以下、満月にさそわれてのささやかな感情のひっかかりの吐露、というかたんなるつぶやき。
◇英語にembarrassmentという言葉があって、「当惑」とか「気まずい思い」「バツの悪さ」なんて訳語がついているのだけど。感情と感情の間に、まさしく bar(柵)が入るような気分の時、このembarrassmentという動詞がぴったりとくる。(語源としては別の解釈もあるようだが、個人的実感としては、気持ちと気持ちの間にbar 、なのである)
どういうときに感じるかというと、まあ、いろいろな場合があるのだけれど、たとえば、最後に「返信要りません」という一言が添えてあるメールを頻繁にいただくが、これってどうなのだろう。相手の優しさは痛み入るほどわかるのだ。こちらの「お忙しい」時間を割いてまで返信に気を遣ってほしくない、という思いやり。そのやさしさ、しかと受け止め、こまやかなお気遣いに、感謝するのである。
一方、「返信要りません」とは、「あなたとの交流はとくにこれ以上したくありません」というさりげない意思表示とも感じられることがある。
マナ―本の類には、「忙しい相手には、<返信要りません>と書き添えると相手の気持ちの負担がなくなります」と書いてある。なるほど、「返信不要」はマナーにかなった一言でもあるわけか…。
それでも、まあ、相手や状況や内容にもよるけれど、相手の気持ちのなにがしかが感じられるメールのあとに、「返信不要」と目にすると、その気持ちに対する反応をシャットアウトされたようで、embarrassmentを感じることがあるのもたしか。
こちらも自由意思をもつ人間。不要である、と感じれば返信しないし、なにか一言返したい気持ちが起きたら返信したいのに。
ええい、言ってしまおう。「返信不要」かどうかは、こっちが決めるから。
・・・・・・・とか言いながら、あわただしい時間だったりすると、こっちから「レスいらないからね!」と書きっぱなしにしたりしてね。ホント、勝手なことであるっ(笑)。
◇気持ちと気持ちの間に、ささやかなbarが入る当惑その2。本を読んでくださって、「尊敬しています」とか、「いろいろとご指導願いたい」と言って会いに来てくださる方がときどきいる。まあ、多くはあたりさわりのない社交辞令だと思って、とりつくろってもしょうがないので、こちらも自然体で接しているが、embarrassmentを感じるケースもままある。
だいたいにおいて、こういうケースで私に期待されるのは、「冷静で客観的な分析をきちんと下してくれる先生とか上司」みたいな役柄である。相手によっては、そのようにふるまうことも仕事のうち、とわりきってご期待に添えるように演技することもあるけれど。
私はどっちかといえば、その対極にあるような人間で、感情のふり幅が大きいし、いちいち、感覚や感情に振り回されるようなところがある。それをコントロールできるようになるために学問してるんだから(笑)。
というわけで、こちらが自然体で接すれば接するほど、冷静でクールな……という幻想を抱いていらっしゃる相手をがっかりさせることがあるわけだ。ときに、その相手に対して、こちらが(相手にとっては想定外の)好意を見せてしまったりすると、相手がembarrassmentを感じているのが手に取るようにわかる。「尊敬」というのは、「敬して遠ざけておきたい」という意味であって「お近づきになりたい」わけではないのだな、と痛く知る瞬間。
逆の立場も経験しているだけに、幻想を抱きたい人の気持ちもよくわかる。それだけにいっそう、このようなケースでのembarrassmentが、微妙にこたえる……。
まっ。ささいといえばささいなことばかりね。笑い飛ばしてください。
中野さん、こんにちは。
今回のエントリーはなんだかかわいらしい一面を見た気がします。
中野さんのように、メディアを通して「ある面」でもって表現をされている方、ざっくり言うと有名人であればつきまとうものなんでしょうね。
たぶんもっとくだけた場、お酒を交えたりすれば、こう、もっとはっきりとざっくばらんにこのテーマについて言いたいことを吐けたりするのかな、と思いました〜。
>石川実典さま
お優しいことば、ありがとうございます。
有名人でもなんでもないですが、
やはり「ホン」というのは
こういう時代にあってなお、一定の
影響力があるのですね。
「ホン」において「地」を出すと
「カルい」とたたかれるので(笑)、
活字世界ではできるだけ、不特定多数の
方々に不快を与えないような表現を
心がけています。
でも、やはり「地」はミーハーというか。
そうでなくっちゃ、ファッションだの
モードだのとつきあってられませんよね(笑)。
好感を持った人にはつい「地」を出しちゃって、「しまった!」と思う日々です。
が、気取ってたって、いつかはバレますもんね。
きれいな月の光を浴びたためか、ちょっと本音をつぶやきたくなりました。
失礼があったら、満月のせい、ということで、ご寛恕くださいね。