾンのサヴォアフェールのデモンストレーションを見学し、さまざまな職業を体験し、学校が提供するトレーニングコースを発見できます。今年は、より多くの若者にリーチするために、TikTokで初のメティエダール(職人技の芸術)・チャレンジを開始します!

第二の課題はエコロジカル・トランジションです。ラグジュアリー産業は模範を示す義務があります。原材料の調達、包装、新技術と新素材の使用から修理やアップサイクルにいたるまで、つまり製品ライフサイクルのあらゆる段階に、私たちのメゾンは深く関与しています。証拠として、コルベール委員会はすでに2つのCSRレポートを発表しており、最新のものはビジネス日刊紙Les Echosと一緒に配布されました。昨年11月には、ユネスコと提携してEarth Universityで初めてこうしたトピックについて発表しました。メゾンの代表とRSEディレクターが行動と考えを共有し、世界中の聴衆に向けて発表しました。最近では、Salon 1,618と提携し、8つのメゾンと共にラグジュアリー製品のライフサイクルに関する円卓会議を主導しました。

ウォルポール:年間を通じて開催する行事のハイライトは何ですか?

エピネイ:コルベール委員会はいくつかの実働委員会から編成されており、それぞれ年に2回会議を開き、その年の主要な課題を話し合います。各委員会はメゾンの代表が率いています。その後、その年の主要課題を推進するプロジェクトグループを決定します。こうしたことは、メンバーの希望や機会に応じて毎年異なります。

主要プロジェクトに加えて、コルベール・ラボのような毎年恒例のテーマもあります。コルベール・ラボでは、毎年、若い才能が、与えられた課題について考察します。また、ENSAAMA(国立装飾芸術学校)と提携したシャイア・コルベールは、過去12年間、マスター2の学生に、各メゾンから提案されたデザイン課題に取り組む機会を提供しています。

最後に、年間を通して、HR、ESG、コミュニケーション、公共政策などの専門分野に基づいて、メゾンの従業員のネットワークを導いています。優れた実践例について話し合う機会を生むと同時に、共同イニシアティブや特別なイベントも生まれています。例えば、イヴ・サンローラン博物館やカルティエ・ジュエリー・インスティテュートへの訪問、ブシュロンやブレゲによって組織されたヴァンドーム広場の遺産に関する会議などです。

ウォルポール:CEOとしての任期中で最も誇りに思った瞬間は何ですか?

エピネイ: 誇りに思った瞬間は数多くあります。過去3年間には多くの「初」がありました。新しいウェブサイト、反省と見通しツールを兼ね備えた年次報告書、2つのCSRレポートの発表、そしてユネスコとのEarth Universityへの参加などです。最も感動的だったのは、2022年12月にStation Fで開催された「Les De(ux)mains du Luxe」イベントで、3日間で4,300人が来場しました。3人の大臣も参加し、次世代に熟練の職業を見て体験する機会を提供できた、感動的な機会でした。

ウォルポール: ECCIAのような組織が重要である理由は何ですか?

エピネイ: 規制の数が増加している中、ブリュッセルでロビー活動を行うことは重要です。こうした規制は、私たちのメンバーのビジネスモデルに影響を与える可能性があります。ヨーロッパ全体のラグジュアリーセクターの集団としての声を伝えることが重要です。こゥした活動によって、コルベール委員会が創設メンバーであるECCIAは重要な連合となります。

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翻訳は以上です。ラグジュアリー業界になじみのない方のためにポイントだけお伝えしますと、以下の通り。

☆コルベール委員会とは?そのメンバーシップとは?

1954年に設立された非営利団体で、フランスのラグジュアリーブランドを中心に組織されている。メンバーシップは国際的に著名なフランスのラグジュアリーブランドに限られ、メンバーになるには厳格なプロセスを経る必要がある。

☆フランスのラグジュアリーセクターの特質とは?

数百年にわたる歴史があり、14世紀からのガストロノミーや宝飾品の発展に起源を持っている。ジャン=バティスト・コルベールが王室の工房を設立し、フランス全土に広がる職人技の基礎を築いたことが、現在のフランスのラグジュアリー産業の基盤となっている。

☆現在の主要な課題は?それに対して何をしている?

ラグジュアリー業界は、次世代の職人の採用や持続可能性、フランスおよび欧州の規制に対する業界の防衛など、多様な課題に直面している。それに対し、若者向けのイベントや職人技のプロモーション活動を通じて、次世代の育成にも力を入れている。

☆エコロジカル・トランジションに関しては?

ラグジュアリー業界はエコロジカル・トランジションの模範を示す義務があり、原材料の調達からアップサイクルまで持続可能な方法を追求している。

ECCIAの重要性とは?

ECCIAはヨーロッパ全体のラグジュアリー業界をブリュッセルで統合・代表する連合であり、規制の影響を受けるメンバーのビジネスモデルを守るために声を上げている。

(写真はPortrait of Jean=Baptiste Corbert 1666頃。Public Domain)

 

☆カキモトアームズ青山店の西岡さんが「今日の服にはコレです」と有無を言わせず作ったヘアです。

顧客の意見をきかず、むしろ提案、啓蒙する。そのくらいのサービスを提供してくれるからこそ高い価値がある、ということはいろんな場面で見られますね。

「ラグジュアリー」として高い価格を張れるのは、顧客の想定外を出してくる啓蒙型です。顧客の思い込みをむしろ打破して「こうきたか!」と驚かせることができるか。

エルメスも「マーケティングをしない」ことが知られていますね。

 

☆先日のカルティエ展覧会での驚きのひとつは、北野武さんの絵画がたくさん展示されていたこと。なにをやらせても一流なのですね。この方の、芸術の本質を見抜く力がよくわかるのがForbes Japan 掲載の記事

「本当の伝統のよさ」について語っているのです。以下、引用します。

「例えば、なんで俳句や短歌の七五調はこんなにリズムが心地いいのか。綾小路きみまろと川柳をやったとき、オイラは『5・7・5って素数じゃないか』と思ったんだ。5も7も素数。足しても素数。短歌もそう。5+7+5=17、5+7+5+7+7=31、どっちも素数なんだ。「古池や」に続く「蛙飛びこむ 水の音」の7・5は割り算では割れない。「古池や」以外の言葉じゃありえない。

で、奇数を足していくと二乗になる。1+3=4(2の二乗)、1+3+5=9(3の二乗)、1+3+5+7=16(4の二乗)。

これを映画に置き換えてみると、シーンを1秒撮って、次のシーンが3秒、5秒と足していくと、奇数だけ足して二乗になる。映像が倍返しみたいになって、心地よい「間」が生まれるんだ。漫才もそうでさ、奇数と偶数のかけ合いになると間が悪くなっちゃう。

尺の違いに着目して、居合いみたいに間合いを詰めていったら、単なる笑いじゃなくて二乗の笑いが爆発するかもわからない。いままで誰もつくったことがない「二乗のリズム」が映画に生まれるかもわからない。革新の発想だよね。」

まさか、俳句や短歌と映画のリズムの心地よさが「素数」でつながってくるなんて。こういう意外なことがつながる快感が、北野さんの描く絵にもあるんですよね。

 

そういえば、銀座に北野武さんの絵画がたくさん飾られている喫茶店があるんですよ(神田神保町にも支店があるそうです)。陶磁器もヨーロッパの一流ブランドがそろっていて、オーナーの趣味の良さを感じることができます。インバウンド勢に蹂躙されたくない(ゴメン)お店です。

斎藤幸平さんと対談のお仕事でした。駒場の斎藤さんの研究室にて。

大昔にトータル20年ほどお世話になった駒場はずいぶんきれいになっており、一方で昔のまんまという場所もあり、歩いているうちに眠っていた記憶の扉が開かれるような不思議な感覚がありました。

私はいったい何をしているのだろう。過去に夢見たこととのギャップをつきつけられ、こんな迷子感(と少しの絶望)に襲われたことはありませんか? 

