Books and Cafe主催による君塚直隆先生のエリザベス女王に関する講演をズームで拝聴。濃密で圧倒的な2時間で、質問コーナーの「ジョージ5世とニコライ2世の見分け方」から始まるエピソードも印象深かった。ポルトガルやギリシアの弱小王室は救うがツァーリズムが行き過ぎたロシアは立憲君主制を守るためあえて切ったと。それにしてもこの二人、ヴィクトリア女王もいつも間違えて(見分けがつかず)ニッキーをジョージと呼んでいたというのも納得なほどうりふたつ。軍服もこてこてにデコレーションがされていて、すべての装飾に意味があるはずなのだが、もうなにがなんだか。
高校生のころは実は政治家になりたかったという君塚先生。現実の日本の政治家の人品のいやしさに触れて過去の偉大な政治家を研究するほうに向かったそうで、どうりで、政治や外交の話となるとますます熱を帯びてくる。政治がつまらないのではなく、政治を語る人が面白ければ政治も面白くなるのだということを実感。同じことはいろんな研究に適用されますね。(自戒)
・日本の宮内庁が実は25年間まったく改革ができていない背景も納得の理由。現宮内庁の皇室PRにもダメ出しと具体的な提言。ばっさばっさ斬っていく君塚節が小気味よい。
・ブレグジット決定後の王室外交についての具体的な交渉がスリリングで、ブルーリボンをここぞの時に使う王室のやり方、幼少のジョージ王子をメルケルと会わせる外交の手順など、劇画を見ているようだった。
・ダイアナとチャールズがうまくいかなかった根本の原因、実際に会ったカミラの人柄、ダイアナがもし今も生きていたら……という話にも触れられて、ああ、書くのは憚られるようなことだけれどそれはそうだろうな、と。
・年号や日にち、訪問回数、団体の数、その他もろもろの細かい数字をメモも見ないで、映像を見せるように話していくレベルの高さにもあらためて感銘を受けた。仮にも専門分野をもつならばこういうレベルを目指し、さらに超えるくらい無敵でないと意味がない、と痛感。
王室外交の、人間の心理の綾をついたデリケートなやり方は、世俗の人間関係にも応用可能なことが多々あることにも気づく。人文学が役に立つか立たないかは、あくまでそれを受け取るほうの感受性の問題だ。
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