2011年1月1日
あけましておめでとうございます。
新しい年が、みなさまにとって良い年になりますよう。
◇ヴィレッジバンガードで予期せず出会った澁澤龍彦『快楽主義の哲学』(文春文庫)。ダンディズム、反効率のロマン主義、反トレンドの個人主義、などなどの日頃ぼんやりと唱えていたことがすべて「快楽主義」というこの一点にフォーカスしていき、波長がぴたりと合って増幅したような感激をおぼえた一冊。
1965年にカッパブックスの一冊として刊行されたときには、「澁澤がこんな俗っぽい本を」とずいぶんファンをがっかりさせたようである。たしかに「らしく」ない平易すぎる語りだが、決して「薄く」はない。博覧強記の「アニキ」がおしゃべりしながら古今東西の快楽主義を説いてくれるような、読みやすさと読み応えが両立している本。
冒頭の、幸福と快楽の区別。「要するに、幸福とは、まことにとりとめのない、ふわふわした主観的なものであって、その当事者の感受性や、人生観や、教養などによってどうにでも変わりうるものだ、ということです。これに反して、快楽には確固とした客観的な基準があり、ぎゅっと手でつかめるような、新鮮な肌ざわり、重量感があります」
「文明の発達は、かならずしも幸福の増加を約束しない。むしろ人間の自由を束縛し、『現実原則』を発達させ、いきいきした快楽をつかもうとする人間本来の欲求を沮喪させる」
というわけで、現在書店に並ぶ凡百の幸福論をかるくふっとばす爽快な論が繰り広げられ、あらためて「快楽主義でいこう!」という意を新たにさせられたわけなのであるが、再読、再再読ののち残ったエッセンスのメモはまた後日に。
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