東洋経済からご依頼を受け、最近のラグジュアリーファッションの動向をまとめてみました。

「『カルチャー帝国』築く高級ブランドのしたたかさ」というタイトルの記事になっております。

もちろん、ファッションに疎いという読者のためにやや煽情的?なタイトルになっており、文章も平易にトリミングされております。(それがよくないというわけではなく、一般読者にお読みいただくにはこのようなプロセスを経るのが通常ということかと)。

私のオリジナルのテキストは、こちらです。3700字くらいですが、情報量も多めです。ラグジュアリー業界を見る解像度(!)に慣れていらっしゃる方はどうぞこちらのオリジナルバージョンをご参照ください。

今回の旅の目的はスパイバー社ラボ見学&CEO関山和秀さんインタビューでした。

次世代の環境にやさしいブリュード・プロテイン・ファイバーという観点ばかりで見ていたのですが、関山さんの構想は全くスケールが大きく、見え方が一変しました。バイオにより本質的に人類の未来を考えていらっしゃいます。これだけの世界観を言葉で伝えきることができるのかどうか、不安も生じるくらいですが、じっくりお話を聞くことができて本当によかった。詳細は後日に。

たまたま、スパイバー海外部門の社員の方が「英和ファッション用語辞典」(研究社)を読み込んでくださっており、仕事にとても役立っている、とお伝えくださり、求められて辞典にサインさせていただきました。はるか昔に苦労していた仕事ですが、報われました!

今年1月の京都でのZETサミットがご縁になり、訪問が叶いました。広報の浅井茜さんには大変お世話になりました。ありがとうございました。

「ラグジュアリーの羅針盤」、Tagiru.の回、ウェブ版で公開されました。

心は満たすものでも火をつけるものでもなく、本来の自分に戻ればおのずと「たぎる」もの。

「ラグジュアリーの羅針盤」Vol. 18は、スリランカでアーユルヴェーダを施すホテルを営む伊藤修司さんの起業ストーリーです。

身体をまるごとリセットして「生きること」を問い直した方、ぜひ訪れてみてください。

麗しく藍の5色グラデーションを形成する靴下は、いわき靴下ラボ&ファクトリー製です。藍染工房Watanabe’sとのコラボで、ケミカル不使用。糸は最高級のエジプト綿GIZA45を使用。
色目もさることながら、肌に触れたときの感触がとろけるようです。桐の箱に丁寧に入れられ、真田紐で結ばれて届きました。一足一足を心を込めて作っているいわきラボのみなさんのお顔が思い出され、あたたかさが心に広がります。靴下で驚かせ、感動させるって、なかなかできないこと。

いわきラボ取材記事はこちらです。

GQ 誌上でのDavid Marxさんとの「現代のジェントルマン」を考える対談が、全文、ウェブでも公開されました。

最新のイギリスメンズファッションの動向、日本の「紳士的」ビジネス、グローバル資本主義の価値観の次を提示する日本の伝統産業まで話題がつながっています。どうぞご高覧ください。

対談をまとめてくださった平岩さん、編集部の高杉さん、イラストレーターのNaoki Shoji さんにあらためて感謝します。

ケリング社名変更10周年おめでとうございます。記念の社史本をご恵贈いただきました(多謝)。1962年の木材業界進出から現在までを写真とテキストで力強く綴る豪華な一冊です。ラエネック病院改装本社でピノー氏にインタビューした6年前がのどかな大昔のように感じられます。ここまで時代が変わるとは。はたして6年後の未来、私たちはどうありたいのか? 

(2018年5月のパリ)

きものやまと社長、矢嶋孝行さんにインタビューした北日本新聞「ゼロニイ」連載記事が、ウェブ版に公開されました。

英語版も公開しています。

愛子さまがジュエリーをご愛用ということでがぜん注目を浴びているミキモトですが、製品としての完成度の高さ美しさは言うまでもありませんが、そもそも海産物のなかから一番高く売れるものとしての真珠に目をつけ、ならば養殖真珠を世に出そうというトンデモ発想を抱き、12年以上かけて真珠の養殖に成功し、国際社会からの「養殖真珠はにせもの」という総バッシングにもめげず7年かけてパリ裁判を闘い勝利を獲得し、「贅沢は敵だ」の第二次世界大戦の危機を耐え抜いた真珠王、御木本幸吉のことにも思いを馳せてほしいなと思います。高貴な輝きの真珠にひけをとらない、強くてしなやかで尊い御木本幸吉のスピリット。

銀座・ミキモトビルの前を通るたび、幸吉さんの屈託のない笑顔とユーモアあふれる言葉を思い出して元気になれるのです。

詳しくは拙著『「イノベーター」で読むアパレル全史』でも項目を立てて力説しておりますので、お読みいただければ幸いです。

 

「婦人画報」5月号発売。画報ではほぼ10年ぶりの香水特集が掲載されています。なので「再びのフレグランス道」というタイトルがついてますが、特集の巻頭でインタビューを受けました。歴史から最近の潮流まで、時代とフレグランスの関係を中心に解説しています。新しい季節の香水選びのご参考になれば幸いです。

北日本新聞「ゼロニイ」連載「ラグジュアリーの羅針盤」Vol. 17。きもの「やまと」のパリ進出について、社長の矢嶋孝行さんにインタビューした記事です。

伝統文化に高い価格をつけて売る、という最近の風潮に矢嶋さんは抵抗します。「文化を楯にしたくはありません。私たちは伝統文化を着るために生きているのではありません。着たいと思ったものが文化になっていく」という言葉にはっとさせられます。

ほぼ一週間後、ウェブ版にも掲載されます。同時にnoteで英語版を掲載します。

 

日経新聞夕刊連載「モードは語る」、本日は、アリッサ・ハーディが念願だったキャリアと引き換えに業界の暗部を暴いた渾身のルポ『ブランド幻想』について書いています。

紙版、電子版、ともに掲載されています。電子版はこちら(会員限定公開)。

インフルエンサーに対しても、ご自分の影響力がどのように行使されるべきなのか、もっと責任を自覚すべきと促しています。

ファッションのキラキラした面はすてきですが、それを支える労働者がどのような扱いを受けているのか。知ってしまったら、商品を見る目も変わらざるをえないところがあります。

第10章は、私が遭遇したのと似たような経験が書かれていて、同情の涙なしには読めませんでした。社会正義の側に立とうとすれば、保守勢力から痛い目に遭うのは、どの領域でも変わらないですね。でも新しい味方がもっと増えているはず。アリッサの勇気を讃え、応援します。

「エルメス」が、「バーキンが買えない」とアメリカの消費者に提訴されたというブルームバーグの報道について、NewsPicksにコメントしました。会員でない方のために、以下にも掲載しておきます。

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そんな訴訟を起こされたらますますバーキンの価格が上がりますね(笑)
そこまでして欲しがられるというコンテクストを作ったブランディングはさすがエルメス、あっぱれです。

バーキンはもはや「バッグ」というカテゴリーを超えた神秘の偶像のようになっていますね。それはそれでブランディングの成功なので、良いことだと思います。自身のブランディングを主体的に、戦略的に貫くエルメスはリスペクトします。

