SPUR 11月号「私が愛した香水物語」でインタビューを受けました。フレデリック・マルに香水を選んでいただいたときのエピソードを紹介しています。お近くにSPURがありましたらご覧ください。

 

さて、フレデリック・マルがパリ本店で顧客に香水を選ぶとき、顧客の話を聞きながらアドバイスをするので、その結果、「パリの秘密の人間関係のすべてを知っている」ことになるわけだが(まるで告解室)。フランスに奥深い香水文化が発達していることと、パリに秘密の人間関係がたくさんあることとの間には、密接な関係がある。

ヨーロッパ型ラグジュアリーの源には、語源のイメージから、「色欲(lust)」があるということを本にも書いた。ヨーロッパ、とりわけフランスは色恋沙汰には寛容である。フランスの大統領の不倫やら恋愛沙汰はプライベートの問題で仕事や人格とはまったく無関係と見られてきたし、一般人も、他人様のことをとやかくいう資格は私にもないので、という態度である。

このような、自由奔放な性愛の快楽を肯定する思想を「リベルティナージュ」という。遠くアンシャン・レジーム時代の貴族社会に根を持つこの伝統、早い話が不倫に関する寛容さが、ヨーロッパの服の色気や優雅な空気感、香水の繊細で奥深い魅力をひそかに支えている。

リベルティナージュをホメているわけではないが、その独特の秘めやかな雰囲気を理解しないと、フランスのラグジュアリーも理解できないだろう。

一方、日本は、皆様ご存じのように、リベルティナージュ一発退場である。日本という環境でヨーロッパ型ラグジュアリーを真似をしても本物感が生まれにくい理由もそこにある。

日本は日本で、自分たちの独自の快楽や文化を冷徹に見つめなおし、そこに根差すラグジュアリーを創造していきたいものです。

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