ブレンダ・ラルフ・ルイス『ダークヒストリー 図説イギリス王室史』(原書房)読了。久々に血が騒いだ歴史本。ノルマン征服のウィリアム王から、ナチのコスプレで世間を騒がせたヘンリー王子まで、イギリス王室の「恥部」(と前書きにある)の歴史が、ふんだんなビジュアル資料とともに、描かれる。
スキャンダルに陰謀に裏切りに残虐行為。ほんと、よくもまあこれだけ延々と「ありえない」ような話が出てくるのか、とあらためて感動する。でも、イギリス史好きなのは、ほかならぬロイヤルスキャンダルが面白すぎるからなのよね。人間味がありすぎて、ドラマチックすぎて、感情を深いところでゆさぶり、社会や人間を考えるためのインスピレーションに満ちている。ヘンリー8世と6人の妻の物語なんて何度語っても飽きないし(聞かされる人には申し訳ないが)、エリザベス1世とメアリーの確執、それに続く後継者の満ちた物語なんて、読むたびにしびれる。自分が処刑した女の息子が、ほかならぬ自分の後継者となる……だなんて皮肉すぎ。エドワード8世とウォリスの話も語り飽きないし、ダイアナ妃の話もあちこちで書いているが、そのたびに違う側面が見えてくる気がする。なまじのフィクションなど追いつかない面白さだと思う。
巻末で、監修者の樺山紘一氏が、「イギリス人は、なぜ王室スキャンダル嗜好にはしるのだろうか」というテーマで解説している。
「そこには残虐や不品行、暴虐から悪行にいたる、あらゆる人間的な営みへの、強烈な関心がかいまみられる。つまり、そのもととなる事実をこえて、推理や筋立てといった、いわば第二次的な言説のほうが、とめどもなく増幅してゆき、ほとんど全民族的な話題と噂となって、国土のうちをかけめぐる。これこそ、イギリスという国の独特の事件風土である」
そのあたり、よくわかる。私が好きなのもこっちだ。事件そのものというより、事件を巡る解釈というか、言説のほうが面白くなっていくのだ。だから事実そのものの厳密な正確さは、それほど重視していないようなところがある。
コナン・ドイルとかアガサ・クリスティが出てくる土壌もここにある、と樺山氏。
「イギリス人にとって、残虐と悪徳が主人公となる話立ては、最高の娯楽であり、また現実に対する独自の解釈である」
そうそうそう、残虐嗜好というよりもむしろ、「残虐に対する解釈」のほうを楽しむ、というイメージ。
「かれらにとって、王室をとりまく暗黒の霧すらも、それがほんとうの事実であるかどうかは、さして問題ではない。かぎりなく常識を離れた事件性にこそ、自分たちをとりまく社会を解説するための最良の鍵がかくされている」
樺山氏の解説をここまで読んでよくわかった。自分のイギリス史に対する関心と、モードに対する関心はほとんど同じ性質だということが。事実がどうであるかということよりも、それをめぐる解釈や言説が限りなく面白いのである。日常離れしているように見える現象のなかに、自分をとりまく社会を解説するためのカギを見つける。たぶん、それが好きで、続いている。そういう自分の方向性にも気づかされた本。
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作曲家としてのヘンリー8世♪
『The Da Vinci Collection: Music of the Renaissance』↓
って、レオナルド・ダ・ヴィンチ時代の音楽を集めたCDがあるのですが…
(ご存知「ヒリヤード・アンサンブル」などの演奏が多し)
14曲目:まことの愛に
15曲目:よき友との気晴らし
は、ヘンリー8世による作曲だそうで( ̄□ ̄;)!
…世間一般の評判とは別の、多彩な一面を伺えます☆…