ただ、これを買うために、「購買実績」を積み上げて、ようやく「購入させていただく資格をいただける」「購買を許可していただける」ことをありがたがる従属的な消費者って、天の視点から見ると、どう見えるのか。中古で高く売れる資産にもなるからなりふりかまわなくなるのか。偶像崇拝のあやうさと滑稽さを見る思いがします。

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自分の欲望の正体を今一度、頭を冷やして見つめてみたいものです。稀少性を高める、偶像化する、階級を与える、というのはラグジュアリー・マーケティングの定番的戦略であり、これはこれで成功させるのが難しいので、成功させたブランドはリスペクト、です。消費者がそこに従属的に盲目的に巻き込まれるのか、戦略を理解してその物語に参加するのかでは大きな違いがあります。主体性を貫いてそこには参画せず、自分が勝てる別のコンテクストを創り上げる、というのが最もかっこいいあり方だ、とは常々思っています。

日経連載、2月24日夕刊はバイオ繊維の可能性について書いています。機能性ばかりが追求されがちなバイオテクノロジー最先端の新素材ですが、新しい次元の美しさや情緒を切り開く可能性にも期待したいところ。

先日の京都府のZET summit 2024での議論の一部です。京都府、スパイバー社長関山さん、京都大大学院沼田教授、中里唯馬さんに感謝します。

写真は、Yuima Nakazato 2021より。ブリュードプロテインを西陣織に織り込んだ生地を用いています。写真だけでも幻想的な美しさが伝わりますね。

電子版は有料会員限定ではありますが、こちらでご覧いただけます。

唯馬さんはスイスにしばらく滞在し、オペラIDOMENEOの衣裳制作に携わっていらっしゃいました。一年がかりで準備されてきたプロジェクトが無事に22日にプレミアを迎えることができたそうです。このオペラが日本にも巡回することを願っています。

北日本新聞「ゼロニイ」発刊されました。連載第16回は、ラグジュアリーとまちづくりの関係について。

大量生産の世界で欠点とされた要素が、ラグジュアリーの世界では長所として生きる。こういう考え方にどうしようもなく魅了されます。

講演にご協力くださった高松太一郎さん、松井紀子さん、ありがとうございました。

2023年10月8日に富山・砺波の散居村の文化的景観を守るためのセミナー講演の内容が文字化されました。こちらでお読みいただけます。

セミナー後半の質疑応答はこちら

 

このセミナーの模様はNHK富山のニュースで放送され、北日本新聞にも掲載されました。

京都府主催のZET-summit 2024に登壇しました。「産学公で挑む技術革新 ゼロカーボンバイオ繊維はファッションの未来をどう変えるのか?」というセッションで、細菌を使って空気から作る「エアシルク」を開発した京都大学大学院教授の沼田圭司さん、プロテインファイバーの領域ですでに成功しているスパイバーの社長、関山和秀さんとご一緒させていただきました。

このイベントに向けてかなり時間をかけて下準備したのですが、当日、ハプニングがあり、終了時間の15分まで「あと5分」の音が鳴り、急いで途中を端折ってまとめに入ったところ、横からスタッフがいらして「あれは間違いでした」と。また端折った部分に無理やり話をつなげてなんとか場を持たせたのですが、ひとえに沼田先生、関山先生の的確で濃いお話のおかげでした。シナリオ通りにいかない場合に柔軟に対処できる胆力を鍛える必要を痛感した次第です。

よいチャレンジの機会を与えていただいた京都府のスタッフのみなさまに心より感謝いたします。また、この日はスパイバーのブリュードプロテイン×ロンハーマンのフーディーを着用させていただきました。近未来的な乳白色を活かすのは白コーデだと思い、全身白でまとめてみまひた。しっとりとやわらかい繊維で、着心地抜群です。

終了後に登壇者と記念撮影。左が沼田先生、右が関山さまです。下は会場になった永森重信市民会館。昨年できたばかりのすばらしい施設でした。

 

このセッションのために、多くの気鋭のデザイナーにヒヤリングをしました。印象的なお答えをくださったのは中里唯馬さんでした。「脱酸素というと機能性ばかりが重視されるが、これまでにない美しさを創造できる可能性がある」という趣旨のコメントで、実際、細尾の西陣織にプロテインファイバーを織り込んだ作品を作っていらっしゃいました。こちらも投影させていただきました。グレースーツの男性がずらりと並んでいたビジネスビジネスした会場で、ファッションデザイナーからの「美」に関する提言は想定外だったようで、すばらしい説得力がありました。スイスでオペラの衣装制作中の唯馬さんですが、ご多用の合間を縫って丁寧にご対応くださいました。心より感謝いたします。

 

 

日本経済新聞連載「モードは語る」。27日夕刊では、伝統工芸ディレクターの立川裕大さんに取材した記事を書いてます。有料会員限定ではありますが、電子版ではこちらでお読みになれます。

GPネットワーク主催「まちづくりセミナー2024」で講演しました。富山市図書館にて。新ラグジュアリーの考え方がどのようにまちづくりと関わってくるのかを話しました。トップ写真中央はGPネットワークの代表、橘泰行さんです。左が富山に移住したクチュリエの高松太一郎さん。オーディエンスには市会議員の方々や各自治体の関係者、富山の企業の社長さんたちがずらり。翌日には新田・富山県知事からも「ご講演ありがとうございました」とメッセージをいただきました。光栄です。

富山市図書館も地震の被害にあいました。蔵書がすべて落下し、展示するガラス作品の一部も破損。すべてを元に戻し、図書館を再開したのが1週間前の17日でした。大変な状況のなか、あたたかくお迎えいただきましたことに心より感謝します。まだ復興途上にある氷見地区はじめ、能登半島の被災地のみなさまに心よりお見舞い申し上げるとともに、一日も早い復興をお祈り申し上げます。

講演で着用したのは、高松太一郎さんの作品です。ユーズドデニムを使い、ディオールのアトリエで鍛えたテクニックで美しいラインに仕上げてあります。

隣のトルソーのドレスは、松井機業の「しけ絹」を使った高松さんの作品です。

オーディエンスのなかに6代目・松井紀子さんのお顔も見えたので、急遽、少し話していただきました。

盛況のうちに無事終了しました。ありがとうございました。

*翌朝の読売新聞(富山版)に掲載されました。

北日本新聞「ゼロニイ」本日出版されました。連載「ラグジュアリーの羅針盤」Vol.15は、いわき靴下ラボ&ファクトリーに取材した記事です。2~3週間後にウェブ版にも公開されます。

過去の本連載はこちらですべてお読みいただけます。

おもに富山のみなさまへのお知らせです。1月27日(土)、富山市図書館でまちづくりセミナーの講師を務めさせていただきます。ぜひご参加を。お待ちしております。

 

首都圏のJR東日本10線、ゆりかもめの車内のデジタルサイネージで日本のラグジュアリーについて語っております。18日(木)~21日(日)まで。

NewsPicksの番組The Updateに出演したときの映像の一部です。JR東日本にお乗りになる機会がありましたらドア上サイネージをちらっと見てみてください。

無音で字幕だけが流れることもあり、早速誤解された方もいらっしゃったので、補足しておきます。ここで話していることは、

・ヨーロッパは階級社会だったので農民発のものはラグジュアリーになりえない

・しかし日本の農民発のものは知的な思想や技巧があるもの多く、新しい視点をもたらして次世代のラグジュアリーになる可能性を秘める(だからあえて青森の庶民発のこぎん刺しを着ている)

上の部分の字幕だけ切り取って見て「農民を侮辱している」と勘違いされた方がいらしたのです。ストーリーを全部見ていただけないのはデジタルサイネージの弱みですね。めげずに発信します。

 

