「芸術新潮」9月号がおもしろい。特集「ニッポンのかわいい」。

はにわから、仏像、国芳、春信を経て、中原淳一、内藤ルネ、水森亜土にいたり、ハローキティーで極まるまで。銀座松屋での「キティーアート」展に合わせた企画と見えるが、それだけに終わらない、渾身の特集。

ずっと「ニッポンのかわいい」絵を見ていると、だんだんこわくなってくる。このアピール、なんだろう。攻撃しませんよ、というオーラの集まりが逆にブキミになってくる、というか。

西洋的キュートだとすぐ忘れるけど、日本の「かわいい」には「私を覚えてて~」みたいなウェットなものが漂っていて、それがコワさになるのか?

女子美大教授、南嶌宏(みなみしま ひろし)さんの話に、その答えのヒントがあり。

「小さいから簡単にやっつけられるかというとそうではなくて、小さいゆえに絶対に乗り越えられない、そのような存在が放つ力、魅力、それを指し示す呪文が『かわいい』なのではないか」

「人類は、勝ち抜き、征服し、支配したいという意志を持って文化を形成してきました。しかし一方で、何か全く無抵抗なものに同化したい、弱々しいものに支配されたいという欲望も抱え込んでいる。20世紀のある時期以降の人間たちがどこか無意識に希求しているその思いが、『かわいい』によって救済されているのでしょう」

教授のとなりにフツーに座って、うなずきながら聞いているようなキティが、やっぱり「コワい」(笑)。

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