腑に落ちたことばのメモ。
◇山崎正和さんの「リーダーも熱狂もないまま揺れたポピュリズム選挙」(「朝日新聞」9月2日)より。
「(ポピュリズムの定義として)ここでは『ある問題を、主として否定することをテーマに、大多数の人がムードに乗って一気に大きく揺れること』としましょう。人々が互いに過剰に適合しあって、雪だるまのように世論が形成されていく、そういう状態です」
「あるいは、シェークスピアの悲劇『ジュリアス・シーザー』が教えてくれます。古代の民主制ローマで、民衆がわーっとあつまって『殺ってしまえ』と叫ぶ。しかし、演説者がかわると次の瞬間、逆の方向を向いて『あいつを殺ってしまえ』となる。まさにこういう動きです」
「ポピュリズムは、人間はどう振る舞ったら良いかが暗黙の了解として存在している時には発生しません。不安な時代、あるいは既成の秩序がゆるんだ時に起きやすいのです」
「たとえば携帯電話で見るニュースは非常に速いものの、断片的であることが特徴的です。何が起きたかはわかっても、それはなぜなのか、背景や構造は教えてくれません」
「娯楽や芸能の世界でも同じことが起きています。すぐ面白い、すぐわかる、そういう速効性が求められ、面倒くさいドラマはテレビの世界でも減っています。長期間訓練し、ある構造を持ったドラマを演じるような役者が減り、筋書きなしになんでも出来るタレントが増えています」
「即反応、即断定、二者択一。そうした性向を持った多数の人々が、時代の『空気』を読んで行動したら、その集積は巨大な変化を生むでしょう。私は『世論形成の液状化現象』と呼んでいます」
時代のムードを正確に言語化した、論理的で明快きわまりない文章。山崎さんの文章は20代のころにずいぶんお手本にしたが、今なおますます健在の筆力で、頼もしい。
◇川上未映子さんの「おめかしの引力」(「朝日新聞」9月3日夕刊)より。
「似合わなさって他人と自分のどっちを主軸にした感覚なのか。頭にりぼんつけてる人を見るに付けて『自分にも当然出来るおめかし』だと信じて疑わなかった自分っていったい何だったのか。今回のりぼんに関しては単に『似合わない』だけじゃない、何か『世間に申し訳がたたない』感じも確かにあって、極控え目に言ってショックだった・・・」
「『好きな服を着てるだけ、悪いことしてないよ♪』なんて歌もありましたが、悪くなくても、無理なことって、遠慮した方がいいことって、あるんだね! りぼんで諸々における時の過ぎたるを知ってしまったインサマー」
なにを書くか、っていうより「どう書くか」っていうことが問題ということをあらためて教えてくれる快文。一文を無作為に抜粋しただけで、あ、あの人の文章だ、と誰にでもわかる。それを若くして極めている川上さんは、とても幸福な作家だと思う。
こんばんは[E:happy01]
お二方とも、見事ですね!
文章って、才能でもあり、習得していくべきものでもあるんですね。。そしてさらに、内容を構成する頭脳と感性が必要ですよね。
素敵な文章が書ける方々、尊敬です[E:shine]
ミミーさん、ようこそです♡
正確すぎても色気がないし、感性に走り過ぎても自己満足になっちゃうし。そのバランスがいい文章というのに出会うと、ホレボレします。
ミミーさんの絵文字づかいも「あ、あの人だ!」とすぐわかる「文体」になってますよね(笑)。