今週はラグジュアリー祭りでした。おつきあいありがとうございました。来週からがらっとテーマが変わる仕事が続きます。

WWDラグジュアリー特集号 インタビューを受けた記事のウェブ版が公開されました。会員でない方は「0円」を押すと、この記事だけ無料でご覧いただけます(期間限定かもしれません…その場合ご寛恕ください)。

Forbes Japan 連載 Post Luxury 360° 更新しました。「ニセコにルイ・ヴィトン。グローバル資本と日本の『さまざまな現実』」。

3年ちょっと書いてきた連載ですが、私のみ、今回で引退いたします。ご愛読に感謝します。ミュンヘン在住の前澤知美さんにバトンタッチし、連載は続きますので、引き続きご愛読をよろしくお願いいたします。

ラグジュアリーに関しては引き続き、多様なメディアで発信していきます。

ゼロニイ連載「ラグジュアリーの羅針盤」。宮古島で生産される宮古上布を取材した記事、ウェブ版が公開されました。「高齢女性の価値を高める宮古上布」。

新里玲子さんにご協力を賜りました。とても笑顔の美しい方で、高齢者ほど価値が上がる宮古上布の世界のお話を伺いながら私まで元気をいただきました。ありがとうございました。

 

5か月ほどHPにデータをアップロードすることができない状態が続いていました。サーバがこれ以上のデータを受け付けなくなったためです。それで、データ丸ごと大引っ越しをしまして、ようやく完了いたしました。新しいサーバじたいの容量はかなり余裕がありますが、空白の5か月間のデータを埋めていくのにもう少し時間がかかりそうです。合間をみながらアップロードしていきます。

また、お引っ越しに伴い、メールアドレスも変更になります。これは今月いっぱいかかるかもしれませんが、お仕事でご縁をいただいている皆様にお知らせするとともに、公開しておりますお問合せ用メールアドレスも変更いたします。

X(旧ツイッター)やインスタグラムには掲載記事、公開記事の情報、イベント情報を随時お知らせしております。

引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

 

さて、早速ですが、公開記事のお知らせです。NewsPicksで、クワイエットラグジュアリーのトレンドと、それが日本の伝統技術や繊維産業に及ぼす(よい)影響について解説しています。会員限定で恐縮ですが、こちらからお読みいただけます。

 

NewsPicks ニュース解説「アパレル超え急成長『ブルネロ クチネリ』とは」に出演しています。会員限定で恐縮です。

クワイエットラグジュアリーの解説から始まり、追い風が吹いている日本の伝統産業の発展の可能性について話しています。

イギリス大使館ビジネス・通商部門主催 ウォルポール&イギリスブランドの日本マーケットの研究会で講演しました。

“Redefining Luxury: Bridging Cultures and Embracing New Narratives in the World of Fashion” というタイトルで、日本のマーケットでは英国文化への愛が英国ラグジュアリー製品の購入を支えている旨や、変わりゆくラグジュアリーの意味の話をしました。

全文を、こちらに掲載しました。

noteをこのスピーチ原稿掲載のために始めました。英語化した記事だけアップしていきます。英語化する時間を確保するのがなかなか困難で、とても散発的になるとは思いますが、noteのほうもどうぞよろしくお願いいたします。

水と匠主催、散居村の保全を考えるセミナー「人と自然がつくり合う価値の再生へ」において講演しました。となみ散居村ミュージアムにて。

富山大学の奥教授が文化的景観について講演、その後、私が変わりゆく豊かさの基準として新ラグジュアリーについて話しました。その後、「水と匠」の水口砂里さんをまじえてのトークセッションでした。文化的景観と新ラグジュアリーの考え方は方向が一致するんですよね。嬉しい発見でした。

翌日の北日本新聞で掲載いただきました。

 

 

NHK富山でもニュースとして放映されました。

楽土庵に泊まりました。3室だけの、それぞれに趣旨を極めたアートホテルです。

5月にファッションビジネス学会の講演にお招きいただいたときに提言したことがきっかけになり、この学会にラグジュアリービジネス部門が設置されることになりました。そのキックオフを兼ねた「装談」のトークイベント、「これからの日本のラグジュアリー」です。台東デザイナーズ・ヴィレッジにて。

トップ写真左はsuzusan村瀬弘行さん、右はMizenの寺西俊輔さんです。私がMCを務める形で、新ラグジュアリーについて若干のレクチャーをさせていただいたあと、お二人それぞれにお話しいただき、最後に会場からの質問に答える形でトークセッションがおこなわれました。

私が着用しているのは、村瀬さんのお父様が作った絞り染めの生地を、寺西さんがデザインしたセットアップです。

この日の内容を、記事化しました。

JBpress autograph その1「日本独自のあり方とは? 海外だけのビジネスを展開した有松絞り

JBpress autograph その2「『職人こそがブランド』 伝統工芸をラグジュアリーに昇華する、MIZENの革新性

JBpress autograph その3「日本のラグジュアリーの未来、ブランドロゴより重視される職人の仕事と価値

中里唯馬さんが運営する「ファッション・フロンティア・プログラム」にお招きいただき、新ラグジュアリーの講演をさせていただきました。参加者の方には海外の方も数名いらっしゃいます。

社会的責任と創造性をあわせもつデザイナーの育成、というプログラムの趣旨は、新ラグジュアリー的な世界観と重なります。中里さんによる、未来を見据えたグローバルスケールでの教育的活動、応援したいと思います。

NewsPicksではプロピッカーを務めておりますが、以下、本日ピックしたニュースにつけたコメントです。高校生にも話すことでもあり、過去のエッセイにも書いておりますが、転載し、補足をつけます。

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文章を書く仕事をしていますが、高校は理数科でした。いまの仕事に最も役に立ったのが数学です。

ひとつの数学の問題を解くのに、黒板いっぱいに数式を書いて正解を導いても、それは「エレファント」として却下されました。問題の本質を捉えてすっきり一行でおさまる数式を書いたとき、それがエレガントな解として認められたのです。「E=mc²」みたいな解ですね。

ファッションや生き方、文章におけるエレガンスも同じことかと気づいたのは、ずっと後になってからのことです。Eleganceは、Election (選挙)やElete(選び抜かれたエリート)と同じ語源から発生しています。選びぬくことがエレガンスの本質。つまり、必要な要素だけを選び抜き、本質をシンプルに表現することがエレガンスですが、それを教えてくれたのは数学だったのです。

直接、役に立たないように見えることでも、敬意を持って向き合ってみることで、あとから予想を超えるところで影響がもたらされることの醍醐味、こと数学にかぎったことではありません。何かを短絡的に役に立つ立たないの基準で切り捨てることは、未来の豊かな可能性をみずから切り捨てることと同じで、もったいないことと思います。

 

☆☆☆☆☆

これまでのささやかな経験を振り返っても、チャンスや転機はまったく予測もつかなかった過去の「圏外」の領域から飛んできました。共通するのは、当時「無関係」に見えていたとしても、決して排除したり軽視したりはしなかったということ。今日向き合うことや出会う人が、未来の可能性の種になるという確信は強くなっています。人に対してひどい態度をとれば利息付きで報いが返ってくるだろうし、敬意をもって接すれば(媚びることとは全く違います)遠い未来に思ってもみなかった恵みが降り注いでくることもあります。

 

ソーシャル・コーヒー・ハウスにお招きいただき、令和時代の新ラグジュアリーについて講演しました。オーディエンスは20代から30代、新ラグジュアリーととても相性のいいコミュニティでした。

たくさんの質問、コメントをいただきました。「日本はもうダメなんじゃないかという絶望感がありましたが、日本発のラグジュアリーを世界に届けるためにがんばっている人たちの話を聞いて希望がわいてきた」というのがあって、かえって衝撃を受けました。若い人に絶望感を与える社会ってなんなのか? 大人はそれでいいのか? 自分の利権ばっか、縄張りばっか大事にして、次世代から希望を奪うってなんなのか?

