パリコレ詐欺に関連した話です。
「オートクチュール」という言葉も1945年に登録された法的に保護されている用語です。フランスオートクチュール・プレタポルテ連合会が認めたデザイナーのみがオートクチュールのブランドと名乗ることができます。だから企業やデザイナーが、顧客にあわせた一点物を「オートクチュール」と呼ぶのは、法的にいえばNGなんですね。
日本までフランスの法律のチェックが及ばないだろうとはいえ、念頭においておいたほうが良いと思われます。
日本において、オートクチュールデザイナーと正式に称することができるのは、森英恵さんだけです。 中里唯馬さんも2016年より公式ゲストメンバーとしてオートクチュールウィークでショーをしていらっしゃいますが、まだ正会員ではありません。オートクチュールウィークにショーをするデザイナーにもさらに3ランクあるのです。 正会員(Membres permanents)、客員会員(Membres invités)、海外ゲストメンバー(Membres correspondants)。正式に「オートクチュールデザイナー」と名乗れるのは正会員のみとされています。中里さんはいまのところ海外ゲストメンバーですが、森英恵さんに次ぐ正会員として活躍していただきたいなと願って応援しています。
では誰がこの言葉に責任を持っているのか? 「オートクチュール・モード連盟」(Fédération de la Haute Couture et de la Mode)です。 会長はブリュノ・パヴロスキー、執行会長はパスカル・モラン。
この連盟の起源が、1868年、シャルル・フレデリック・ワース提案で作られた「婦人服仕立て屋、製造業者および仕立て屋組合」。
1945年に原産地名称「オートクチュール」(法的に名称が守られている)が創設、組織は「オートクチュール組合」(Chambre Syndicale de la Haute Couture)になります。
1973年にプレタポルテの組合、メンズウェアの組合も創設2017年に今の名前に改名されたのですが、この連盟の下部組織として、ウィメンズウェア、メンズウェア、オートクチュール、それぞれの組合(サンディカ)がありますフランスの経済に莫大な利益をもたらす領域なので、名称・品質において厳しい管理がおこなわれています。パリコレもオートクチュールも、安易に使える言葉じゃないのです。
ちなみに、日本語のウィキペディアのこの領域に関する情報は古すぎて使えません。オートクチュール・モード連盟HPの最新情報をご覧になって、確認してください。ファッションウィークの公式スケジュールも,公式参加ブランドも、全部ココでわかります。
そういうモードの権威だからパリにひれ伏そうと言っているわけではまったくありません。それはそれで一つの歴史ある文化なのでリスペクトしたうえで、 日本は日本で別の新しい視点をもたらせる闘い方がありますよ、 ということをあちこちで書いたり話したりしています。
ただ、思うのは、あまりにもパリモードの構造に無知なまま 権威とされるものにどさくさに紛れて威を借りようとすることほど恥ずかしいことはない ということです。
オートクチュール・モード連盟に公式参加を認定されている日本のデザイナーたちが本当に並みならぬ努力をしていることは、取材を通してひしひしと伝わってくるし、だからこそ彼らを尊敬し、後方で全力応援しています。
パリコレ(パリ・ファッションウィーク)やオートクチュールという言葉の歴史の重みを尊重するからこそ、詐称のずるさが浮かび上がるのです。
全く違うカテゴリーを自ら作り、そのブルーオーシャンで悠々勝ってしまう、そっちにエネルギーを注いだ方がはるかにすがすがしくて、よくない?
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