KITTE で開催された伝統工芸イベント「職手継祭」。松山ケンイチさんのトークショーをかぶりつきで拝聴しました。撮影も録画もできませんでしたので、うろ覚えの部分もありますが、以下のような内容が印象に残りました。
「青森から来ました」という自己紹介から始まり、笑いをとって会場をリラックスさせた松山さんのお話からは、俳優という肩書だけでは語り尽くせない、骨太な思索と行動力が、静かな語り口の奥に感じられました。
松山さんは青森県出身で、俳優業のかたわら農業にも携わり、鹿や猪などの有害鳥獣の捕獲によって生まれる「革」という資源を活かすために、アップサイクルの革ブランド「モミジ」を立ち上げています。日本の革をどのように表現するのかを考えたとき、行き着いたのが伝統工芸との融合だったそうです。
原点には、地元・青森に残る南部裂織との出会いがあります。古布を裂いて織り直し、全く新しい布へと再生する知恵に、循環の思想を感じたとのこと。
多くの動画を見せていただきながら、伝統工芸の職人たちとの交流が、松山さん自身の価値観を揺さぶったことが語られました。効率を重視する現代の私たちが見失いがちな「精神の豊かさ」が、職人の手仕事の中にあること。同じ技法を研ぎ澄ませ続ける常軌を逸した情熱にふれ、自分自身ももっと前に進めるのではないかという勇気を与えられたこと。
職人の労働が正当な対価として評価されていない現状にも触れ、持続可能な仕組みづくりの重要性を率直に訴えられたことも印象的でした。
また、伝統工芸が本当に輝くのは現場である、とも。職手継祭の展示会場は職人にとってアウェーであり、ホームを訪ねれば、職人は技も道具も歴史も惜しみなく見せてくれる。その体験こそが、心を深く揺さぶると。これは私も同感です。取材に行き、現場の方々の情熱に触れるたびに、自分が変革するように感じるのです。
終始あたたかく誠実で、しかし芯の通った言葉ばかりでした。着用されていた帽子やジャケットもご自分のブランドのものでした。全身、さりげないのに、隙なくおしゃれ。松山さんが伝統工芸を愛し、未来へ手渡そうとする姿勢に、励まされた思いです。


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