理想論すぎるのは重々承知の上で、私みたいな何の利権も権威もない人間が理想を語っていかないとダメなところまで日本は来ているのか?

権威のある偉い人は、若い人に希望を持たせる振る舞いもノーブレス・オブリージュとして遂行してくださるよう切に願います。

日本の未来、あなたの未来は大丈夫だよと明るい方向を示すこと、それも大人の義務なんじゃないかと気付かされた時間でした。

オーガナイズしてくださいましたソーシャル・コーヒー・ハウスのスタッフの皆様、メンバーの皆様に感謝します。

北日本新聞「ゼロニイ」連載記事、最新のエッセイがウェブ版に転載されました。富山のローカルコミュニティで生まれつつある新しいラグジュアリーの兆し。

7月31日18:00~ Social Coffe House にお招きいただき、新ラグジュアリーについて話します。オンラインです。

詳細、お申込みはこちらから。

きもの専門店やまとが、賃金問題はじめ伝統工芸をめぐる社会課題解決のために龍郷町と「ソーシャル・アクション・パートナー」協定を結んだことについて、29日付けの日経連載「モードは語る」で書きました。社長の矢嶋孝行さんに取材しました。

企業と自治体、できないことを補いあいながら大島紬を未来に繋ぐ努力をしています。産地の職人、都心のビルで働く社員、関わる人みんなが幸福であることが「新ラグジュアリー」的スタンスです。「それを作った職人は幸せであったか?」まで考えるラスキン的立場。

電子版はこちらです。

北日本新聞「ゼロニイ」8月号が発行されました。連載「ラグジュアリーの羅針盤」Vol. 9は「ママ振スーツと沙羅の花」。

エレガンスと車の歴史の前口上から始まりますが、富士スピードウェイホテル&モータースポーツミュージアムの取材記事を書きました。JBpress autograph の連載です。
お時間ゆるすときあればご笑覧くださいませ。
「富士スピードウェイホテルで深まる、ラグジュアリーとモータースポーツの関係」

アンチエイジングをはじめとする予防医療も、マーケティング的な意味での「ラグジュアリー領域」に含まれます。

ペニンシュラホテル4階にある9ru clinicで話題のNMN吸引療法を試す機会をいただきました。クリュと読みます。グランクリュのクリュ。

NMNはテロメアに働きかける、もともと体内にあった物質で、アンチエイジング、若返りに効果を発揮するそうです。発見したのは日本の医師。現在、「食品」扱いですが、サプリ、点滴などの形で多くのクリニックが採用していますね。こちらのクリニックは吸引という方法を考案しました。鼻から脳の視床下部にダイレクトに届き、代謝やホルモンバランスにすみやかに働きかけるとのこと。

ペニンシュラホテルの部屋の延長のような感覚の個室で30分。終了したら視界がくっきり明るく見えやすくなっていたのが驚きでした。(肌のアラなどがくっきりわかるのでショックも伴う!)

サプリなどで継続的に取り続け、ブースト的に吸引を取り入れることがお勧めだそうです。なんでもそうですが、続けることが大切ですね。お向かいには人間ドックを受けられる姉妹クリニックがあります。こちらもペニンシュラのテイストと矛盾しない雰囲気。9ruは基本、会員制ですが、インバウンドの宿泊客にも利用されているとのこと。日本の最新の予防医療を体験するプラン、なるほど!でした。「ラグジュアリー」カテゴリーのホテルが予防医療や美容皮膚科、人間ドックを併設するのがあたりまえ、という時代になりましたね。モノは要らない、健康に投資したい、という願望が見えます。

News Picks The Update に出演しました。

後半にお話ししたのが日本の庶民発のラグジュアリー。着ていったのは、青森のこぎんざしをフィーチャーしたMizen の服です。こぎんざしは、麻しか着られなかった津軽の農民が、防寒と生地補強のために粗い布目に糸を刺していったことから始まりました。

紬もそうですが、庶民の知恵と工夫と卓越した技術が貴重な伝統工芸になっている。そもそも高級な素材を使っているわけではないのがポイントです。高級素材は高級素材として王道的に素晴らしいのですが、それ以外にもやり方がある、ということです。Mizenの寺西俊輔さんはそうしたやり方を、ラグジュアリー製品を作る日本ならではの職人技術として世に問うています。

「弱者」を救う視点が新ラグジュアリー的です。

ご教示、ご助言いただきました寺西さんとモリー、そしてMizen出資者の珠代さんに感謝します。
NewsPicks スタッフのみなさま、ありがとうございました。

NewsPicksの番組 The Updateに出演します。25日22:00~23:05。いつも完全に眠っている時間なのですが、昼間に仮眠とってお伺いする予定(眠れるかなあ…)。

すごい方々ばかりで辞退しようとも思ったのですが、勉強させていただくまたとない機会と思って臨むことにしました。恥をかいてもそれはそれで後日ネタにすることにします(笑)

やまと2023秋冬展示会にお招きいただきました。伝統的なきものも美しく展開しているのですが、Double Maison や Nadeshiko 、Y & Sons といった各ブランドの斬新な解釈にもワクワクします。総レースのきものは同色の帯と合わせてドレス感覚で講演の機会などに着てみたい(スポンサー大募集(笑))。

インバウンドの延長で、広義での日本のファッションにも関心を引きつける大チャンスが到来しています。きものの可能性はこれからますます開花しますね。
大島紬をめぐる地域との協力のお話が興味深く、近日中に記事化します。

Forbes Post Luxury 連載更新しました。「非日常で贅沢な冒険こそが『究極のラグジュアリー』なのか?」

一部富裕層の間で流行している「エクストリーム・ツーリズム」について考えてみたくて書いてみました。後半の安西洋之さんによるアンサーが新ラグジュアリー的です。いっときの対処療法的な刺激ではなく、日々の生活に生活や冒険を持ち込むことができるという選択肢の提示。

 

写真は久々に出かけた軽井沢。涼しいところで仕事を集中的に終わらせる目的でしたが、横浜より暑いし東京より誘惑が多い。ここはもはや「避暑地」ではないのですね。脳内に「避暑地」を創る工夫もしてみようと思います(笑)

イギリスの老舗香水ブランド、クリードが日本でも8月30日より発売されます。川辺株式会社が日本国内における独占輸入販売権を取得しました。

クリードは1760年、ロンドンのテーラーがジョージ3世に香り付き革手袋を届けたことから始まっています。いま、ブランドはケリング傘下に入りました。

発表会は6月におこなわれたのですが、情報解禁を待って公開いたしました。下の写真はサラ・ロザラムCEOを囲み、ヘアサロンAMATAのオーナー、美香さん(左)と美容ジャーナリストの松本千登世さん(右)と。会場はフォーシーズンズ東京。

Vulcanize London にお招きいただき、チャールズ国王の愛するメニューをいただきながら、皇太子時代のチャールズに8年間仕えた経験をもつフェイフェイさんの話を聞くというランチョンに参加しました。メゾン・デュ・ミュゼにて。

リアルな宮廷のお仕事の話や、フェイフェイさんが現在日本で進めている教育の話が本当に面白くて、こちらは追って記事にしますね。

Vulcanize さんがギーヴズ&ホークスから借りたという本物の近衛兵の制服も着用させていただきました。重い暑い。

英国紳士世界のOSの、人間性を熟知したユニークな素晴らしさを再確認した機会になりました。フェイフェイさん、BLBG社長の田窪さんはじめPRの井上さん、室岡さん、ご一緒させていただきましたみなさま、ありがとうございました。

