12日におこなわれたHAYAMA AROMANCE 発表会。ブランドを立ち上げた真海英明さんが徹底的に考え抜いたコンセプトの話、日本でもっともキャリアの長い調香師である森日南雄さんの話がリアルで興味深かった。
調香師を探していた真海さんが、日経BPに出ていた森さんを見てピンときて直に会いに行き、目を見て決めた話もヒューマンなエピソードでいいな。森さんは絵も描く。調香師は技術者というよりアーチストなんですよね…。

それにしても、というか、だからこそ、製品の「調香師の名を明かさない」のは「職人が匿名」という旧弊と根が同じでは、と感じることがある。理由はなんだろう? ブランドの世界観に奉仕するため陰の存在になっておくべきという考え方だろうか。
(HAYAMA AROMANCEはその点、調香師の名をきちんと立てていて新時代の感覚があるなと感じる)

日本の調香師界にもフランスのように「名のある」調香師がどんどんフィーチャーされていくとよいですね。

(会場になった原宿bamboo)

 

さて、香水の話題ついでに。

宮本輝『ドナウの旅人』に、「本物の香水、本物の人」に関する会話があります。

「香水って、乾いて何分かたってから役割を果たし始めるのよ」
「役割って、何の役割?」
「香水の種類によって違うと思うわ。ペーターが没頭している学問も、同じことよ。私はひとつのことに没頭して貫きとおした人は、それが決してはなやかな物でなくったって、忘れたころに匂いを放つと思うの。忘れたころに匂いを放って、人間をほっとさせたり、うっとりさせたりするのが、本物の香水よ」

ニセモノは、乾けばそれっきりというわけですね。

この道50年というような職人さんたちから放たれる人間的な「匂い」の正体もまさにこれ、と共感した一節です。

本物の香水や本物の人に接していると、自分の行動の影響を、目先の周囲の反応ではなく長期にわたるスパンで考えたいと思うようになります。

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