◇「サライ」記事のため、銀座の「トラヤ帽子店」に取材にうかがう。店長の大滝雄二朗さんがボキャブラリー豊かで、帽子かぶれば渋チャーミング、という素敵な方であった。とても楽しい取材になった。感謝。詳しくは6月発売の本誌にて。

トラヤ帽子店の品揃えは、たぶん、世界一とのこと(店舗は入りにくいし、どちらかといえば狭めだが、それがかえってよい効果をもたらしているようだ)。カジュアルなハンチングから、トップハットに至るまで、世界のあらゆるブランドから。個人的にほしいな~と思ってしまったのが、ロンドンのおまわりさんがかぶっているようなヘルメット。

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時節柄、災害用というか工事用のヘルメットはいちおう、家族の人数分、身近において眠ってはいるが、こういうしゃれっ気のあるヘルメットが並んでいると、重苦しい気持ちも少しは明るくなるかも?と。

どさくさにまぎれての個人的希望。いざというときに5時間歩いても疲れないかわいいシューズ。パジャマとして着てよし、避難着としてもよし、ついでにそれ着て仕事してもヘンではない、という万能ウエア。最低限の避難用品ひととおりコンパクトに入るきれいめバッグ。デザイナーの皆さんにぜひ、作ってほしい。ビジュアルの要望などゼイタク、という世界ではあるけれど、「それどころではない」という気分のときこそ、明るいエネルギーを感じられるようなものがあると、心がほっとすることもある。

今は、華奢なヒールの靴やモノの入らないバッグなど到底買う気になれない。かといって災害用一点張りなのもなんだかなあ、である。危機がひそむ日常を、せめて何もない間は明るい気持ちで過ごせるようなモノを作っていただきたい、と強く希望。

◇往復に読み終えたのが、野地秩嘉『日本一の秘書』(新潮新書)。ぐいぐい引き込まれて、帰りなんぞ乗り過ごしたほど。ホテルニューグランドの名物ドアマン、カレーチェーンCoco壱番屋の秘書、似顔絵刑事、秋田のヒーローたる超神ネイガー、シミ抜きの天才、焼き鳥屋、富山の売薬。サービスの達人たちにみっちり取材し、その秘密を門外漢にもわかるように丁寧に分析した、これまたライターとしてのサービス精神あふれる一冊。

超神ネイガーの項、ヒーローの分析が光る。

「大人にとってのヒーローとは常に勝つ者、万能のスーパーマンを言う。しかし、小さな子どもにとってのヒーローとは万能でも常勝の人間でもない。子どもにとってのヒーローとは窮地に陥って、しかし、あきらめない人間だ。子供たちはヒーローになりたくて、ショーを見ているのではない。

ヒーローを応援したい。ヒーローを救ってあげたい。ヒーローを男にしてやりたい。そうして、ヒーローが窮地を脱するところを見たいのだ。つまり、子供にとってのヒーローとは窮地にはまり込むことが多い人間であり、苦しい目にあっているヒーローが大好きなのだ」

取材対象にみっちり沿って、意外な、でも普遍的でまっとうな法則を引き出す野地さんのやさしさとプロフェッショナリズム、いいなあ、と思う。

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