ランチョン後はVulcanie London に移動し、メンズの秋冬コレクションを鑑賞しました。

FASのローンチ発表会にお招きいただきました。Fermentation and Science の頭文字をとり作られたブランド名は、発酵と科学という意味。

素材(丹後の黒米)✖️酵母✖️発酵技術 の研究を3年間積み重ね、誕生したスキンケア。738種もの発酵由来成分から作られています。

発酵独特の香りがなく、アロマティックな快い香りも魅力ですが、香りのコンセプトは「晴れた日の哲学の道の6時」。ラストに残るフランキンセンスで、ああ、と納得。

発売元は株式会社シロク。あのN organic を生み出した会社です。専務取締役の向山雄登さんからイベント後にご連絡をいただきました。「実は、FASを企画してる途中で、『新ラグジュアリー』に大変インスピレーションを受けました。とくに日本のラグジュアリーとして紹介されるようなブランドになりたいと強く思いました」。感激です。よいブランドに育っていくよう、応援します。

6月におこなわれたForbes Japan × Brunello Cucinelliのイベントの模様がForbes Japan のサイトで記事化されました。ご参加の女性経営者のなかには、世界で活躍する著名な方も多々いらっしゃいます。質問のレベルも高く、密度の濃い時間でした。

女性経営者が注目の”人間主義的経営”に触れる 「ブルネロ クチネリ トークセッションイベント」

母校の富山中部高校で講演しました。富山県民会館大ホール。

質問タイムが爆笑タイムでした。
「感動しました。僕、政治家になります! 握手してください」と壇上まで来てくれた学生さんにはこちらがウルウルしてしまいました。楽屋まで来て「ファッションデザイナーになると決めています!」と決意表明してくれた学生さんも。

写真は生徒会副会長さんから花束をいただくの場面。撮影は北日本新聞田尻さん。

お招きくださいました神通会、富山中部高校、後援の富山県教育委員会に感謝します。

田中校長先生との記念写真です。

VOGUE JAPAN 8月号にて、トレンドの「静かなラグジュアリー」について取材を受けました。新しいラグジュアリーと静かなラグジュアリーとの関連をピンと察知して記事をまとめてくださいましたのは、編集部の中村真由美さんです。中村さんに『新・ラグジュアリー』が面白いと推薦してくださったのは小島慶子さんだそうです。ありがとうございました。

ラ・コゼット・パフメ様にお招きいただき、「これまで、そしてこれからのラグジュアリーと香水」というテーマで講演しました。主催者である地引由美さんと一緒に持っているのは、人間のための資本主義を掲げる新型ラグジュアリーの旗手、ブルネロ クチネリから2024年1月に発売される予定の香水です。貴重な現品を会のためにお貸し出しくださいましたブルネロ クチネリ ジャパンに感謝します。きめ細やかに盛り上げてくださった関係各位、ご参加のみなさま、ありがとうございました。

北日本新聞「ゼロニイ」、「ラグジュアリーの羅針盤」Vol. 8が掲載されました。トレンドの「クワイエット・ラグジュアリー」について書いています。

 

webunにも掲載されています。

ハイアットの「アンバウンド・コレクション」日本第一号として作られた富士スピードウェイホテル、およびホテル内にあるモータースポーツ・ミュージアムを取材しました。詳しくは後日、記事になります。

全く新しい体験のシャワーを丸二日にわたって浴び、充実の取材になりました。ホテルスタッフのホスピタリティ、ミュージアムスタッフの情熱もすばらしかった。お世話になりました関係者のみなさま、ありがとうございました。

kaori.nakano on Instagramでベントレーを360°から撮影してみたリール動画、サーキットの音がわかるホテルから見た動画を投稿しています。また、kaorimode1 on Twitter のほうでは、同動画およびフェラーリをシミュレーション運転している動画をシェアしています(プレスツアーをご一緒した方が投稿)。

Forbes Japan × Brunello Cucinelli のイベントに登壇させていただき、新・ラグジュアリーと人間主義的経営について話しました。

ソロメオ村のクチネリさん、ローマ、東京をつないだ三者オンライントークもあり、アフターにはご参加の女性経営者の方々(Forbesに登場した方々をはじめ著名なビジネスパーソン)との交流もあるなど、とても充実したイベントでした。

クチネリ・ジャパンの宮川ダビデ社長、PRの遠藤さくらさんはじめスタッフのみなさま、Forbes Japanの谷本有香さんはじめスタッフのみなさま、そしてご参加くださいました方々に感謝します。

*クチネリのワンピースとジャケットを着用しています。

各地でたいへんな雨でしたね。夜中の警報で不安な夜を過ごされた方も少なくないのではと拝察いたします。被害に遭われた方々に心よりお見舞い申し上げます。

 

本日の日本経済新聞夕刊「モードは語る」で「カシミヤを着た狼」のレビューを書きました。ウェブ版にも掲載されています。お時間ゆるすときあればぜひHulu で本編全4章をご覧になってください。

北日本新聞別冊「ゼロニイ」が発刊されました。連載「ラグジュアリーの羅針盤」で「伝説のダイヤモンドは誰のもの?」というテーマで書いています。

ウェブ版にも掲載されています。

「愛のヴィクトリアンジュエリー」展にちなみ、ホテルオークラ東京でランチトークイベントに登壇しました。あたたかく盛り上げてくださいました多くのお客様、本当に楽しかったです、ありがとうございました。

大倉集古館、ホテルオークラ東京のスタッフの皆様にも心より感謝申し上げます。長谷川彰良さんがヴィクトリア時代のコートを再現した貴重なアイテムをお貸しくださいまして、入場時はそれを着用していきました。(見えづらいのですが、写真の壇上左のほうにハンガーにかけられております。どなたかコートのお写真を撮ってくださっていたらお送りくださいませ。)脱いだ後に来ているのは、内本久美子さん制作のヴィクトリアンベルベットのドレスです。コスチュームジュエリーはプリティウーマンのレプリカでした。連日ドレスで講演させていただく幸せをかみしめております(笑)。

Forbes Japan 連載「ポストラグジュアリー360°の風景」を更新しました。「ラグジュアリービジネスと日本、『翻訳不能』な国の勝ち筋は」

羽田未来研究所社長の大西洋さんにインタビューしました。後半は安西洋之さんが「これが日本文化だからと押し付ける儀礼は、海外の人にはコミュニケーションを絶たれた翻訳不能の世界」に見えることがあると指摘。

一万字くらいの長い記事なのですが、日本発ラグジュアリーや地方創生、日本文化の海外からの見え方に関心のある方、ぜひご一読ください。

写真©羽田未来総合研究所

大倉集古館で開催中の「愛のヴィクトリアン・ジュエリー」展を、ジュエリージャーナリストの本間恵子さんと対談しながら鑑賞しました。JBpress autographにて記事化しました。自分で言うのもなんですが、アンティークジュエリーの見方が深まる面白い記事になっています。ぜひご覧くださいませ。

また、5月24日にホテルオークラ東京で開催されるランチイベントのご参加もお待ちしております。

武蔵野大学アントレプレナーシップ学部で、同学部教授の澤円さんにお招きいただき、講演しました。テーマは「ラグジュアリー文脈における本物と偽物」。澤さんのビジネス文脈への落とし込み方がが絶妙にうまく、学生さんの質問も活発で、大変楽しませていただきました。

