気仙沼ニッティング代表、御手洗瑞子さんとのトークセッション、伊勢丹メンズ館チャーリー・ヴァイスのサロンにて。
御手洗さんがなぜ気仙沼ニッティングを立ち上げるに至ったのか? ブータンの首相補佐をしていたころの経験と、その根本的な発想が地続きであることがわかる。
国家の支援とは子育てのようなもの。ほんとうに自分の力で稼ぐことができるようになる支援をするということ。ただモノやカネをあげても自尊心はかえって傷つけられる。自分の力で働き、自立できてこそはじめて人間として、国家としての誇りが感じられるという考え方に感銘を受けました。
同じように、彼女は震災後の気仙沼を支援しました。気仙沼の女性たちが、自分の力で最高レベルのプロフェッショナルな仕事をし、税金を納めることで、誇りと自信を取り戻すことができるように、と。
気仙沼ニッティングは、100年後も存続する「老舗」を目指す。選択において、どちらが100年後も生き残るために有効か?という基準で選ぶ。だから御手洗さんの選択にはぶれがない。
賢くて、タフで優しく、行動力とリーダーシップも兼ね備える。目の前の現実と楽しげに向かいながら長期的ビジョンに則って合理的な行動を着々とおこなっているのにまだ20代(あと数週間、だそうですが。笑)! 御手洗瑞子は日本の宝だ、とあらためて感じ入ったサロンでした。
シャンパーニュはじめ、御手洗さんが気仙沼からもってきてくれたお酒や美味も供され、満員御礼の21名のお客様とともに(定員越えで参加できなかったお客様、ほんとうにごめんなさい)、感慨深い2時間を堪能しました。ご来場のみなさま、チャーリーズエンジェルのみなさま、ありがとうございました。
メンズ館8階では、気仙沼から編み手さんがやってきてパフォーマンスをしています。春なのにどんどんセーターの注文が入っています。ストーリーのある手編みのニットに、誰もが魅了されるのです。すでにレジェンドとなっており、後世に語り継がれる別格のブランドとなりそうです。
均一の品質を保つために、編み手は「禅」の精神で平常心を保ち続けなくてはならないそうです。感情の揺れが反映されてしまうので。編み手ジュンコさんも、お客様の視線に動じることなく編んでいらっしゃいました。
・セーターの柄の神話について面白いと思ったこと。モノの本によれば、フィッシャーマンセーターの柄にはすべて「意味」があり、「地形」が編み込まれている。ケーブルは漁師の綱で、ダイヤモンド柄はアラン島の平地であり豊漁を祈るシンボル。ジグザグはアップアンドダウンを繰り返す結婚生活の象徴…というような。でも、瑞子さんがアラン島で見学したときには、編み手どうしが「私はこんなのも編める!」「私のほうがすごい!」と、テクニックの競い合いをしているような空気を感じたそうです。ひょっとしたら、編み手が集まっておしゃべりしながらいろいろ編んでいるうちに、先に柄のバリエーションが生まれ、それらしき意味は後からこじつけられたのかもしれませんね。意外と「起源」が生まれる現場ってそんなものなのかもしれません。
フィッシャーマンセーターにまつわる神話に、「水死体になって帰ってきても、セーターの柄を見ればどこの家の人なのかわかる」、つまりセーターの柄が家紋になっている、というものがあります。その話も実はある戯曲にまつわるフィクションであることが知られていますが、瑞子さんとの話のなかで、案外、間違いでもないのかもしれない、という一応の結論に達しました。つまり、セーターを見れば、「こんな編み方をするのはあの人に違いない!」と編み手を同定できる、それがすなわち着る人を同定できるということにつながったのでは?と。
・編み図の日英比較。日本はぱっと目で見てわかる「図」で編み図を表現する。着物の柄についても同じ。だからパーセンテージで拡大縮小も正確にできる。でもイギリスは文字で表現する。「表、2つ進んで一つ交差」のような。日本はやはり視覚に強い文化であること、このような設計図の違いからも見て取れる。
・最後にとっても私的な小ネタ。私の父は商船三井の船で働く船乗りでした(その後、「陸に上がり」小さな会社を始めました)。その話を、気仙沼の船乗りの話が出た時にちらっとお話ししたのですが、なんと瑞子さんのおじいさまも商船三井で、小さいときに船の模型をプレゼントしてもらったとのこと。なにか不思議なご縁を感じたお話でした。
中野さま
3/30『御手洗瑞子(気仙沼ニッティング)×中野香織』
トークセッションをチャーリー・バイスサロンで拝聴させていただきました。
大変大変幸運に思います。
ありがとうございました。
シャンパン、日本酒、御手洗さんからのおみやげ
社長下宿先のオーナーさんの自家製おつまみは極上の美味しさでした。
御手洗社長の気仙沼ニッティングご紹介をきかせていただいて
中野さんのブログ2/3『トマ・ピケティ21世紀の資本』
の感想が御手洗さんと重なりました。
『歴史的視点、確たるデータ、そしてシンプルでファンダメンタルな真実。
これを一般の人々がわかりやすい言葉で社会に伝え、若い人に刺激を与え、
社会を良い方向に変えることに貢献する、これこそが学問をする者の使命である
というメッセージ』
御手洗さんの場合は
なんと20代で親子ほどの年齢差の社員さんと一丸となって
編み手さんにクラフトマンシップの誇りを持たせ、
世界のトップに躍り出るという強い信念、
その視線の高さにただただ驚くだけですが、
御手洗社長は 『カルマ』と思っていらっしゃる(笑)?
作家(変人会)の鈴木光司さんが
明治大学のゲスト講師をされた時、
言葉を徹底的に鍛えよ というのが印象的でしたが
御手洗社長の言葉もハートからつぎつぎと
よどみなくあふれてきて
気がつけば2時間があっという間でした。
三越伊勢丹大西社長、
チャーリー・バイス
中野香織
ときめきの人々・空間の中で
気仙沼ニッティングのお話をを聞かせて頂き
大変感動致しました。
編み物の禅と知性の善
御手洗瑞子さま
愛(瑞子)は花、そして君はその種子…
ベッドミドラーの『ローズ』を捧げます。
YSさま
ご来場ありがとうございました。
アリスのトランプ柄のお着物に懐中時計がとても粋で、場を華やかに盛り上げてくださいました。心より感謝申し上げます。
また、このようにあたたかなお言葉を賜り、ほんとうにうれしいです。
瑞子さんも引き続き応援してあげてください。って偉そうにすみません。
またなにかの機会にお目にかかれますことを楽しみにしています。