ダナ・トーマスの『堕落する高級ブランド』(講談社)読了。原書の”Deluxe:How Luxury Lost its Luster”は2007年に出た時にすぐ買っていたのだが、とかく分量が多いのと、書かれていることがシリアスで濃いので流すことができないために、読了できないままでいた。このたび実川元子さんが読みやすく翻訳してくださったことに、感謝。
こんなことまで書いてしまって、ダナ・トーマスはファッションジャーナリストとしてやっていけるのだろうか?と心配になるほど赤裸々なブランド戦略の舞台裏が書かれている。読者としては小気味よいのだけど。えげつないくらいの、セレブを使ったパブリシティ作戦、それにあさましく便乗するセレブが、実名入りで書かれている。これを読んでしまったら、「レッドカーペットの女優のファッションチェック」なんて記事、書く方も読む方もあほらしくてやってられなくなるだろう。裏を知れば、うっとりなんかしてる場合ではない。
コストを削減し、利益の幅を大きく出すために、中国でいかなる製造がおこなわれているのかも、暴かれる。「メイド・イン・イタリー」や「メイド・イン・フランス」も実はほとんどが中国製、というからくりも、容赦なく明らかにされる。これを読んでしまったら、広告のイメージに洗脳され、大枚はたいてありがたがってブランドバッグを買う行為が、いかに愚かしくてばかばかしいことか、目が覚めるだろう。利益はほとんど、一握りのトップだけに行く仕組み。
大量の売れ残りをさばくアウトレット誕生の経緯を知ってなおブランドが欲しくなるということも、ありえなくなるだろう(たぶん)。
現在、世界のどこへ行っても、どのブランドも同じように均質的に大衆化してしまった。マクドナルドみたいになった、というトム・フォードのことばが鋭く現実をとらえている。
大衆には手の届かない高級品をわずかな顧客のために誇りをもってつくっていたラグジュアリーブランドから、大衆的な均質商品を大量に提供するグローバル企業へ。そんなブランドの変遷の歴史がよくわかる、骨太な一冊だった。ブランド・コントロールをおそれないダナ・トーマスの志の高さに敬意を表する。ブランドのご機嫌うかがいしながらタイアップ記事ばっかり書いている(書かされている)日本のジャーナリストも少しは見習わねば。自戒をこめて。
私も、この本を読み終わったところです。
ここまで赤裸々に書いてしまって大丈夫??と他人事ながら心配に。
今日も、ファミリーセールでワンピースを試着しながら、裏地がないのをコストダウンか・・・とシミジミ思いました。
大量生産のおかげで、シーズン過ぎればブランド品でも安く買えますが、なんだかなぁ?と変な気分です。
私は定価でブランド品を買うことはなくなりました・・・
これってブランド側は成功なんですかね?
利益を貪欲に追求しすぎて、自分の首をしめてしまったブランドの末路、という感じですよねえ。不況ということもありますが、報じられる数字を見ても、あまり「成功」しているようには見えません。ブランド側もいま「次」の方向を模索しているような印象で本は終わっていましたが。現在は過渡期でしょうか。
「裏地がない」「切りっぱなし」は実は(トレンドなどではなく)コストダウンのためだった、という話もショッキングでしたよね。裏地をていねいにつけられた服こそ「贅沢」な服だったのに。