KEAとバレンシアガ、グッチのダッパーダンコレクション、シャネルのコスチュームジュエリー、御木本の養殖真珠、ボディーポジティブ、美容整形、スーパーコピー。本物と偽物は互いに互いを必要とし、答えのない迷宮に私たちを連れていきます。本物と偽物を考える議論って、ほんとにおもしろい。

内容は、澤円さんの奥様の奈緒さんがvoicyで紹介してくださってます(教室にいらしたとは知らなかった・・・(笑))。

北日本新聞「ゼロニイ」で連載中の「ラグジュアリーの羅針盤」は、本紙を購読していない方にも過去アーカイブがウェブ版でお読みいただけます。

Vol.1 後世に語り継がれるオリジナルな生き方

Vol.2 グリコのおまけとティファニーの婚姻届

Vol, 3  豪華客船が難破する前に

Vol. 4   「商品」を「芸術」として演出する

ファッションビジネス学会の特別講演にお招きいただき、「新・ラグジュアリー 倫理、ローカル、ヒューマニティから始まる新しい文化」というテーマで話をさせていただきました。ありがとうございました。

5月6日、英ウェストミンスター寺院でおこなわれるチャールズ国王の戴冠式に向けて、当日、登場すると見込まれるローブやレガリアについて、Twitter で連続解説をしています。写真は中心的な役割を果たす聖エドワード王冠。王冠も複数、登場するのです。ローブも何度か着替えられます。よろしかったら、Twitter kaorimode 1 でご覧ください。

ラ・コゼット・パフメさんにお招きいただき、「これまで、そしてこれからの『ラグジュアリー』と香水」というタイトルで講演します。

日 時:
6月24日(土)14:00 – 16:00

会 場:
東京都港区南青山5丁目
※ 参加お申し込みを完了された後に、会場の詳細をお知らせ致します。

 

詳細とお申し込みは、ラ・コゼット・パフメのホームページからご確認くださいませ。お申し込みの際には「中野香織HPを見て」とお書き添えください。

スイス発のアクリスがブランド生誕100年を記念して東京国立博物館法隆寺宝物館で2023年秋冬のショーを開催。アルベルト・クリームラーも来日し、華やかなコレクションを披露しました。動画はTwitter kaorimode 1、衣装詳細はInstagram kaori.nakanoにてご覧くださいませ。

Forbes Japan「ポストラグジュアリー360°の風景」Vol. 30が公開されました。今回は安西さんスタート、私は後半を書いています。「丹後で考えた『中庸の究極』とジェントルマン文化の共通点」

GQ JAPAN 4月号に寄稿した「クラフツマンシップとラグジュアリー」に関する記事がウェブ版に転載されました。

日本経済新聞連載「モードは語る」。元エルメスのデザイナーが手掛ける「職人を主役にするラグジュアリー」プロジェクト、MIZENを取材しました。電子版、紙版、ともに掲載されています。

Forbes Japan 連載「ポストラグジュアリー360°」第28回が公開されました。環境副大臣の山田美樹さんにインタビューした記事です。後半は「新・ラグジュアリー」の共著者、安西さんが新・ラグジュアリーの視点からコメントしています。

「なぜ日本からラグジュアリーが育たないのか」という問いそのものを変える必要がありそうです。

 


Forbes 全体の人気記事2位になりました(3月25日の時点)。

4月4日から6月25日まで、大倉集古館において特別展「愛のヴィクトリアン・ジュエリー ~華麗なる英国のライフスタイル~」が開催されます。

それに伴い、5月24日(ヴィクトリア女王の誕生日)にホテルオークラ東京いて開催されるランチタイム・トークイベントに登壇します。ヴィクトリア時代から現代にいたるまでのジュエリー、ファッション、ライフスタイルについて話をします。

詳細、お申し込みはこちらです。

みなさまにお目にかかれますことを楽しみにしています。

GQ 4月号クラフツマンシップの特集。「新しいラグジュアリーが次の時代を創る 『その職人は、これを作ったとき幸福であったか」というタイトルで新・ラグジュアリーと職人の関係について書きました。

 

過去のエッセイは、本サイトWorks カテゴリーの「Essays」に収蔵しています。

パーソルキャリア エグゼクティブコミュニティで講演しました。テーマは「新しいラグジュアリーが生み出す文化と経済」です。コーディネートしていただきました中薗真理子さんはじめオーディエンスのみなさま、ありがとうございました。

Precious 12月号 特集「持たない時代に『持つ』ということ」。「つくり手の創造性が最大限に発揮されたものを選び時間をかけて『名品』に仕立てる」というテーマで寄稿しました。

ウェブ版にも掲載されています。

本記事は、J-cast news にも取り上げられました。

 

過去のエッセイに関しては、本サイトWorksカテゴリー内「Essays」に収蔵してあります。

Hotel the Mitsui Kyoto. 開業早々にForbes 5 Stars 獲得という驚異的なホテルです。京都の二条城近く、町中にあるのに完璧に外と隔てられた非日常感が演出されています。そもそもの設計がとてつもなく素晴らしかった。
部屋の動線からアメニティにいたるまで、徹底的に考えぬかれており、高レベルなブランディングに背筋がのびる思いがしました。

写真は不可ですが、広い洞窟のようなスパが快適でした。サウナもジャグジーも備え、神秘的な空間で異次元トリップできます。

なによりスタッフのホスピタリティがあたたかくて人間的、というか、マニュアル対応みたいなことをしない。

学びどころ満載の、充実した滞在をさせていただきました。総支配人の楠井学さんはじめスタッフのみなさまに感謝します。

 

 

Forbes Japan 連載「ポストラグジュアリー360°」更新しました。「英王室と美術館から考える、『旧型』の意義と存続条件」

新型ラグジュアリーの研究を進める中で、歴史の見え方も変わってきました。

19世紀ダンディズムは、王室に代表される権威(旧型)に抵抗する、当時の「新型ラグジュアリー」であったことに気づいたのです。

旧来のシステムのなかではどうあがいても影響力をもてなかった元祖ダンディ,ブランメルは、<自ら評価を上げるべくコンテクストを創造する>(安西さんの表現)ことをやってのけたのでした。

21世紀のラグジュアリーにとっても、評価を上げるためのコンテクストを創ることがカギになりそうです。

「新型」「旧型」の対比における「新しさ」とか「旧さ」は、中身そのものではなく、文脈も含めた総合的なあり方なのだ、ということを後半の安西さんのテキストが示唆してくれます。

 

過去のウェブ連載は、本サイトWorksカテゴリーの「Websites」に収蔵しています。

Forbes Japanにおける連載「ポストラグジュアリー360°の風景」はこちらにまとめてあります。

Men’s EX 秋号発売です。

特集記事のなかでブリティッシュ・ラグジュアリーについて解説しました。雑誌の性格上、マテリアリズムの世界全開ですが。

よろしかったら本誌でご覧ください。

本誌写真はイギリス大使館にて撮影していただいたものです。もう一枚の候補?だった没バージョンがこちらです。

富山の散居村地域に10月5日にオープンする「楽土庵」。一足早く取材に行きました。

歴史の継承と地域の幸福、自然との現代的な共存を視野に入れた「新ラグジュアリー」の世界を体現するアートホテルです。

家具一つ一つに、意味とストーリーがあります。お部屋は全3室。すべて異なるテーマで創られています。

詳しくは来月の北日本新聞「まんまる」にて。3ページにわたり紹介されます。

プロデューサーは林口砂里さん。下の写真左です。砂里さんがなにものなのか? なぜこのようなホテルを? というインタビューもあわせて誌面で紹介されます。お楽しみに!

14日、山縣良和さんの「ここのがっこう」で新・ラグジュアリーの講義をしてきました。ファッション関係の方々にこの話をするのは初めてかも? 政治・経済界からのご依頼が多かったです。

さすが山縣さんのがっこうだけあり、質問がレベル高いし熱心度が違うしで、がっちり手ごたえがあり、楽しかったです。唯一の正解がない分野で議論を重ねるって大事ですね。(それこそ贅沢なことなのかも)

トップ写真は、「ここのがっこう」がある浅草橋の風景です。上の写真、左が山縣さんです。writtenafterwardsのデザイナーでもいらっしゃいます。

 

過去の講演、トークイベントに関しては、本サイトWorks 内「Lecture / Seminar」にまとめてあります。

ニセコのラグジュアリーを考える記事、JBpress autograph にて公開されました。

前編 「ニセコHANAZONOリゾートだから実現できる、壮大な光のアートを体感

後編  「根源的で先進的な民主主義。ニセコに独創的なラグジュアリーが生まれる理由

紅葉のニセコ、もう一度行きたいな!

 

内閣府の地方創生推進事務局でお話してきました。永田町合同庁舎なんてこんな機会がないとなかなか足を踏み入れられず、楽しかったです。

話題は地方創生と新ラグジュアリー。スタッフの方々が『新・ラグジュアリー』を読み込んでくださっていて感激でした。雪国観光圏、有松、ニセコの記事も目に留まっていたようです。さすが、永田町の方々は感度が高いと感心いたしました。ローカリティの幸福に根ざす新しいラグジュアリーは、地域創生とダイレクトに結びついているのです。

 

 

エリザベスII世からチャールズIII世へと治世が変わり、時代の空気も一気に変わる予感がします。

チャールズIII世は筋金入りのエコビジョナリーです。世間がまだバブルに沸いていたころから有機農業を始め、地球環境を説いていました。現在もこの分野で積極的にリーダーシップをとっています。

チャールズ新国王についても、おびただしい量の記事を書いてきました。いくつかは本サイト「ウェブ記事」でもリンクをはっています。書籍にもまとまっていますので、もしよろしかったらご参考に。(表紙がいまいちなのですが、カバーをとると品の良いネイビーのチェック柄の本が現われます。私はカバーをとって本棚に飾っています。)

昨日はエリザベスII世のファッションについてメディアからの取材をいくつか受けました。NewsPicksではコメントランキング1位……。こんなところで1位というのを狙ったわけでも嬉しいわけでもないのですが、ただ、日本人が英国女王の訃報にこれだけ反応するということにあらためて深い感慨を抱きました。

ファッションもさることながら、私はエリザベスII世を究極の「ラグジュアリーブランド」としてとらえています。そのありかたは、ウォルポール(英国のラグジュアリー統括団体)も「ブリティッシュ・ブランド」の模範としています。ウォルポールによる2022年度のBook of LuxuryにはBe More Queen という記事もあり、最後のまとめとして、エリザベスII世の顔の隣にこんな言葉が書かれています。拙い訳ですが、つけておきます。

Know what you stand for & against.

Know what is authentic, unarguable & unreplaceable about you.

Never be tempted to forget what you stand for, or try to be something you’re not.

Be authentic.  Be credible.  Be personal.  Be adaptable.

あなたが体現することと、相いれないことは何か、自覚せよ。

あなた自身について確かなこと、議論の余地なく取り換えのきかないことは何か、自覚せよ。

あなたが体現することを忘れてはいけないし、自分ではないものになろうとしてもいけない。

本物であれ。信頼に足る人であれ。個性的であれ。柔軟であれ。

 

 

メディアの方は、服の色がどうしたとかバッグのブランドがどこかとかスタイリストは誰かとかだけで話を終わらせないで、その先に見える本質として、エリザベスII世のラグジュアリーなありかたの方に焦点を当てた報道をしていただけると嬉しく思います。

*トップ写真は2~3年くらい前に書いた「English Journal」のイギリス文化論特集の1ページ。

 

 

日本経済新聞「モードは語る」。先週、有松に取材したことのなかから書きました。。900字くらいではなかなかすべてを書ききれないのがもどかしいところではありますが。電子版でもお読みいただけます。

今回の名古屋取材では2年前にできたばかりのライフスタイル系のホテル、ニッコースタイルに泊まってみました。

ホテルでゆっくりする時間は全くないけど、快適で気持ちのいい空間で休みたいし、フットワーク軽く過ごしたいし、食事も美味しく楽しみたい、というニーズにはぴったりかもしれません。

解放感のあるおしゃれなラウンジではパソコンを広げてお仕事中の方も。

機能的な部屋には最先端の家電がさりげなく置かれて、BGMも選べ、いまどきの軽快な空気感。

なによりレストランがよくて、取材終えて疲れて帰ってきて、冷たいワイン1,2杯と美味しいおつまみ二皿だけほしい、という要望にもさらっと応えてくれる柔軟な気楽さ。価格も適正で安心できるし、1人でも豊かにリラックスして過ごせるインテリアとあたたかいおもてなしがありました。

結局、到着時のランチ、取材後の夜のワインとお料理、朝食、とレストランは3回利用。スペースにバリエーションがあって広いし、なにより美味しくて飽きません。

ビューもスパもクラブラウンジも不要という予定の詰まったビジネス旅にちょうどいい安心感と合理性があり、いまどきの若い感覚も体感できるユニークなホテルでした。

SUZUSAN のファクトリーも見学させていただきました。

細部まで一点一点、人の手による作業によって製作がおこなわれています。染め上げ、服を作る作業だけでなく、ラベル張りや梱包、発送まですべてここで。歴史の情緒をたたえた有松の町並みに、この絞り染め。

工場の外見も味わい深い。

トップ写真は、左から西谷浩登さん、坂田真実さん、そしてCFOの村瀬史博さん。代表弘行さんの弟さんでもあります。
外気温34度はあろうかという日に歩き回り、エルメスのシフォンスカーフは完全にタオルと化し、ヨレヨレになっておりますが、学びの多い有松でした。

こんなふうに三角形の板を使って染めていく。この工場では体験会なども開催されているそうです。

suzusanのある有松を散策。

歴史的な建物が保存されながら、それぞれ中では今日的なビジネスがおこなわれています。町全体がこのような感じなので、タイムスリップしたような不思議な錯覚におそわれます。とはいえ、村瀬さんたちにとっては「子供のころからふつうにこういう環境のなかにいたので、あたりまえの光景」なんですよね。その「あたりまえ」は、村瀬さんがいったん海外に出てみることで、新しい価値を帯びることになった。自分がもっているものの価値は、いちど「外」の目にさらしてみることでよくわかる。内にこもって同じ価値基準内の評価ばかり気にして小さくまとまり停滞するくらいなら、全然違う価値観のなかに飛び込んでみるのもいいですよ! 私はそればっかりやっているので永遠にアウトローなんですけどね(笑)。

suzusan 有松店にてsuzusan秋冬展示会。

ショップでは代表の村瀬さんのお姉さまである瀬霜千佳さんが歓迎してくださいました。その後、訪れる工場では、お父さまや弟さんにもお目にかかることになります。ファミリービジネスなのですね。

村瀬さん自身が描いたデザイン画。次のシーズンのテーマは「サークル」だそうです。抽象度の高いこのデザイン画から商品を作っていくスタッフ、すごいな……。

「もう廃れてなくなる」と言われていた有松絞の技術を世界で認めさせ、ラグジュアリーマーケットに食い込んでいく勢いのsuzusan。お宝を見つけるには、足元を深く掘れ。の好例でもありますね。ハウツーをガン無視して自らのキャラクターで淡々と前例なきビジネスを進めていく村瀬さんの「あり方」が一番のカギだとは思います。